THP/トータルヘルスプロモーションプランとは? 意味と具体例

企業が社員の健康維持を目指すにあたり、取り組みの基準となるのが「THP」という指針です。この記事ではTHPについて解説します。

1.THP(Total Health promotion Plan)とは?

THP(Total Health promotion Plan)とは、厚生労働省が推進した「社員の健康を心身ともに良好にしていく取り組み」のこと。目的は「すべての社員が若いときから継続して身体と心の健康を作れるよう支援する」です。

取り組みには、健康測定の結果からアドバイスする健康測定結果報告書を対象者に配布したり、健康指導を行ったりなどが挙げられます。

健康経営との違い

社員の健康を促進する点は健康経営もTHPも同じです。しかしその目的は異なります。

  • 健康経営:企業の利益を上げるために社員の健康を推進する
  • THP:働く社員の健康を推進し社員のQOLを向上させる

健康経営は企業のため、THPは社員個人のためといえるでしょう。

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2.THPの目的

THPの目的は、すべての社員の心身を健康に保つこと。社員の生活習慣を改善して、健康管理や健康指導、ストレスケアやライフケアを継続するために導入されました。

THPにおける健康保持増進計画

労働安全衛生法にて、企業には健康保持増進計画の策定が努力義務として定められています。健康保持増進のためには、どのように社員の健康を守り、サポートしていくか計画が必要です。

「社員の健康を守る」というような漠然とした意思決定ではなく、衛生委員会に健康保持増進計画を発表し、明確な意思表示をしましょう。

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3.THPが注目される背景

現代の日本では、生活習慣の乱れや職場でのストレスなどを抱えている人が増え、心身ともに不健康となっている人が多くなっています。THPが注目される背景には、このような現代社会の問題があるのです。

  1. 定期健康診断の有所見率の増加
  2. 職場でストレスを感じる人が増加
  3. 生活習慣病患者の増加

①定期健康診断の有所見率の増加

現代の日本では、定期健康診断における有所見率(健康診断項目で異常があった人)が増加しています。2018年における20代の有所見率は19%、60歳以上の有所見率は57%と、加齢に比例して有所見率が年々増加しているのです。

増加の背景には、ここ10年で60歳以上の雇用が1.5倍に増加した点が関係しているといわれています。

②職場でストレスを感じる人が増加

平成29年の労働安全衛生調査では、職場に大きなストレスを感じていると回答した人が58.3%存在しました。大きな要因として考えられるのは、成果を生み出さなければならないというプレッシャーや、雇用形態の多様化、職場環境や働き方の変化や人間関係などです。

③生活習慣病患者の増加

3年に一度、厚生労働省によって行われる大規模な調査「国民生活基礎調査」では、人口1,000人に対して404人が通院患者であるという結果が出ました。

疾患別に見ていくと、生活習慣病である「糖尿病」「高血圧症」「肥満症」「歯の病気」「目の病気」などで通院している人が多かったのです。

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4.企業がTHPを推進するメリット

THPの目的は、社員個人のQOLを向上させること。社員へのメリットはもちろん、実施する企業側にも、職場の活性化や離職の防止などのメリットが期待できるのです。

  1. 職場の活性化
  2. 生産性の向上
  3. 医療費の削減
  4. メンタルヘルスの改善
  5. 離職防止
  6. ブランディングや企業イメージの向上

①職場の活性化

精神的に健康な人は明るく活発になり、職場内のパフォーマンスやコミュニケーションも活性化します。結果、業務がスムーズに回り、さらに職場が活性化するという循環が期待できるのです。

②生産性の向上

心身ともに健康なら、社員は集中して業務に取り組めるため、生産性も向上します。病欠による人員不足やメンタルヘルスの不調による離職などが多発すると、新しい人材を採用して育成し直さなければならないため、生産性も低下してしまうでしょう。

③医療費の削減

社員が健康でいると、医療費の削減につながります。労災手続きにかかる人件費や、入院時の休業手当などの費用は企業が負担するからです。また社員の医療費を企業が負担するケースもあります。社員の健康を守ると企業の出費が抑えられるのです。

④メンタルヘルスの改善

厚生労働省は、座っている時間が長いほどメンタルヘルスが不調になる傾向が強いと発表しています。職場では適度な休憩や外出業務、プライベートでは適度な運動をしてもらいましょう。これらは生活習慣病やうつ病の改善と予防にもつながります。

⑤離職防止

前述のとおり、健康な社員が多く働いている職場は雰囲気が明るくなり、コミュニケーションが活発化します。「病気やメンタル不調による入院や通院で出勤できなくなるから退職する」といった離職者も減少するでしょう。

⑥ブランディングや企業イメージの向上

「この企業は利益だけを重視せずに、社員が働きやすい職場づくりや健康保持の増進を行っている」となれば、外部からの印象が良くなるでしょう。企業イメージが向上すれば採用活動や資金調達もしやすくなります。

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5.THPの推進方法

THPを実際に推進するために、企業は何に取り組めばよいのでしょう。ここでは具体的なTHP推進方法について説明します。

  1. 健康測定
  2. 運動指導
  3. メンタルヘルスケア
  4. 栄養指導
  5. 保健指導

①健康測定

まず定期的に実施する健康測定で社員の健康状態を把握しておきましょう。職場アンケートによるストレスチェックも実施すると、心身の健康状態を把握できます。結果にもとづいてフィードバックをし、生活習慣の改善や健康指導を行いましょう。

②運動指導

近年、在宅ワークの増加や食生活の多様化などで肥満率が上昇し、若年層の運動不足も増加しています。また運動指導は、生活習慣病の予防と改善だけでなくストレス発散にも役立つのです。

③メンタルヘルスケア

職場の人間関係や私生活における悩み、将来の不安など、社員の抱える悩みは多いもの。心理相談の担当者を決め、産業医の指示に従ってメンタルヘルス不調の予防や指導、治療を実施しましょう。

④栄養指導

健康測定で見つかった生活習慣病予備軍や有所見者に対して、産業栄養指導担当者が栄養指導を行います。社員食堂や食事手当の普及など福利厚生を充実させて、社員の栄養管理に役立てましょう。

⑤保健指導

保健指導とは、産業保健指導担当者が社員へ生活習慣の改善など指導を行うこと。健康診断の結果や産業医の指導表にもとづいて、その人に必要な指導を行い、実践してもらいます。

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6.THPに取り組むときの方法

THPに取り組む場合、どういった方法を取ればよいのでしょう。それは下記の2つです。

  1. 外部の専門機関に依頼する
  2. 独自に専門スタッフを育成する

①外部機関に依頼する

自社で専門のスタッフを用意できない場合、外部のTHP専門機関に依頼する方法がおすすめです。中央労働災害防止協会が登録基準を満たした専門機関へ依頼し、THPを実施してもらいます。

産業医や運動指導員、栄養指導員や心理相談担当者などさまざまなTHPに必要な人材がそろった機関を選べば、健康測定からフィードバックまでを安心して任せられるでしょう。

②独自に専門スタッフを育成する

独自に健康相談や健康教育ができる専門のスタッフを育成する方法もあります。産業医や心理相談者となる人材を確保するため、社員をセミナーや研修会に参加させて教育するのです。外部に委託しないのでTHPにかかる費用を抑えられます。

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7.THPを行っている企業の事例

近年、数多くの企業がTHPに取り組んでいます。最後に企業が取り組んだTHPの実例について見ていきましょう。

デンソー

自動車部品メーカーであるデンソーでは、社長が「デンソー健康宣言」を宣言してTHPを実施しました。健康リーダーが中心となって、部署ごとに「健康アクションプラン」を作成し、運動会や1分間ストレッチなどの活動を行ったのです。

また自社開発の専用アプリによて健康診断の結果、歩数や栄養状況、消化カロリーなどのデータを確認しています。

花王

化学メーカーの花王は、専用Webサイトと専用歩数計によるデータ管理システムを導入し、健康運動を見える化しました。同時に健康づくりに対するポイント制度を導入。

貯まったポイントは日常生活に使えるものと交換可能です。ほかにもスマート和食やウォーキングキャンペーンなどを、開催しています。

三菱電機健康保険組合

総合電機メーカーの三菱電機では、「三菱電機健康保険組合」がTHPに取り組みました。

Web上での健康調査を実施し、そのデータを参考とした生活習慣などを数字化して評価するランキング制度を導入。具体的な評価項目は、睡眠や適正体重、運動習慣や喫煙習慣などです。

ほかにもポイント制度を導入しており、ポイントに応じて賞品と交換できます。社員が健康活動を積極的に続けたくなる工夫がなされているのです。

キヤノン

精密機器メーカーのキヤノンは、生活習慣を改善するための支援に取り組みました。キヤノン体操やウォーキング習慣、社内報やe-ランニング、イントラネットなどを活用して健康推進の啓発運動を実施。

ほかにも敷地内禁煙実施にも取り組み、禁煙指導スタッフの配置や喫煙マップの展開、禁煙車支援を実施したのです。また睡眠改善の取り組みでは、睡眠計を使った指導や快眠キャンペーンなども行われました。