働き方改革の実行計画【概要を簡単に】課題、ポイント

働き方改革実行計画とは、働き方改革を実現させるための計画です。ここでは、働き方改革実行計画について、解説します。

目次

1.働き方改革実行計画とは?

働き方改革実行計画とは、働き方改革実現会議の全10回に渡る議論を経て、2017年3月28日に決定した「働き方改革を実現させるための具体的な計画」のこと。ここでは、働き方改革実行計画について詳しく解説します。

働き方改革実行計画を具体的にするために設置された働き方改革実現会議

働き方改革実現会議とは、働き方改革実行計画を具体的にするため、平成28年9月に設置された会議です。会議は、「議長である総理大臣」「関係閣僚」「労働界や産業界のトップ」「有識者」で構成されています。

働き方改革実行計画が必要になった背景

働き方改革実行計画が必要になった背景にあるのは、「少子高齢化による労働人口の減少」「時間外労働について定めた36協定を始めとした、労働基準法を超える長時間労働の常態化」「OECDの平均を下回る低い労働生産性」などです。

働き方改革実現会議とは、働き方改革実行計画を具体的にするための諮問会議です。この会議で、働き方改革実行計画が立案されました

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2.働く人の視点に立った働き方改革の役割

働く人の視点に立った働き方改革の役割は、3つです。それぞれについて、解説します。

  1. 働き方改革実現会議における議論
  2. ロードマップにもとづく長期的かつ継続的取組
  3. フォローアップと施策の見直し

①働き方改革実現会議における議論

働き方改革実現会議における議論は、働く人の立場に立ったものが多くあります。たとえば、「同一労働同一賃金の実現に向けた、ガイドライン案の提示に関する議論」「長時間労働の是正に向けた上限規制等の設定に関する議論」などです。

全体では9つのテーマが設けられ、それぞれに具体的な方向性を示すための議論が行われました。

②ロードマップにもとづく長期的かつ継続的取組

ロードマップにもとづく長期的かつ継続的取組とは、働き方改革のモメンタムを絶やさない改革実現に向けた絶え間ない取り組みのこと。

「働き方改革の基本的な考え方と進め方の提示」「改革実現の道筋を確実なものにするための法整備や政策手段についての検討」「最重要課題をロードマップの中で明確にした重点推進」などです。

③フォローアップと施策の見直し

フォローアップと施策の見直しとは、働き方改革実行計画のロードマップの進行状況について、「継続的な実施状況の調査」「施策の見直し」を行うこと。

働き方改革実行計画の決定を受け、働き方改革実現会議は同一メンバーで構成されている働き方改革フォローアップ会合に改組されました。今後は、フォローアップ会合によってフォローアップが行われます。

労働者の立場に立った働き方改革は、働き方改革実行計画のロードマップを見直しながら、改革の実現に向けて進んでいます

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3.3つの労働課題

労働には3つの課題があります。働き方改革は、官民が一緒になってこれら課題を解決するための改革なのです。ここでは、労働に関する3つの課題について、解説します。

  1. 正規と非正規の不合理な処遇の差
  2. 長時間労働
  3. 単線型の日本のキャリアパス

①正規・非正規の不合理な処遇の差

両者の処遇格差を埋められれば、労働者は自分の能力が評価されている納得感を醸成できます。

これにより、「納得感が労働者のモチベーションを誘引するインセンティブに」「モチベーション向上により、労働生産性も向上」という好循環を生み出せるのです。

②長時間労働

長時間労働を是正できれば、「ワークライフバランスの改善」「女性や高齢者の就業機会の増加」「労働参加率の向上」が実現します。

その結果、慢性的な労働力不足に悩む企業は、労働者の能力を活かしながら安定した雇用を確保できるようになるのです。

③単線型の日本のキャリアパス

終身雇用制が残る日本では、単線型のキャリアパスにより労働の流動性が損なわれています。

そこで、「転職や再就職が不利にならない労働市場を創造する」「柔軟な採用活動を企業慣行として確立する」して、労働者一人ひとりのキャリア設計を実現していくのです。

働き方改革は、労働の3つの課題「正規と非正規の不合理な処遇の差」「長時間労働」「単線型の日本のキャリアパス」の改善に取り組んでいます

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4.働き方改革実行計画の概要

働き方改革実行計画とは、2017年3月28日に決定された働き方改革を実現させるための具体的な計画のことで、概要は、11のテーマに分類されます。ここでは、働き方改革実行計画の概要をテーマごとに解説しましょう。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引上げと労働生産性向上
  3. 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
  4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
  6. 病気の治療と仕事の両立
  7. 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
  8. 雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
  9. 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
  10. 高齢者の就業促進
  11. 外国人材の受入れ

①同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

非正規雇用の処遇改善とは、同じ企業内における正規社員と非正規社員の間にある待遇の差を改善するために、同一労働同一賃金などを実現すること。

雇用形態ではなく、労働者の能力によって賃金ほか処遇が決定される制度を整えるために、労働契約法・パートタイム労働法・労働者派遣法といった法改正が検討されています。

②賃金引上げと労働生産性向上

賃金引上げと労働生産性向上とは、賃金と生産性の向上を両輪として経済の好循環を確実にしていくこと。

目的は、「企業の収益を継続的かつ確実に賃金に反映させる」「近年、低下傾向が顕著な労働分配率を上昇させる」「総雇用者の所得を増加させていく」という循環を生み出して、労働者・企業ともに大きく成長していくことです。

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③罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正

従来、罰則がなかった時間外労働の上限規制違反に厳しい措置を講じて時間外労働を削減し、長時間労働の是正を目指しています。仕事と子育て・仕事と介護といった両立には、長時間労働の是正が不可欠です。

36協定を締結しても超えられない罰則付きの時間外労働の限度時間を、法律で具体的に定めています。

④柔軟な働き方がしやすい環境整備

柔軟な働き方がしやすい環境整備とは、労働者一人ひとりが多様な働き方を自ら柔軟に選択できる労働環境を整備すること。

「時間や空間の制約を受けないテレワークの普及」「多様な人材能力発揮の場の創造」「副業や兼業の推進」「オープンイノベーション」など、個々の労働者に合った働き方がさまざまな方法で模索されています。

⑤女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備

就労できない女性や若年層を育成し、活躍できる場の整備を目指しているのです。リカレント教育・再就職支援によって就労機会を失った女性が、新たな就労チャンスをつかむきっかけが生まれます。

就職氷河期世代や若者も自分らしく働ける職場環境の整備を進めて、個々のライフステージに合った就労を目指していくのです。

⑥病気の治療と仕事の両立

病気の治療と仕事の両立とは、病にかかっても仕事を辞めずに済む職場環境の整備のこと。治療と仕事を両立している人は、労働人口の3人に1人といわれています。

治療と仕事を両立するためには、「会社の意識改革」「受入れ体制の整備」「主治医と会社や産業医、両立支援コーディネーターといったトライアングル型のサポート体制を構築」などが重要となるのです。

⑦子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労

子育て、介護等と仕事の両立とは、男女問わず、「子育てと仕事」「介護と仕事」が両立できる環境を整備すること。障害者の就労とは、障害者雇用の機会を積極的に創造していくことです。

これらは、「雇用機会を増やす」「社内にポジションを創造する」「処遇を改善する」など、総合的な人材確保施策を講じることで実現できます。

⑧雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援

雇用吸収力とは、産業や企業がどれだけ労働者を雇用できるかという付加価値のこと。

雇用吸収力の高い産業に労働者を転職・再就職できるよう支援すると、労働者の選択肢が増えるだけでなく、雇用も守れます。単線型の日本のキャリアパスを変えるためにも、採用機会の拡大は必要です。

⑨誰にでもチャンスのある教育環境の整備

誰にでもチャンスのある教育環境の整備とは、子どもたちがそれぞれの家庭の経済事情を問わず、未来に希望をもち、夢に向かってがんばっていける社会を創造すること。子どもたちの進学を確実にサポートするには、財源確保が課題です。

⑩高齢者の就業促進

高齢者の就業促進とは、「65歳以降の継続雇用延長」「65歳までの定年延長」などにより、高齢者の雇用機会を創出すること。

こうした施策を実施する企業への支援を充実し、さらに継続雇用年齢等の将来的な引き上げを推進する環境が整備できれば、高齢者が個々の能力を活かして働く機会は増えるでしょう。

⑪外国人材の受入れ

外国人材の受入れとは、高度な技術や高度な知識がある外国人材を積極的に受け入れること。外国人材の受入れは、「イノベーションの創出」「生産性の向上」を実現する助けになります。

国民のコンセンサスを形成しながら外国人材を受け入れて、持続可能な社会・経済の構築を進めることが求められているのです。

働き方改革実行計画の概要には、11のテーマがあります。それぞれ難しい問題を抱えているため、計画にもとづいて着実に推し進めていかなければなりません

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5.企業が働き方改革を推進する際に注意したいポイント6つ

企業が働き方改革を推進する際に、気を付けておきたいポイントがあります。ここでは、働き方改革を推進する企業が注意すべきポイントを6つ解説します。これらのポイントを押さえておけば、改革を手堅く推し進められるでしょう。

  1. 「多様な働き手」を理解する
  2. 働く場所と時間の自由化
  3. 非正規雇用の活用
  4. 最適なコミュニケーションをはかるマネジメント
  5. 業務の可視化、業務量の削減
  6. 積極的なテクノロジー活用

①「多様な働き手」を理解する

多様な働き手とは、正規社員・非正規社員といった区別以外に、女性・若者・高齢者・外国人など、すべての働き手のこと。さまざまな人材を多様な働き手として理解し、存在や活用について柔軟に検討することは、働き方改革の実現のためにも不可欠です。

②働く場所と時間の自由化

多様な働き手を雇用する前に、個々の事情に合わせて柔軟に働ける環境や制度の整備をしなければなりません。

「テレワークの導入」「フレックスタイム制度の活用」「在宅勤務評価制度の構築」「各種休業制度の拡充」などを行い、企業として多様な働き手の受け皿を準備していきます。

③非正規雇用の活用

非正規雇用者も戦力と見なして、能力を活用することも必要です。これまでのように非正規雇用者を「人件費抑制のための雇用」と考える人事戦略は、少子高齢化社会による労働力不足が喫緊の課題である現在に合っていません。

④最適なコミュニケーションをはかるマネジメント

労働者とコミュニケーションを図りながら人材マネジメントを行うと、手間とコストがかかります。

そこで「人材マネジメントには負荷がかかる」と認識したうえで、HRテックなど最先端技術を活用し、個々の労働者の最適化をマネジメントしていく方向性に舵を切るのです。

⑤業務の可視化、業務量の削減

働き方改革では、時間外労働の削減などに取り組む際、「業務の可視化」「可視化した業務の精査」「精査した業務から不必要な業務を削減」といったプロセスが必要です。

また仕事で得られる満足度が高いほど成果も高まる傾向があります。業務の洗い出しは、欠かせません。

⑥積極的なテクノロジー活用

人事労務に関する分野は日進月歩。現在では、AI・ビッグデータなどを活用した人事マネジメントツールも数多く開発されているのです。

テクノロジーを活用すれば、業務のスリム化などを効率的に推し進められます。自社に最適なツールを選択・導入の検討もよいでしょう。

企業が働き方改革を推進する際に注意しておくべきポイントは、6つです。働き方改革の実現には、広い視点からの体制整備が不可欠といえます

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6.働き方改革の実態

現在、働き方改革が求められます。しかしその実態は、どのようになっているのでしょう。ここでは、働き方改革の実態についてのアンケートをもとに、3つの視点から働き方改革の実態について解説します。

働き方改革を「実施中」「すでに実施した」企業の割合

HR総研が2018年1月19日~1月25日に実施した「上場および非上場企業の人事担当者などを対象とした働き方改革実施状況に関する調査」によると、働き方改革を「推進中」または「すでに実施した」企業の割合は、「推進中」が63%、「すでに実施した」が10%でした。

従業員の満足も得られたと回答する企業の割合

従業員の満足も得られたと回答する企業の割合は、下記のとおりです。

  • 「効果が感じられる」と回答した企業は、49%と全体の約半分
  • 「従業員の満足も得られた」と回答したのは、全体の28%にとどまっている

「長時間労働の是正」「業務の見直し」以外の取り組みはこれから

「長時間労働の是正」「業務の見直し」以外の取り組みについては、

  • 「長時間労働の是正」が86%、
  • 「業務の見直し」が62%

となっており、それ以外の多様な取り組みを行っている企業は半数以下となっています。

働き方改革の実態を見ると、改革を推進している企業がある一方、満足度や多様な取り組みには課題があると分かります

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7.働き方改革の実行事例

働き方改革の実行事例として、下記2つをご紹介します。企業が働き方改革を実施する際、どのように取り組めばよいのかを知るための参考にしてください。

  1. 新入社員指導員制度の導入
  2. 利益を出しながら、生産性を高める働き方改革

①新入社員指導員制度の導入

新入社員指導員制度とは、OJTリーダーとは別の若手社員を指導員に指名し、新入社員を約半年間、マンツーマンで指導する制度のこと。ポイントは、新入社員と年齢の近い入社2~3年の若手社員を指導員に指名することです。

②利益を出しながら、生産性を高める働き方改革

利益を出しながら生産性を高める働き方改革の例として挙げられるのは、「18時以降の会議開催の原則禁止」「正規社員も週に20時間以上、週3日勤務が可能になる短日短時間勤務制度の導入」などです。これによって育児や介護といった、仕事とは別の生活時間を確保できます。

働き方改革の実行事例として挙げられるのは、「新入社員指導員制度の導入」「利益を出しながら、生産性を高める働き方改革」です