アジャイル型組織とは?【企業事例】メリット・デメリット

アジャイル型組織への注目が高まり、変わりゆくビジネス環境に迅速に適応する組織構造の必要性が増しています。この組織形態は、素早い意思決定を通じて短期サイクルでの修正・改善を可能にし、市場のニーズや現れる課題に対する機敏な対応を実現します。

本稿では、アジャイル型組織の意義について掘り下げ、それに伴う利点と限界、さらには実践における具体的なポイントと、先進企業の事例を紐解いていきます。

1.アジャイル型組織とは?

アジャイル型組織とは、顧客のニーズに対して、迅速かつ効果的に応える組織構造です。この形態では、顧客からの連続的なフィードバックを受け、その都度、システムの修正や改善を行いながら、最も価値のある成果を提供することを目指します。

このようなアジャイルな組織体は、現代企業が持続的な成長と進化を遂げるための基盤として、ますます不可欠となっています。

そもそもアジャイルとは?

アジャイル(Agile)とは、もともと「機敏さ」「迅速さ」「敏捷性」といった意味合いを持つ英語で、ビジネスの文脈では「環境や状況の変化に対する素早い適応力」を表します。

開発の現場でよく用いられていたこの用語は、今日では組織の運営や経営戦略にも応用されており、「アジャイル思考」「アジャイルマインドセット」という形で、試行錯誤を繰り返しながら価値の創出を目指す文化としても定着しています。

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2.アジャイル型組織が注目される理由

アジャイル型組織が広く注目される主要な理由は、ビジネス環境の進化と変化にあります。このセクションでは、そのような注目の背景を詳細に解説します。

アジャイルソフトウェア開発宣言

2001年に制定された「アジャイルソフトウェア開発宣言」は、アジャイル開発の価値観と原則を体系化した文書です。この宣言が公開されたことで、アジャイルは従来の軽量開発手法を代表する概念として世界中に普及しました。

このアプローチは、ソフトウェア開発に留まらず、組織運営や経営の領域でも影響力を持つようになりました。

競争環境の急激な変化

現代市場は、物理的な製品の価値から「体験」へと価値観がシフトしています。この結果、従来の製品価値向上だけではニーズに応えられなくなり、顧客にとっての意味が重視されるようになりました。

また、SNSの普及により情報の取得と発信が容易になり、変化のスピードが加速しています。これに対応するため、アジャイルな考え方が重要視され、アジャイル型組織の重要性が高まっています。

DXの推進

DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まる中、ビジネスモデルや組織の変革をデジタル技術とデータを活用して行うことが重要となっています。

現代の多様なビジネス環境では、リアルタイムデータを基にした迅速な意思決定と柔軟な対応が求められます。このため、アジャイル型組織の特性はDX推進に適しており、その導入がますます求められています。

国内でのジョブ型雇用の浸透

日本国内においては、新卒一括採用や終身雇用を中心としたメンバーシップ型雇用から、職務内容とスキルに基づくジョブ型雇用への移行が進んでいます。

この変化は、柔軟で適応力の高い組織づくりが求められる中で、アジャイル型組織の構造が注目を集める一因となっています。

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3.アジャイル型組織の特徴

アジャイル型組織には、下記5つの特徴があります。

  1. フラットな組織構造
  2. 組織ビジョンが明確
  3. 迅速なPDCAサイクル
  4. 柔軟な対応が可能
  5. DXを促進

①フラットな組織構造

アジャイル型組織の最大の特徴は、そのフラットな組織構造です。この形式では、権限がメンバーやチームに分散され、意見やアイディアが尊重される文化が醸成されます。これにより、年齢や性別に関わらず、すべてのメンバーが意見を述べやすい環境が整います。

また、多様な視点を持つメンバーが参加することで、顧客の要望に敏感に反応できる体制が築かれます。

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②組織ビジョンが明確

アジャイル型組織では、明確な組織ビジョンを持つことが重要です。これにより、トップダウンの意思決定に頼ることなく、各工程でのブレのない意思決定が実現します。ビジョンの明確化は、社内の統一された行動を促し、組織の一体感を強化します。

③迅速なPDCAサイクル

アジャイル型組織は変化に柔軟に対応するため、迅速なPDCAサイクルを重視します。「企画→実行→改善」のサイクルがスピーディに回り、市場への迅速な対応が可能になります。顧客からのフィードバックを基にした継続的な改善が、より良い成果物の生産を促進します。

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④柔軟な対応が可能

アジャイル型組織は、権限がチームやメンバーに分散されているため、迅速かつ柔軟な意思決定が可能です。これにより、変化の速い市場環境においても、ニーズの変動に即座に対応することができます。

⑤DXを促進

大企業のトップダウン型の組織では、DXの推進が難しいことが多いです。しかし、アジャイル型組織では、権限が分散されており、変化への対応が容易です。これにより、DXの推進を効果的にサポートし、デジタル技術の導入と活用を促進します。

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4.アジャイル型組織とほか組織との違い

アジャイル型組織の特徴をさらに理解するため、ほか組織との違いをみていきます。

  1. ピラミッド型組織
  2. ティール組織
  3. ホラクラシー組織

①ピラミッド型組織

ピラミッド型組織は、トップダウン型のヒエラルキーが特徴です。ここでは、組織の頂点に位置するリーダーから従業員へと意思決定が伝わる形をとります。

一方でアジャイル型組織は、権限がリーダーを中心に分散され、フラットな組織構造を持つため、ヒエラルキーが形成されず、トップダウンの流れもありません。

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②ティール組織

ティール組織は、「自主経営」「全体性」「存在目的」という三つの要素を重視し、組織全体で自主経営を行います。ここでは、すべてのメンバーが意思決定における権限と責任を共有します。アジャイル型組織も自律性の概念を含んでいる点で類似していますが、重視する要素においては異なります。

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③ホラクラシー組織

ホラクラシー組織は、上下関係の存在しない、権限が集中しないフラットな組織構造を持つ点でアジャイル型組織と共通しています。ただし、アジャイル型組織では個々のメンバーに権限があるのに対し、ホラクラシー組織では権限がグループごとに分散されるという点で異なります。

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5.アジャイル型組織のメリット

アジャイル型組織では、下記のようなメリットに期待できます。

エンゲージメントや生産性が向上

アジャイル型組織では、各メンバーに明確な役割が与えられることから、高いエンゲージメントが期待できます。この環境は、優秀な人材の定着を促し、従業員のスキル向上や組織力の強化に貢献します。

また、モチベーションの向上がパフォーマンスの向上に直結し、生産性や業績の向上に繋がるポジティブなサイクルを生み出します。

意思決定が迅速化

アジャイル型組織では、意思決定権がトップに集中しないため、迅速な意思決定が可能です。これにより、顧客のニーズの変化や競合他社の動向に対する反応が迅速になり、リスクを軽減できます。

ビジネス機会が増加

開発プロセスの柔軟性が高いため、市場の変化や顧客の要望に迅速に対応することで、新たなビジネスチャンスを捉える可能性が高まります。また、開発と改善を繰り返すことで、新しいアイディアや革新的なイノベーションが生まれやすくなります。

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6.アジャイル型組織のデメリット

一方で、アジャイル型組織には、下記のようなデメリットも存在します。

マネジメントスキルが必要

アジャイル型組織では、トップからの指示に頼らずに自律的に行動するため、リーダーの強力なマネジメント能力が求められます。メンバーの自律性を尊重しつつ、状況に応じてプロジェクトの進め方を調整できる柔軟性も必要です。

これを実現するには、高度なマネジメントスキルを持つ人材の選定が不可欠です。

着地点が不明確

アジャイル型組織では、PDCAサイクルを迅速に回し続けるため、プロジェクトの最終目標が不明確になることがあります。これにより、適切なスケジュールの設定やリソースの分配が困難になる場合があり、プロジェクトの遅延を引き起こすリスクがあります。

向き不向きの発生

アジャイル型組織では、メンバーが積極的に協力し、自律的に行動することが求められます。しかし、従来の組織文化や従業員の性質がこれに適していない場合、アジャイル型組織への移行は難しいです。

スキルのギャップ埋めが困難

各メンバーが自律的に行動するため、教育の機会が減少し、スキルギャップが埋まりにくくなる可能性があります。これにより、スキルが高いメンバーに業務が集中し、スキルの低いメンバーが取り残されるリスクが生じます。

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7.アジャイル型組織を実現するためのポイント

アジャイル型組織へと転換する際は、スモールスタートと職場・学習環境の構築が重要です。ここでは、アジャイル型組織を実現するためのポイントを詳しく解説します。

  1. パイロットチームによるトライアルの実施
  2. 人材育成に適した学習環境の構築
  3. 職場環境の改善と整備

①パイロットチームによるトライアルの実施

パイロットチームを設け、その中でアジャイル型組織の働き方を試行することが、スモールスタートの一つの方法です。

限定的なチームでアジャイル型組織に基づいた働き方を試し、その効果を検証します。成功体験を基に、段階的にアジャイルな働き方を組織全体に導入し、徐々に変革を進めます。

②人材育成に適した学習環境の構築

アジャイル型組織では、個々のメンバーが自律的に意思決定するスキルが求められます。このスキルを育成するためには、社内外研修やeラーニングなどを含む充実した学習環境の構築が不可欠です。

従業員が必要なスキルを自発的に学べる環境を提供することで、アジャイル型組織への移行を支援します。

③職場環境の改善と整備

アジャイル型組織では、失敗を恐れずに新しい試みに挑戦する姿勢が大切です。この姿勢を根付かせるためには、失敗を受け入れ、アイディアや意見を尊重する職場環境の整備が必要です。

また、失敗時の迅速なフォロー体制を整えることで、挑戦しやすい文化を育てることができます。

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8.アジャイル組織の企業事例

アジャイル型組織は、さまざまな組織で転換が進められています。ここでは、実際に企業がどのようにしてアジャイル型組織を実現しているかの事例をご紹介します。

スポティファイ・テクノロジー

スポティファイ・テクノロジーは、アジャイル型組織の代表例として広く知られています。同社は、スウェーデンで2006年に設立され、短期間で世界的な企業へと成長しました。その成功の背景には、アジャイル型組織による効率的な業務運営と市場ニーズの迅速な反映があります。

同社の組織構造は、「分隊(Squad)」「部隊(Tribe)」「支部(Chapter)」「ギルド(Guild)」という4つのチームに分かれています。これらは独立した意思決定権を持ちながらも、共通のスキルセットや知識を共有し、連携を取りながら業務を進めます。

アクサ生命保険株式会社

アクサ生命保険は、日本においてアジャイル型組織を導入した先駆けの企業です。2018年にIT部門の組織変更を行い、開発生産性の向上とシステム品質の改善を目指しました。この変更では、ビジネス部門とIT部門が連携しやすい体制への再編が行われ、ITエンジニアの採用強化とシステム開発の内製化が進められました。

この取り組みにより、アクサ生命保険はシステム開発のコスト削減、期間短縮、そして従業員のモチベーション向上を実現しました。