IPOとは? IPOの意味からメリット・デメリット、IPOで行う資本政策などについて

IPOとは、企業が株を売り出し、誰でも株取引ができるようにすること。日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」、もしくは単純に「上場」を指す場合があります。

1.IPOとは?

IPOとは、企業が資金調達や知名度の向上などを目的として新規に株式を上場し、不特定多数の投資家に発行株式を公開することで、Initial(最初の)Public(公開の)Offering(売り物)の略です。

IPOの目的

IPOの目的は、それまで非公開だった株を公開し、金融市場から広く資金を調達すること。未上場企業が証券取引所に上場すると、より多くの投資家たちの目に留まります。その結果、会社の知名度が向上し、優秀な人材の確保につながるのです。

IPO後には、社内体制を整備し、定期的な会社情報の開示やIR戦略を議論する必要があります。IPOの実施によって企業行動やパフォーマンスが大きく変わる可能性も高いのです。

日本のIPOと海外の比較

海外の主要株式市場では、世界的に有力な企業や有望な企業の新規公開が相次いでいます。日本のIPOはアメリカに比べて数は少ないものの、リーマンショック後を除く1990年代以降から活発に行われているのです。

有力企業の新規上場は、今後も相次ぐと考えられています。金融緩和による金余りの状態が続くなか、新規公開株式は投資家の注目を集めているのです。

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2.IPOのメリット

株を売り出して上場し、誰でも取引できる状態にするIPO。新規上場企業の株を入手する投資をIPO投資といいますが、このIPO投資には4つのメリットがあるのです。ここではIPO投資のメリットについて、ひとつずつ見ていきましょう。

専門的な知識がなくても問題はない

IPOは、株式投資が未経験の初心者でも簡単に参加できる投資として知られています。その理由は、以下のとおりです。

  • 損失リスクが比較的少ない
  • 初値が公募価格を上回る企業が多い=利益を得やすい
  • 証券会社によっては口座入金が0の状態でも抽選に参加できる

「投資は難しそう」「知識がなければ挑戦しづらい」と思われがちですが、IPOは専門的な知識がなくても仕組みが分かりやすく、資金状況に合わせて投資を始められます。

大きな利益を出すことが望める

企業にとってのIPOの目的は「資金調達力の向上」です。前述のとおり、IPOは専門的な知識がなくても投資しやすいため、企業はより広くの投資家から出資を募れます。

また近年ではAIやビッグデータ、SNS、代替エネルギー関連企業など将来性の高い企業の上々も増加。多くのIPO株は公募価格より初値(上場してはじめて付く価格)のほうが高くなるため、IPOは投資家にとっても大きな利益を得やすいのです。

少ない資金でも投資できる

銘柄(証券取引所に上場する新規株式の総称)によっては、通常の株式と比べて一株あたりの価格が低く設定されているIPO株もあります。つまり投資家は、少ない資金でもIPO投資ができるのです。

また証券会社によっては、口座の入金が0でも公募株の割り当てを決める抽選に参加できます。比較的気軽に参加できる点はIPOのメリットでしょう。

損失が比較的少ない

損失を出すリスクが低い点もIPOのメリットです。IPO株は株式投資の一種ですので、公募価格よりも初値が下回る「公募割れ」や、上場後の荒い値動きによる損失リスクなどが生じる危険もあります。

投資の損失を少なく抑えるには、企業の事業内容や将来性を見ながらリスクの高い企業を避ける、買い注文が集まらず公募割れになりそうなIPOを避けるなどの対策を講じるとよいでしょう。

IPOはローリスク、ミドルリターンな投資として注目を集めています。株投資が未経験な人でも参加しやすい投資です

3.IPOのデメリット

初心者でも失敗しにくく利益が出やすいと評判のIPOですが、株式投資の一種である以上デメリットも存在します。

思わぬ損害を出してしまった、経営者として責任を負いきれなくなってしまった。そんな事態を招かないよう、IPOのデメリットやリスクについて確認しておきましょう。

すべてにコストがかかってしまう

上場審査をパスして公開企業になるためには、制度構築や人員確保、ドキュメントの作成などさまざまな内部管理体制を構築する必要があります。

決算公告や有価証券報告書の法定開示、投資家へのIR活動やコーポレートガバナンス・コード(企業統治のガイドライン)の公開など、なかには人やモノ、金にかかるコストが年単位で発生する場合もあるのです。

長期での株価パフォーマンスが悪い

IPOは、長期での株価パフォーマンスが悪い傾向にあります。上場後、年数を重ねるにつれて初値を下回り、株価が下落する企業も少なくありません。

IPO後の経営者は、株価を上げ続ける使命を背負います。業績向上や企業価値向上へのプレッシャーが生まれるため、自社の戦略をどうアピールしていくか、どのように実現していくかの企業力が問われるのです。

IR活動の責任

継続的に資金調達を行うためには、投資家向けのIR活動も必要です。経営状態や財務状況が分からない、業績や今後の見通しが明らかでない、そんな企業に投資し続けたいと思う投資家は果たして存在するでしょうか。

経営者はIR活動を通して、企業のさまざまな情報を開示しなければなりません。IR活動に対応するための人員や組織の整備にかかる負担が小さくない点も、IPOのデメリットです。

IRとは?

IR(Investor Relations)とは、企業が投資家に向けて行う広報活動のこと。つまり企業は経営状況や財務状態、業績や今後の見通しなどを投資家に向けて明確に伝える必要があるのです。

たとえばホームページでの情報開示やディスクロージャー資料の送付、決算説明会や各種説明会など。積極的なIR活動は、投資家に信頼を与えられます。投資の指標として大きな意味を持つIR活動の目的は、企業に対する投資家の理解を深めることです。

株をすべて売却できない

企業はすべての株を同時に売却できません。確かに事業が成長し続け、市場に評価され続ければ利益は上がるでしょう。しかしよくも悪くも、上場企業は株主を選べないため、経営上の支配権が維持できず、経営の自由度がダウンする危険性もあります。

こういった事態を避けるため、MBO(Management Buyoutの略。経営陣による買収)を選ぶ企業も存在するのです。

上場の維持には膨大なコストが発生します。IPOのメリットとデメリットをよく理解して、自社の成長につなげましょう

4.IPOで行うべき資本政策

IPOを成功させるためには、株式上場の準備として資本政策を講じる必要があります。目的は、上場後の株式の流動性を考えながら、適正な資本規模や発行済株式数を導き出すこと。「資金調達」と「株式構成」のバランスを取って、資本政策を立案しましょう。

資本政策とは

資本政策とは、株式公開に向け、資金調達や株主構成の適正化を図るために新株を発行したり、株式を移動したりする計画のこと。重要なのは、必要な資金をどのような構成のもとに、いつ、どのような方法で調達するかです。

資本政策の取り組み方

資本政策に取り組む際は、企業の中長期利益計画を念頭に置きながら、資金調達と株主構成のバランスを取ります。その際注意したいポイントは以下の2つです。

  1. 具体的な上場時期や市場を定め、それに合わせて審査の形式基準を充足させる
  2. 事業計画にもとづいて募集株式の割り当てや、株式移動の方法、時期を検討する

これらを慎重に検討し、一株あたりの価値が下がる「株式の希薄化(ダイリューション)」を防ぎましょう。

事前に検討した上で資本政策を立案する

株主の既得権などにより、実行してしまった資本政策の修正は困難です。当然ですが、一度発行した株式をなかったことにはできないため、資本政策では十分な検討が必要です。

株式上場準備の早い段階で資本規模や株主構成、従業員持株会制度の導入などについて綿密に検討しておきましょう。また上場時に適正な評価を受けるため、投資家を意識した資本戦略も考えます。

事前に検討すべき内容は?

株式上場の準備として資本政策を検討する際は、さまざまな内容の検討が必要です。

  • 上場後の計画
  • 資本規模:上場に至るまでの資金計画や利益計画など
  • 株主構成:安定株主は誰か、どの程度の株式を保有してもらうかなど
  • 法律的に留意すべき事項:所得税法や会社法、事業承継対策など
  • 役員や従業員へのインセンティブプラン:従業員持株会制度やストックオプション制度導入の要否など

資本政策を検討する際は、事業報告や利益計画書、特別利害関係者リストなどを参考にして無理のない計画を立てましょう。

資本政策は会社の株主構成や発行済株式数などを決定する重要な計画です。資本政策実施の失敗例には、無作為な割当による経営権の低下や、発行株数の肥大による株価の低下などがあります

5.IPOのための資本政策について手法から見る

IPOのための資本政策について、もう少し掘り下げてみましょう。資本政策にはさまざまな手法があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。適切な時期や目的に合わせて選択しましょう。

〈手法1〉株式移動

株式移動とは、既存の株主が特定の者へ発行済株式を移動する方法で、これにより株主構成を見直せます。方法には売買と贈与があり、資金面や税金面などの観点からどちらを採用するか、もしくは売買と贈与を併用するかを判断して用いるのです。

資本政策上の目的は、株主構成の是正や特定の者との関係を強化することです。なお会社の発行済株式数は変わりません。

〈手法2〉株主割当増資

株主割当増資とは、既存の株主が所有している持ち株の割合に応じて、新株を割り当てる資本政策の方法で、持株比率は変わりません。目的は、既存の株主構成を維持しながら、資金調達と各株主の保有株式数の増加を図ること。

また既存の株主のみに新株を割り当てるため、新たな株主が登場しないという特徴も持ちます。これにより、新規株主の出資による株式の希薄化が防げます。

〈手法3〉第三者割当増資

第三者割当増資とは、既存株主以外にも新株を発行して株式を割り当てることで、役員や従業員、金融機関や取引先など特定の第三者に新株を割り当てます。目的は、信頼できる相手に新株を割り当てて安定株主を確保し、株主構成の見直しを図ること。

既存株主の利益毀損を防ぐため、第三者割当増資には株主総会の特別決議が必要になります。

〈手法4〉新株予約権

新株予約権とは、発行した株式会社に使って、その会社の新株交付が受けられる権利のこと。従来の転換社債の転換権部分や、新株引受権(ワラント)などが含まれます。

資本政策上では持株比率を上げるための方法として用いられる場合もありますが、一般的には、自社従業員や取締役のインセンティブとして付与されている「ストックオプション」を指します。

〈手法5〉新株予約権付社債

新株予約権付社債とは、株式を一定の条件で取得する「新株予約権」を付与された社債のことで、転換社債、もしくはCB(Convertible Bond)と呼ばれます。

取得者は新株予約権の行使まで投資利回りを確保でき、株価が行使価額より上昇すれば、キャピタルゲイン(株式や債券などを売却して得られる売買差益)を得られる可能性もあるのです。

〈手法6〉株式分割

株式分割とは読んで字のごとく、既存の株式を細分化して株式数を増やすことで、既存株主に対し、資金負担なしで平等に行われます。そのため分割後も持株比率や純資産額が変動しません。

資本政策においては上場時の株価の割高感を修正し、発行済株式総数を調整するための手段として用いられます。投資家にとっては買いやすく売りやすくなり、流動性が高まるというメリットが生まれるのです。

〈手法7〉株式併合

株式併合とは、複数の株式を統合し、発行済株式数を減らすもの。株式分割と同じく、既存株主に対して資金負担なしで平等に行われます。分割後の持株比率や純資産額が変動しない点も株式分割と同様です。

資本政策上の目的は、株式の流動性や適正な株価水準を確保すること。また株式数を減らして管理コストを削減する、スクイーズアウト(少数株主を追い出す)を行うといったメリットも期待できます。

〈手法8〉 財産保全会社

財産保全会社は、オーナーの安定株主比率の維持や、事業承継の手段として用いられるもので、オーナー一族による株式の流出を防ぐ、相続税法上株式の財産評価を下げるといったメリットを持ちます。

また財産保全会社の設立には相続税対策もあります。非上場株式としての株式評価において、財産保全会社は資産の含み益(時価から帳簿価額を差し引いた金額)の38%が控除されるのです。

〈手法9〉 種類株式の活用

種類株式とは、株式の権利内容が異なるもので、活用によって以下のようなメリットが得られます。

  • 株式保有割合とは異なる方法で剰余金配当や残余財産の分配を実施する「合弁会社の設立」
  • 事業承継後の経営を円滑に実施するための「事業承継対策」
  • 経営権の行使に悪影響を与えない「資金調達」

東京証券取引所では、2008年7月から議決権種類株式の新規上場が認められるようになりました。

〈手法10〉ストックオプション制度

ストックオプション制度は、自社株の支給による成功報酬のひとつとして、また優秀な人材を確保するための手段として確立されました。ほかの手段と異なり、資金調達を目的としません。

業績向上への意欲をもたせるインセンティブとしての役割を持つため、外部から優れた経営者を誘致したい、経営参画意識を高めて業績向上につなげたいといった場合に用いられます。

資本政策の手法にはさまざまな方法があります。それぞれの特徴を理解し、適切な時期や目的にあわせて選択しましょう

6.従業員持株会によるIPOの落し穴

安定した株主の確保や、従業員のモチベーションを高めるために用いられる従業員持株会制度を導入している企業は少なくありません。しかし上場が計画通りにいかなかった場合、従業員持株会制度は意外な落とし穴になるのです。

ここでは従業員持株会制度の失敗例を紹介しましょう。

従業員持株会とは?

従業員持株会制度とは、従業員が自社の株を購入、保有できる制度で、従業員の給与や賞与から一定額を天引きして自社株を購入します。また従業員持株会制度を運営する機関を従業員持株会といいます。

従業員持株会の退会者続出

従業員持株会の落とし穴は、業績悪化などで株式が下落したり、配当が維持できなくなったりした場合に生まれます。IPOが計画どおりにいかず、従業員持株会が放置されれば当然入会者は増えず、退会者がその数を上回るでしょう。

万が一退会を免れたとしても、放置された状況を見ていた会員が株価上昇の際、払った金額以上を受け取って退会する可能性もあります。結果、残った会員が大損を被ってしまうのです。

M&Aに切り替えてしまう

IPOが計画通りに進まず、企業がIPOではなくM&A(合併や買収)に方向転換する場合があります。

買収企業が被買収企業の支配権を獲得して傘下に収まるM&Aでは、株主の安定を図るという観点から、それなりの持株比率を従業員持株会に持たせる場合があるのです。

これにより、M&Aで得られる多額のキャピタルゲインが意図しない比率で渡される危険性が高いといえます。

従業員持株会の導入に失敗すると、従業員のモチベーションが著しく下がってしまいます。失敗例に気を付けて進めましょう