コース別人事制度とは?【簡単に】種類、メリデメ

コース別人事制度は、中小企業では導入事例が増加傾向にあります。コース別人事制度の概要や種類、メリット・デメリットについてご紹介します。

1.コース別人事制度とは?

コース別人事制度とは、コースごとに昇進や昇格、評価や処遇などについて管理する人事制度のこと。厚生労働省では「コース別雇用管理」と表します。

人材募集や採用時に総合職や一般職、事務職や管理職など複数のコースを設定し、従業員の昇進や昇格、処遇などをコースごとに管理するのです。

これまでは「男性は総合職、女性は一般職」という暗黙の了解がありました。しかし男女雇用機会均等法の施行でこのような雇用が禁じられ、多くの企業がコース別人事を導入したのです。

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現状

コース別人事の必要性は近年、減少傾向です。とくに一般職の需要が低下しています。IT化やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)の導入で、従来の事務作業が効率化されたことが理由のひとつです。

実際に大手生命保険会社や大手銀行では一般職を廃止し、一般職から総合職への統合が行われています。

複線型人事制度との違い

複線型人事制度とは、キャリアパスに応じた複数のコースを設ける制度のこと。従業員は自身の専門性、キャリアの志向や適性などに合ったコースを選べるのです。役割で複数のコースを設定するコース別人事制度も、複線型人事制度に該当します。

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2.コース別人事制度におけるコースの種類

ここでは一般的なコースの種類として下記をご紹介します。

  1. 総合職
  2. 一般職
  3. 管理職
  4. 事務職

①総合職

企業において基幹業務を担う従業員を管理するコース。配属部署は、技術系であれば開発部門や生産部門、事務系であれば人事や総務、経理や営業など。総合職の従業員は、将来企業の中核を担うような幹部候補として扱われることも少なくありません。

多くの経験を積ませるため、社内の人事異動だけでなく、子会社や関連会社への出向なども行われます。

②一般職

総合職のサポートを担う従業員を管理するコース。いずれの部署でも書類作成や顧客対応など定型業務が多く、営業部門であれば見積書や資料作成、総務部では備品管理や保守管理などを担当します。

また総合職と比べて業務範囲が限定されるため、責任の範囲も狭くなるのです。そのため給与や待遇も総合職にはおよびません。一方、転居を伴うような大きな人事異動がほとんどないため、従業員はワークライフバランスを保ちやすくなります。

③管理職

部署や課の目標達成に向かって業務を管理する役割と、部下の管理や育成などを行う役割を持つ人を管理するコース。管理職とは、一般的に課長や課長代理以上の立場を指します。

管理職候補となる従業員には、総合職を経験して組織や業務全体を把握させる場合が多いようです。また管理職としてのスキルを習得させるため、管理職研修を実施します。

④事務職

主にデスクワークを担当する従業員を管理するコース。一般職や総合職のなかにも事務職に相当する業務内容が含まれ、職種でいうと営業事務や経理事務、人事事務や総務事務などが該当します。

なお業務内容によって細分化される場合もあり、会計や法務など専門性が高い職種は「事務系専門職」、経理や総務、人事など企業経営の基盤ともいえる職種は「事務系総合職」とも呼ばれるのです。

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3.コース別人事制度のメリット

コース別人事制度では複数のキャリアパスを提示するため、従業員側は自分のキャリアプランを達成しやすくなるのがメリットです。

また複数のコースを経験した従業員はそれだけ成長が見込めるので、限られた従業員の労働力を有効活用できるのです。ここではコース別人事制度のメリットについて解説します。

  1. 従業員のモチベーション向上
  2. ひとりに対して幅広い人材育成が可能
  3. 幅広いキャリア選択が可能

①従業員のモチベーション向上

従業員が適正な評価を受けられるようになるため、モチベーションが向上しやすくなります。なぜなら各コースには、それぞれ最適な評価制度が整備されているからです。

たとえば営業部は実績といった定量の指標を設定できる一方、人事部や総務部などは定量的な指標の設定が難しいもの。コース別人事で各職場に応じた評価基準や指標を設ければ適切な人事評価ができるようになるため、従業員のモチベーションが高まるのです。

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②ひとりに対して幅広い人材育成が可能

コース内でさまざまなキャリアを積めるため、ひとりの従業員が幅広い知識やスキル、経験を習得できます。課題解決やアイデア創出などの能力が高まり、効率や生産性の向上も可能です。

部署や部門でコースをわけている場合、同時に専門性も高められ、業務の質が向上する効果も期待できます。とくに将来の幹部候補といえる総合職には、全体の業務を把握させるためにさまざまな部署や部門で幅広いキャリアを積ませる傾向があるのです。

③幅広いキャリア選択が可能

従業員は、自分のキャリアプラン実現に向けた職種や業務内容を選択肢できます。たとえばライフスタイルに合わせて異動が少ない職種や業務を選べますし、自身の専門性を高めるために必要な業務や職種を経験するのも可能です。

キャリアの選択肢が広がると、従業員にとって働きやすくやりがいのある職場となり、モチベーションや定着率の向上につながります。

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4.コース別人事制度の問題点・デメリット

コース別人事制度は、メリットと同時にデメリットや問題点もあります。単一的なコースしかない人事制度に比べて制度が複雑化しやすく、管理や運用に人的および金銭的コストがかかるからです。

ここではコース別人事制度のデメリットや問題点について解説します。

  1. 運用コストの拡大
  2. 人事制度の複雑化
  3. 間接的な男女差別

①運用コストの拡大

コースごとに異なる人事制度を導入するため、制度の運用コストが拡大します。コースにとって最適な給与体系や評価システム、業務プロセスなどへ転換しなければなりません。

システムの導入やカスタマイズなどのコストにくわえ、それらに携わるスタッフの人件費や時間といったコストも発生します。またコース別人事制度を新たに導入する場合、検証や改善などの手間と時間を取られるのです。

②人事制度の複雑化

コースごとに最適な人事制度を整備する必要があるため、人事制度が複雑化してしまい、混乱やトラブルを招く恐れがあります。

もっとも懸念されるのは評価制度です。各コースで求められる能力やスキルは異なるので、それらに対応した評価基準や指標を設けなければなりません。

しかし先に説明したように、業務や職種によっては明確な指標の設定が難しい状況です。評価の公平性や納得性が低下すると、不満を抱いた従業員が離職する恐れもあります。

③間接的な男女差別

コース別人事制度は、男女間の雇用差別を助長する恐れがあります。出産や子育てなどを行う女性は、男性と同じような働き方がしずらいため、多くの企業で「男性は総合職、大半の女性は一般職」という認識が暗黙の了解となっているからです。

実際に「男女雇用機会均等法」に違反しているとして裁判が行われた事例もあります。近年、長く働く女性も増えているため、このような間接的男女差別を生まない配慮が必要です。

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5.コース別人事制度の注意点

コース別人事制度は過去に男女雇用機会均等法に違反しているとして問題になりました。そのため導入や運用においては、男女雇用機会均等法に準じる必要があります。ここではコース別人事制度の導入や運用で注意すべき点を解説します。

  1. 均等法を遵守した運営
  2. 実質的な男女別の雇用管理
  3. 女性の活躍を推進する環境整備も同時進行

①均等法を遵守した運営

男女雇用機会均等法のなかでも、とくに違反しやすい項目があります。これらを遵守した人事制度になっているかを確認しましょう。

  • 男女別の制度運営になっていないか(総合職は男性のみ、一般職は女性のみなど)
  • 各コースの採用基準に男性と女性の差が生じていないか
  • 実際の運用で男性と女性の取扱いに差が生じていないか(形式上では平等だが、実際の採用などで差が出ているといったもの)
  • 各コースの昇給や昇格、教育などの基準に男性で差が生じていないか
  • 総合職の採用募集で、転居を伴う転勤を条件に設けていないか(間接差別にあたるとして改正均等法で禁止)

②実質的な男女別の雇用管理

形式的な雇用管理にしない点も注意点として挙げられます。先述のとおり、募集時には対外的には男女平等としながら、実際の採用や配属には差が生じている場合もあるからです。

性別にかかわらず労働意欲や能力、適正や成果などを十分に評価し、適切な評価とそれに見合った処遇を与える人事制度でなければなりません。

厚生労働省ではこの点について、「入社時にコース区分を決めるのではなく一定期間の職務を経験させ、意欲や能力、適性などにもとづいてコースを決定すべき」としています。

③女性の活躍を推進する環境整備も同時進行

女性が能力を十分に発揮できる環境整備も必要です。女性の場合、出産や育児、介護などで時短や休業せざるを得ない場合もあります。よって育児・介護休業法にのっとった休業制度を取り入れておきましょう。

また一時的でも、女性のキャリアは中断されてしまうもの。女性が継続して活躍できるよう、復帰後のフォロー体制や教育制度、育児や介護が両立できる勤務形態、昇進や昇格などに関する評価制度や報酬制度などを整備しましょう。

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6.コース別人事制度の導入方法

コース別人事制度を導入する際は、各制度の設計から始めます。従業員のキャリア構築を後押しして能力や意欲を高め、仕事面での成長のみならず人間的な成長までを目指しましょう。ここではコース別人事制度の導入方法を解説します。

STEP.1
各制度の設計
担当する職務の内容や転勤の可否などに応じた複数のコースを設定します。複数のコースを設定すれば、従業員は希望に沿ったコースを選べるため、企業もその職務に適した人材の確保や育成がしやすくなるからです。

また多様な従業員の能力や意欲、ライフスタイルなどに対応できる評価制度や雇用制度を整備しなければなりません。これらの制度は、従業員の働きやすさやモチベーションを左右するからです。

STEP.2
社員を各コースに区分
能力や特性、希望などをふまえたうえで、各従業員をコース別に区分すると、キャリア形成に向けた職務変更や異動などが行えるようになります。

従業員は自身のキャリアプランの実現に近づき、企業は人材育成の効率を高められるからです。

コースの振り分けにおいて従業員の同意は必須となりません。ただし採用時に「勤務先を限定している」といった要件を提示している場合、転居を伴う異動が生じる職種へ配属すると不利益変更と見なされる恐れもあります。

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7.コース別人事制度の廃止の留意点

コース別人事制度の導入が中小企業で高い傾向にある一方、大企業では廃止するケースが増えています。能力主義や成果主義に切り替えた大企業では、正規雇用の一般職ではなく、高い能力を持つ非正規人材を採用し始めたからです。

ここではコース別人事を廃止する場合の留意点について解説します。

不利益変更の発生

コース別人事制度から新制度へ移行し、労働条件や就業規則が大きく変化した場合、労働契約法第9条で定める「不利益変更」が発生する可能性もあります。

たとえばまったく異なる職務への従事、賃金の低下、転居を伴う異動などです。不利益の程度や変更の必要性、変更内容の妥当性などを各従業員へ説明し、合意を得ておかなければなりません。

処遇の見直し

職位や賃金、昇進や昇給、雇用制度など、労働上の処遇を見直さなければなりません。またワークライフバランスを保ちながら長期的に働き続けるための、安全衛生や休業に関する制度なども広義の処遇に含まれます。

これらの内容変更において必要性や妥当性を十分に検討したうえ決定し、労働組合や本人への十分な説明が必要です。

教育機会の提供

コース転換を余儀なくされた従業員が活躍できるよう、またそういった従業員の退職や解雇を避けるためにも、十分な教育機会を提供しましょう。

また特定の性別が多かった職務へ異性を転属する場合も、同様の状況が想定されます。このようなパターンに対応できる研修や教育を整備しましょう。