社会人カーストとは?【意味をわかりやすく解説】

社会人の格差を指す言葉として使用される社会人カースト。今回は、ヒエラルキーやスクールカーストとの違い、カーストが決まる要因などを解説していきます。

1.社会人カーストとは?

社会人カーストとは、学歴や会社のランクによる社会人の格差を表した言葉です。ヒンドウー教における身分制度「カースト」に由来しており、現代の格差社会で使用されるようになりました。

社会人カーストの中で最上位と言われているのは、有名大学を卒業しており、大企業に職を得て、豊かで充実した生活を送ることのできる能力の高い人。対して、最下層と言われるのは、学歴が大学卒ではなく、非正規で雇用されている人などです。

ヒエラルキーとの違い

ヒエラルキーとは、自身の地位が上昇する可能性のある階層構造を指します。会社などの組織にみられる上下関係がこれに該当するでしょう。ヒエラルキーには、自身の能力や努力、成果によって地位を上昇させることのできる流動性があります。

一方、社会人カーストは自身の意思や努力では超えることのできない固定化された格差のことを指すのです。

スクールカーストとの違い

スクールカーストとは、学校などの教育機関で生徒間に自然に生じる序列を指します。この序列はコミュニケーションスキルや容姿などによって決まるものです。スクールカーストのランクは社会人カーストのランクにそのまま移行するわけではありません。

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2.社会人カーストの実態(オウチーノの調査結果)

社会人カーストの実態について、オウチーノが実施した首都圏在住の20歳から39歳男女860名に対する調査をもとに説明します。

「最上層」もしくは「上層」と回答した人

「自分が社会人カーストのどの層に属しているか」という質問に対して、自身が「最上層」あるいは「上層」と回答した人は、全体の約26%。

スクールカーストで自身が「最上層」あるいは「上層」と回答したのは、小・中・高を平均して約16%でした。

スクールカーストに比べて社会人カーストの方が、「最上層」あるいは「上層」に位置づける人が増えていることがわかります。

「中層」と回答した人

自身が社会人カーストの「中層」と回答した人は、全体の約32%。一方、スクールカーストで「中層」と回答した人は約20%。

社会人カーストの方が「中層」に位置づける人が増えていることがわかります。「最上層」と「上層」、「中層」、「下層」、「最下層」というランク付けにおいて、「中層」は最も人数が多い結果になりました。

「最上層」から「最下層」の5ランクは、「中層」をピークとして山型に分布しています。

「下層」もしくは「最下層」と回答した人

自身が社会人カーストの「下層」あるいは「最下層」と回答した人は、全体の約22%。一方、スクールカーストで「下層」あるいは「最下層」と回答した人は約10%でした。

上層や中層と同様に、スクールカーストに比べて社会人カーストの方が、自身を「下層」あるいは「最下層」に位置づける人が増えていることがわかります。

「『社会人カースト』はないと思う」と回答した人

「社会人カーストはないと思う」と回答したのは全体の約20%でした。そのうちの23.2%が男性、16.2%が女性という結果が出ています。この結果から、女性の方が社会人カーストを感じている人が多いことがわかります。

「スクールカーストはなかったと思う」と回答した人は約50%。すなわち、「スクールカーストに比べて、社会人になってからの方がカーストを意識している」ことがわかります。

上述した結果からもわかるように、社会人カーストはどのランクにおいても割合が増えているのです。

参考 「スクールカースト・社会人カースト」実態調査オウチーノ

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3.社会人カーストを決める要因

ここでは、社会人カーストがどのような要因によって決まるのか、年収や役職など主な要因を5つ取り上げて説明します。

年収

社会人カーストを決める上で最も重視される基準は「年収」です。

2019年に国税庁が発表した「民間給与実態統計調査」によると、ワーキングプアのレベルといわれる年収300万円以下は約38%。そのうち、約22%は男性、55%が女性という結果でした。

対して、年収1,000万円以上は約5%。この統計に含まれていない自営業者を含めるとさらに割合は高くなるでしょう。

役職

企業における「役職」などの肩書きも社会人カーストの要因として重視されます。

一般的な役職名は、上のランクから会長、社長、副社長、専務、常務、本部長、部長、次長、課長、係長、主任、一般社員に分けられます。

役職名は法的に定められておらず各企業によって異なりますが、肩書きが上になればなるほど社会人カーストのランクは上がるとされています。

会社名

「会社名」がどの程度世間に知られているかという、いわゆる知名度もランクを決定する重要な基準となります。社会人の付き合いの中では、本人の性格よりも会社の知名度が高さのほうが重要視されることも往々にしてあるでしょう。

また知名度の高い会社が低い会社に比べて就活生に人気が高いことも、会社名の重要性を示しています。

安定性

職業の「安定性」も重要な要因です。安定性の高い職業とは、

  • 給料が安定して高レベルで昇級すること
  • リストラや離職が少ないこと
  • 安定した経営
  • ワークアンドライフのバランスが良いこと
  • 転職にも通用するスキルを使用していること

などを指します。

たとえば、公務員などは安定性の高い仕事というイメージを抱かれやすいとされています。

学歴

「学歴」もイメージを決める大きな要因になります。採用活動で「学歴は不問」と答える企業が増えてきていますが、やはり大学名にこだわる企業はいまだに多いといわれています。

最上ランクは旧帝大(東京、京都、東北、九州、北海道、大阪、名古屋の7大学)と早稲田、慶応、上智など。

次のランクはMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関西、関西学院、同志社、立命館などが挙げられるでしょう。

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4.社会人カーストが意識されるようになった背景

社会人カーストはどうして意識されるようになったのでしょうか。ここではその社会的背景について、主な4つを取り上げて説明します。

一億総中流の終了

社会人カーストの背景として、「一億総中流」時代の終焉が挙げられます。第二次世界大戦後の日本は経済成長を遂げ、経済成長末期の1970年代には、日本の人口のほとんどである1億人が自らを中流階級として意識していたといわれています。

しかし1980年代から格差が広がり続け、現在では一億総中流社会は崩壊し、格差社会の分断が進んでいるのです。

賃金格差の拡大

雇用形態や性別における賃金の格差も挙げられます。日本は韓国に次いで男女別の賃金格差が大きく、世界でワースト2位です。雇用形態別では、どの年齢においても非正規雇用者に比べて正社員や正職員の賃金が高いことがわかっています。

20代~30代の若者では、非正規雇用者の賃金は正規雇用者の賃金の約7割から8割という結果です。

非正規雇用の増加

雇用者に占める非正規雇用者の割合が大きくなっていることも一因です。総務省統計局が2019年8月に発表した「労働力調査」によると、労働者の3割以上を非正規雇用者が占めています。

年々、非正規雇用者数は増加しており、特に女性の非正規雇用者が占める割合が大きい傾向にあります。その背景には、経済の低迷や雇用調整などの原因が考えられるでしょう。

学歴間格差の拡大

中年層と若年層で大企業に就職している人の割合を調査した結果、学歴による格差はあまりないことがわかっています。一方で、正規就業率になると、高卒と大卒の間で大きな違いが出ているのです。

こうした学歴による雇用形態の格差の拡大が、賃金格差を拡大させる要因となっています。学歴による賃金格差が社会人カーストを意識させる一因になっていることは明確です。

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5.社会人カーストの問題点

社会人カーストは、従業員のモチベーションの低下などさまざまな問題をもたらします。ここでは、社会人カーストの問題点を説明します。

仕事のモチベーションの低下

社会人カーストを意識するような環境に従業員がいた場合、仕事に対する意欲が消失する可能性もあります。モチベーションが低下すれば、仕事に対して自分から新たな取り組みをする意欲がなくなるでしょう。

またモチベーションが低下した従業員が増えると、組織全体の士気が下がり、結果として企業の生産性に影響が出るおそれがあります。

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離職率の増加

社会人カーストで自身のランクが低いことを意識すると、キャリアへの不満が募り、離職につながるおそれがあります。自己肯定感が下がり、仕事によって達成感や充実感を抱けず、成果を上げることが難しくなるのです。

仕事への不満感が増大し、離職を選ぶ従業員が増えた結果、組織の定着率は下がることになるでしょう。

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人材確保の難化

就活生の多くが社会人カーストによって会社を決めると、企業によっては人材確保が難しくなります。

知名度や安定性が低い企業は、社会人カーストで低い位置にあるため、就活生の間で人気が低くなりがちです。そのため優秀な人材が集まりにくくなります。どれほど魅力のある企業だったとしても、人材確保に悩むことになるのです。

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6.社会人カーストで悩む社員のためにできること

社会人カーストに悩む従業員に対して、どのようなサポートができるのでしょうか。3つのポイントを取り上げて説明します。

相談できる環境を整える

まず、悩みを抱えた従業員が気軽に相談できる職場環境を整えることが大切です。たとえば通信大手ソフトバンクでは、2008年から「ピアサポーター制度」を導入して社員のメンタルヘルスをサポートしています。

産業医や心理カウンセラーなどの専門家に相談しようとは思えなくとも、産業カウンセラーなどの資格を持つ一般社員には悩みを気楽に相談できるでしょう。

キャリア研修を行う

キャリア研修を実施することをおすすめします。キャリア研修とは自身のキャリアを振り返り、それをもとに今後のキャリアイメージを明確化して行動計画を立てるための研修です。

キャリア研修を実施することで、自身の望む今後のキャリアを描けるため、社会人カーストから抜け出すチャンスをつかめるでしょう。

資格取得の支援を行う

キャリアアップのための資格取得をサポートすることも大切です。社会人カーストを抜け出そうと自らが描いたキャリアアップの行動計画に資格取得が必要な場合、支援制度があると資格取得がスムーズになります。

資格取得のための講座の受講料が補助されたり、割安な講座が開催されたりすれば、資格取得への意欲も高まります。