カスタマーサクセスとは? 仕事内容、導入メリットを簡単に

カスタマーサクセスとは、顧客の成功体験を支援すること、あるいはその役割を担う職種のこと。カスタマーサクセスの役割やメリット、カスタマーサクセスに向いている人、導入事例などを解説します。

1.カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスとは、商品やサービスを利用した顧客の成功体験を支援し、自社の利益をさらに生み出すこと。この取り組みを行う職種のこともカスタマーサクセスと呼びます。

カスタマーサクセスの役割は、顧客に対してフォローや新商品の提案などをとおして顧客の課題解決(成功体験)を実現し、自社の商品価値の向上やさらなる購買などにつなげることです。

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2.カスタマーサクセスと営業、カスタマーサポートとの違い

「カスタマーサクセス」「営業」「カスタマーサポート」の3つは混同されやすい職種です。それぞれの違いについて説明します。

カスタマーサクセスと営業の違い

カスタマーサクセスと営業の違いは、アプローチする顧客が購買しているか否か。

  • カスタマーサクセスのアプローチ対象:すでに自社のサービスや商品を契約した既存顧客。購買後の顧客満足度を高めて、さらなる利益向上につなげる
  • 営業の対象:まだ契約していない見込み顧客。数あるライバル商品やサービスのなかから、自社のサービスや商品を購買させて売上アップを目指す活動

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは、顧客への対応方法。企業からアプローチするか、顧客からのアクションに対応するかでそれぞれ異なるのです。

  • カスタマーサクセス:企業が顧客に対して能動的に働きかけ、顧客満足度の向上を目指す
  • カスタマーサポート:顧客から要望があったときにのみスポット的に対応

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3.カスタマーサクセスが求められる背景

近年、カスタマーサクセスを導入する企業が増えています。カスタマーサクセスが求められる背景や、その必要性について説明しましょう。

  1. 営業スタイルの変化
  2. グローバル市場での差別化

①営業スタイルの変化

カスタマーサクセスが求められる大きな理由のひとつが、営業スタイル(ビジネスモデル)の変化です。

近年、ビジネスモデルは「サブスクリプション型」が主流。いかに顧客に継続的に利用してもらえるかがビジネス成功の鍵を握ります。そのため購買後もカスタマーサクセスで顧客満足度を高め、解約を抑制する必要があるのです。

CX(顧客体験)の提供

顧客満足度を維持し、継続的に利用してもらうためには優れたCX(顧客体験)の提供が欠かせません。CXの良し悪しは顧客の動向を大きく左右するからです。

顧客は、競合するさまざまなサービスを比較し、よりよいCXを提供してくれるサービスを選ぶもの。自社のサービスを選び続けてもらうためには、カスタマーサクセスによるCXの向上が不可欠です。

SaaSの浸透

SaaSとは、顧客が必要としているソフトウェアをクラウド上で提供するサービスのこと。たとえばMicrosoft 365なども、サブスクリプション型サービスに該当します。

近年、ビジネス系ソフトウェアにもサブスクリプション型が取り入れられ、その結果、カスタマーサクセスの必要性も高まりました。

SaaSは月額あるいは年額の定額制であるため、解約を防ぐための施策が必要です。顧客満足度の維持向上には、カスタマーサクセスによる適切なフォローが欠かせません。

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②グローバル市場での差別化

競合サービスとの差別化という点でも、カスタマーサクセスは重要です。

同じようなサービスが競合している市場では、商品の価格や機能だけで差別化を図るのは難しくなりつつあります。あとは信頼性や安心感、満足感といった心理的な要素で市場優位性を高めなければなりません。

そこで購買後もカスタマーサクセスで顧客満足度を維持向上し、顧客から「ファン」へ育てる必要があるのです。

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4.カスタマーサクセスの役割と仕事内容

カスタマーサクセスの役割は、LTV(顧客生涯価値:ひとりの顧客が今後自社に対してどれくらい利益をもたらすかを表す指標)の最大化。このLTVを最大化するために、カスタマーサクセスによるさまざまな業務が行われます。

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役割

カスタマーサクセスの役割は、既存顧客の満足度を高め、他社サービスへ流れないようにすること。

LTVの最大化を実現するには、顧客を自社への愛着が高いファンに育て、継続的に自社の商品やサービスを利用させる必要があります。

適切なカスタマーサクセスの実施によって定着率が高まると、アップセル(上位の商品やサービスへの移行)や、クロスセル(関連商品やサービスの購買)が成功し、LTVアップが見込めるのです。

仕事内容

カスタマーサクセスは、LTV最大化のためにさまざまな業務を担います。

たとえば「サービスの販売や販促活動」「サービスを継続して利用してもらうための環境整備」「顧客の要望に合わせたサービスの改善」など。ほかにも顧客に対するヒアリングや事前の説明会、定期的な効果測定などもカスタマーサクセスの業務に含まれます。

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5.カスタマーサクセス導入のメリット

企業がカスタマーサクセスを導入するメリットは、利益を増大しやすくなること。カスタマーサクセス導入の主なメリットを4つ説明します。

  1. 解約率低下の防止
  2. 売上の向上
  3. 商品やサービスの改善
  4. ファンを増やしてリピーター数アップ

①解約率低下の防止

カスタマーサクセスによる適切なフォローやサポートで、解約率の低下が期待できるのです。

サブスクリプション型ビジネスでは、解約率の低下はそのまま利益に関係します。よっていかに顧客満足度を高めるかが重要なポイントになるのです。

適切なカスタマーサクセスを実施すれば顧客の不満点は素早く解消され、同時に顧客エンゲージメントが高まるでしょう。そして解約率も低下します。

②売上の向上

カスタマーサクセスは顧客の再購買を促すため、売上が向上しやすくなります。長期契約をしている顧客に対してアップセルやクロスセルを行い、LTVの最大化を目指すからです。

そのためカスタマーサクセスでは、顧客のタイプやニーズに合わせてアプローチ方法を変え、適切なタイミングを見極めて情報発信や商品の提案を行います。これらの活動が成功すると成約率やLTVがアップし、収益が拡大するのです。

③商品やサービスの改善

カスタマーサクセスの導入で、商品やサービスの改善につなげられます。「顧客の声を聞く」のもカスタマーサクセスの役割のひとつだからです。

顧客との会話やメールなどをとおして、問題点や要望などを聞き取れるうえ、その声を自社商品の改善に活用できます。課題が改善されて商品の質がさらに向上すれば、顧客からの評価もより高まるでしょう。

④ファンを増やしてリピーター数アップ

リピーター率(繰り返し購買する顧客)の獲得においても、カスタマーサクセスは大いに活躍します。カスタマーサクセスの働きかけで、再購買を促進できるからです。

自社商品を気に入った顧客へカスタマーサクセスが適切なフォローを行うと、ブランドや企業そのものに愛着を持つファンとなります。そして今後さらに長期的な購買が見込めるのです。

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6.カスタマーサクセスのKPI

カスタマーサクセスの効果を高めるには、KPI(重要業績評価指標)を設定して成果を図る必要があります。ここではカスタマーサクセスで見るべきKPIを紹介しましょう。

  1. チャーンレート(解約率)
  2. リテンションレート(維持率)
  3. アップセル率とクロスセル率
  4. オンボーディング完了率
  5. NPS(顧客推奨度)
  6. アクティブユーザー数

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①チャーンレート(解約率)

すでに契約している顧客がどれだけ解約したかを数値で示す指標のこと。カスタマーサクセスで、もっとも多く見られます。

計算式は「解約数÷顧客数」。たとえば今月時点での顧客数が200人で、月末に10人解約した場合、計算は「10÷200=0.05」となり、チャーンレートは5%になります。

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②リテンションレート(維持率)

サービスを継続して利用している顧客の割合を表す指標のこと。「定着率」「継続率」とも呼ばれます。

計算式は「特定の期間の継続顧客数÷特定の期間の新規顧客数×100」。たとえば1か月間の新規顧客が1,000人、その月末の継続顧客数が700人だった場合、「700÷1000×100=70」となり、リテンションレートは70%となります。

③アップセル率とクロスセル率

アップセルとは、より高額な商品を顧客に購入してもらうこと、クロスセルは顧客に関連商品を一緒に購入してもらうこと。両方とも、顧客ひとりあたりの単価を向上させることが目的です。それぞれの計算式は下記のようになります。

  • アップセル率の計算式:アップセルに成功した顧客数÷全顧客
  • クロスセル率の計算式:クロスセルに成功した顧客数÷全顧客

④オンボーディング完了率

オンボーディングとは、サービスの利用を開始した顧客が、定着状態(ひとりで使いこなせる状態)になるまでの期間のこと。

そしてオンボーディング完了率とは、顧客が定着している状態を「完了」とし、完了に至った顧客の数が顧客全体の何割を占めるかを表す指標です。

オンボーディング完了率の計算式は、「期間内で定着が完了した顧客数÷期間内の全顧客」となります。

⑤NPS(顧客推奨度)

企業の商品やサービスに対する顧客ロイヤルティを表す指標のこと。計測方法としては、アンケート方式が一般的です。

たとえば「この商品を友人に勧めたいですか?」という質問をし、「0=まったく勧めたくない」「5=どちらともいえない」「10=強く勧めたい」の11段階評価でスコアを集計。0~6は批判者、7~8は中立者、9~10は推奨者と見なします。

⑥アクティブユーザー数

特定の期間内に商品やサービスを利用したユーザー数のこと。一般的には日別(DAU)や週別(WAU)、月別(MAU)で集計します。

アクティブ(積極的・能動的)に利用していないユーザーは、サービスの解約率が高まるもの。よってアクティブユーザー数の低下が見られたら、個別の利用回数を確認しましょう。そして利用回数が減っている顧客へ優先的にアプローチします。

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7.カスタマーサクセス成功のポイント

カスタマーサクセスには、典型的なフローがありません。導入を成功させるためにも、3つのポイントをふまえておきましょう。

  1. 顧客状況のモニタリング
  2. 顧客の要望は慎重に判断
  3. 社内でカスタマーサクセスを共有

①顧客状況のモニタリング

カスタマーサクセスでは、顧客のモニタリングを定期的に実施するとよいでしょう。モニタリングから、顧客が抱く不満や不安、改善すべき課題などが見えてくるため、商品やサービスの改善につなげられるからです。

モニタリングする項目としては「利用時間」「ログイン回数」「よく使われる機能」「あまり使われていない機能」「顧客がよくつまずく点」などが挙げられます。

②顧客の要望は慎重に判断

カスタマーサクセスで顧客からの意見や要望を聞くことは重要です。しかし顧客から寄せられた意見が正しいとは限りません。そこでその内容が「本当に生かすべき声なのかどうか」を慎重に判断する必要があります。

たとえばごく一部の顧客のマイノリティな意見を真に受け、多くの顧客が望まない改善を実施したとしましょう。それにより顧客離れを引き起こすかもしれません。寄せられた意見や要望が全体のどれくらいを占めるか、見極めましょう。

③社内でカスタマーサクセスを共有

カスタマーサクセスを成功させるためには、全社的な共有や協力、連携が欠かせません。カスタマーサクセスの担当者は、これら部署間の橋渡し役でもあるからです。

とくにカスタマーサクセスとの関連性が高い営業や企画、開発やカスタマーサポートなどとは、顧客のニーズや意見などを共有する仕組みを構築する必要があります。

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8.カスタマーサクセスの注意点

カスタマーサクセスを導入しても、運営の準備不足や認識不足が原因で失敗するケースも見られます。カスタマーサクセス導入時に注意すべき点を知っておきましょう。

  1. 期待値のギャップによる負担増大
  2. 過度なヘルススコアの設定
  3. 定期的なKPIの見直し

①期待値のギャップによる負担増大

期待値ギャップとは、顧客が運営に期待するレベルと、運営の対応のレベルに大きな違いが生じること。このギャップは不満につながり、解約率が高まってしまうのです。

たとえば営業が過度にアフターフォローをアピールして購買させると、顧客は購買後も必要以上のフォローを要望します。そしてカスタマーサクセスは要望に応えなければならなくなり、カスタマーサクセス担当者の負担が増大してしまうのです。

②過度なヘルススコアの設定

ヘルススコアとは、顧客が自社のサービスを健全かつ継続的に利用してくれるかどうかを示した指標(数値)のこと。

顧客の状態を客観的に把握するという意味でヘルススコアの設定は必要です。しかしあまりに細かな数値を設定しすぎると、数値を追いきれなくなるでしょう。

カスタマーサクセスがヘルススコアに注力しすぎると、顧客へのアプローチがおろそかになり、本末転倒になってしまうのです。

③定期的なKPIの見直し

営業戦略や解決したい課題、集計に要する期間などで適切なKPIは変わります。同じKPIをただ漫然と使い続けるのではなく、情報分析に必要なKPIを選びましょう。

また「他社が成功しているから」という理由で同じKPIを採用しても、自社に必要な情報だとは限りません。

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9.カスタマーサクセスの成功事例

多くの企業がカスタマーサクセスを導入し、利益向上を実現しています。カスタマーサクセスの成功事例を紹介しましょう。

  1. Microsoft
  2. Sansan
  3. Slack

①Microsoft

Microsoft社は、カスタマーサクセス領域の人員を大幅に増設し、手厚いフォローを実施しました。

サブスクリプションサービスであるMicrosoft 365には、「大企業向け」「個人や中小企業向け」「教育機関向け」などプランごとにカスタマーサクセスを設置。対応を細分化させ、きめ細かなフォローの実施を実現したのです。

2014年にMicrosoft 365のサービスを開始してから3年で1,000万ユーザーを獲得し、2020年までのユーザー数は右肩上がりに増加。カスタマーサクセスがユーザー数の維持向上に大きく貢献していると考えられます。

②Sansan

Sansanは、日本で初めてカスタマーサクセス部門を設立した企業です。

Sansanがカスタマーサクセス部門を立ち上げた目的は、オンボーディングのサポート。導入後の活用をカスタマーサクセスが支援し、商品のよさを実感させたのです。

カスタマーサクセスが適切なサポートとベストタイミングで提案をし、顧客の利用率と定着が高まりました。

③Slack

Slackでは顧客の業務改善を目的に、さまざまなカスタマーサクセス施策を実施しています。

施策例は、「イベントを開催して、他社の成功事例を共有する」「技術的なトレーニングを実施する」など。また有料移行後は、業務フローや部署ごとに活用方法をまとめた「Slack活用ガイド」を提供し、顧客の満足度と契約の維持率を高めています。

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10.カスタマーサクセスに役立つツール

カスタマーサクセスの業務を効率化するツールがいくつかあります。ツールを利用する場合は、自社のサービスに適したものを選びましょう。

  1. Salesforce
  2. Zendesk
  3. HiCustomer

①Salesforce

企業と顧客の接点の強化し、顧客が成約に至るまでのプロセスを効率化させるプラットフォームのこと。主な機能として挙げられるのは下記のとおりです。

  • Sales Cloud(SFA):情報管理や営業支援を行うツール
  • ServiceCloud(CRM):カスタマーサポートの効率化をサポートするツール
  • Pardot(MA):顧客の行動を可視化するツール

それぞれを活用すると顧客情報を一元管理でき、顧客にとって現在もっとも有用なアクションをとれるようになります。

②Zendesk

顧客の行動やコミュニケーションを可視化し、カスタマーサクセスを効率化するクラウド型ツールです。

特徴はメールやチャット、SNSや社内外FAQ、MAツールなどで収集した情報を共有するツールが複数パッケージされている点。GoogleやSalesforceなど他社ツールとも連携できるため、情報を一元管理しやすくなります。

また入力自動化機能やAI搭載のチャットアプリを活用すれば、顧客とのやりとりを効率化できるでしょう。