エンゲージメント経営とは?【意味を簡単に】事例、実践方法

エンゲージメント経営とは、エンゲージメント向上によって従業員が自発的に動く組織づくりを行う経営方針のこと。エンゲージメントが高いと企業への信頼や愛着が高い状態にあるため、生産性や定着率の向上などさまざまなメリットを得られるのです。

今回は、エンゲージメント経営を導入するメリットややり方、企業事例などからエンゲージメント経営について詳しく解説します。

1.エンゲージメント経営とは?

エンゲージメント経営とは、企業と従業員の双方の信頼関係や企業への愛着から自発的に動いていくような組織づくりを行う経営のこと

そもそもエンゲージメントとは、従業員企業に対して抱く信頼や愛着を示す指標です。エンゲージメントが高い状態では企業への信頼や愛着が高く、高いモチベーションを持って自発的に業務に取り組んでくれる傾向にあります。

こうした行動心理を活用し、モチベーションの高い組織づくりを行うことがエンゲージメント経営です。

エンゲージメント経営では、福利厚生や給与アップなどの外部要因ではなく、意欲やモチベーションのような内部要因にアプローチしていきます。

エンゲージメントと従業員満足度の違い

エンゲージメントは双方の関係性を問うための信頼や愛着を土台とした指標であるのに対し、満足度は従業員が企業に対して満足しているかという一方的な指標です。両者は従業員と企業の関係性に違いがあるため、異なる考え方となります。

エンゲージメントは大きな影響がない限り崩れにくい信頼関係や企業への愛着が作り出すものです。一方、従業員満足度は従業員が満足している点にマイナスな変化があればかんたんに崩れてしまいます。

また、エンゲージメントが高いからと従業員満足度が高いわけではなく、逆の場合も同様です。

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2.エンゲージメント経営が注目される理由

「エンゲージメント経営を行わない企業は今後淘汰されていく」といわれるほどエンゲージメントの重要性が高まっているのです。ここでは、エンゲージメント経営が注目される主な理由をみていきます。

  1. エンゲージメントが低い現状を改善するため
  2. 労働人口の減少に対応するため
  3. 現代の価値観に適応するため

①エンゲージメントが低い現状を改善するため

米国ギャラップ社が実施した「エンゲージメント・サーベイ」によると、日本企業のエンゲージメントレベルは調査国139か国中132位と、世界的に見ても低い結果でした。

さらに米国におけるエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の割合は32%であるのに対し、日本企業では約5分の1となる6%との結果もみられます。エンゲージメントが低いと生産性の低下から、最悪のケースで業績悪化に影響することも。

また、エンゲージメントが低い企業と高い企業では生産性や組織力に差が出るとされています。変化が激しく市場が飽和しつつある現代、エンゲージメントを高めることが企業発展の秘訣といえるでしょう。

②労働人口の減少に対応するため

少子高齢化による労働人口の減少により、今後はますます採用が困難になっていくため、既存従業員をいかに定着させるかが重要です。そのためにも、エンゲージメント向上は欠かせない要素といえます。

信頼や愛着がある状態だと企業のために頑張ろうと思え、大きな変化がない限りは企業を離れる可能性は低いです。定着率が上がれば組織力も強化され、かつ採用や育成コストが最適化されるなどのメリットも得られます。

③現代の価値観に適応するため

これまでの日本企業の経営スタイルは、画一的な管理による終身雇用制度でした。しかし近年、実質崩壊状態にあります。仕事にやりがいや自己実現を求める人が増え、これまでのような経営スタイルでは労働者の価値観に合わなくなってきたからです。

とくに若年層はやりがいがあるか、個人を評価してくれる企業であるかを重視している傾向にあります。採用力の強化にエンゲージメント経営が役立つでしょう。

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3.エンゲージメント経営の導入メリット

エンゲージメント経営を導入する主なメリットは、以下3つです。詳しく解説します。

  1. 生産性の向上
  2. 離職率の低下
  3. 顧客満足度の向上

①生産性の向上

モチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学が共同実施した「エンゲージメントと企業業績」によると従業員エンゲージメント向上は、「営業利益率」「労働生産性」にプラスの影響をもたらすとわかりました。

エンゲージメントスコア1ポイントの上昇につき、営業利益率は3.5%上昇、労働生産性(指数)は0.035上昇する結果に。つまり、エンゲージメントが高い状態では、同じ労働時間でもより効率的に成果を生み出せます。

②離職率の低下

エンゲージメントが高いと企業への信頼や愛着が強く、帰属意識や貢献意識も高まるため離職率も低下します。

キャリア形成の一環として転職が当たり前になった現代では、よりよい待遇の企業があればかんたんに転職を選択できます。そのなか今の企業に所属する意味を見出し、貢献したいという気持ちがあれば転職する必要もなくなるでしょう。

処遇や働き方などの改善といった外部要因における施策も重要でしょう。従業員のモチベーションややりがいといった内部要因にアプローチするエンゲージメントは、離職率低下に欠かせない要素です。

③顧客満足度の向上

エンゲージメントが高いと、顧客とも良好な関係が作れます。なぜなら、自社商品やサービスへの愛着が高いため、よりよい商品・サービスを提供するため意欲的に業務に取り組むようになるからです。

さらに、顧客ニーズに応えるために努力するようになり、カスタマーサービスの品質も向上します。

また、エンゲージメントの高い従業員同士ではチームワークが強化されるため顧客に一貫性のあるサービスを提供されるようになり、結果的に顧客満足度の向上から業績アップに期待できます。

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4.エンゲージメント経営のやり方

エンゲージメント経営を進めるうえで、まずは企業側がどのような企業にしたいか方針を決めて従業員に伝えることが大切です。ここでは、ステップ別にエンゲージメント経営のやり方を解説します。

STEP.1
現状のエンゲージメントを把握
まず取り組むべきは、従業員の現状のエンゲージメント把握です。エンゲージメントが高いのか低いのか、低い場合には何が原因かがわからないと必要な施策が立てられません。

まずは自社の現在地を確認し、エンゲージメントを高めるためにどういった課題に対応していかなければならないか、明確にしましょう。エンゲージメントは、組織サーベイツールに含まれる機能や専用の調査ツールを用いて測定できます。

STEP.2
優先課題と将来課題への対応
エンゲージメントの測定結果から、エンゲージメントを低くしている要因を分析します。このとき、要因を優先課題と将来課題に分類することがポイントです。

優先課題とは、解消することでエンゲージメント向上に大きくインパクトを与えるものであり、迅速に解決しなければならない課題のこと。一方、将来課題は優先課題ほどインパクトは大きくないものの、将来的に解決しなければならない課題です。

分析から浮き彫りになった課題を優先課題と将来課題のどちらに分類するかは、企業によって異なります。中長期的な課題は時間をかけて解決する必要があるため、焦らずに取り組むことが大切です。

STEP.3
効果測定と定点観測
改善施策を実行したら、必ず効果を検証しましょう。施策実施後、最初のステップと同様に従業員エンゲージメントを測定します。改善されていなければ新たな課題を洗い出し、再度必要な施策を実行していきましょう。

エンゲージメント経営を進めるうえでは、このPDCAが重要です。あわせて、ほかに新たな課題や問題が発生していないかも定点観測し、早くに発見した課題はインパクトが小さいうちに解消しておきましょう。

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5.エンゲージメント経営の実践ポイント

エンゲージメント経営を実践する際、以下のポイントを意識しましょう。

  1. 企業の方針を明確にする
  2. 正確にエンゲージメント調査ができる環境を整える
  3. 双方のコミュニケーションを大切にする

①企業の方針を明確にする

エンゲージメント経営のベースとなるのは、経営側の想いでもある企業の方針です。従業員に想いが伝わり、共感を得てこそエンゲージメントが育まれます。そのため、そもそも方針が不明瞭である、経営陣に想いがない状態ではエンゲージメント経営は進みません。

企業をどうしていきたいかを決めることが、エンゲージメント経営のファーストステップ。決定事項だけでなく、決定した背景や想いを従業員に伝えるとよいでしょう。

②正確にエンゲージメント調査ができる環境を整える

エンゲージメント経営を進めるうえでは、調査環境の整備もやるべきことのひとつ。そもそもエンゲージメント調査が正確に行えないと、出発地点がわからずに課題も把握できません。

しかし、規模の大きい企業ほどエンゲージメント調査も手間がかかるもの。効率的かつ正確にエンゲージメントを調査するためには、組織サーベイといったツールの活用がオススメです。

③双方のコミュニケーションを大切にする

エンゲージメントは、企業と従業員の双方向的な関係性が構築されてこそ培われるもの。そして、信頼関係のベースとなるのはコミュニケーションです。

企業が一方的にエンゲージメント向上に有効な施策を取り入れるのではなく、従業員の声を聞き、反映させる形で施策を実行しましょう。それにより従業員も自分の声が企業に聞き入れられていると認識でき、信頼も高まります。

企業の想いを従業員に伝えたり、従業員へ定期的にフィードバックを行ったりするなど、さまざまな方面でコミュニケーションを図ると、エンゲージメントが育まれていきます。

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6.エンゲージメント経営の課題

あわせて、エンゲージメント経営における課題もみていきましょう。

  1. 経営陣の意識改革が必要
  2. 組織風土が弊害となる可能性
  3. 継続的な取り組みが欠かせない

①経営陣の意識改革が必要

パーソルホールディングス株式会社の調査によると、エンゲージメント向上に課題を感じている企業は約7割。具体的な課題として最上位に上がったのは「管理職層の課題認識が薄い」でした。

エンゲージメント経営の主導は企業側となるため、まずは経営方針を決めたりする経営陣の意識改革が必要です。

経営陣が意欲的でないと組織で一体的にエンゲージメント経営に取り組むのが難しいだけでなく、リーダーシップの質は従業員のエンゲージメントにも影響をおよぼします。まずは経営陣がエンゲージメント経営の重要性を認識し、従業員にも伝達しましょう。

②組織風土が弊害となる可能性

同調査では、エンゲージメント向上の課題に組織風土もあがっています。年功序列やヒエラルキーの風土が強いと従業員の自己決定や自己表現の機会が制限されやすく、エンゲージメント経営もなかなか進みません。

また、トップダウン型の組織であれば、上層部とのコミュニケーションが図りにくい環境も弊害になるでしょう。

しかし、組織風土は長年養われたものであり、すぐに変革するのは難しいもの。組織風土から改善していかなければならない場合、エンゲージメント経営実現までは長い道のりになるでしょう。

③継続的な取り組みが欠かせない

エンゲージメントは継続的な取り組みや関係性の構築によって育まれるため、一時的に改善・向上することはありません。すぐにエンゲージメント経営の効果を出すことは難しく、効果検証と改善を重ねながら少しずつ浸透させていく必要があります。

目先の結果にとらわれず、中長期的な視点を持って根気強く取り組むことが大切です。

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7.エンゲージメント経営の企業事例

エンゲージメント経営で企業が取り組んでいる内容はさまざまです。ここでは、企業事例を3社からご紹介します。

リクルート

リクルートは、早期からエンゲージメント経営に取り組んできた企業です。リクルートでは「強みを活かし合う関係をつくる。多様な人が集い、補完・刺激し合うことで、「個」の限界を超えられる組織へ」といった企業コンセプトから目指すべき方向を明確にしています。

また、エンゲージメントサーベイを軸に職場の状況を可視化し、その結果を元に職場で対話・改善アクションにも取り組んでいるのです。

エンゲージメントサーベイの回答率は97%、そのFBミーティングの実施率53%、その効果の実感率が92%。ここから、エンゲージメントサーベイの浸透と実施効果の高さがうかがえます。

ユーザーベース

ユーザーベースは、経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」や業界・企業分析のオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」を運営する企業です。

創業4年の年、経営陣がマネジメントに手が回らなくなったことをきっかけにエンゲージメント向上に着目。経営陣で話し合った結果、重要施策として実行されたのがバリューの共有・浸透です。

「7つのルール」をバリューとして共有し、共感してくれる人を採用するほか、従業員にも日々の行動に落とし込んでもらうことを徹底しました。さらに、定期的なアンケート調査から現場の課題を吸い上げ、解決策のフィードバックにも努めています。

エンゲージメント経営に取り組んでから売上高は増収を維持し、2017年6月時点でのエンゲージメントスコアは最高のAランクに到達するといった、結果にも表れています。

スターバックス

スターバックスは、従業員エンゲージメントが高い企業としても有名です。サービスに関するマニュアルがほぼないにもかかわらず、高品質なサービスを売りとしている背景には、従業員一人ひとりのエンゲージメントの高さがあります。

スターバックスでは個人の成長目標をきめ、スターバックスの仕事をとおして何を身につけたいかを考える文化が定着しているのです。

目標に対する結果は4か月ごとに行われる人事考課でフィードバックされるため、成長の実感が得られ、モチベーション向上にもつながります。

こうした取り組みの結果コロナ禍の時期をのぞいて売上や店舗数の増加は右肩上がり。さらに、バリューに共感するパートナーが集まり、採用力の強化にもつながっています。