ジェンダーエクイティとは? メリット、取り組み方、ポイント、事例

ジェンダーエクイティとは、男女公正のことです。ここではジェンダーエクイティについて、さまざまな角度から解説します。

1.ジェンダーエクイティとは?

ジェンダーエクイティとは、個々の状況にあわせて機会や手段を柔軟に考えていくこと。英語で「GenderEquality」と書き、直訳すると男女公正になります。ジェンダーエクイティでいう男女公正は、男女平等とは考え方が異なります。

  • 男女平等:男女問わずスタートラインを同じにする
  • 男女公正:性差や年齢差などの状況に応じ機会がカスタマイズされる

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2.ジェンダーエクイティを取り巻く世界の現状

ジェンダーエクイティを取り巻く世界の現状は、思うどおりには進んでいません。アメリカのIBMのシンクタンクIBM Institute for Business Valueによる調査「ジェンダー・インクルージョン施策の危機」は、以下のような結果を報告しているのです。

  • ジェンダーエクイティを最優先事項にしていなかった企業は、全世界70%
  • ジェンダーエクイティを目標設定している企業は、2019年時66%から18ポイントマイナスの48%

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3.ジェンダーエクイティを取り巻く日本の現状

日本は一貫して世界の下位にいます。世界経済フォーラム(WEF)は、ダボス会議を主催する国際機関です。WEFが発表している国別の男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数2021」によると、日本は調査対象となる156カ国中120位となっています。

具体的には、下記のようになっており、主要7カ国(G7)のなかで最下位でした。

  • 経済117位
  • 政治147位
  • 教育92位
  • 医療65位

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4.ジェンダーエクイティを推進するメリット

ジェンダーエクイティを推進するメリットは7つあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 優秀な人材の確保
  2. 生産性の向上
  3. 新たな企業価値の発見
  4. 企業イメージアップ
  5. ダイバーシティ対策
  6. えるぼし認定
  7. なでしこ銘柄

①優秀な人材の確保

日本における女性の大学進学率は世界第3位です。しかし大学に進んでも就職していない女性は31%にも上ります。これは高学歴で優秀な人材を社会が活用しきれていないことにほかなりません。

ジェンダーエクイティを推進すれば、優秀でありながらも活躍の機会がなかった人材の活用がスムーズになります。多様な価値観を企業活動に生かせるのはメリットでしょう。

②生産性の向上

公益財団法人日本生産性本部が行った「コア人材としての女性社員育成に関する調査」 によると下記のようになっています。ジェンダーエクイティによって生産性が向上するのです。

  • 「業績向上の要因の一つになっている」企業が約20%
  • 「女性の活躍による変化がみられる」企業が約50%

③新たな企業価値の発見

ジェンダーエクイティ推進として、女性が活躍できる職場を創造します。そうすれば従来なかった視点が得られるうえ、新たなターゲットに向けた製品開発ができるのです。

これは企業にとって、ビジネスチャンスの拡大や業績向上につながります。

④企業イメージアップ

女性活用の重要性を理解しながらも、実際に積極的な女性活用に成功している企業は多くありません。

よって女性管理職や女性リーダーなど女性活用を全面に押し出して積極的なアプローチを行っている企業は、「働きやすい環境が整備されている」「やりがいのある仕事ができる」などがアピールできるため、企業イメージも向上します。

⑤ダイバーシティ対策

ダイバーシティとは、英語の「Diversity」で多様性と直訳されます。年齢や性別、宗教や人種などを超え、さまざまな属性の人材を活用し、生産性や企業競争力を高める戦略です。

ジェンダーエクイティの推進は、ダイバーシティ対策とも重なる部分が多くあり、多様な人材登用を活かした経営戦略として有効といえます。

⑥えるぼし認定

えるぼし認定では、採用や継続就業、労働時間といった働き方や管理職比率、多様なキャリアコースといった5つの評価項目から認定します。

認定を受けると、女性活躍の推進や女性の積極的登用といった取り組みが基準を満たしている証明になるのです。また公共調達や低金利融資といった優遇も受けられます。

⑦なでしこ銘柄

なでしこ銘柄とは、東京証券取引所と経済産業省が共同で、女性活躍推進の取り組みを行う上場企業を選定する制度のこと。

なでしこ銘柄では、「業種ごとで1~2社をなでしこ」「次点となった企業を準なでしこ」と選定。なでしこ銘柄に選ばれる企業は、ほんのひと握りです。そのため女性の活用で新しい価値を創造している企業として、知名度が高まります。

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5.ジェンダーエクイティへの取り組み方

ジェンダーエクイティへの取り組み方は2つです。どのような方法か見ていきましょう。

  1. 人材の段階的な育成システムを構築
  2. 女性の管理職への起用

①人材の段階的な育成システムを構築

「育児や介護などで離職した元社員」「非正規雇用者として雇用している社員」などから優秀な人材を選定し、正規雇用社員として採用するシステムです。

ポジション決定の際、女性を最低1名候補者リストにくわえるといったルール化も効果的でしょう。このようなシステムを活用すれば、企業内で無理なく女性の活躍をサポートできます。

②女性の管理職への起用

SDGs、持続可能な開発目標では、「管理職およびその他の指導的地位における女性の割合の向上」「女性の能力が十分に発揮されるための機会や環境の確保と整備」を求めています。

しかし日本では、女性の管理職登用が進んでいません。日本政府も女性活躍推進法を2016年4月に全面施行し、女性の管理職登用を積極的に後押ししています。

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6.ジェンダーエクイティに取り組む際のポイント

ジェンダーエクイティに取り組む際のポイントがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 社員の意見を採用する
  2. 責任を果たす
  3. 属性を理解する
  4. 長期的な視野で取り組む

①社員の意見を採用する

企業が女性の活躍の場を創造しようとする際、社員、とりわけ女性社員の意見に耳を傾けましょう。そうした意見を採用して制度設計や環境整備を行うと、より効果的にジェンダーエクイティを進められます。

②説明責任を果たす

ジェンダーエクイティは、その重要性からさまざまな取り組みが行われようとしている概念です。よって取り組みは、今後の企業のあり方を左右します。経営者は自らの言葉でジェンダーエクイティについて語れなければなりません。

③属性を理解する

ジェンダーエクイティは、男女公正ですのでそれぞれの属性にマッチした機会がカスタマイズされなければなりません。取り組む際は個々の属性を正しく理解し、貢献度を属性に応じて評価するといった、属性の正しい理解と活用を心がけましょう。

④長期的な視野で取り組む

ジェンダーエクイティを短期間で完成形に導くのは困難です。ジェンダーエクイティに関する施策をPDCAサイクルで回しながら継続運用する、長期の視野が求められます。社内に対しても、時間をかけてジェンダーエクイティを浸透させましょう。

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7.ジェンダーエクイティの事例

ジェンダーエクイティに関する企業の取り組み例を3つ、解説します。

  1. 楽天グループ
  2. 朝日新聞
  3. UBSグループ

①楽天グループ

楽天グループでは、「長く働いていきたい」「仕事を通して活躍したい」といった多くの女性の声を拾い、ジェンダーエクイティに取り組んでいます。そして下記のように、ジェンダーエクイティへの環境を整えているのです。

産休や育児休暇を取得した女性社員に対し、早期職場復帰できるようオフィス内に授乳室をもうける

  • 2015年から本社内に託児所を開設
  • 産休中でもニュースレターを定期的に発信する
  • 復帰前セミナーの実施

②朝日新聞

朝日新聞では、女性に対する無意識の偏見を是正するため、2016年に女性プロジェクトを立ち上げました。そして下記のような事柄を実施しています。

  • 2017年からは、国際女性デーを中心として現場記者の声を聞いて、ジェンダー平等に関する報道を行う
  • 2020年からは、朝日新聞ジェンダー平等宣言を公表し、自社のコンテンツを活用して男女間格差是正に取り組む

コンテンツの制作も女性プロジェクトが中心となる、といったように多様性を確保しながら、質の高い事業展開を目指しています。

③UBSグループ

UBSグループでは、女性顧客の拡大やサービス向上を目標として、ジェンダーエクイティに取り組んでいます。女性の社会進出は、社会のジェンダーエクイティが実現しなければ成しとげられないといった認識のうえで、下記のようなサポートを、営業担当者がきめ細かに実施しています。

  • 女性が投資に対して興味や正しい知識を持つ
  • 女性ならではの将来設計を投資に生かす
  • 女性も世界を動かし得る存在になる