従業員名簿とは、労働基準法第107条により企業に作成が義務付けられている法定三帳簿の一つで、氏名・生年月日・雇入れ日・退職理由など全9項目の記載が必要です。保存期間は退職や死亡の日から3年間と定められています。
本記事では、従業員名簿の9つの記載項目と記入例、ひな形・テンプレートの活用法、事業場ごとの作成ルール、個人情報保護の注意点、保存期間と電子データでの保存方法まで解説します。
目次
1.従業員名簿とは?
従業員名簿とは、労働基準法第107条により事業場ごとに作成が義務付けられている法定三帳簿の一つで、雇用形態を問わずすべての従業員が記載対象です。
従業員名簿(労働者名簿)とは、従業員の氏名や住所、雇用年月日などの情報を記した書類です。出勤簿と賃金台帳と合わせて法定三帳簿の1つに数えられます。企業規模にかかわらず、1人でも従業員を雇用する場合は、労働基準法により従業員名簿の作成が義務付けられています。記載対象者は雇用形態に関係なく全従業員です。
労働基準法第107条では、企業が労働者を雇い入れる際、従業員の名簿を整備する義務が定められており整備の有無は労働基準監督署のチェック対象となります。従業員名簿の正確さが、企業の労務管理の評価に直結することも多いため、注意したいところでしょう。
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労働基準法第107条による調製義務
前述の通り従業員名簿の整備は、労働基準法第107条で義務付けられており、企業は、雇用する従業員ごとに従業員名簿を作成する法的義務があるのです。
- 労働者の氏名
- 生年月日
- 履歴
など、厚生労働省が定める事項を名簿に記入しなければなりません。
法定三帳簿とは?
法定三帳簿とは、労働基準監督署による臨検(いわゆる立ち入り調査)が入った際に確認されることの多い下記3つの書類です。
- 労働者名簿:氏名や採用日など、労働者に関する情報を記したもの
- 賃金台帳:従業員に対する給与の支払い状況を記したもの
- 出勤簿:労働者の始業や終業時刻を記録し、労働時間を把握するためのもの
これらは従業員の実態を知る上で重要な役割を果たすので、必ず備えておきましょう。また労働者名簿だけでなく、賃金台帳、出勤簿にも必須項目の記載が義務付けられています。
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2.従業員名簿のひな形とは?
従業員名簿のひな形とは、厚生労働省の「様式第19号」をはじめ、ExcelやWordなどの形式で公開されている定型書式のことです。
従業員名簿のひな形とは、労働基準法に基づく法定三帳簿のひとつ「従業員名簿」を作成するためにあらかじめ作られた定型書式のこと。従業員名簿の形式には明確な規定がないため、紙のひな形もあればデータのひな形もあります。
従業員名簿を一から作る手間を省ける
従業員名簿の作成にExcelやWordで作ったひな形を使用すると、帳簿を一から作る手間を省けます。従業員名簿には、人事労務の業務に必要なあらゆる情報が集約されています。
業務をスムーズに、かつ正確に遂行するためにはこの従業員名簿の管理が欠かせません。ひな形を使用すると、従業員に関するあらゆる情報が管理・参照しやすくなるのです。
無料テンプレートの種類について
無料テンプレートには、ExcelやWord、PDFなどの形式が存在しています。形式は、管理や入力のしやすさなどから選ぶとよいでしょう。また従業員ごとではなくひとつの書式に複数名まとめて記載できるテンプレートもあります。
多数のアルバイトを抱える企業や大人数の現場環境などの名簿管理では、まとめて記載できるテンプレートを選ぶと、より使いやすくなるでしょう。

3.従業員名簿に記載しなければならない項目とは?
従業員名簿に記載しなければならない項目とは、労働基準法第107条および施行規則第53条で定められた氏名・生年月日・履歴など全9項目のことです。
| No. | 項目 | 記載内容の例 |
|---|---|---|
| 1 | 氏名 | 戸籍上の氏名(旧姓使用中でも戸籍名を記載) |
| 2 | 生年月日 | 1990年4月1日 |
| 3 | 履歴 | 社内の異動・配置転換の履歴 |
| 4 | 性別 | 男性・女性 |
| 5 | 住所 | 実際に居住している住所 |
| 6 | 従事する業務の種類 | 営業、経理など(30人未満の事業場は記載不要) |
| 7 | 雇入の年月日 | 2020年4月1日(採用決定日ではなく雇用開始日) |
| 8 | 退職の年月日及びその事由 | 2024年3月31日・自己都合退職 |
| 9 | 死亡の年月日及びその原因 | 労災該当の判断材料となる |
また、従業員名簿は事業場ごとに整備する必要があるので、人事部や総務部が一括して整備するのではなく事業場ごとに管理者を決めましょう。記載事項に変更がある場合、速やかに名簿の修正を行います。
労働基準法第107条・労働基準法施行規則第53条
各項目の詳細は以下のとおりです。
❶氏名
たとえば結婚後に社内で旧姓を使用している場合、従業員名簿に記載するのは戸籍上の氏名です。また在職中に離婚して旧姓に戻った場合には、名簿の氏名も変更します。
❷生年月日
労働者それぞれの生年月日を記載します。
❸履歴
法的な決まりはありません。基本、社内での配置転換や異動といった履歴を記載します。
❹性別
労働者それぞれの性別を記載します。
❺住所
こちらの記載をもとに、労働者に交通費を支給します。住民票の住所と実際の住所が異なる場合には、実際に居住している住所を記載します。
❻従事する業務の種類
労働者が行う業務の内容を記載します。たとえば建設業における現場作業員の場合、
- 大工
- 配管工
など業務内容が分かるように記載するのです。しかし、必ずしも記載する必要はありません。30人未満など労働者数が少ない場合、一人で複数の業務に対応するケースもあるからです。
❼雇入の年月日
労働者の採用が決定した日ではなく、雇用した日を記載します。この項目によって、年次有給休暇の発生日が明確になるのです。
❽退職の年月日及びその事由(解雇の場合は、その理由も含む)
起算日(従業員の死亡・退職・解雇の日)から3年間は、企業は従業員名簿を保存する義務が定められています。
労働者が退職した後、トラブルが発生しないよう、退社日とその理由をきちんと記載しておきましょう。労働者都合で退職した場合、とくに理由を記載する必要はありません。
❾死亡の年月日及びその原因
労働者が、病気や事故などによって亡くなった場合、亡くなった日とその原因を記載します。「死亡原因が労災にあたるかどうか」の重要なポイントとなる項目です。
記載事項の見本(厚生労働省 様式第19号)
名簿の書式に迷う担当者も多いでしょう。しかし名簿の書式は、とくに取り決めはありません。
- 労働者の氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 履歴
- 雇入年月日
などの必要事項が記載されていれば、どのような書式・様式で作成しても問題ないのです。厚生労働省より「様式第19号」が出されていますので、参考にしてみてはいかがでしょう。
無料でダウンロードできるテンプレート
労働者名簿を一から作るのが面倒な際は、厚生労働省が用意しているテンプレートの使用を検討しましょう。厚生労働省のサイトから、労働者名簿のテンプレート「様式第19号」をダウンロードできます。また、東京労働局などからも、
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 住所
- 履歴
などの必要事項を網羅した労働者名簿のテンプレートがさまざまな形式で用意されているのです。
記入例
従業員数が多く入社や退職の頻度が高い会社では、従業員名簿の管理が負担になる場合があります。
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4.従業員名簿の作成方法に関する注意事項
従業員名簿の作成時の注意事項とは、事業場ごとの作成義務、記載対象となる従業員の範囲、個人情報保護法に基づくプライバシー保護の3点です。
- 正社員 — 記載必須
- パートタイム・アルバイト — 記載必須(賃金を支払っている労働者に該当)
- 契約社員 — 記載必須
- 派遣社員 — 派遣先では記載不要(派遣元が作成義務を負う)
- 日雇い労働者 — 記載不要(日々雇用契約のため)
- 代表者・役員 — 労働者に該当しないため記載不要
従業員名簿を作成する際、必要項目の記載以外に、
- 調製する従業員の対象
- 個人情報の取り扱い
など注意しなければならない事項がいくつかあります。定められた法律の内容に沿うよう、下記のポイントに気を付けて作成してください。
❶事業場ごとに作成
事業場とは一定の場所での組織的な作業のまとまりのこと。つまり、企業全体ではなく、
- 支社
- 営業所
- 店舗
- 工場
のように一定の場所で継続的に作業が行われる場所を指すのです。従業員名簿は、事業場ごとに作成・保管するもので、人事部や総務部のもと一括して整備するものではありません。
本店の他に支店がある場合には、それぞれの事業場にて名簿を整備しましょう。原則として、同じ場所で作業していれば、一つの事業場とみなされます。ただし同じ場所であっても労働状態が違うケースでは別の事業場とみなされるため、注意してください。
❷調製すべき従業員の対象
名簿を作成するべき対象の従業員についても、注意しましょう。
労働基準法第107条では名簿の対象を「各労働者」としており、同法第9条によれば労働者は「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」。そのため企業は賃金を支払っている労働者すべてを名簿に記載しなくてはならないのです。
派遣社員、パートタイム、アルバイト
派遣社員やパートタイム、アルバイトなどの雇用形態となる労働者がいます。従業員名簿を作成する必要はあるのでしょうか。
労働基準法第9条の「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」に該当すれば、名簿に記載する義務が発生します。
派遣先の企業で仕事をする派遣社員については、名簿を作成する必要はありません。派遣社員の賃金は一般的に派遣元が支払います。よって派遣社員は「派遣会社に所属する労働者」という見方になるのです。派遣社員に関する法定三帳簿の調製は、派遣会社が行うことになります。
短時間しか労働を行わないパートタイムやアルバイトの従業員は、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」に該当しますので、名簿の作成義務が発生します。
日雇い労働者
日雇い労働者とは、会社と日々、雇用契約を結び、その都度雇用される労働者のこと。このような労働契約の場合、従業員名簿への記載義務は発生しません。
❸個人情報の取り扱い(プライバシー保護)
労働基準法上、従業員名簿には従業員の個人情報である、
- 氏名
- 生年月日
- 住所
などの記載が義務付けられています。また必須項目だけではなく、労働者の電話番号なども一括して記載しているケースも多いのではないでしょうか。
名簿には個人のプライバシーにかかわる情報が多く含まれるため、個人情報保護法の適用対象となりますし、労働者から個人情報を得る際、各個人の同意を得る必要も生じます。
収集した情報の使用範囲を明確にしたりあらかじめ限定したりするなど個人情報の無用な拡散を防ぐ手段を講じましょう。
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5.従業員名簿の保存方法や保管期間
従業員名簿の保存期間とは、労働基準法第109条により労働者の退職・死亡・解雇の日から3年間と定められている法的義務です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保管義務の根拠 | 労働基準法第109条 |
| 保管期間 | 退職・死亡の日から5年間(当面は3年間の経過措置あり) |
| 保管形式 | 紙・電子データどちらでも可 |
| 違反時の罰則 | 30万円以下の罰金(労働基準法第120条) |
| 更新タイミング | 記載事項に変更があった場合は遅滞なく訂正する |
従業員名簿は、どのような状態で保存し、どのぐらいの期間、企業は保管しておく必要があるのでしょう。法律によって定められている従業員名簿の保存方法や保管期間について説明します。
起算日から3年間保存
労働基準法第109条によって「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」と定められています。
起算日の定義によって、3年間の範囲も異なりますので、下記に注意してください。
起算日とは?
従業員名簿の保管期間は、労働者の死亡・退職・解雇の日から3年間とされています。入社日ではなく、労働者の退職や解雇、死亡の日が起算日となり、その後3年間保存するのです。
更新頻度
従業員名簿の更新については、労働基準法第107条2項にて「遅滞なく訂正しなければならない」と定められています。異動や配置転換があった際は、履歴を忘れずに記載しましょう。
- 引っ越し
- 結婚して名字が変わった(改姓)
といった際、住所や氏名も変わります。その都度、名簿を更新しましょう。
電子データ(パソコン)で保存も可能
最近では、従業員名簿をパソコンで作成し、電子データとして保存している企業も少なくありません。電子上で保管する際、紙で出力して保存する必要があるか否か、労働基準法上では明らかにされていません。
しかし行政解釈では、名簿がPDF、Word、Excelなどの電子データで保管されているケースでは、データをすぐに表示・印刷できる状態をつくっておくことで「労働基準法の要件を満たすもの」として取り扱うとしています。
労働基準監督官から従業員名簿の閲覧、提出などを求められた際、必要事項が表記された名簿をすぐにプリントアウトできるようにしておきましょう。
クラウド人材管理ツールで効率化
従業員名簿を紙のファイルで管理すると、非常に手間がかかります。たとえ小規模企業であっても、労働者の数が50名、100名、300名と増えていけば、情報の作成・更新に時間がかかります。また、重大な個人情報である名簿を安全に管理することも難しくなるでしょう。
そこで検討をおすすめしたいのがクラウドシステム。あらゆる人材情報を一元化して組織を可視化するクラウド人材管理ツール「カオナビ」では、紙やExcelでの煩雑な作業をクラウド化できます。また、人材データベースを自由にカスタマイズできるので、従業員名簿のように分散しがちな人材情報を、簡単に一元管理可能です。
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●履歴や業務内容などの修正もすぐにできる
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6.従業員名簿の作成から保管までの手順
以下では、「従業員名簿」を実務で進める際の具体的なステップを紹介します。各段階のポイントを押さえることで、スムーズな実行につなげましょう。
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【事例】清水建設株式会社
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【事例】横須賀市役所
約3,000名の職員を擁する横須賀市役所では、「データなくして戦略的人事なし」を掲げ、カオナビで異動希望・スキル・評価履歴・研修受講歴を一元管理しています。職員一人ひとりの情報をデータベース化することで、適材適所配置と若手のキャリア形成支援を推進しました。こうした網羅的な人材データの整備は、従業員名簿として求められる情報の正確性と即時性を担保する仕組みとしても効果を発揮しています。
よくある質問
従業員名簿はExcelで作成・保管しても問題ありませんか?
問題ありません。行政解釈では、PDF・Word・Excelなどの電子データで保管し、必要な際にすぐに表示・印刷できる状態にしておけば「労働基準法の要件を満たす」とされています。労働基準監督官から提出を求められた際にプリントアウトできるよう準備しておきましょう。
従業員名簿に記載する「履歴」とは何を書けばよいですか?
法的な決まりはありませんが、一般的には社内での配置転換や異動、昇進・降格などの履歴を記載します。社外での経歴(前職情報など)は必須ではありませんが、記載している企業もあります。自社の運用方針に合わせて統一しましょう。
従業員名簿の保存義務に違反した場合、罰則はありますか?
労働基準法第120条により、従業員名簿の作成義務や保存義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。退職・死亡の日から3年間は確実に保存し、誤って廃棄しないよう管理体制を整えましょう。


