女性管理職とは?【比率】向いてる人、少ない理由、メリット

女性管理職とは、管理職のポジションにつく女性のこと。女性管理職がいると組織に新たなイノベーションが生まれやすくなるうえ、比率を上げれば人的資本の情報開示や企業イメージの面でメリットを得られるのです。

今回は、女性管理職が少ない理由や現状の比率、女性管理職がいることのメリットや女性管理職を増やすために企業ができることなどを詳しく解説します。

1.女性管理職とは?

女性管理職とは、管理職(部長や課長、マネージャーなど組織・チームをまとめる立場にある役職)のポジションにつく女性のこと。企業によって、管理職の定義はさまざまです。

近年、ダイバーシティの促進や男女平等な職場環境実現のため、女性管理職の必要性が高まっています。

ただし、単に女性だからという理由で必要性が高まっているのではありません。男性がメインとなる管理職に女性が参加することで、多様なアイデアや意見が取り入れられたり、イノベーションの創出につながったりする可能性に期待が寄せられているのです。

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2.女性管理職はなぜ必要なのか?

2003年に女性管理職を増やす取り組みとして「2020年までに指導的地位の女性割合30%」との目標が提示されました。しかし、2020年時点では未達となり、2030年までの目標へと先送りになっています。

また、男女共同参画会議において、最上位の上場企業の役員に占める女性比率を30%以上にするとの目標を提示。女性管理職の登用については国をあげて取り組んでいるのです。

内閣府男女共同参画局の資料には女性管理職の必要性について、以下のような記載があります。

女性は我が国の人口の半分、労働力人口の4割余りを占め、政治、経済、社会など多くの分野の活動を担っている。女性の活躍が進むことは、女性だけでなく、男女がともに暮らしやすい社会の実現につながるものである。

参考 第2分野 政策・方針決定過程への女性の参画拡大内閣府男女共同参画局

女性が管理職に就くと、男女平等な社会の実現と労働人口の確保、多様性による持続可能な成長を実現することにつながると示しています。

終身雇用制度が崩壊しているように、これからの時代はこれまでのような企業システムでは成り立たない状況でもあるのです。「管理職=男性」といった暗黙のルールも見直すタイミングといえるでしょう。

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3.女性管理職の比率とは?

日本の女性管理職の比率は、依然として低いです。ここでは、日本の女性管理職の比率をふまえて、海外の状況もみていきます。

日本における女性管理職の比率

厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」の結果によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.4%です。以下は、役職に占める女性管理職の割合です。

  • 役員:20.3%
  • 部長相当職:8.4%
  • 課長相当職:10.8%
  • 係長相当職:18.7%
参考 令和2年度雇用均等基本調査厚生労働省

また、帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2022年)」の結果によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は、平均9.4%でした。なお、本調査での有効回答企業数は1万1,503社です。

下記は、企業規模別にみた女性管理職の割合となります。

  • 大企業:6.8%
  • 中小企業:9.9%
  • 小規模企業:12.5%
参考 女性登用に対する企業の意識調査(2022年)帝国データバンク

上記調査では、企業規模が大きくなるほど、女性が管理職になるのは難しい状況にあるとわかります。

そして、男女共同参画局「男女共同参画白書令和3年版」による、「令和2年の階級別役職者に占める女性の割合の推移」では、民間企業の係長級で21.3%、課長級で11.5%、部長級で8.5%でした。

平成元年からの推移を見ると年々女性の割合は上昇しています。しかし政府目標の30%には満たないのが現状です。

参考 企業における女性の参画男女共同参画局

女性管理職比率の開示義務化について

2015年3月期決算より、有価証券報告書において役員の女性比率の開示が義務化されました。また、2021年にはコーポレートガバナンス・コードにて、女性管理職に関する補充原則2-4①が新設されています。

「上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。」

2023年度からは、有価証券報告書にて人的資本の開示が義務化。多様性に関する情報として、女性管理職比率の記載が義務づけられています。

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海外における女性管理職の比率

内閣府男女共同参画局「就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)」によると女性管理職の割合が最も高いのはフィリピンの50.5%、最も低いのが日本の13.1%でした。

  • フィリピン:50.5%
  • 米国:41.1%
  • スウェーデン:40.2%
  • シンガポール:38.9%
  • オーストラリア:37.8%
  • 英国:36.8%
  • ノルウェー:34.5%
  • フランス:34.2%
  • ドイツ:29.4%
  • マレーシア:23.3%
  • 韓国:15.7%
  • 日本:13.1%
参考 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合(国際比較)内閣府男女共同参画局

多くの国が30〜50%台である一方、日本は世界的に見ても女性管理職の比率が大幅に低いとわかります。

2010年以降、各国で「クオータ制(男女間格差是正を目的に性別を基準に一定の比率をポストに割り当てる制度)」が導入されたのもあり、各国で企業役員における女性比率が大きく向上しました。

2020年時点で130ヶ国が導入しており、日本では現在も未導入です。

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4.日本で女性管理職が少ない理由

では、なぜ日本では女性管理職が少ないのでしょうか。その理由をみていきます。

  1. 女性が管理職になる環境が整っていない
  2. 前例が少ない
  3. 経営層が女性の起用に意欲的でない

①女性が管理職になる環境が整っていない

人事制度や福利厚生などで、女性が管理職になれる環境が整っていない企業も多くみられます。女性は出産や育児などがあり、長期的なキャリアが築きにくい立場にあるもの。

「産休・育休を経て復帰しても管理職になれるほどのキャリアが築けない」「その間に男性にポストを取られてしまった」といったケースもあり、仕事と両立できる環境やサポートが十分に整備されていないのです。

そのため、妊娠や出産を機に退職し、その後非正規雇用として働く選択をとる女性も多く存在します。このような環境が当たり前だと女性が思ってしまって、管理職を目指す意欲がなくなっている可能性も高いです。

②前例が少ない

前例が少ないがゆえに、管理職になりたいと考える女性が少ないのも理由のひとつ。

家庭と両立しながら管理職になっている女性が少ないため、管理職になるには出産や育児を諦めなければならないのではとの懸念が残っています。またロールモデルもいないため管理職になるビジョンが見えない状態に陥っているのです。

③経営層が女性の起用に意欲的でない

出産や育児でブランクや退職が生じる女性より、そうした理由でのブランクや退職のリスクが少ない男性を管理職に起用した方がよいと考える経営層も少なくありません。

また、企業文化的に管理職は男性の役割との意識が根づいている場合もあるでしょう。上層部の意識が変わらなければ、女性管理職も増えないままになってしまいます。

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5.女性管理職を増やすメリット

女性管理職を増やすと、企業は以下のようなメリットを得られます。各メリットを詳しくみていきましょう。

  1. 多様性のある組織が構築される
  2. 女性従業員のモチベーションが向上する
  3. 定着率の向上につながる
  4. ESGの観点で評価される

①多様性のある組織が構築される

女性と男性とでは、よい意味で考え方や価値観が異なる点も多くあり、こうした多様性を生かすとイノベーションの創出につながります。

また、同じ属性(ここでは男性)が集まりすぎる組織では、圧力が生じ、誤った判断を下してしまうグループシンクに陥る可能性も考えられるのです。

多様性があればさまざまな意見やアイデアも生まれ、柔軟性が養われます。また、人的資本でも多様性が重視されているため、多様性の促進にも有効です。

②女性従業員のモチベーションが向上する

女性が管理職になれる実例ができれば、女性のキャリア意識が向上します。ロールモデルがあれば、管理職を目指して意欲的にもなれるでしょう。

理想は、家庭と両立できている女性がロールモデルとなること。というのも、家庭との両立の難しさが、女性が管理職を諦めてしまう大きな原因でもあるからです。女性が管理職として活躍できる企業だとアピールできれば、女性の採用力強化にもつながります。

③定着率の向上につながる

女性が管理職になれる職場は、ライフスタイルの変化に左右されずに働きやすい職場であるとわかります。

ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に働ける企業なら、妊娠や出産を機に離職する人も減りやすく、エンゲージメントや定着率の向上にもつながりやすいです。

④ESGの観点で評価される

近年ESG投資が進んでいることからも、ESGに取り組んでいる企業は持続可能な発展に期待できる企業として投資に有利になります。多様性はESGに関連する項目であり、女性管理職が多いとESG面でよい評価が得やすくなるのです。

内閣府「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究」では、約7割の機関投資家が投資判断等において女性活躍情報を活用する理由として「企業の業績に長期的には影響がある情報と考えるため」と回答しています。

また、女性取締役を1人以上有する企業のほうが、女性取締役をひとりも有しない企業に比べて株式パフォーマンスがよいとの調査もあるほどです。

参考 ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究内閣府

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6.女性管理職に向いている人

下記は、女性管理職に向いている人の主な特徴です。

  • 感情的にならず冷静に対応できる
  • 周囲への気遣いができる
  • リーダーシップがある
  • 意欲的

実際のところ、管理職に向いている人の特徴や求められるスキルに男性と大きな違いはありません。ただし、「女性だから……」と消極的にならないこと、男性と対等な立場で発言することが求められます。

また、気配りやコミュニケーション能力の高さなどを生かすのも大切です。まずは女性側が管理職を目指したいという意欲が重要であるため、企業は女性管理職が実現できる環境やサポート体制を構築しましょう。

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7.女性が管理職になりたくない理由

女性が管理職になりたくないと考える主な理由は、下記のとおりです。

  • 責任や役職へのプレッシャー
  • 家庭との両立が難しい(ワークライフバランスの確保)
  • 自信がない

管理職になると責任や業務も増えるため、家庭との両立が不安、難しいと感じる人も多いのです。くわえて男性より責任のある仕事が任されにくい環境では、管理職になる自信がない女性がいる可能性も高いでしょう。

また「ロールモデルがいない」「制度や環境が整っていない」などから、そもそも管理職になるモチベーションがない・低い女性が多い可能性もあります。

管理職になりたくないという考えだけが、女性管理職の比率を下げている原因だとは限りません。まずは、女性が「管理職になりたい」「自分でも管理職を目指せる」と思える環境をつくりあげることが重要です。

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8.女性管理職を増やすために企業ができること

ここでは、女性管理職を増やすために企業ができることをご紹介します。自社の状況や課題に応じて、適切な施策を実行することがポイントです。

  1. ワークライフバランスのサポート
  2. 制度の整備・運用の強化
  3. ロールモデルの育成
  4. 女性のキャリアサポート

①ワークライフバランスのサポート

女性がキャリアを築くうえで、主に不安視するのはワークライフバランス。家庭と両立しながら働けるか、両立しながら管理職を担えるのかを心配する女性は多いでしょう。

リモートワークや時短勤務、フレックスタイムなど、ライフスタイルの変化に対応できる多様な働き方の導入は有効な施策です。

ライフスタイルの変化によってキャリアを諦めずにすむ環境を構築し、かつそうした環境下でも管理職になれる評価基準を構築する必要があります。

②制度の整備・運用の強化

産休・育休制度や育児補助、男性の育児参加を推進する制度の整備も重要な施策です。このとき制度の整備と利用できる環境の構築を並行するとよいでしょう。

くわえて、管理職が積極的に制度を活用している実例や、制度を利用してもその後のキャリアに影響をおよぼさない実例が必要です。また人事制度も見直し、昇進や昇格基準を明確にして、管理職へのキャリアパスを示すのも忘れてはなりません。

③ロールモデルの育成

女性管理職のロールモデルとなる人材を育成し、前例を作るのも大切です。「管理職ができるかもしれない」と意識できれば、自分の将来をイメージしやすくなります。それによりモチベーションも向上するでしょう。

女性特有の懸念を払拭するためにも、家庭と両立しながら管理職を担っている女性をロールモデルにするとよいでしょう。家庭と両立しながらでも管理職ができる企業だとわかれば、女性のキャリア意識が改善され、管理職を目指す人が増える可能性に期待できます。

④女性のキャリアサポート

管理職に必要なスキルや自信形成のため、管理職につながる研修の実施や活躍の場を与えるのも重要です。

またキャリアデザインの支援やキャリアの相談窓口を設置して、管理職を目指したい女性のキャリアをサポートできる環境を整えるのも欠かせません。

女性がチャレンジできる環境や管理職になるためのサポートが得られる環境であれば、管理職を目指す意欲も高まるでしょう。