インポスター症候群とは? 特徴や原因、対処法をわかりやすく

インポスター症候群とは、正しい自己評価ができなくなる心理傾向です。今回はこのインポスター症候群について解説します。

1.インポスター症候群とは?

インポスター症候群とは、仕事で成功し、客観的な評価をしっかり得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう心理状態のことです。別名「詐欺師症候群」とも呼ばれています。

インポスター症候群の人は、自分を過小評価してしまいます。仕事で結果を残せたにもかかわらず、成功体験ができた理由を「運がよかった」「周りの協力のおかげ」と思ってしまうのです。

むしろ成功に対する正当な評価を、重荷に感じてしまう場合があります。インポスター症候群の人は「今回はたまたま成功しただけ」「失敗したら周りから批判されてしまう」という風に失敗を恐れて行動に移せなくなる傾向にあるのです。

インポスター症候群の背景

インポスター症候群が生まれた背景には、1978年に臨床心理学者であったポーリンとスザンヌによって提唱された概念があります。

「成功している」証拠があるにもかかわらず、本人はそれを認められないまま「自分が他の人をだましている」と思い込んでしまうという傾向です。

これを詐欺師や偽物という意味のある「インポスター」という単語を用い、インポスター体験やインポスター現象と呼ぶようになったのが始まりでした。

インポスター症候群は自分を過小評価する心理傾向のことです。性別関係なく陥ってしまう現象にもかかわらず、日本では比較的女性が陥りやすいようです

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2.インポスター症候群の特徴

インポスター症候群には軽度なものから深刻なものまであり、ひどいときには仕事に支障を来たす恐れも。セルフチェックも兼ねて、ここではインポスター症候群の特徴を押さえておきましょう。

チャレンジしない

インポスター症候群は、チャレンジを避ける傾向にあります。失敗を恐れているので、新しいことにチャレンジしようとしません。

仮に上司から「あなたの実力ならできる」と背中を押されたとしても、「自分の今までの評価は運が良かっただけだ」と考え、自分に自信を持てません。

また失敗でも、できるだけ自分のせいにしたくないという意識が働きます。ひどいときは事前準備を後回しにして、失敗を準備不足のせいにしてしまうのです。

必要以上に自分を卑下する

インポスター症候群は、必要以上に自分を卑下する傾向にあります。仕事で何か成功を収めたとしても「自分なんて何もしていない」「今回は運が良かっただけ」と頑なに自分の能力を認めようとしません。

そして普段から「いかに自分ができないか」をアピールしてしまいます。深刻になると「自分には無理だ」と思い込んで失敗し、業務に支障を来たしてしまうのです。

成功に不安を感じる

インポスター症候群は、成功に不安を感じます。これは女性に現れる場合が多いとされており「成功恐怖症」などとも呼ばれるのです。

自分の成功によって周囲の扱いが変わり、「嫌われてしまうのではないか」と考えてしまいます。ひどくなると、自分の変化自体を嫌うようになってしまうのです。

インポスター症候群は女性に多い

海外の調査によるとインポスター症候群は性別に関係なく、働いている人間の7割が「感じたことがある」と答えています。一方日本では、男性よりも女性が陥りやすいといわれているのです。

女性に症状が現れやすい理由には、近年の女性の社会進出や、管理職への登用が積極的に行われていることが関連します。「自分が会社に都合よく使われているだけでは」と感じてしまう女性は、インポスター症候群に陥りやすくなるでしょう。

インポスター症候群は病気ではありません。しかし放っておくと本人が精神的に不安定となるため、業務に支障をきたす恐れもあるのです

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3.インポスター症候群になってしまう原因

なぜ人は、インポスター症候群に陥ってしまうのでしょうか。ここでは3つの原因について、見ていきます。

  1. 心理的なもの
  2. 家庭環境によるもの
  3. 責任を重荷に感じる

①心理的なもの

与えられた仕事に成功や失敗をした結果、周りからの評価が変わり、「周囲から嫌われてしまうのではないか」という恐怖感に駆られてしまいます。

すると「自分は今のままがいい。変わってしまってはいけないんだ」と考え、インポスター症候群に陥ってしまうのです。

②家庭環境によるもの

育ってきた家庭環境が、インポスター症候群に陥ってしまう原因になる場合も。

たとえば自分が育ってきた環境にて「あなたは完璧だ」といわれながら育ってきた人がいたとします。するとうまくいかないことに直面したとき、自分の能力について疑いを持つでしょう。これがインポスター症候群の原因になってしまうのです。

③責任が重荷だと感じる

仕事に対する責任を重荷に感じて、インポスター症候群に陥ってしまう場合も。よく「ほめられて伸びる」というものの、それを苦痛に感じてしまう人もいるのです。

もちろん「ほめられること自体が嫌」ではありません。「ほめられた」という行為の裏に隠された期待を重責と感じ、成長をストップさせてしまうのです。

それまで育ってきたバックボーンや人間関係など、インポスター症候群に陥ってしまう原因は多岐にわたります

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4.インポスター症候群の対処法

インポスター症候群に陥ってしまう人は「仕事に完璧を求めてしまう人」「周りの空気を読むのが得意な人」に多いようです。ここでは、このような人たちがインポスター症候群にならないための方法を説明します。

  1. 過去を振り返る
  2. 自分をほめる
  3. 完璧主義をやめる
  4. SNSを避ける
  5. 人の助けを借りる

①過去を振り返る

インポスター症候群になってしまう人には、「成長過程で自分の能力を否定されるような経験や言動を受けた」という人が一定数います。

そのような人は当時を思い出し、そのときの自分の行動や言動を振り返ってみましょう。「自分が本当に間違っていたのか」を考え直して過去と決別できれば、インポスター症候群を防げます。

②自分をほめる

自分で自分をほめるのも、対策になります。これは「自分はほめられるようなことをやった」という自己肯定感を高めるための行為です。いざ他者からほめられた際も、その言葉を素直に受け止められるようになります。

文字に書き起こして残しておいたり、賞状などがある場合はそれを飾ったりするとよいでしょう。

③完璧主義をやめる

完璧主義をやめてみましょう。インポスター症候群になってしまう人は、仕事に100%を求めてしまいがちです。そのため今の自分と理想の自分にどうしてもギャップが生まれてしまいます。

100%の完璧な自分ではなく、80%くらいを目指してみましょう。それによって、理想の自分に苦しめられることは少なくなるはずです。

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④SNSを避ける

「SNSを見ないようにする」「SNSと少し距離を置く」のも、対策のひとつです。近年、SNSの発展によって世界中の他者と自分を比較できるようになりました。

多くの成功者と自分を比較してしまうと、自分の無力さを感じ、自己肯定感が下がります。SNSは情報を得るツールとしては非常に便利ですが、のめり込みすぎないよう注意しましょう。

デジタルウェルビーイングも有効

SNSを避けるために有効なのが、デジタルウェルビーイング。Googleが2018年に提唱した言葉で、「スマートフォンなどのテクノロジーと健全に付き合って、情報を最大限有効に活用していく」という考え方です。

デジタルウェルビーイングでは、必要最低限のアプリを使い、使用時間や通知のタイミングを限定して、テクノロジーと適度な距離感を持って付き合うことを推奨しています。

⑤人の助けを借りる

他者の手を借りる方法でも、インポスター症候群を防げます。自分よりも優秀な人間の中に身を投じると、自分にかかる責任や重荷を軽減できるのです。

「分からない点は周りの人間が快く教えてくれる」という環境にいれば、自分に対する心的負担を大幅に軽減できるでしょう。

インポスター症候群を防ぐためには、「過去を振り返る」「自分をほめる」「完璧主義をやめる」「SNSを避ける」「人の助けを借りる」といった方法が有効です

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5.インポスター症候群の部下におすすめのコミュニケーション方法

インポスター症候群の部下に対して適切なコミュニケーションを取ると、症状の悪化を防いだり、改善したりできます。ここではインポスター症候群の部下に対するおすすめのコミュニケーション方法を解説します。

  1. 相手を肯定する
  2. 1対1で話す
  3. 能力相応の責任を与える

①相手を肯定する

最も重要なのが、部下を肯定しながら話をすること。インポスター症候群に陥っている人は、自分のことを卑下しがちで、話の中でも自分のことを貶めてしまいます。

それを頭から否定せず、「理解しようとしている」という姿勢を見せるのです。またポジティブフィードバックも有効でしょう。

ポジティブフィードバックを活用する

ポジティブフィードバックとは、部下が行ってきた仕事や言動のなかで良かった点を見つけ、前向きな言葉で伝えること。このとき結果だけを伝えるのではなく、その過程で良かった点を伝えましょう。

部下の意欲や能力の向上や今後の仕事に対する動機付け、そしてさらなる自発的な成長を促す効果が期待できます。

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②1対1で話す

1対1で話して部下の抱えている問題や不安を理解し、解決法を提示したり助言を与えたりするのも効果的です。1対1で話す際は、部下の話を傾聴し聞き役に徹しましょう。

ほかの人に聞かれる心配がない状況なら、部下も本心を打ち明けやすくなります。またインポスター症候群の部下には、提案を募るときや評価の結果を伝えるときなども1対1で接するとよいでしょう。

1on1ミーティングを活用する

1on1ミーティングとは上司と部下とが1対1で話し合うミーティングのことで、面談とは異なります。目的は、部下が抱えている不安や問題を上司が把握し、的確なアドバイスをして、部下の不安を解消すること。

週に1回や月に1回などの短いスパンで、定期的に実施している企業が多い傾向にあります。

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③能力相応の責任を与える

部下の能力に合わせた責任を与えるのも重要です。インポスター症候群では、自分への評価や賞賛を拒む場合があります。その理由は「いずれ失敗してしまう」という不安から来ているのです。

したがってその部下が確実にこなせる仕事を与えましょう。部下は自分の責任を全うできるため、心に余裕が生まれます。

上司は、インポスター症候群の部下に負担をかけないようなコミュニケーション方法や、仕事の割り当てを実行しましょう