転属とは?【異動・転籍・転勤・配属・出向との違い】意味

転属とは、組織内での所属部署が変更になることです。ここでは転属の意味や似た言葉、転属を希望する際の注意点などについて解説します。

1.転属とは?

転属とは、所属や籍が変わること。具体的には、営業部から人事部へ異動といったように、仕事の進め方や人脈などがこれまでと大きく変わる人事施策です。所属の変更だけでなく働き方や環境まで変わるため、人事施策のなかでも比較的大きな異動として捉えられています。

転属を英語でいうと

同じ会社における「A部署からB部署への異動」といったように、転属では限定的な移動を指しています。これを英語でいうと「Transfer」となるのです。Transferには動かす、運ぶ、転任といった意味もあります。

「転属(Transfer)」は、同じ「動き」を指していても「移動(Move)」にはなりません。Moveには場所や環境が変化するといったニュアンスがあり、エリアや組織内での移動を表すTransferとは異なる概念として区別されます。

転属と間違えやすい用語を紹介

人事異動にまつわる用語は、「転属」や「異動」以外にもいくつかあります。ここでは転属と間違えやすい5つの用語を紹介しましょう。どれも同じく人材の「動き」を表した言葉ですが、使われるシーンや目的がそれぞれ異なるのです。

配属

「配属」とは、会社が社員一人ひとりを何らかの部署または部門に配置・所属させること。「会社の転属命令で来月から人事部へ配属になった」「新入社員の配属を決めよう」といった使い方をします。

ほかにも「最初の配属先は営業部だった」のように、異動そのものではなく配置された所属を指して「配属」という場合もあります。

異動

「異動」とは、会社や組織のなかで所属や役職、勤務地などが変わること。会社内での退職や新規採用などによって生まれたアンバランスを解消するために、社員を適切な立場に配置しなおすことともいえます。

転籍や転勤、出向なども広義には異動の一種です。昇格や降格などの配置換えから、単身赴任やリストラなども異動に含まれます。

転籍

「転籍」とは、もとの会社を退職して異動先の社員となること。「出向との違いは、下記のとおりです。

  • 転籍:出向元の会社を退職してから別の会社に籍を移す。一般的に「転籍出向」と呼ぶ
  • 出向:もともとの会社を退職せずに別の会社で勤務する。一般的に「在籍出向」と呼ぶ

転勤

「転勤」とは、異動によって勤務地や勤務場所が変更になることす。出向や転籍と違って同一の会社に所属したまま勤務先が変わります。

「東京営業所から大阪営業所へ」のように引っ越しを伴うものから、「東京23区内のA営業所からB営業所へ」のように引っ越しを伴わないものまでさまざまです。

出向

先ほど少し触れた「出向」とは、もとの企業が従業員との雇用契約を維持したまま、子会社や関連会社などに異動・就労させること。従業員の籍と給与の支払い義務は「出向元」にありますが、業務上の指揮命令権は「出向先」にあります。

ネガティブな印象の強い出向ですが、キャリア形成や企業間交流といったポジティブな目的もあるのです。

転属とは、組織における所属や籍が変わることです。人事異動にまつわる用語は転属以外にも多々。それぞれ正しく理解して混同しないようにしましょう。

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2.転属願いの出し方

同会社内別部署への配置転換を目的に、自ら作成・提出する書類を「転属願い」といいます。自らの新たな可能性を確かめたいときや、キャリアアップを目指す際などにこの転属願いを作成・提出するのです。

そんな転属願いはどのように書けばいいのでしょう。書き方や出し方、提出先や提出時期などについて解説します。

いつ誰に出せばいい?

転属願いの提出先は「直属の上司」です。上司との折り合いが悪いなどの理由から、さらに上の上司や直接人事部などに提出してしまうと一層の関係悪化を招く恐れがあります。そこでまずは直属の上司に提出するのです。

「上司が慌ただしい」「上司に切り出すタイミングがつかめない」といった場合は一旦、メールや簡単なメモなどで「話し合いの場を設けてほしい」旨を打診してみましょう。

転属願いは遅くとも、異動を希望する一か月前までに提出します。会社の繁忙期や年度頭、年度末など業務が集中する時期は避けたほうが無難です。

転属願いの例

続いて、転属願いの書式について見ていきましょう。転属願いに決まった形式はありませんが、会社内で決まったフォーマットがある場合はそれを利用します。特に規定の書式が定められていない場合は、A4サイズの用紙に以下を記入して転属願いを作成しましょう。

  • 宛先:○○殿、もしくは人事部長殿
  • 用紙右上:提出する年月日と氏名および捺印
  • 中央見出し:大きめのフォントサイズで「異動願」と記載
  • 見出し以下:まずは異動したい旨を書く。それに続けて現在の「所属部署」と「所属期間」「希望する異動先部署名」「異動の希望時期」「異動希望の理由」を記載する

転属願いは直属の上司に、異動を希望する一か月前までに出すのが基本です。会社によっては定期的な個人面談を設けている場合もあるので、それを活用して異動を切り出すのもよいでしょう

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3.転属願いの前に必ず人事制度を確認する

転属願いを提出する際は事前に、自社の人事制度を確認しておくとよいでしょう。ここでは既存人事制度を確認する理由や、そのポイントについて解説します。

人事制度を確認する理由

なぜ転属願いを出す前に既存の人事制度を確認しておく必要があるのでしょうか。会社によっては、以下のように従業員自らが所属を決められる人事制度が設けられている場合もあります。

いずれも目的は、従業員モチベーションの向上、適材適所の実現に結び付けること。それぞれの人事制度について、詳しく見ていきましょう。

  1. 自己申告制度
  2. 社内公募制度
  3. 社内FA制度

①自己申告制度

「人事申告制度」とは、従業員自身に部署や勤務地などの異動を申告させ、その申告にもとづいて会社が異動の辞令を出す制度のこと。人事異動やキャリア開発、能力開発などの制度構築に必要な情報を収集する手段として活用されています。

自己申告制度の主な目的は、モラルの向上と的確な人事管理、そして従業員の自己啓発。従業員の自己申告に対して、会社が「異動させたほうが本人にとっても会社にとってもプラスになる」と判断した場合に辞令が出されるのです。

②社内公募制度

「社内公募制度」は、同一企業内のある部署が独自で人材を募集する人事制度です。既存部署に欠員が出たり、新プロジェクトが発足したりしたときなどに募集を行います。特徴は、はじめから任される業務の内容が明確になっている点です。

近年、企業のグローバル化に伴う海外進出プロジェクトを社内で募集するケースが増えました。海外事業部やマーケティング、企画などの人気部署が制度を実施する際、試験や複数回の面接がなされる場合もあります。

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③社内FA制度

「社内FA制度」は、特にプロ野球の世界でよく見られるフリーエージェント制度のこと。従業員自らが自身の経歴や能力、実績を転属希望先の部署に売り込んで、異動や転籍を実現させます。

目的は、自己申告制度や社内公募制度と同じく、従業員の自発的なキャリア開発を実現させること。

応募者は、一般的に勤続年数や保有資格、業績評価などの厳しい条件をクリアする必要があります。キャリアパスの実現だけでなく、社内人材の流動化にも効果が期待できる制度です。

転属願いを出す前は、あらかじめ自社に「自己申告制度」「社内公募制度」「社内FA制度」といった人事制度がないか確認しておきましょう。

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4.転属願いを出すときに気を付けるべきこと、注意点3つ

転属願いを出す際、既存制度の見直しだけでなく出し方にも注意が必要です。ここでは転属願いを出す際の注意点を3つ紹介します。

  1. 転属希望の理由が自分本位なものになっていないか
  2. 本来の仕事を放棄していないか
  3. 転属によって何を得たいのか

①転属希望の理由が自分本位なものになっていないか

まず転属希望の理由について、見直しましょう。転属希望の理由が、以下のようにネガティブで主観的な理由になっていないでしょうか。

  • 人間関係によるストレスから解放されたい
  • 担当している業務がつまらない
  • 上司や同僚と合わない

これらの自分本位な理由に対して会社は、「ほか部署に異動してもうまくいかないのでは」と考えます。転属希望の理由は、主観的かつネガティブなものではなく、自身と会社の成長につながるといったポジティブな表現にしましょう。

②本来の仕事を放棄していないか

ほかの部署に異動するからといって、現在の仕事を放棄していないでしょうか。仕事がうまくいかないときほど、その理由を自分ではなく周囲のせいにして、現在の仕事に対してやる気のない態度を取ってしまいがちです。

投げやりな態度は上司だけでなく、同僚や部下からも「一緒に働きたくない人」と思われてしまうでしょう。

どんな部署でも、「もとの部署で高い実績を上げた人」「評判のよい人」「、周囲にプラスの影響を与えてくれる人」が優先されます。現在の部署で実績が評価され、優秀な人材だと認められることが、結果として近道になるのです。

③転属によって何を得たいのか

転属願いを出す際は、「転属によって何を得たいのか」「何のために転属したいのか」といった理由を明確にしておきましょう。

「何となく今の仕事に飽きた」「別部署のほうが楽しそう」といった漠然とした理由で異動しても、新しい環境に慣れない状況ばかりで毎日が過ぎ、結果として無駄骨に終わってしまいます。

スキルでも経験でもかまいません。つねに新しい目標を明確に持ち、それに向かって仕事に取り組みましょう。

転属願いを出す際は、「転属理由が自分本位なものになっていないか」「本来の仕事を放棄していないか」「転属によって何を得たいのか」などについて改めて見直しておきましょう。

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5.転属の裏側

ここまでは、転属について「従業員の立場」から解説してきました。続いては「企業の立場」から転属について見ていきましょう。転属は誰がいつ、どのように決定しているのでしょう。また会社は、どのような人材に転属の辞令を出すのでしょうか。

異動が決まるとき

転属をはじめとする人事異動はどのように決められるのでしょう。人事異動の決め方は、大きく2つのパターンに分けられます。

  1. パターンシャッフル制
  2. 指名制

そして人事異動は、どちらも以下6つの要素から決まるのです。

  1. 従業員本人の希望
  2. 上司の見解
  3. 転属を希望する従業員の部門長による意見
  4. 人事考課
  5. 人事部の意見
  6. 会社としての方向性や方針

人事部の裁量

人事異動の9割は「パターンシャッフル」と呼ばれる人事部の裁量によって決まります。パターンシャッフルとは、従業員本人の希望とは関係なく、年次や経験、実績などからある程度機械的に異動を決める方法のこと。

人事部はさまざまな意見や希望を調整したのち、本人の能力や適性、実績などをみて異動案を作成します。その後、関係各部の承認を得て人事異動を決定するという流れです。

会社の部署から指名される人

対する「指名制」は、その名のとおり特別枠のような形で異動が決まる制度のこと。指名制には「彼が適任だ」と人事部から指名されるケースと、「彼に任せたい」と現場から指名されるケースがあります。どちらも以下のような人材が、この指名制によって決まるのです。

  • 専門性や実績が高く評価された人
  • 社内で活躍している人
  • プラスの意味で目立っている人
  • 所属部署以外からの評判もよい人
  • ぜひとも重要なポジションを任せたいと思われる人

転属を叶えるには?

希望どおりの転属を実現する確率が高いのは、機械的に異動が決まる「パターンシャッフル」ではなく、本人の希望が考慮された「指名制」です。

もし人事部から「名前」で異動を決めてもらう、もしくは上司や監督者からの「指名」を得たいと思うなら、現在の業務で成果を出すように心掛けましょう。

現在担当している業務でまったく成果を出していない人が、人事部や異動希望の部署から「この従業員の希望を考慮しよう」と思われるでしょうか。着実に成果を残し、業務実績で目立てていければ、各担当者の目に留まりやすくなるでしょう。

人事異動の多くは人事部の裁量によって決まります。転属を叶えるためには、現在の業務で成果を出すのが一番です

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6.転属したい人なら知っておきたいポイント5つ

転属を希望する人は、どのような点を意識すればよいのでしょう。ここでは転属を希望した際に意識しておきたいポイントを5つ紹介します。

  1. 初心に戻ってゼロから学ぶ姿勢
  2. 仕事で結果を出して目立つ
  3. 社内横断の企画に積極的に参加する
  4. これまでの経験がどのように活かせるかを考える
  5. 転属できない場合、辞める意思を伝える

①初心に戻ってゼロから学ぶ姿勢

まずは転属によって初心に戻り、ゼロから学ぶ姿勢を持ちましょう。せっかく異動のチャンスを得たものの、「前の部署ではこれが通用した」「以前はこんな成果を出していた」というように、それまでの成果やプライドに固執してしまうケースも少なくありません。

経験や実績の活用も大切ですが、頑固に固執せず、臨機応変に対応する姿勢もまた大切です。

②仕事で結果を出して目立つ

転属を実現させるには、仕事で結果を出し、よい意味で目立つことも必要です。そのためにも会社をじっくりと観察して、会社や部署の空気感をつかんでおきましょう。

会社は社員の自主性を伸ばそうとしているか、転属を希望する部署にはどのような人が所属しているのか、などを観察するのです。部署の雰囲気や既存人材の特徴が分かれば、おのずと今出すべき結果も見えてきます。

③社内横断の企画に積極的に参加する

転属を希望する部署の特徴をつかみ、目立った成果を生み出したにもかかわらず、なかなか人事部や異動希望先に届かないケースも。そんなときは社内横断の企画に参加して、自分の存在を外部にアピールする必要があります。

社内横断プロジェクトに参加したり、非公式の有志団体を立ち上げたりして自分の存在を広く認知させましょう。主体的に参加すると、自分の視野も広がります。

④これまでの経験がどのように活かせるかを考える

転属は、それまでの経験や実績がリセットされるものではありません。会社としては転属によって加わった新たな視点によって、「従来の凝り固まった考えをよい意味で破壊してくれる」「部署としてさらなる成果を生み出す」などを期待しています。

盲目的に転属先の方針に従わず、これまでの経験を転属先でどのように活かしていくか、について考えてみましょう。

⑤転属できない場合、辞める意思を伝える

決して正攻法とはいえませんが、「転属できない場合は会社を辞める意思がある」点を伝える方法もあります。会社としてもっとも避けたいのは、これまでコストをかけて育ててきた人材を失うこと。

この選択肢を出された以上、担当者は異動の希望を無視できません。もちろんこれは、今の仕事である程度の成果を出していることが大前提となります。

転属をはじめとする人事異動は、すんなり決まらないことも多い施策です。初心に戻って学ぶ姿勢を持ち、現在の仕事で結果を出して転属を実現しましょう。