給与制度とは? 給与制度の形態や改正・整備にあたっての課題や気をつけるべきポイントについて

給与制度は、企業活動にて非常に重要な役割を担います。労働の対価を支払うという点で、企業がどこに価値を見出し、社員に何を求めるか如実に表れるからです。そんな給与制度の基本や改正・整備について説明します。

1.給与制度とは?

給与制度とは、労働の対価を支払う際の考え方の基礎となる仕組みのこと。給与形態の方式や考え方からさまざまな制度が取り入れられています。

近年の日本企業では、「月給制や年俸制などの時間軸の給与制度」「年功給・職務給・成果給など在籍年数や立場、成績に応じた給与体系」を掛け合わせている場合が多いようです。一般的な給与や賃金は、基本給・賞与・成果報酬・各種手当で構成されています。

企業によって給与制度は変わる

企業や業種によって採用している給与制度は異なります。多種多様なビジネスモデルや経営方針があり、基本的には給与体系にも考え方や価値観が反映されているのです。

しかし明確に賃金ポリシーを定めている企業は少なく、時代の潮流に合わせて家族手当や住宅手当を導入したり、業績好調時に給与水準を上げすぎたりしている企業もあります。

自社の現状を適切に把握し、将来の見通しをしっかり持ったうえで給与制度を整えるとよいでしょう。

日本の給与制度

たとえば国家公務員の給与は、法律にもとづいて厳密に決められています。「基本、民間企業の従業員や社会一般の情勢に均衡させる」とされていますが近年、従来の年功給を脱し、成果主義体質に変わるべく動いているのです。

給与の内訳は、「職務と責任の大きさに応じて決められる俸給」と「各種手当」で構成されています。また国家公務員の職務階級は、1級から10級までの10段階に分類されているのです。

給与制度は業種や企業により違いがあります。いずれも企業の成果や評価に対する考え方が反映されているのです

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2.基本的な給与の形態

基本給は、「年齢」「在籍年数」「ポジション」「タイトル」「成績」などから6種類に分類され、多くの場合いくつかの組み合わせで構成されています。

  1. 年功給
  2. 職務給
  3. 役割給
  4. 職能給
  5. 業績給
  6. 成果給

①年功給

年功給は、年齢や勤続年数に応じ、比例して決められる給与のこと。在籍期間が長くなるほど知識や経験が増えて熟練度も上がるため、合理的理由が認められます。

一方で成果とは関係なく昇給するため、「ベテラン社員の成長意欲低下」「社員の高齢化」「次世代を担う若年層の不在」「人件費の高騰」などが問題になっているのです。

②職務給

職務給は、仕事の内容を評価する給与のこと。仕事の難易度や責任の度合いに応じて金額が決まるため、職種や業務の専門性に大きくかかわってきます。

「社内における業務の重要度」「務めるために必要な知識や経験」「そこにかかる努力や熟練度」など、多くの観点から職務分析を行い、公正に金額を決めなければなりません。

③役割給

役割給は職務給よりも適用範囲が広く、一つひとつの業務そのものでなく役職や立場に与えられます。さまざまな担当業務を通じてどんな成果を挙げられるかに注目するので、職務給のように一つひとつの業務内容を細かく分析する必要はありません。

その分、評価基準が曖昧になりやすく、金額の根拠が不明瞭になりやすいのです。

④職能給

職能給とは、従業員の知識や経験、技術など、職務遂行能力の高さで判断する給与です。知見や実績に左右されるため、在籍年数に評価が引っ張られるケースも多く、年功給と差別化できずに形骸化してしまう場合もあります。

公正に職務遂行能力を評価できる仕組み作りが必要でしょう。

⑤業績給

業績給とは、企業の業績に応じて支払われる給与のこと。多くの民間企業が賞与やボーナスに反映しており、年俸制と組み合わせて基本給に含めるという企業もあります。

原則、業績次第で決まるため、金額が上がるだけではなく下がったり支給されなかったりする場合もあるのです。

⑥成果給

成果給は、個人が生み出した売上や販売金額、製品の出来高など、業績に貢献した度合いを評価します。成績の優秀な社員を正当に評価できる一方、成果を重んじるあまり個人プレイが助長される恐れもあるのです。

チームとしての成果が出しにくくなったり失敗を恐れて挑戦意欲が削がれたり、といった弊害が考えられます。また業種や職種によっては、個人ベースでの成果を判断しにくい場合もあるでしょう。

さまざまな基本給の考え方があるものの、万能なものはなくいずれも一長一短です。多くの企業が複数を採用して、お互いのデメリットを補完するよう取り組んでいます

3.給与制度の見直しの時期は?

給与制度は従業員と企業の双方にとって、非常に重要な制度です。従業員の仕事への意欲や生活に直結し、企業の業績にも密接するため、軽々しく変えられません。

しかし企業をとりまく社会情勢や外部環境、社員の活躍や多様な雇用形態などから、より適切な給与制度になるよう見直す必要はあります。

見直すタイミングの例は、「法律改正の時期」「組織改革の一環」「業績が好調で資金に余裕があるとき」などです。キリの良い創業年なども、変更のきっかけとして説明しやすいでしょう。

給与制度の変更はさまざまな影響を考慮して慎重に行うべきです。企業側の都合だけでなく従業員の心情も踏まえて計画的に実施しましょう

4.給与制度の改正・整備に当たって

給与制度の改正や整備は、「法律改正や組織変更、世代交代など、企業環境に変化が起こったとき」「創業年や従業員数などキリが良い数字を迎えたとき」に実施しやすくなります。

また給与制度の変更には、「社内説明や合意形成のための時間」「不利益緩和のための補填」などが必要です。時間や資金に余裕をもって進めましょう。

問題点を洗い出す

給与制度を見直す際はまず、現状の問題を洗い出しましょう。問題点を解消するような制度変更でなければ、時間と資金をかけて行う意味がありません。

たとえば、「社員の貢献意識や成長意欲を上げたい」「人件費改善のため現状にフィットさせたい」「社員の属性に合わせた制度を導入したい」「しっかり法令遵守したい」「諸手当を整理して本当に必要とされている手当を支給したい」などです。

今のの課題や希望する状態を明確化しましょう。

改正にて気を付けるポイント

給与制度を改正する際に気を付けるポイントは、5つです。

  1. 自社の給与体系を属性別に分析して、企業一般や業界の水準と比較し、課題を把握する
  2. アンケートやインタビューなどで従業員の意見を吸い上げる方法も有効
  3. 給与制度のトレンドや独りよがりな考え方に振り回されず、あくまで自社に適した制度を検討する
  4. 「体系はそのままで一部の手当だけ変える」「評価方法を変更する」などの改正方法がある
  5. すべてに細心の注意を払い、慎重に進める

給与制度を改正すると、従業員から反発が起こる可能性も高いです。無理に推し進めるのではなく、丁寧に理解を求めたうえで順序よく進めていきましょう。

給与制度を見直す際に必要なことは、現状分析と課題解決に向けた判断です。従業員の感情にも配慮するとよいでしょう

5.年功序列と成果主義

多くの企業で、成果主義を取り入れた評価制度が導入・検討されてきています。つまり日本の雇用慣習で長い間採用されてきた年功序列は、社会の変化とともに機能しにくくなっているのです。

ここでは、年功序列と成果主義それぞれのメリットとデメリットについて解説します。

年功序列とは?

年功序列とは、年齢と勤続年数に比例して賃金水準が上がっていく給与体系のこと。従業員は雇用を保障されているため、安定した生活が見込めます。企業側は同一企業に長く勤める社員が多いために、知見や技術が蓄積されるというメリットがあるのです。

しかしその反面、成長意欲や競争意識が欠如する可能性も高く、企業が存続するにつれて社員の高齢化と人件費高騰が顕在化してしまうため、若年層の薄さも課題となっています。

成果主義とは?

成果主義は、個人の成果や成績など、企業業績への貢献度に応じて賃金や昇格・昇進を判断する評価体系のこと。ハイパフォーマーの社員を優遇できるため、成長意欲や競争意識を活性化させたり、実績に見合った評価を与えたりできます。

しかし過度な個人主義につながる場合もあり、足の引っ張り合いや相互補助の意識欠如を招きかねません。数値に表しにくい業務や職務は評価を受けにくく、全員が成果主義の恩恵に預かれるような仕組みが必要です。

年功序列から成果主義に移行しようとする企業が多いものの、どちらも良い面・悪い面があります。どちらを選択するとしても、デメリットを補完する工夫が必要です

6.給与計算業務は「賃金支払いの5原則」にもとづく

給与計算業務は、労働基準法に定められた「賃金支払い5原則」にもとづいて、正確に行わなければなりません。賃金支払い5原則のそれぞれの項目と内容を理解し、正しく遂行されているか確認しておきましょう。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上払いの原則
  5. 一定期日払いの原則

①通貨払いの原則

通貨払いの原則とは、給与を日本の通貨、つまり現金で支払う決まりのこと。そのため小切手や商品券、自社製品での支給は違法となります。また日本の通貨である必要があるため、相手が外国籍であっても日本円で支払う義務があるのです。

ただし金融機関への振り込みと退職金の小切手支払いは、従業員の承諾があれば可能となっています。また労働組合と労使協定を結んだ場合に限り、通勤手当の定期券現物支給が認められているのです。

②直接払いの原則

直接支払いの原則とは、給与を労働者本人に直接支払うルールのこと。

給与が労働者本人に確実に渡ることが目的なので、たとえ家族でも原則、給与受取人には指定できません。やむを得ない事情と労働者本人の承諾がある場合に限り、使者という形で受取人を指定できるのです。

税金滞納など、裁判所の決定で労働者の給与が第三者に差し押さえられた場合、差押債権者に支払うことが認められています。

③全額払いの原則

全額払いの原則とは、賃金全額を労働者に支払うルールのこと。そのため銀行振込の際に振込手数料を引いたり、貸付金と相殺したりするなどは禁じられています。

一方、所得税や住民税、社会保険料など、法令にもとづく項目を控除したうえでの賃金支給は認められているのです。ただし労使協定がない場合、社宅賃料や積立金、罰金だとしても不当な天引きとなり、違反に該当するので注意しなければなりません。

④毎月1回以上払いの原則

毎月1回以上払いの原則は、毎月1回は必ず賃金を支給するという決まりのこと。たとえ給与が年俸制でも、毎月払いになるよう分割する必要があります。月1回以上の支払いが基本なので、週払いも可能です。

ただし臨時で支払われるような賞与・ボーナスや手当などの一時的な支払いと、労使協定を結んでいる場合に限り、複数月分の定期券現物支給が対象外になります。また基本、通勤手当も毎月払いの対象です。

⑤一定期日払いの原則

一定期日払いの原則は、給与の支払い日を「毎月〇日」と具体的な日付で決めること。労働者の生活の安定を意図しています。

「毎月末日」は期日が確定しているため問題ありません。しかし給与支払いまでの期間が変動するため「毎月第〇曜日」「毎月〇日~△日のあいだ」という規定、条件付きの支払い日指定はできないのです。

給与支給日が休日の場合は支払い日を前倒し・後ろ倒しできます。出産や急病など、労働基準法で定めている非常時に請求があった場合は、支払い日を待たずに賃金を支払う必要があるのです。

給与計算のルールは、労働者の権利と生活の安定を保障するため、労働基準法で決められています。適切な給与支払いが行われているか念入りにチェックしましょう