通達とは? 通知、勧告との違い、人事通達の種類、内示方法などについて

通達とは、行政官庁が所管の機関に文書で通知することです。行政上の意味、人事通達の種類、通知、勧告との違いなど詳しく解説します。

1.通達とは?

通達とは、行政官庁がその所掌事務について、所管の機関や職員に文書で通知することで、「通知する」「知らせる」という意味を持ちます。たとえば「通達を出す」「厚生労働省通達」などという風に使われるのです。

行政上の意味を説明

通達が持つ行政上の意味は、行政機関で作成、発出される文書形態で、判例では「上級行政機関が関係下級行政機関におよび職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するもの」と定義されています。

戦前は「通牒(つうちょう)」と呼ばれていましたが、戦後の公用文改革により、当用漢字を用いた名称として「通達」と変更されました。

そのほか似た言葉を説明

通達と似ている言葉には「通知」「通告」「連絡」「通信」「伝達」などがあります。それぞれの詳細な意味と使い方を説明しましょう。

通知

通知とは、特定の人あるいは不特定対数の人に対して、必要な物事を知らせること。基本的に強制力はなく、行政や司法では、相手に前もって内容を知らせる行為を意味する場合が多いです。

使用例としては「入学許可の通知が届いた」「結婚式の通知を出す」などで、通知を通告や通達には、置き換えられません。

通告

通告は、特定の相手に決定事項や意向などを公的に知らせることで、文書などで正式に知らせるという意味も持ちます。

使用例は、「納税期限を通告する」「解雇を通告する」「強制執行を通告する」などで、「通知」より一方的、命令的な意味合いが強くなっています。また公から個人または団体に対して、何かをさせるときにも用いられるのです。

連絡

連絡は、「ある事実を相手に知らせる」「関係者に情報などを知らせる」「気持ちや考えなどを相手に知らせる」などの意味を持つ言葉です。

社会人の基本として教えられる「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」にある「連絡」も、仕事上で起きた事柄について知らせることを目的として使われています。

通信

通信とは、「手紙や電話などで自分の考えや意志、今の様子や情報などを相手に伝える」「郵便や電信、電話などを使って情報を伝達する」などのこと。対象は不特定多数で、必ず伝わらなくても問題が無い場合もあります。

通信は英語でtelecommunicationといい、メディア(媒体)を用いた離れた距離でのコミュニケーションを指す場合もあるのです。

伝達

伝達とは、「命令、指示、意思、情報、連絡事項などを口頭または書類で相手に伝える」「つぎつぎに伝え届ける」「取り次いで伝える」などのことで、口頭と文書、さまざまな場面で使われる言葉です。

使用例には、「決定事項を伝達する」「命令を伝達する」「情報伝達」「この内容を口頭で伝達してください」などがあります。

通達は上から下への命令ですが、通知に強制力はなく、通告は公的に知らせることを意味しています。似た言葉でも置き換えての使用はできません

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2.労働関係の主な通達について

通達と法令は、間違った解釈で使われる場合がたびたびあります。

  • 法令:国会が制定する法規範と国の行政機関が制定する法規範のことで、国民が守るべきものとされている
  • 通達:上級行政機関が下級行政機関に出す命令で、行政機関内部の命令という点では法令ではないが、運用するに当たって大切な事項を含むため通達を使用する場合がある

略称や内容を紹介

労働関係の主な通達は、下記のとおりです。(労働法全書(平成25年版)

  • 労働省発労または発労…労政局関係の事務次官名通達
  • 労発…労政局長名通達
  • 労収…労政局長が疑義に応えて発する通達
  • 労基…労働基準局関係の事務次官名通達
  • 基発…労働基準局長名通達
  • 基収…労働基準局長が疑義に応えて発する通達
  • 収監…労働基準局監督課長が疑義に応えて発する通達
  • 基災発…労働基準局労災補償部長または労災補償課長名通達

法令は上から下へ出す命令ではありません。しかし運用に当たって大切な事項を含んでいるため、通達を使用する場合があるのです

3.人事通達とは

人事通達とは、会社が従業員に対して人事異動を発表・掲示することです。ここでは人事通達の拒否や時期について解説しましょう。

人事通達は拒否できるのか

配置転換や海外移動、転勤などの人事通達を従業員が拒否した場合、会社側は拒否を理由とした懲戒解雇を実施できるのです。

従業員は、会社の就業規則に記載されている内容に従う必要があります。就業規則に「業務の都合で人事通達を命じる」などの内容が記載されている場合、人事通達は業務命令として発令されているため、従業員はそれを受け入れなければならないのです。

懲戒解雇できる理由

配置転換や転勤など人事通達を従業員が拒否した場合、それを理由に会社側は従業員を懲戒解雇できます。しかしなぜでしょうか。その理由は、下記のとおりです。

  • 正社員には長期的な雇用を前提としており、職種や勤務地なども限定されないため、配置転換命令権は強く肯定されている
  • 会社が有する人事異動命令権を機能させるため、懲戒解雇せざるを得ない状況
  • 仕事内容や勤務地について限定された雇用契約がある場合、その範囲内に限定される

人事通達の時期

人事通達は、会社によって異なりますが、一般的に4月と10月頃に行われます。決算時期に合わせて決める業界や職種もありますが、アパレル業界などは春夏物と秋冬物のセールが一段落つく頃の2月と8月に人事異動が行われるのです。

また鉄道業界は、新年度の混雑を避けて7月頃に人事異動を行う企業が多いとされています。

人事通達は一般的に4月と10月に行われ、会社は人事異動を拒否する従業員を懲戒解雇できます

4.人事系の通達の種類とは?

通達(辞令)にはさまざまな種類があり、従業員の新規採用、昇格や降格、昇給や減給、転勤や出向、転籍や配置転換などが辞令によって発令されるのです。人事通達(辞令)の種類を紹介しましょう。

  1. 採用辞令
  2. 退職辞令
  3. 転勤辞令
  4. 転籍辞令
  5. 配属決定辞令
  6. 配置転換辞令
  7. 出張辞令

①採用辞令

採用辞令とは、採用が決まったと知らせる通達のことで、労働基準法では「採用の日付や基本給をはじめとした労働条件や試用期間などを明示する」と義務付けられています。

法律で交付を義務付けられておらず法的な拘束力もありませんが、社内で発行する命令書となるため書面で交付する必要があるのです。

②退職辞令

退職辞令とは、会社側から従業員に対して退職の旨を通達するものです。会社が発令する義務付けはありませんが、退職届を出した後に受理した証拠として出す場合もあります。

また従業員から退職辞令を出して欲しいと希望すれば、会社側は労働基準法にもとづき、「退職証明書」を交付しなければなりませんが、転職先で提出を求められることはありません。

③転勤辞令

転勤辞令とは、企業内もしくは企業グループ内にあるほかの就業場所へ異動する際に発令されるもので、従業員は基本的に辞令を断れません。

会社の就業規則に転勤に関する事項が記載されている場合、経営者には広い人事権が認められています。しかし特別な規定が記載されていない場合は、原則、転勤辞令に対する根拠が必要です。

④転籍辞令

転籍辞令とは、在籍していた会社との雇用契約を打ち切り、ほかの会社に再就職を命じる辞令のこと。同じ会社内で異動する配置転換や転勤と違い、ほかの企業に籍を移すことになるのです。

なお転籍辞令に伴う退職は会社都合退職になります。転籍先ですぐに働くため失業保険などにはかかわりませんが、転籍に必要な書類に会社都合退職と記入するとしないとでは、退職金の額が変わりますので、覚えておきましょう。

⑤配属決定辞令

配属先辞令とは、従業員の配属先を決めるために発令される辞令のこと。新規採用者の場合、採用を命じる「採用辞令」と配属先決定辞令、2つを発令するのです。

この際、採用辞令の文書の中に、配属に関する項目の記載もできます。たとえば「貴殿を●年●月●日付をもって社員に採用し、●●部勤務を命じる」などです。

⑥配置転換辞令

配属転換辞令とは、従業員を異なる部署へ異動を命じる辞令のこと。日本企業のみで行われる人事制度のひとつとされるもので、従業員の配属先を一定期間ごとに変えて、さまざまな職務を経験させる会社もあります。

その理由として挙げられるのは、「介護、育児などによる欠員の補充」「組織の活性化」「従業員を適材適所に配置する」などです。

⑦出張辞令

出張辞令とは、海外などに中長期出張する必要がある場合に交付する辞令のこと。出張期間が長期間に渡ったり海外出張だったりする場合、出張を命じられた従業員は、住居の確保や渡航準備などが必要です。

そのため早めに辞令を交付するか内示を出さなくてはなりません。国内への短期間出張の場合、急な発令もあるようです。

人事全般に関する辞令はさまざまな種類があります。いずれも会社側からの重要な命令であり、基本的には断れないとされています

5.通達の前の内示について

通達は、正式な命令を出すことですが、内示は、辞令の予告として本人やその直属の上司など限定された人にのみ知らせることを指すのです。そんな内示について解説しましょう。

内示をする理由

正式な人事異動の辞令を出す前に内示をする理由は、なんでしょうか。それは異動のための準備期間を従業員に与えて整理してもらうため、といわれています。

異動の際、後任者への業務の引き継ぎはもちろん、転勤や中長期出張、海外出張などの場合は新しい住まいを探すなど引っ越しの準備、家族の仕事や転校手続きなどの調整が必要になるからです。

内示は断れるのか?

内示の段階でも、人事異動の業務命令であるため拒否はできません。しかし次に示すような正当な理由がある場合、拒否の申し立てができる可能性もあるのです。

  • 雇用契約書などで「勤務地」「職種」が限定されている場合。これ以外の勤務地や職種に異動を求められた場合は契約違反となる
  • 人事異動が「権利の濫用」といえる場合。自主退職に追い込むような嫌がらせ行為が明らかな場合は訴えられる
  • 育児や介護など、やむを得ない事情がある場合

内示の時期

内示は、正式な辞令が発令される1カ月程度前に出る場合が多いようです。ただ前任者が急に辞めたなど特殊な事情の場合、辞令が交付される1週間前といった直前に言い渡されます。

また海外や地方などの遠隔地への転勤や中長期出張などについては2カ月前には内示が出るなど、会社によって内示の出るタイミングは異なるのです。

一般的に内示は、正式な辞令が出る1カ月前に出されます。そして異動までの期間を引き継ぎの準備や引っ越しの準備などに使うのです

6.内示の際に取るべき行動

内示は、本人やその上司など限られた人にのみ知らされるため、正式な辞令が出るまでの間、仲の良い同僚とはいえ他人に口外してはいけません。ここでは、内示が出された際に取るべき行動を3つ紹介します。

  1. 口外しない
  2. 命令内容の確認
  3. 内示内容についての相談

①口外しない

人事異動の内示が出てから正式な辞令が出るまで、同僚などに軽々しく口外してはいけません。内示情報の口外を就業規則で禁じている会社もあります。

なかには内示を公にすることを禁じていない会社もありますが、企業秘密ですので、やはり軽々しく自らふれ回らないようにしましょう。軽率な人間と判断され、今後の人事評価に影響を与えかねません。

②命令内容の確認

内示とはいえ、ほぼ確定している人事異動です。内示が出されたらしっかりと内容を確認しましょう。新しい職場となる異動先、発令の日付、異動先の職務内容の変更、給与など幅広い範囲での詳細な確認が必要です。

③内示内容についての相談

会社側の経営戦略によって、従業員が人事異動するケースもあります。しかしその際、従業員の個人的な事情やライフスタイルを考慮せずに内示が出る場合も多いため、内示を受けた本人は戸惑ってしまいやすいのです。

「内示の内容に納得がいかない」「どうしても従えない」場合、直属の上司に相談してみましょう。

内示はほぼ確定している人事異動です。内示を受けたら冷静に内容を確認し、納得できない内容であれば上司に相談してみましょう