バリューチェーンとは?【意味や分析のやり方をわかりやすく】

バリューチェーンとは、企業における各事業活動を価値創造のための一連の流れとして把握し、各工程に付加価値を見いだすフレームワークのこと。

バリューチェーンを分析すると、自社のビジネスにおける強み・弱みを把握でき、事業戦略の有効性や改善の方向を探れるのです。

この記事ではバリューチェーンの概要やサプライチェーンとの違い、バリューチェーン分析を行うメリット、分析方法、バリューチェーンを活用した企業の成功事例について解説します。

1.バリューチェーンとは?

バリューチェーン(Value Chain)とは、企業における各事業活動を価値創造の視点からとらえ、それぞれの活動がどのように全体の価値に貢献しているかを分析するフレームワークのこと。

この概念は、ハーバード大学経営大学院教授である経済学者、マイケル・ポーターによって提唱されました。

企業活動は、原材料の調達から製品の製造、販売、そしてアフターサービスに至るまで、多岐にわたります。バリューチェーンの分析を通じて、これらの活動がどのように相互に関連し、企業全体の価値を高めているかを理解できるのです。

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2.バリューチェーンの構成要素

バリューチェーンは「主活動」と「支援活動」のふたつで構成されます。

主活動

製品やサービスの創造から顧客に提供するまでの直接的な活動のこと。たとえば以下のようなプロセスが含まれます。

  • 購買物流(Inbound Logistics):原材料や部品の調達、保管、内部への輸送など、製品製造のための初期段階の活動
  • 製造(Operations):原材料や部品を加工し、最終製品を生産するプロセス
  • 出荷物流(Outbound Logistics):完成した製品の保管、配送、顧客への輸送などの活動
  • マーケティングと販売(Marketing & Sales):製品やサービスを市場に紹介し、顧客に購入を促す活動
  • サービス(Service):製品やサービスのアフターサービス、顧客サポート、保守・修理などの活動

支援活動

主活動を効果的に行うために必要な間接的な活動のこと。

  • 企業インフラ(Firm Infrastructure):会社の組織構造、管理システム、財務管理、計画など、企業全体の活動を支える基盤
  • 人的資源管理(Human Resource Management):従業員の採用、研修、開発、報酬など、人的資源に関連する活動
  • 技術開発(Technology Development):製品開発、プロセス改善、新技術の導入など、技術面での革新を促進する活動
  • 調達(Procurement):企業が必要とする商品やサービスの購入、サプライヤーとの交渉、契約などの活動

これら構成要素を理解して適切に管理すると、より効果的に価値を創造し、競争優位を確立できます。

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3.バリューチェーンとサプライチェーンの違い

バリューチェーンとサプライチェーンは、しばしば混同されがちであるものの、重要な違いがあります。

  • サプライチェーン:製品やサービスが顧客に届くまでの物理的な流れ、つまり原材料の調達から製造、流通、販売に至る「どのように製品が供給されるか」というプロセスに焦点を当てる
  • バリューチェーン:これらの活動がどのように企業の全体的な価値を高めるかに注目し、価値創造の観点つまり「どのように価値が創造されるか」を分析する

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4.バリューチェーン分析とは?

企業の各事業活動を価値創造の観点から分析し、どの活動が高い価値を生み出しているか、または問題があるかを明確にするプロセスのこと。この分析を通じて、企業は自社の強みと弱みを客観的に評価し、競合他社との比較を行えます。

バリューチェーン分析は、事業活動を機能別に分類し、それぞれの活動がどのように相互に関連し、全体の価値をどのように高めているかを明らかにする重要なツールです。

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5.バリューチェーン分析のメリット

バリューチェーン分析は、企業が自身の事業活動を深く理解し、戦略的な改善を図るうえで多大なメリットを提供します。ここではバリューチェーン分析を行うメリットを4つ紹介します。

コスト削減につながる

バリューチェーン分析を通じて、各事業活動におけるコスト構造を明確に把握できます。

この分析により、無駄なコストが発生している部分を特定し、効率化やコスト削減の機会を見つけ出せるようになるのです。 コスト削減は、企業の利益率を向上させ、より競争力のある価格設定を可能にします。

自社の強み・弱みを明確化し差別化できる

バリューチェーン分析により、自社の事業活動における強みと弱みが明確になります。 これにより、強みを生かした差別化戦略を策定し、市場での独自の地位を築けるでしょう。 また、弱みを改善すると、全体的な競争力を高められます。

競合他社の戦略が把握できる

バリューチェーン分析は、自社に対してのみ行うものではありません。競合他社のバリューチェーンを分析すると、彼らが市場に提供している価値を理解し、今後の戦略を予想できます。

また、自社との比較を行うと、競合との差別化ポイントを見つけ出し、独自の価値提案を強化できるようになるのです。

経営資源を適切に再分配できる

どの事業活動が最も価値を生み出しているかが明確になります。この情報をもとに、経営資源をより効果的に配分すれば、企業の全体的なパフォーマンスを最適化できるでしょう。

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6.バリューチェーン分析のやり方

バリューチェーン分析では、次の5つのステップを行うのが一般的です。ここからはバリューチェーン分析の具体的な進め方を解説します。

  1. 自社のバリューチェーンを洗い出す
  2. コストを把握する
  3. 自社の強み・弱みを分析する
  4. VRIO(ブリオ)分析を行う
  5. 経営資源を最適化する

①自社のバリューチェーンを洗い出す

自社のバリューチェーンについて把握するために最初に行うのが、主活動と支援活動の洗い出し作業です。まず、自社の事業活動をすべて洗い出し、それらを主活動と支援活動に分類します。

このステップでは、各活動がどのように全体の価値創造に貢献しているかを理解することが重要です。事業の各段階を詳細に分析し、それぞれの活動がどのように連携しているか、またどのような競争の優位性(あるいは劣位性)があるかを把握します。

②コストを把握する

次に、各活動にかかるコストを詳細に分析します。これには直接コストだけでなく、間接コストも含まれます。

エクセルといった表計算ソフトを使用して、活動ごとのコストを一覧化するとわかりやすいでしょう。コストの計算期間は四半期分や1年分など一律にし、担当部署も明記することが大切です。

ひとつの活動が複数部署にまたがっている場合、合算した金額を記載します。さらにコスト要因を分析したり、コストの関連性を調査したりすると、コスト削減のポイントを見つけられるでしょう。

③自社の強み・弱みを分析する

次に、各活動の強みと弱みを把握します。自社と競合の強み・弱みを主活動と支援活動の工程ごとにリストアップし、一覧表にまとめましょう。

ここでの「強み」とは自社の持っている経営資源のうち、他社と比べて優れているもので、付加価値を産み出している要因です。反対に「弱み」は、自社の経営資源で他社と比べて劣っているもので、自社が抱えている課題や改善点を指します。

つまり、自社の強みと弱みを把握するには、競合他社との比較が不可欠なのです。

なお、強みと弱みをリストアップするときは、できる限り多くの従業員にヒアリングし、偏りがないよう意見を集めましょう。さまざまな角度から検討すると、客観性を担保できます。

④VRIO(ブリオ)分析を行う

STEP3で洗い出した強みに、VRIO(ブリオ)分析を行います。VRIOとは、評価対象となる経営資源の持つ強みを分析するフレームワークです。

VRIOはValue(価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の頭文字で、これらの4つの要素を用いて、自社の競争優位を評価します。

  • Value:経済的価値 : その強みは外部環境の機会や脅威に適応するか
  • Rarity:希少性: その強みはごく少数の企業が有しているか
  • Imitability:模倣困難性 : その強みを競合他社が模倣するのは困難か
  • Organization:組織: その強みを有効活用する方針や手続きが整っているか

4つの要素に対して「Yes / No」、もしくは5段階評価で判定し、4つすべてがYesや高評価の場合は「競争優位」であり、Noや低評価の活動は対応策が必要な「競争劣位」であることが分かります。

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⑤経営資源を最適化する

以上のステップによりバリューチェーン分析を行うと、自社がどのような競争優位性または劣位性を有しているか明らかになりました。最後に分析結果をもとに、経営資源を最も価値を生み出す活動に集中させると、全体の効率と効果を最大化します。

資源の適切な配分は、企業の持続可能な成長と市場での競争優位を確保するために不可欠。とくに、重要な事業活動に焦点を当ててそこにリソースを集中すると、効率的な運営と成長を促進できます。

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7.業界別バリューチェーン企業事例

バリューチェーン分析の主活動は業界や業種によって異なるもの。ここでは例として製造業、自動車メーカー、物流業、サービス業、小売業の各サプライチェーンとバリューチェーンを活用して差別化戦略に成功した事例をご紹介します。

製造業|伊藤園

伊藤園は、「お~いお茶」の発売をきっかけに「緑茶飲料市場」を創出して緑茶飲料の社会的地位確立をリードしてきました。

高品質なお茶製品の製造にてとくに他社との優位性を図っているのは、主活動の「原料調達」と「製造」、「販売」のフェーズ。高品質な原料を安定的かつ高鮮度のまま調達するため、緑茶の名産地との関係を強化し、優れた品質の茶葉を確保し続けています。

また独自の急須式抽出機で抽出後すぐにペットボトルに充填するといった、顧客が飲む瞬間のおいしさにこだわった設計がなされているのです。

さらに「販売」のフェーズでは、広範な流通ネットワークを通じて、小売企業への営業や納品を自社営業で行っています。それにより、他社よりも広告への依存度の低い販売体制を構築できているのです。

自動車製造業|トヨタ

トヨタは、その革新的な生産システム「トヨタ生産方式」で知られています。彼らのバリューチェーンの強みは、「製造」にありました。しかし今はそれだけではありません。

トヨタはモビリティカンパニーへの変革に向け、2016年に「コネクティッド戦略」を発表し、MaaS(Mobility as a Service)への取り組みを加速させていく意向を表明しました。

MaaSとは、モビリティを単なる交通手段ではなく、AIや自動運転などのテクノロジーと掛け合わせた次世代の交通サービスとする概念のこと。

カーシェアリング、サブスクリプションサービス、ライドシェアの展開により、トヨタ車の運用拡大はもちろん、メンテナンス・保険・リースといったバリューチェーンの拡大も図っていくと掲げています。

物流業|ヤマト運輸

ヤマト運輸は、「高度な物流ネットワーク」と「配送サービス」によって、バリューチェーンを最適化。 同社は、40年以上で築いた高度な物流ネットワークとITシステムを駆使して、迅速かつ正確な配送を実現し、顧客満足度を高めています。

また、近年ではEC市場が急成長するなかで、EAZYというECに特化した配送商品もスタート。宅急便は送り状を手書きするイメージがあるでしょう。

しかしEAZYはデジタル伝票だけで完結するサービスです。受け取りの直前での時間変更、置き場所変更などが可能など、デジタルをフル活用し、顧客の満足や安心感を高めることを実現しています。

サービス業|メルカリ

メルカリは、オンラインフリーマーケットプラットフォームを通じて、個人間で売買が楽しめる新しいタイプのバリューチェーンを構築しています。

メルカリの強みは、主活動における「商品開発」「営業」「サービス提供」に相当する部分をユーザーに任せている点。

一般的には企業側が行う「受発注機能の運営」をユーザー間で完結できるため、手間とコストのかかる受発注業務から解放され、プラットフォーム全体の運営に集中できています。

その結果、匿名でのサービス利用を可能にしたり、料金未払いや配送トラブルを防止したりする仕組み化にも成功し、ユーザーの利用促進につながっているのです。

小売業|スターバックスコーヒー

スターバックスの強みは、主活動における「原材料などの購買力」と「サービス」。

スターバックスの価格は、競合他社に比べてやや割高に設定してあります。それは、品質へのこだわり、原材料のコーヒー豆を「厳選されたアラビカ種」だけに限定しているからです。

世界各地のサプライヤーとの信頼関係があることも、競合他社に模倣されにくい強みのひとつとされています。

もうひとつの強みは「サービス」です。店舗をサードプレイス(家、職場に続く第3の居場所)とみなし、その空間と質の高いサービスで、顧客にとって「スターバックスに居ること自体が価値」とすることに成功しました。

バリューチェーンのQ&A

バリューチェーンとは、原料の調達から顧客に商品が渡るまでの一連の流れを「価値の連鎖」としてとらえ、商品やサービスにどのような価値が加わっているかを明らかにするフレームワークです。ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授によって提唱されました。 競合とのバリューチェーンを比較し、強み・弱みを分析することで、事業戦略の改善などに役立てることができます。
バリューチェーン分析では、原料の調達から顧客に商品が渡るまでの一連の流れを「物の連鎖」と「価値の連鎖」の2軸で分析し、どの工程で高い付加価値が生み出されているのかを明らかにします。 ①バリューチェーンの洗い出し ②コスト分析 ③強み・弱みの分析 ④VRIO(ヴァリオ)分析 具体的には上記4つのステップで分析を実施します。
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