ベア(ベースアップ)とは?【簡単に】 意味、英語、春闘

ベアとは、給与水準を会社で一律に上げていくことです。ここでは、ベアについてさまざまなポイントから解説します。

1.ベアとは?

ベアとは、給料水準を一律にアップさせること。ベアが実施されると、生涯獲得賃金の総合計金額や可処分所得が増加するため、消費活動の活発化や経済の循環が期待できます。

しかし個々の企業にとっては、人件費増加や業績悪化時も給与を削れないというリスクを抱えることになるのです。

ベアはベースアップの略語

ベアとは、ベースアップの略語です。ベースアップとは、物価の上昇・賃金相場の変動などに鑑み、労使間で交渉するなか全社員を対象として賃金テーブルを一律に引き上げるよう書き換えること。

近年、デフレ経済・成果主義の導入・企業間の業績格差などを背景に、春闘でのベア要求がしにくい状況にあります。

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2.ベアの特徴

ベアには特徴があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 英語では「Base Up」
  2. ベアが意味するもの
  3. ベアの効果
  4. 具体的な計算方法
  5. 注意点

①英語では「Base Up」

ベアは英語で「Base Up」と表記します。しかし「Base Up」は和製英語です。Baseが「基礎、根拠、出発点」、Upが「上がって、より高いところへ」といった意味を持ちます。

日本で用いられるベースアップと欧米で話されている「Base Up」には意味の違いがある点に注意しましょう。

②ベアが意味するもの

ベアが意味するものは2つあります。

賃金水準の引き上げ

ベアは、使用者と労働組合の交渉で決められます。ベアの実施交渉で参考にしているのは、企業業績・世間や同業他社の相場・物価変動などの項目です。

労使間の交渉を経てベアが実施されれば、従業員の基本給賃金の底上げが実現します。
全社的に従業員の賃金水準が引き上げられるため、従業員の可処分所得が増加していくのです。

年功序列の促進

ベアでは、勤続年数に関係なく全社で一斉に賃金水準を上げます。そのため、年功序列とは異なるしくみのように見えるでしょう。

しかしベアは、従業員個人の能力や成績とは無関係かつ全社一斉に行われます。よって年齢や勤続年数による賃金格差が埋まらず、より高い水準で年功序列が促進されるのです。

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③ベアの効果

少子高齢化による労働人口の不足が慢性化しています。そのため、優秀な労働力を確保することが難しくなっているのです。

企業がベアを実施すれば賃金水準が高くなり、離職率を低下できたり求職者に対する強いアピールになったりできるでしょう。それにより優秀な人材の確保が見込めます。

④具体的な計算方法

計算方法は、「昇給前の給与額×ベアの昇給率」です。たとえば、基本給20万円で昇給率1%だった場合、20万円×1%=2,000円。つまりベア後に基本給は20万2,000円が支払われるのです。

このように、ベアの計算をする際には昇給率を抑えておく必要があります。また、昇給率からは、企業の将来性なども読み取れます。

⑤注意点

注意点は、ベアによる給与水準の改定理由を明確に労働者に提示すること。理由が不明のままベアが実施されても、労働者のモチベーションは低下しかねません。

また一度ベアを実施してしまうと、時間外労働に対する割増賃金も増加します。また一旦水準を上げれば、業績悪化が起きても水準を下げにくくなってしまうでしょう。

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3.ベアと春闘

ベアと春闘には密接な関係があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 春闘
  2. 2つあるベアの要求方式
  3. 景気の影響を受けるベア

①春闘

経営側や労働者を代表する労働組合が、労働条件などを交渉する場のこと。一般的に2月や3月に実施されるため、「春」という漢字を用いて春闘と呼ばれるようになりました。

春闘は、炭鉱など産業別組合が一斉に経営側に給与アップを要求したことがきっかけで始まったのです。ベアのほかにも夏季一時金や年末一時期・休暇制度などについても交渉を行う場になっています。

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労働組合

労働者が主体となり、労働条件の維持、改善・経済的地位の向上などを目的として自主的に組織される団体のこと。憲法第28条では労働組合に対し、「団結権」「団体交渉権」「争議権」の労働三権を認めています。

労働三権を保障するために労働組合法が設けられ、使用者は労働組合員に対して不当な取扱いを禁じているのです。労働組合は、労働者が複数人集まることで自由に結成できます。

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春闘による賃上げ実現のための要素

春闘による賃上げ実現のための要素はいくつかあります。ベースになる要素は、企業業績の向上。ただし、業績向上=必ずベアが行われる、わけではありません。

ベアに伴う人件費の増加や賃上げ後に賃下げを行うのは難しい点が、企業のリスクになりかねないからです。また無理なベアは、結果的に経営を圧迫し、結果的に労働者にとっての不利益になる場合もあります。

企業は業績向上だけでなく、「コストや外部要因、将来性などの要素を分析」「経営理念や経営目標との整合性を検討」も含めて、賃上げを決定しなければなりません。

②2つあるベアの要求方式

ベアの要求方式は2つあります。

平均賃上げ方式

労働者ひとり当たりの平均賃上げ額や率に関して要求、交渉、決定する方式のこと。平均賃上げ額や率が決定された後、賃上げ原資となる人件費をもとに個々の労働者の賃金を算定するのです。

経営側が賃上げの原資をどのくらい用意するのかによって賃上げ額が変動します。そのため、他社や平均年齢から換算した賃金比較が困難で不透明になるのです。

個別賃金方式

個々の労働者の個別賃金を決定し、その結果、平均賃金を算出する方式のこと。下記の2つがあります。

  • 新卒から雇用されている人の特定年齢を基準とする標準労働者方式
  • 特定の資格を基準とする職種別一人前方式

個別賃金方式は、個々の労働力を考慮しベアが決定されます。労働者一人ひとりの賃金水準を適正に把握するためにも、個別賃金方式による比較は不可欠です。

③景気の影響を受けるベア

ベアは、景気の影響を大きく受けます。過去、高度経済成長・バブル景気などの恩恵を受けた時代には、物価の上昇に合わせて年2~5%のベアが行われていました。

しかし、景気が低迷した2000年以降、ベアは凍結。再びベアが交渉のテーブルにのったのは、2014年頃です。そして中小企業の労働者のベアや賃金の水準は、以前のようには上がっていません。

今後は、中小企業の労働者・アルバイトや派遣などの非正規社員などの所得格差が是正される働き方が必要になります。

官製春闘

首相官邸が主導して中小企業も含めた企業の賃上げを実現すること。従来、春闘は使用者と労働者の代表である労働組合が、労働条件をより良くするために交渉するものでした。

しかし2014年の春闘では、首相官邸が主導。それにより15年ぶりに賃上げ率が2%を超えたのです。その後、この春闘を官邸春闘と呼ぶようになりました。そして、15年と16年の労使間の交渉に官邸が介入したため、官製春闘が続いたのです。

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4.直近のベアの現状とコロナ禍のベアの予想

直近のベアの現状とコロナ禍のベアの予想があります。ここでは、直近3年間のベアの現状と見通しについて解説します。

2020年のベア実施状況

2020年のベア実施状況は以下のとおりです。

  • 14年~19年で昇給、ベースアップともに実施した企業は5割超
  • 20年は昇給、ベースアップともに実施した企業は4割弱
  • 20年は昇給のみ実施した企業は6割超

この結果から、2020年は多くの企業で賃金の増額改定を実施しているとわかります。ただし、ベアの額は511円でベア率で0.17%。その額は3年ぶりに1,000円を下回る金額になっています。

2021年のベア実施状況

2021年のベア実施状況は以下のとおりです。

  • 20年は昇給、ベースアップともに実施した企業は4割弱
  • 21年は昇給、ベースアップともに実施した企業は3割
  • 21年は昇給のみ実施した企業は7割弱

この結果から、14年から8年連続で多くの企業で賃金の増額改定を実施しているとわかります。ただし、ベアの額は366円でベア率で0.12%。ベアは20年21年と連続して1,000円未満の低水準となっています。

2022年コロナ禍におけるベアの見通し

2022年コロナ禍におけるベアの見通しは以下のとおりです。

  • 経済状況の改善や企業業績の向上などを背景に、22年はベアを復活させる企業が出てくる
  • コロナ禍の影響を受け、コロナ禍前の水準まで回復するのは2024年以降になる
  • ベアは個々の企業によってバラつきがある可能性も高い
  • 春闘ではボーナスについての交渉も行われ、小幅ながら月額給与が改定される点も鑑みると、ボーナスの改善も見込まれる
  • 原油高などの影響で生活必需品や食料品価格の値上がりがあれば、ベアがどの程度個人消費に影響を与えるかは不透明
賃金を上げる主な理由

帝国データバンクの2022年度賃金動向に関する企業の意識についての調査アンケート結果を見てみると、賃金を上げる理由がわかります。

  • 「労働力の定着、確保」が8割、「自社の業績拡大」が4割弱と理由の多くを占めている
  • 「物価動向」2割、「同業他社の賃金動向」「最低賃金の改定」が2割弱で、さまざまな理由で賃上げを検討しているとわかる

優秀な人材の確保のため、ベアを活用しようとしている企業が多くあるとわかります。

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5.ベアの関連語句

ベアには関連語句があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 定期昇給
  2. 平均賃金
  3. 賃金カーブ

①定期昇給

会社が設定したタイミングで定期的に賃上げを行う制度のこと。定期昇給を行うタイミングは、「4月の年1回」「4月と10月の年2回」が一般的です。定期昇給は、年齢や勤続年数、成績などに応じて行われ、その基準は就業規則に記載されています。

ただし会社の業績によっては定期昇給が行われない場合も。また定期昇給にはタイミングがあるため、自分が上げた実績の時期より定期昇給の時期が遅くなるときもあるのです。

ベアと定期昇給との違い

ベアと定期昇給との違いは、以下のとおりです。

  • ベアは、全社で一律に基本給を増額改定する
  • 定期昇給は、個々の労働者の年齢や勤続年数、成績など会社への貢献度によって賃金の増額改定を行う

ベアも定期昇給も賃金が増額改定される部分は同じです。しかしその基準が、「ベアは会社」「定期昇給は個人」という点で異なります。

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②平均賃金

労働基準法第12条に明記されている賃金です。休業給付や解雇手当など、労働者の権利として認められている各種手当の金額を計算するために用いられます。

平均賃金は、平均賃金を算定すべき事由が発生した3カ月以前の期間に労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の日数で割って算定します。

平均賃金の計算方法

平均賃金は、「平均賃金を算定事由が発生した日より以前の3カ月間に従業員に支払われた賃金総額÷その期間の総日数」で計算します。なお「月給制」「日給、時給制」で下記のように変わるのです。

  • 月給制:3カ月に支払われた賃金総額÷3カ月の暦日数
  • 日給、時給制:3カ月に支払われた賃金総額をその期間の労働日数で除した金額の60%と、月給制の計算式の結果を比較し金額の高いほう

賃金の総額には、臨時に支払われた賃金といった一部除外される賃金もあります。

平均賃金が必要となるケース

平均賃金が必要となるのは以下のケースです。

  • 会社が30日分以上の平均賃金を支払って解雇する際の解雇予告手当
  • 会社の責めに帰すべき事由による休業期間中に支払われる、平均賃金の100分の60以上休業手当
  • 有給休暇を取得する際、賃金と通常の賃金、もしくは健康保険法の標準報酬月額の30分の1相当額のいずれかを労働者に支払う賃金

③賃金カーブ

年齢・勤続年数の増加に比例して賃金も上昇する上昇具合を表した曲線です。長く会社に勤めることと賃金の上昇が比例しているため、年功カーブとも呼ばれています。

賃金カーブを維持するには、賃上げ交渉時にカーブを維持するための賃上げを実施していく必要があるのです。年齢とともに子どもの教育費といった出費も多くなっていくため、賃金カーブの維持は労働者にとっても重要です。

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