積立有給休暇とは?【わかりやすく】メリデメ、退職時、買取

積立有給休暇とは、失効した有給休暇を積み立て、あとからその休暇を利用できる制度のこと。メリット、デメリット、退職時の買取などについて解説します。

1.積立有給休暇とは?

積立有給休暇とは、失効した有給休暇を積み立てておき、介護や育児、病気や怪我の治療等の際に利用できる制度です。法律では定められておらず、企業が任意で導入する制度となるため、その名称も企業ごとに異なります。導入することで従業員のエンゲージメント向上による離職率低下などメリットがあります。

主な名称は次のとおりです。

  • 失効年休積立休暇
  • 積立休暇
  • 積立有休
  • 積立保存休暇
  • ストック休暇

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2.有給休暇と積立有給休暇の違い

一般的な有給休暇と異なり、積立有給休暇は労働基準法で定められた休暇ではありません。ここでは有給休暇と積立有給休暇の違いを説明します。

有給休暇の付与は義務

有給休暇(積立有給休暇)は、労働基準法第39条において取得が義務づけられている休暇です。労働者は有給休暇を取得する権利を有し、企業は従業員に対して所定の有給休暇を付与しなくてはなりません。

また有給休暇を付与する時季と日数、賃金の計算方法や時効期間などについても、労働基準法で決められているので確認するとよいでしょう。

積立有給休暇の付与は任意

積立有給休暇の付与は企業が任意で運用制度であり、法律では取得を義務づけていません。付与に関するルールは企業側で決められます。そのため積立有給休暇を導入していない、あるいは取得目的を制限する企業も少なくありません。

一方厚生労働省は労働者の永続勤務につながるとして積立有給休暇の活用を呼び掛けており、パンフレットや事例集などを公開しています。

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3.積立有給休暇のメリット

積立有給休暇を導入すると、企業側と従業員側の双方にメリットが生じます。それぞれのメリットについて説明しましょう。

企業側のメリット

積立有給休暇の導入で、企業側は優秀な人材を確保しやすくなります。

たとえば採用活動で、求職者に対するアピール材料として活用が可能です。より多くの興味を引けるようになり、優秀な人材が応募してくる可能性が高まります。

また積立有給休暇は、従業員の離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。積立有給休暇を付与すれば、病気や介護などの理由による退職を防ぎやすくなるからです。このように、人材の採用と流出防止の両面から優秀な人材の確保が期待できます。

従業員側のメリット

従業員は、病気やケガなどで突然休まなければならなくなっても、経済的な心配をすることなく治療に専念できます。また制度で認められていれば、家族の入院、看護、介護などでも休暇の取得が可能です。

なお「育児・介護休業法施⾏規則等」では、すべての従業員へ「子の看護休暇」や「介護休暇」の取得を認めています。しかし賃金の有無は企業側で決定するため、休暇中は無給になる可能性があります。一方積立有給休暇で休んだ日は、給与の支払対象です。

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4.積立有給休暇のデメリット

積立有給休暇の導入で、企業側にはコストの増加というデメリットが生じます。制度の設立を検討する際は、費用対効果をよく検討する必要があるでしょう。

企業側のデメリット

積立有給休暇を導入すると、環境整備や管理のためのコストが増加する可能性もあります。本来であれば消滅する未消化の有給休暇を積み立てていくため、通常の有給休暇とは別に、休暇の日数や利用状況などを管理しなくてはならないからです。

人員配置や業務量の調整といった業務も発生しやすく、従業員が多いほど管理の負担は増えます。その分の時間と人的コストも増えていくことに。また従業員が積立有給休暇分を利用すれば、企業には賃金という金銭的コストもかかるのです。

従業員側のデメリット

積立有給休暇を活用する従業員側には、とくにデメリットが発生しません。

ただし制度があっても、時季や職場の状況によっては希望するタイミングで休暇を取得できない場合があります。たとえば「繁忙期で人手が不足している」あるいは「同時期に休暇を希望する従業員がいる」などです。

また休暇の取得事由に制限が設けられている場合、取得の目的によっては制度を利用できません。そのため積立有給休暇制度自体は存在しているものの、積極的に利用している従業員がほとんどいないという企業も見られます。

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5.積立有給休暇制度の導入時に検討しておきたいこと

積立有給休暇を導入する際は、詳細なルールを決める必要があります。導入前に検討すべき項目を解説しましょう。

取得できる単位

1日あたりに取得できる積立有給休暇の時間です。たとえば全日・半日・1時間単位などが考えられます。年次有給休暇の単位に合わせる必要はありません。なお年次有給休暇の単位は原則1日、年間で5日以内(日数)であれば時間単位でも取得できます。

対象従業員

積立有給休暇を利用できる従業員の範囲です。たとえば正社員のみ、非正規社員も含めた全社員、勤続年数など一定の条件を満たす従業員などが挙げられます。利用できる従業員を限定する場合は、不公平感を与えないように十分な説明が必要です。

積立日数の上限

積立日数に上限を設けるか、あるいは無制限とするかです。日数の上限を設ける場合は、年間の日数とするか、総積立日数とするかも決めます。

年間積立日数

「年間で〇日まで」といった年間積立日数を設定できます。積立有給休暇取得によって生じる賃金の目安や、それに係る管理業務の量を予測しやすい点がメリットです。

また年間で上限を設けると、有給休暇を溜め込まず早めに使用するよう従業員へ促しやすくなります。多くの社員が積み立てた有給休暇を一斉に消費し、業務に支障が出るという状況を防ぎやすくなるでしょう。

総積立日数

積立期間は制限せず、積み立てた休暇日数が一定に達したら、それ以上は新たに日数を加算しない方法です。この場合は、積み立てた有給休暇の取得事由を想定したうえで、上限を設定しましょう。

多くの企業では、従業員自身の入院や家族の介護などの事由で休暇を取得する場合を想定し、40日から60日程度の期間の休暇が取れるように総積立日数の上限を高めにしている傾向にあります。

連続使用可能な日数

積み立てた有給休暇を1回にまとめて使用する可能性もあるため、連続して使用可能な日数の上限を定めておくと安心です。1回に取得できる日数を設定しておくと、企業側は人員や引継ぎ内容の調整を進めやすくなります。

ただし病気や家族の介護、育児など、どうしても長期になってしまう事由も考えられるでしょう。このような場合事由ごとに連続使用が可能な日数を決める方法もあります。

使用制限の有無や内容

積立有給休暇の取得事由に制限を設けるかを決めます。制限するなら具体的な条件もあわせて定めておきましょう。

多くの企業で取得を認めている事由として挙げられるのは、傷病・介護・子の看病・ボランティア活動など。資格取得や短期留学などを目的とした取得を許可している企業もあるようです。いずれにしても使用制限は従業員の意向も取り入れて決定しましょう。

有給休暇との優先順位

過去に積み立てた有給休暇と通常の有給休暇の両方がある場合、どちらから優先的に消費するのかも決めておきます。この点に関して法律上の決まりはなく、企業と従業員の双方が納得できるルールで取り決めれば問題ありません。

ただし企業には年5日の有給休暇を付与することが義務づけられているため、通常の有給休暇を優先的に消化したほうがよいでしょう。

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6.積立有給休暇制度の導入ステップ

積立有給休暇の導入は、3つのステップにわけて進めていきます。ここでは各ステップについて説明しましょう。

STEP.1
運用ルールの策定
積立有給休暇の導入目的を明確にしたうえで、運用ルールを策定します。従業員が使いやすい制度にするには、それまでの従業員の欠勤理由を調べ、どのようなニーズがあるかを分析する必要があるからです。

導入目的が決まったら、事業内容や組織形態に合わせて具体的なルールを定めていきましょう。たとえば積み立てた有給休暇の利用条件や使用事由、申請期限や承認基準、休暇の付与方法などです。

STEP.2
規定の作成
運用開始前に、積立有給休暇に関する規定を就業規則へ記載しなければなりません。

就業規則のなかにすべて追記する、あるいは「積立有給休暇制度規定」といった文書を別に作成し、就業規則ではそちらを参照するよう記載する方法があります。

積立有給休暇に関する規定には、運用ルールや、取得時に必要な手続きなどを漏れなく記載しましょう。

STEP.3
社内周知
就業規則の変更および積立有給休暇規定の策定が行われたことを社内に周知します。就業規則は周知後に効力が発生するからです。

周知方法には、社内での掲示や書面での通知、ネットワーク上での共有などが挙げられるでしょう。

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7.積立有給休暇制度導入の注意点

積立有給休暇を導入する際は、次の点に注意しましょう。それぞれについて説明します。

  1. 企業状況を踏まえた設計
  2. 賞与と退職金への影響
  3. 積極的に休暇取得を促進

①企業状況を踏まえた設計

積立有給休暇を効果的に運用するには、制度の内容が企業状況に見合っている必要があります。積立有給休暇を設けたため、年次有給休暇の取得が滞るようでは本末転倒です。

積立有給休暇の目的や年次有給休暇の取得状況などを踏まえたうえで、制度を設計する必要があります。

②賞与と退職金への影響

積立有給休暇を出勤率の算定に含めるときは、賞与や退職金へ影響をおよぼす点に注意が必要です。

法律上、有給休暇を取得した日は出勤日数とされ、翌年度の有給休暇付与における出勤率の算定に含まれます。しかし積立有給休暇制度で取得した有給休暇を出勤日に含めるは、企業が任意で決定できるのです。

積立有給休暇の取得を出勤率および評価へ含めた場合は、賞与や退職金の減額もありえます。従業員とトラブルになりかねないため、事前にルールの策定と周知が必要です。

③積極的に休暇取得を促進

導入した積立有給休暇の周知と利用を積極的に促しましょう。とくに人手不足に陥っている企業は、長期休暇の取得を推奨しない傾向にあるため、制度の定着が難しい場合もあります。従業員が利用しやすい環境や雰囲気をつくるための工夫が必要です。

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8.積立有給休暇は退職時に消化可能?

積立有給休暇を退職時に消化できるかは、企業によって異なります。年次有給休暇の日数が残っている場合、従業員が希望すれば退職日までに残日数を取得させる必要があるでしょう。

しかし積立有給休暇に関するルールは各企業で決められるため、退職日までに残日数を消化させる、あるいは残日数分の金額を退職金に上乗せして支払うといった対応も可能です。

なお積立有給休暇の残日数分をどのように扱うかは、規程に明記しておかなければなりません。

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9.積立有給休暇は買取可能?

年次有給休暇の買取は基本、労働基準法で禁止されています。例外として、法定で定めている日数以上に付与した分や、退職時に未取得となった分は買取が可能です。

積立有給休暇はすでに消滅している有給休暇であるため、法定の年次有給休暇には含まれず、買い取りの対象となります。なお企業は、積立有給休暇において買取の可否と金額を決められるのです。

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