全体最適とは?【わかりやすく解説】部分最適との共通点と違い

全体最適とは、企業組織が最適な状態にあること。全体最適が求められる理由や部分最適との違い、メリットやデメリットなどを解説します。

1.全体最適とは?

全体最適とは、企業やチームが組織として最適な状態であること。

組織は複数の部門から構成され、部門固有の目標に向かって行動するため、全体では不具合が生じる場合もあります。しかし全体最適な組織であれば、各部門の活動が最適化され、高いパフォーマンスを発揮できるのです。

英語表記

英語では「Total Optimization」と表記されます。「Optimization」は「最適化」を意味し、全体を日本語訳すると「組織全体として最適な状態」となるのです。なお「最適化」は、制約条件があるなかでその成果を最小、または最大にすることを意味します。

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2.全体最適が求められる理由

全体最適が実現できれば、組織にとって多くのメリットが生じるのです。ここでは全体最適が求められる理由について説明します。

人材不足

労働人口が減少している昨今、十分な人材が確保できなくても業務を縮小するわけにはいきません。この課題に対して有効なのは、業務効率を改善して各社員の生産性を上げる方法です。生産性を向上するには、全業務の効率化、つまり全体最適が必要になります。

利益の最大化

先に挙げたように、組織の一部門で生産性が向上すれば、同じコストやリソースから得られる利益は大きくなります。しかしほかの部門で生産性が上がっていなければ、企業の利益が最大化したとはいえません。

自社の目標を達成すべく、全部門と全社員が生産性を最大化した状態になれば、各部門から生じる利益も最大化します。

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3.全体最適に関するピーター・ドラッカーの名言

経済学者のドラッカーも、「いかに優れた部分最適も全体最適には勝てない」との名言を残しています。たとえば企業において、営業活動で利益を創出するのは重要です。

しかし営業で短期的な利益を出せていても、企業全体で中長期の利益を目指す「経営」ができていなければ、大きな成長は望めないでしょう。

ピーター・ドラッカーとは

ピーター・ドラッカーはオーストリア・ウィーン出身の社会学者。「近代経営学の父」とも呼ばれ、現代経営学やマネジメントの発明者として広く知られています。

とくに有名な著書『マネジメント』は組織マネジメントと自己マネジメントの基礎を解説しており、世界中のビジネスパーソンに読まれているのです。また『現代の経営』では、部分最適の危険性を指摘しています。

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4.全体最適と部分最適の共通点と違い

全体最適と対になる考え方に部分最適があります。全体最適を目指すならば、部分最適との違いも知っておきましょう。

部分最適とは?

部分最適は、全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方のこと。「見える範囲」「考えられる範囲」「できる範囲」など、ある狭い範囲のみが最適化された状態ともいえます。

なお英語では「Partial Optimization」と表し、日本語訳は「部分的な最適化」です。たとえば営業部の業務を効率化して受注数が増えたとしても、製造部の対応が追いつかず利益が最大化できない状態ならば部分最適といえます。

共通点

全体最適と部分最適は対義語として捉えられがちです。しかしいずれも社員が「利益を最大化しよう」と業務に励む点は共通しています。

もちろん部門ごと、あるいは社員一人ひとりは自分の考えうる範囲での努力を行い、パフォーマンスの最大化を目指しているのです。ただ先に挙げた例のように、「部分最適の合計=全体最適」になるとは限りません。

違い

利益の最大化という共通目標はあっても、各社員においては「視点」が異なります。たとえば経営層は企業全体の生産性や利益を考えていけるでしょう。しかし一般社員のほとんどは自分の部門やチーム以上の視点は持ちにくいです。

全体最適を目指して業務改善施策を取り入れたのに、部門だけの部分最適で終わってしまうケースも珍しくありません。

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5.全体最適と部分最適の使いわけ

全体最適と部分最適はある意味相反する概念ですから、得られる効果や派生する行動が異なります。それぞれの特徴を把握し、課題によって使いわける必要があるのです。

全体最適が求められるケース

全体最適を意識すべきなのは、組織全体にわたって解決すべき課題がある場合。

たとえばコスト削減の目標を掲げ、ある部門で目標達成しても、ほかの部門でそのしわ寄せから時間外勤務が増加していては意味がありません。

経営層もしくは経営層に近いポジションの人は、課題解決を目標とした全体最適戦略および戦術を策定する必要があります。

部分最適が求められるケース

上層部が定めた全体最適化戦略から、管理職以下の各社員に対する役割が明確になっている場合です。このときにする部分最適は、それぞれやりたいようにすることではありません。

経営層やリーダーから全体最適で与えられた役割を全うし、より作業の効率化を図る必要があります。

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6.全体最適のメリット

全体最適における最大のメリットは、部門ごとの役割が明確化され、生産性の向上を実現できること。また副次的メリットとして「コストの削減」「ミスの防止」「スピーディーな意思決定」などが挙げられます。メリットについて解説しましょう。

  1. 役割の明確化
  2. 生産性の向上
  3. コストの削減
  4. ミスの防止
  5. スピーディーな意思決定

①役割の明確化

全体最適を実現するためにはまず、各部門の目標や役割を示します。これによりチームの目標や役割、さらに各社員の目標や役割に細分化されるのです。そのため「自分は何をすればよいか」がはっきりします。

役割の明確化は人や業務を固定化する側面もあり、仕事の精度や効率を高めるのです。この役割の明確化において、社員の配置転換や業務の配分、チームの増設などが必要になる場合もあります。

②生産性の向上

全体最適で各部門の業務の無理や無駄がなくなり、効率や生産性が高まります。複数の部門で重複した作業を行っている、あるいはそもそも今では必要のない仕事を考えもなく続けているといったケースもあるからです。

たとえばマーケティング部と営業部、両方でテレアポをしていると、同じ顧客へアプローチしてしまう恐れもあるでしょう。全体最適でこのような無駄な作業を減らせば、生産性の向上につながるのです。

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③コストの削減

全体最適が達成されると各部門で無駄な業務が減り、コストの削減につながります。費用対効果が向上し、部署ひいては企業に利益をもたらすのです。ただしコスト削減を目標とした最適化を各部門に命じた場合、各部門の部分最適に陥る恐れもあります。

たとえばある部門で省いた作業を、ほかの部門でやらなくてはいけないといったケースです。全社でコスト削減を考える場合、各部門横断で全体最適を進める必要があります。

④ミスの防止

全体最適に向けて業務の効率化を進めると、結果としてミスが減ります。たとえば自動化ツールを活用すれば計算ミスを防げますし、適正な業務量を割り振ればチェックの時間を十分に取れるからです。

また部門間の連携強化も全体最適に含まれるため、各部門のコミュニケーションが円滑になります。そのため部門にまたがるミスも減らせるのです。

⑤スピーディーな意思決定

全体最適が成されると、経営層が迅速に意思決定できます。部門間の情報交換がスムーズになるため、各部門の管理職がそれらの情報をタイムリーに集約でき、経営層も早期に状況を把握できるようになるからです。

また各部門の役割が明確化されるため、部門管理者が意思決定を下すときも、自社の方針や戦略に沿って正しくスピーディーに行えます。

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7.全体最適のデメリット

全体最適にはデメリットも存在します。経営層がデメリットを理解しないまま無理に全体最適を推し進めても、目の前の業務に慌ただしい社員からは理解が得られないでしょう。

  1. 組織内対立の発生
  2. 現場の対応
  3. 導入に時間やコストが必要

①組織内対立の発生

全体最適を行う場合、ある部門にメリットがある半面、ほかの部門にはデメリットが発生する恐れもあります。

たとえば営業部に契約件数に応じたインセンティブが支払われているとしましょう。

全体最適では、工場のキャパを超えて契約を取るのは避けなければいけません。しかし部分最適の考えでは、契約数は多ければ多いほど営業部の利益につながります。

ただしこの場合、営業部門長と工場長の反目といったように、部門同士の対立に発展しかねません。

②現場の対応

経営層やリーダーが全体最適のための指示を出しても、現場の対応が追いつかない場合もあります。たとえば全体最適を行うため、経営層が工場の生産量や在庫数を調整するケースです。

しかし取引先との契約や原材料のストック、社員の労働日数などの兼ね合いで、現場は指示どおり動けない状況も少なくありません。全体最適の導入には、時間をかけて体制を整備しながら進める必要があります。

③導入に時間やコストが必要

全体最適を導入する場合、組織の規模が大きければ時間やコストがかかります。大きな組織ほど多くの経営資源を保有しているため、見直しには莫大な時間やコストがかかってしまうからです。

また全体最適に向けてツールの導入や新部署の設立、業務研修なども必要となれば、その分のコストも生じるでしょう。これらのコストに見合う費用対効果を得られるか、よく検討すべきです。

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8.組織を全体最適化する際のポイント

全体最適を実現するためには、経営層が注意すべきポイントがあります。ここでは4点に絞って解説しましょう。

  1. トップが中心となって方針を決定
  2. 社員の理解を得て意識を改革
  3. 組織内での活発的なコミュニケーションを推進
  4. ITシステムの活用

①トップが中心となって方針を決定

全体最適を成功に導くには、「トップの本気度」を見せる必要があります。経営層が自社の方向性や目標を各部門の管理者や社員へ十分に伝えられなければ、それぞれの部門が独自の判断で動いてしまい、部分最適で終わってしまう恐れもあるからです。

先に述べたとおり部分最適は、各部門の対立や社員からの反発を引き起こしかねません。

②社員の理解を得て意識を改革

全体最適を実現するには、実際に取り組む全社員の意識統一が不可欠です。たとえばトップ自らが全社説明会を開催し、全体最適の必要性や目的、目指す組織のあり方などを社員に伝えて、社員の理解を得る必要があります。

また部門の管理者に対する詳細な説明も欠かせません。これまでの部門管理者の考え方や方針が部分最適である場合も多いからです。

③組織内での活発的なコミュニケーションを推進

経営層は、全体最適の必要性を理解した部門管理者と各社員とのコミュニケーションを推進しましょう。全体最適では、一般社員の全員が一丸となって自社の目標に取り組む必要があるからです。

各部門内で業務の洗い出しや課題抽出、解決策の考案などを行う際、多くのコミュニケーションが欠かせません。また同時に部門間でも十分なコミュニケーションが必要です。

④ITシステムの活用

ITシステムを導入すると、生産性を高められます。たとえば先に挙げた自動化ツールは定型業務の手間を大きく省けますし、部門間のコミュニケーション不足で生じる事務の重複は、ビジネスチャットツールの活用で削減可能です。

タレントマネジメントシステムを導入すれば、社員の能力を生かした人材配置ができ、社員のパフォーマンスを最大化できます。

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9.全体最適化の成功事例

自社における全体最適の方向性に迷ったときは、他社の事例を参考にするとよいでしょう。ここでは2社の事例を紹介します。

  1. 資生堂
  2. 富士通

①資生堂

資生堂では多くのブランドを抱えており、複数のブランドは赤字状態でした。しかし赤字ブランドがなくなれば、顧客や技術を失うかもしれません。とはいえこれらのリスクを避けて赤字ブランドを維持しても、全体の利益が増える見込みはなかったのです。

そこで資生堂は全体最適に踏み切り、100以上あったブランドを4年間で35まで減少しました。結果、ブランドを減らしたにもかかわらず売り上げは増加したのです。

②富士通

富士通は、顧客へよりよいサービスを提供するために全体最適を実施。今までは顧客の要望に沿ったITシステムを提案するという営業スタイルでした。しかしそのような営業は顧客が持つ本来の悩みを解決していないと考えたのです。

そこで顧客業務を改革すべく、「フィールド・イノベーション」という方針を策定。これは顧客のビジネスを「人」「プロセス」「IT」3つの視点から分析し、最適な解決方法を提案するものです。

フィールド・イノベーターという専門人材を養成し、今では企業や自治体、学校などの業務革新を手掛けています。