従業員満足度における「指標」とは? 調査の基準と方法、施策の事例について

従業員満足度における「指標」とは、自社の待遇や職務内容、職場環境などに対する従業員の満足度を示した基準のことです。

1.従業員満足度における「指標」とは?

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)の指標とは、福利厚生やマネジメント、働きがいや職場環境などに対して従業員がどう満足しているかを評価した基準のこと

自社の経営状態や財務状況を多角的に分析する経営指標のなかでも、特に重要な指標といわれています。今後の労働人口減少、採用難の拡大が予想されるなかで、従業員の視点に立った「魅力ある職場づくり」についての取り組みが重要視されているのです。

「魅力のある職場」は、従業員の働く意欲だけでなく業績や生産性向上、人材確保にもつながることが明らかになっています

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2.従業員満足度の具体的な指標

厚生労働省の調査では、従業員・顧客満足度の両方を重視する企業は、顧客満足度のみを重視する企業に比べて売上高営業利益率、売上高ともに増加傾向にあるそうです。

ここでは三菱UFJリサーチ&コンサルティングが分類した調査項目の体系8つから、内容について見ていきましょう。

  1. 仕事満足度
  2. 職場満足度
  3. 上司満足度
  4. 会社風土満足度
  5. 処遇満足度
  6. 福利厚生満足度
  7. 経営満足度
  8. 総合満足度

①仕事満足度

仕事満足度は、大きく次の3つに分類されます。

  • 仕事内容満足度:自分の役職や等級から見て妥当な仕事内容および適度な仕事量をはかる指標。仕事の質や量についての満足度を問う
  • 人材育成満足度:仕事を通じて身につけられる知識や能力、この3年での成長感をはかる指標
  • 仕事継続満足度:勤続意向や会社への愛着、自身の仕事上の将来イメージをはかる指標

②職場満足度

その名のとおり、職場環境に対する従業員の満足度をはかる指標です。工場を例に見てみましょう。多くの機械が稼働する工場で空調設備が整っていなければ、どうなるでしょうか。

暑さに耐えながら働く従業員は体調を崩し、ミスや病欠が増えます。そのうえ機械が故障する恐れもあるでしょう。この環境は決して満足度の高い環境といえません。

③上司満足度

上司のマネジメントスキルは、従業員満足度に大きな影響を及ぼします。上司との関係や尊敬・信頼関係の有無、熱意ある指導や援助についてはかる指標を、「上司満足度」といいます。

「上司から認められているという実感がある」「部下の思いを汲んだコミュニケーションがなされていると感じる」などマネジメントへの納得感が、従業員満足度に結び付くのです。

④会社風土満足度

会社の風土もまた、従業員満足度の高低に影響を与える要因です。下記3つから構成される満足度を「会社風土満足度」といいます。

  • 会社風土満足度:市場変化への迅速な対応、挑戦する雰囲気が感じられる
  • 会社インフラ満足度:情報インフラの充実やリスク管理の徹底など、従業員が安心して仕事に打ち込める環境が整っている
  • 会社風紀満足度:規律やマナーの遵守、セクシャルハラスメントやモラルハラスメントの撲滅

⑤処遇満足度

組織人事のコンサルティングなどを提供しているタワーズワトソン社の調査によれば、評価や給与は、その企業の価値を決める重要なファクターとなっているそうです。

仕事内容や労働時間に対する処遇が適切なものならば、モチベーションや従業員満足度の向上につながります。そんな処遇満足度は次の4項目から構成されているのです。

  • 人事評価満足度
  • 個人目標満足度
  • 労働時間満足度
  • 給与等満足度

単なる給与の高低だけでなく、能力に応じた評価制度の拡充も従業員満足度に影響するのです。

⑥福利厚生満足度

福利厚生満足度は次の3つの項目から構成されています。

  • 勤務形態の自由度
  • 退職金や年金の制度
  • 慶弔についての配慮

働き方改革の取り組み方が進むなか、その企業でライフワークバランスに合った働き方ができるかどうかも注目されているのです。

大手転職サービス・マイナビが2019年度卒の大学生を対象に実施した調査では、企業選びで最も注目するポイントに福利厚生が挙げられています。福利厚生の拡充は、従業員満足度に大きな影響を与えるのです。

⑦経営満足度

会社のビジョンや経営方針に共感できれば、従業員は企業に期待感を抱き、組織の一員であることに誇りを持てます。

しかし2014年、組織人事コンサルティングを提供しているエーオンヒューイットが行った調査によれば、約7割もの人が会社にエンゲージ(共感や愛着をもって仕事に取り組んでいる状態)していなかったそうです。

従業員が企業理念に対する共感や、経営層への信頼、安心感などを抱けているか、今一度見直してみましょう。

⑧総合満足度

上記7つを含めた総合的な満足度の指標です。「満足できない部分はあるものの、総合的には満足している」といった従業員も少なからず存在します。細かい項目に不安があっても、総合的にどの程度満足しているかを示すのが「総合満足度」です。

いわゆる中間層にクローズアップすると、それまで隠れていた意識も探れるでしょう。

従業員満足度の指標は多岐にわたります。業界最大手だから従業員満足度が高い、従業員数が少ないから従業員満足度が低い、と一言にはいえません

3.従業員満足度はなぜ重要なのか?

古くは1920年代から、従業員満足度は提唱されていました。近年、働き方改革や長時間労働の改善、労働人口の減少などの影響を受け、ますます注目を集めるようになったのです。従業員満足度が向上すると、3つの問題を解決する糸口になります。

  1. 離職率の増加を防ぐ
  2. 限られたリソースで生産性を向上させる必要がある
  3. 顧客満足度(CS)をあげ、企業を存続させる

①離職率の増加を防ぐ

超高齢社会を迎えた日本では、2025年に、15歳から64歳までの生産年齢人口が全人口の60%を下回ると確実視されています。

一昔前にいわれた「代わりならいくらでもいる」の文句は通用しません。限られた人材からいかに従業員を確保するか、いかに長く自社で働いてもらうかは日本企業全体の課題なのです。

②限られたリソースで生産性を向上させる必要がある

厚生労働省は、従業員満足度向上のための取り組み期間が長い企業ほど、売上高・営業利益率・売上高が増加傾向にあると発表しています。

積極的に仕事に取り組む従業員が増えれば、組織内のコミュニケーションも活性化するでしょう。従業員満足度を重視すると従業員一人ひとりのパフォーマンスが高まり、結果として企業としての生産性も高められるのです。

③顧客満足度(CS)を高めて、企業を存続させる

顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)とは、商品やサービスに対して顧客がどの程度満足しているかを示した指標のこと。

従業員満足度の高い従業員は、自社の商品やサービスに誇りを持って、顧客一人ひとりにきめ細かに対応できます。「やらされている感」がないからこそ顧客の心を揺さぶり、リピート率や客単価の向上を目指せるのです。

従業員満足度の高い職場は、求職者にとっても当然魅力的な企業です。従業員満足度の向上は離職率の低下だけでなく、優秀な人材の確保にも役立ちます

4.従業員満足度の指標と、関連する施策事例

従業員満足度を調査しても、それだけで組織の生産性向上や離職率低下が狙えるわけではありません。当然ながら、顕在化した課題に対するアクションが必要です。ここでは従業員満足度の調査結果をもとに、人事担当者が行うべき施策を紹介します。

社内コミュニケーションの活性化

職場満足度に課題が見つかった場合は、コミュニケーションの充実化を図る必要があります。2017年に内閣府が行った調査によれば、職場での人間関係が離職理由の上位にあるそうです。

同じ部署やチームだけでなく、従業員同士の縦と横のつながりを強化させましょう。これにはメンター制度や部活動なども効果的です。

職場環境の改善

調査の結果、職場満足度や会社風土満足度に課題があった場合は職場環境を見直してみましょう。

  • 従業員が安心して仕事に打ち込める環境が職場に整っているか
  • 業務上必要な環境設備が職場に整っているか
  • 残業は精神的・肉体的に無理のない範囲に収まっているか
  • 発言しやすく風通しのいい風土が職場にあるか
  • パワハラやセクハラといったコンプライアンス上の問題はないか

評価制度の見直し

先に述べたとおり、能力に応じた評価がされていることも従業員満足度の高低に影響します。業務に見合った処遇がされていない、不明瞭な評価が行われているなど問題を発見した際は、評価制度を見直してみましょう。

なお見直す際は公平性や納得感、透明性を意識します。従業員の適性に応じた配置転換なども視野に入れて、従業員満足度の結果を人事制度に活用しましょう。

福利厚生の充実

福利厚生満足度に課題が見つかった場合は、従業員のニーズに合った働き方が実現できる制度の導入を検討します。

2015年、人材派遣業のマンパワーグループが実施したアンケート調査によると、福利厚生としてよいと思うものの上位に「住宅手当や家賃補助」「食堂や昼食補助」「人間ドックなどの法定外健康診断」が挙げられていました。

また近年、副業の許可や宣言に応じて体重を買い取る「グラム売りダイエット」、環境を変えて自分を成長させる「育自分休暇制度」などユニークな福利厚生を実施し、他社との差別化をはかる企業も増えてきているのです。

研修の実施

従業員の成長支援も、従業員満足度の向上に効果的です。

「成長支援が十分でない」「上司のマネジメントに課題がある」など、仕事満足度や上司満足度、経営満足度に付随する課題が明らかになった場合は、個人の成長を支援する取り組みなど実施してみましょう。

研修を通じて経営理念や経営者の声を伝えられるため、ビジョンの共感醸成や現状課題の把握なども期待できます。

業務負荷の軽減

従業員ひとりあたりの業務負荷は適切でしょうか。もしひとり当たりの業務負荷が重く、ストレスが高い場合、従業員のメンタルヘルスに危険を及ぼす恐れがあります。

作業を標準化し誰でも行えるように「システム化」したり、従業員が本来の業務に集中できるようアウトソーシングの活用を検討したりして、業務負荷の軽減をはかりましょう。

負荷軽減には、「専門家のコンサルティングを受ける」「リモートワークの活用」なども有効です。

改善策を見える形で実行し、成果を共有すると従業員満足度の向上、また経営層と従業員層の信頼関係構築につながります

5.従業員満足度調査を行う際の注意点

従業員満足度を調査するにはどのような方法があるのでしょうか。従業員満足度の調査方法は、「アンケート調査」「インタビュー調査」の2つです。しかし時間とコストがかかるうえ匿名性に欠けるため、一般的には「アンケート調査」が用いられています。

  1. 事前に調査の実施を告知する
  2. 目的の明確化
  3. 従業員満足度調査の指標を意識した内容にする
  4. 匿名性への配慮
  5. 表現や記述の工夫

①事前に調査の実施を告知する

アンケート調査を行う際は、事前に調査の実施を告知します。その目的は、アンケートの回答率を高めることです。

回答率が低い場合、調査結果と現実の間に誤差が生じる恐れもあります。回答する従業員に対して調査の背景や目的を説明し、動機付けを高めましょう。

調査の実施を告知する際に、実施期間や回答にかかる時間の目安、回収後の使用目的などを明記しておくのも効果的です。

②目的の明確化

従業員満足度を調査する目的は何でしょう。やりがい(モチベーション)の可視化でしょうか、人事施策のPDCAでしょうか。アンケートを作成する前に必ず、「何のために従業員満足度を調査するのか」その目的を明確にしておきましょう。

目的を見失うとその後の施策に役立てられないどころか、質問項目に矛盾が生じたり、分析時に混乱を招いたりする恐れもあります。調査自体が目的とならないよう注意が必要です。

③従業員満足度調査の指標を意識した内容にする

調査の目的が明確になったらアンケートを作成していきます。質問項目を作成する際は、先に挙げた「従業員満足度の具体的な指標」の8項目を網羅する内容にしましょう。

そして質問項目と合わせて回答形式(二択式にするか、自由回答式にするか、など)や調査方法なども検討していくのです。調査方法は、作成した調査用紙を直接手渡し・回収する方法と、Web上で実施する方法があります。

それぞれに向き不向きはありますが、集計分析にかかるコストを下げる、記入ミスや回答漏れを防ぐといった意味ではオンライン調査が便利です。

④匿名性への配慮

従業員満足度調査のアンケートを作成する際は、回答者の匿名性に十分配慮しましょう。自社に対して不満を感じていたり、何かしら意見を持っていたりする場合、個人が特定された形式ではなかなか本音を伝えにくいもの。

匿名性に配慮すると、直接言いにくい不満や現場の実態などが明らかになりやすいのです。回答への心理的ハードルを下げ、従業員の本音を聞き出せるよう工夫しましょう。

⑤表現や記述の工夫

回答者の心理的ハードルを下げるという意味では、気難しい表現やもったいぶった言い回しを避けることも効果的です。設問文は人によって違う解釈にならないよう、文法に気を付けてつくります。

一般的に、指定されたスペースに回答者が自由に記述する自由記述式より、回数や使用頻度などの数値を入力する数値記述形式の方が心理的な抵抗を弱め、回答しやすいといわれています。

調査後は分析結果をまとめた資料や顕現化した課題、今後の施策内容などを周知します。これには調査して終わりではない点 を従業員に印象付ける目的も含まれているのです