業務管理とは、業務状況を把握・管理し、社内業務を効率化するための手法です。業務管理によって業務内容やフローが見える化し、各所の業務進捗が把握できるようになるだけでなく、経営資源を適切にコントロールできます。結果として、生産性の向上や利益の最大化が図れるでしょう。
今回は、業務管理が必要な理由や行うメリット、具体的な仕事内容や業務管理を進める際のポイントなどを詳しく解説します。
目次
1.業務管理とは?
業務管理とは、社内業務を効率化するため、業務状況を適切に把握・管理する手法です。業務内容や進捗の把握と最適化が主な目的で、業務に必要な膨大な情報を一元管理・可視化し、業務の円滑な進行を支援します。
また、企業規模が大きくなるほど業務内容が複雑になり、管理すべき経営資源が増えます。業務管理では、ヒト・カネ・モノといった経営資源が適切にコントロールでき、企業の生産性向上と利益の最大化を図ることも可能です。
2.業務管理が必要な理由
業務管理が必要な理由は、企業の効率的な成長を促すためです。社内業務は営業やマーケティング、人事や経理など、さまざまな部署にわかれて行われているもの。部署としては独立しているものの、各業務を遂行するうえでは情報共有が必要な場面もあり、業務同士が関連性をもつこともあります。
組織が大きくなるほど、部署間を横断する業務が多くなり、業務内容は複雑化していくでしょう。それゆえ、誰が何の業務を行っているのか、各業務がどう関連しているのかが把握できないと、円滑に業務が回せなくなってしまうのです。
また、業務が可視化されていない状態では、業務の属人化やヒューマンエラーも発生しやすくなります。業務管理によって部署間を横断する業務を一元化・見える化すると、そうしたエラーを抑制し、円滑に社内業務が回せるようになります。
3.業務管理を行うメリット
業務管理によって業務を一元化・可視化することは、以下のようなメリットがあります。メリットを詳しくみていきましょう。
- 業務効率化につながる
- 生産性の向上を図れる
- 業務の属人化・ブラックボックス化を解消できる
①業務効率化につながる
組織やプロジェクトの規模が大きくなるほど、業務内容やフロー、担当者や進捗の把握が難しくなります。業務状況が把握できないと確認に時間を取られて無駄が生じたり、業務の全体像が把握できていないことで作業の抜け漏れが生じたりなど、さまざまなデメリットが生じるでしょう。
業務管理を行うと、業務が可視化されて進捗やメンバー間の業務内容が把握でき、スムーズに情報共有できるようになります。結果、コミュニケーションが活性化し、無駄や抜け漏れが防げるため、業務効率化につながります。
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②生産性の向上を図れる
業務管理によって業務効率化が実現すれば、限られた業務時間や納期の中でもこれまで以上に効率的に作業が進められるようになるなど、生産性の向上にもつながります。
少ない人員でも仕事が回せるようになり、手が空いた人がいればほかの業務に回すことも可能です。近年は人手不足が深刻化している状況にあります。そうした状況下で業務の質を落とさないためにも業務管理が重要です。
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③業務の属人化・ブラックボックス化を解消できる
社内業務の一元管理・可視化により、業務の属人化やブラックボックス化が解消できることも業務管理が持つメリットの一つ。
社内にはさまざまな部署があり、幅広い業務が行われています。業務管理によって社内業務が可視化されていれば、誰がどのような業務を行っているのか、把握できるでしょう。
業務が標準化され、かつ担当者に依存しないことからクオリティも平準化されます。さらに、内部統制の強化につながるほか、業務ごとの問題点も把握しやすく、業務改善にも取り組みやすくなります。
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4.業務管理の具体的な仕事内容
業務管理の具体的な管理対象は、下記のとおりです。対象ごとに、業務管理の具体的な仕事内容をご紹介します。
- タスク管理
- 案件管理
- 顧客管理
- 時間管理
- 従業員管理
- 経営管理
①タスク管理
従業員に割り当てられているタスクと進捗を管理すること。誰が何のタスクを抱えているのかを社内全体で可視化・共有します。適切なタスク管理は、進行遅れの早期発見や業務の標準化に有効です。テレワーク下でも業務状況が常に把握できるため、トラブルにも早期に対処できます。
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②案件管理
営業活動における案件状況を管理すること。問い合わせや商談状況、受注や取引の進捗状況などを可視化して、適切に管理します。
案件の進捗状況が可視化されていると、部署内や他部署間でスムーズに情報共有できるのです。受注・売上の見通しを立てるためにも必要なプロセスであり、次へのアクションに移りやすくなります。
③顧客管理
取引先や営業先の情報を管理すること。顧客の基本情報だけでなく、商談内容や進捗、訪問履歴や提供した資料なども管理します。顧客管理がしっかりと行えていると、問い合わせがあった際も管理された情報をもとに対応できるでしょう。
また、受注できた顧客とそうでない顧客の情報を分析すると、営業の質を高めたり、適切なフォローが行ったりすることも可能です。
④時間管理
個人のタスクやプロジェクト全体にかかる時間を管理すること。各タスク内容を確認してスケジュールに反映し、その後はスケジュールに沿って業務が進められているか、モニタリングしていきます。
そして、必要に応じてスケジュールを再調整したり人員を増やしたりして、期限内に業務が完了するよう図っていきます。対顧客の業務は期限を守ることが不可欠であり、適切な時間管理が行えないと企業の損失につながりかねません。
⑤従業員管理
従業員の勤怠と健康を管理します。従業員の勤怠と健康を適切に管理すれば、従業員の心身の健康を守れるため、離職を防止できるでしょう。
企業には従業員の心身の健康を確保する義務があり、健康診断やストレスチェックの実施が義務付けられています。また、勤怠管理は長時間労働や残業代の未払いを防ぐなど、労働基準法に則った適切な労働環境を整えるためにも必要です。
⑥経営管理
企業全体の目標達成の進捗や事業戦略、利益や売上、現状の課題などを把握・管理すること。各データから現状を把握するだけでなく、分析して今後どう動いていくか、判断に活用する必要があります。適切な経営管理を行うためにも、各業務管理を徹底し、業務や進捗を可視化・共有することが大切です。
5.業務管理を進める際のポイント
業務管理を効率的に進めるには、以下のようなポイントを押さえるとよいでしょう。
- 評価基準を数値・指標で示す
- PDCAサイクルを回して現状把握・改善に取り組む
- 業務管理ツールを活用する
①評価基準を数値・指標で示す
業務管理が適切に行えているかを判断するには、明確な評価基準が必要です。そのため、業務の評価基準は数値や指標で具体的に示しましょう。数値や指標で具体的に示されていると、業務の進捗状況や業務管理の効果が客観的に判断できます。
そのうえで、効果も数値化することがポイントです。定量的な効果がわからないと、どこをどう改善していけば良いかも判断できなくなってしまいます。業務管理は継続的に取り組んでいくもの。評価と改善を繰り返し、自社にとって効果が高い管理手法を確立することが大切です。
②PDCAサイクルを回して現状把握・改善に取り組む
業務管理はPDCAを回して、実践・評価・改善し続けることが大切です。このサイクルにより、適切な業務管理が行えるようになっていきます。
まず現状の課題を把握し、業務評価の計画を立案します。その後、実際に各分野で業務管理を実行し、その効果を検証します。計画通りにいかなかった、効果がなかったポイントはその原因を分析しましょう。その結果を今後の改善や対策に活かし、新たな計画のもと業務管理を実行していきます。
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③業務管理ツールを活用する
企業規模が大きく、業務内容が複雑なほど、人力での業務管理は難しくなります。そうでなくても、業務管理をすべて人の手で行うのは非効率しょう。そこでおすすめなのが、業務管理ツールの活用です。
業務管理の半自動化や効率化、データを一元管理するプラットフォームの構築や現状の見える化などが可能となります。業務はどんどん増えていくもので、企業が成長していくと内容も複雑化します。将来に備えて業務管理の土台を整える意味でも、早い段階で業務管理ツールを導入しておくとよいでしょう。
6.業務管理でツールを導入するメリット
業務管理でツールを導入することは、下記のようなメリットに期待できます。ツールの導入にはコストがかかってしまうものの、それ以上にメリットが得られるでしょう。
- 業務管理に着手しやすくなる
- 管理担当者の負担を軽減できる
- ヒューマンエラーを防止できる
①業務管理に着手しやすくなる
業務管理を実行するには、業務の可視化や計画、実行や評価といったプロセスが必要です。これらを人力でゼロから実行するのは、労力的にも時間的にも大変でしょう。ツールを活用すると業務管理を始めるまでのプロセスが効率化され、ベースを整えやすくなります。
②管理担当者の負担を軽減できる
Excelのような普段から使っているツールでも業務管理はできるものの、労力が必要です。担当者は業務管理と並行して自分のタスクもこなさなければならず、業務管理の負担が大きいと業務に集中できないだけでなく、管理が煩雑化するリスクがあります。
ツールを導入すれば、業務管理の工程を半自動化でき、効率的に業務管理が行えて担当者の負担が軽減できます。
③ヒューマンエラーを防止できる
業務管理は、ヒューマンエラーの防止に有効です。しかし、業務管理そのものをすべて手作業で行なってしまうと、その過程でヒューマンエラーが発生してしまう恐れもあります。
業務管理におけるヒューマンエラーをなくすと業務のエラーも防止できるでしょう。よって、ツールを導入し業務管理にかかわるヒューマンエラーの発生を防ぐことが大切です。
7.業務管理システムの種類とできること
業務管理システムにはさまざまあります。管理対象に合わせて適切なシステムを導入すると、業務管理を効率的に行えるでしょう。ここでは、各業務管理システムができる基本的なことをご紹介します。
人事管理システム
従業員情報を管理するシステムです。従業員の基本情報を一元管理し、データを活用して組織の現状把握や労務管理、人事評価などが行えます。外部システムと連携できるシステムであれば、給与計算や勤怠管理も一元可能です。
人事管理システムができること |
・勤怠管理 ・給与計算 ・労務管理 ・人材情報の集約・管理 ・人材データベースの作成 ・人事評価・タレントマネジメント ・組織図の作成 |
営業管理システム
顧客との商談や営業フローを管理し、営業活動をサポート・効率化させるシステムです。営業活動の進捗が可視化され、次のアクションの策定や営業活動の改善点の洗い出しなどが行えます。
営業管理システムができること |
・顧客情報の管理 ・営業案件の管理 ・商談の進捗管理 ・営業担当者の行動やプロセスの管理 ・売上予測、予実管理 |
販売管理システム
商品の出荷や請求など、販売の一連の流れを管理するシステムです。主に製造業や卸売業、販売業で活用されています。近年は顧客時点情報管理、通称「POS」の機能が備わった「POSレジ」を導入して販売管理を行う店も増えています。
販売管理システムができること |
・受注管理 ・売上管理 ・見積管理 ・請求管理 ・在庫管理 ・購買管理 |
顧客管理システム(CRM)
顧客情報を一元管理するシステムです。顧客の基本情報のみならず、ニーズや購買履歴、Webでの行動履歴などを収集・分析できます。過去の問い合わせ内容を保存したり、メールの自動配信や顧客リストの作成に対応していたりと、マーケティングに活用できる機能を備えているシステムもあります。
顧客管理システム(CRM)ができること |
・顧客管理 ・顧客分析 ・マーケティング支援 ・プロモーション管理 |
生産管理システム
製造コストや原価、納期や品質、在庫などを一元管理するシステムです。主に製造業の現場で活用されることが多いでしょう。システムによっては人員配置など人事的な機能が実装されているものもあります。
生産管理システムができること |
・生産計画 ・購買管理 ・在庫管理 ・製造管理 ・出荷管理 ・原価管理 ・予算管理 |
会計管理システム
各種帳票の作成やキャッシュフロー管理、日々の会計処理や財務諸表の作成など、経営活動における会計を管理するシステムです。手作業での会計管理はヒューマンエラーが起こりやすいもの。
会計管理システムなら、計算やデータ集計の自動化などの機能により、経理・会計部門の業務の属人化防止や負担軽減が見込めます。
会計管理システムができること |
・帳票作成・管理 ・予実管理 ・会計情報の分析 ・レポート作成 |
勤怠管理システム
従業員の労働時間を管理するシステムです。主な機能は出退勤時間や残業時間の管理で、なかには人事管理機能が付帯しているものも。従業員の労働時間が可視化されるため、労働環境の改善にも取り組みやすくなります。
勤怠管理システムができること |
・打刻 ・有給取得などのワークフロー ・残業時間超過などのアラート機能 ・勤怠情報の集計 ・帳票出力 ・シフト、スケジュール管理 |