退職所得の受給に関する申告書とは? 申告書の記入方法や申告の際の注意点について

退職所得の受給に関する申告書とは、退職後、退職金を受け取るために、退職前に勤務先に提出する書類のこと。今回は、申告書の記入方法や申告の際の注意点について解説します。

1.退職所得の受給に関する申告書とは?

退職所得の受給に関する申告書とは、退職の際に退職手当等を受給する人が、所得税法第203条1項各号に掲げられている事項を記載し、勤務先に提出する申告書のこと

申告を行わなかった場合どうなるのか?

退職所得の受給に関する申告書の提出について、法律では決められていません。しかし申告した場合としなかった場合とで、所得税の計算方法が大きく異なるのです。

退職所得はその後の生活を保障するといった意味を持つため、税金の負担を軽減する措置が取られています。

よって申告書を提出した場合は退職所得控除の適用となり、税金が軽減されるのです。しかし申告書を提出しなかった場合、退職所得に対して一律20.42%の税率を課した額が源泉徴収されます。

退職所得の受給に関する申告書の記載事項は、所得税法で定められています。申告を行って初めて退職所得控除が適用されるのです

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2.退職所得の受給に関する申告の概要を説明

退職手当等を受給する人が行う退職所得の受給に関する申告とは、どのようなものなのでしょうか。ここからは、手続きの根拠となる法律や提出方法と提出時期、手続きの対象者、そして必要な添付書類について詳しく解説します。

手続きの根拠となる法律とは?

退職所得の受給に関する申告は、所得税法第203条および所得税法施行規則第77条により規定されています。

所得税法第203条では、支払いを受けるまでに必要事項が記載された申告書を退職手当等の支払者を経由して、所轄税務署長に提出する旨が記載されているのです。また所得税法施行規則第77条では、申告書の記載事項が明記されています。

提出方法と提出時期

退職所得の受給に関する申告は、退職手当等の支払者に提出します。退職手当等の支払者は、所轄税務署長から提出を求められた場合以外、税務署へ提出する必要はありません。

通常、退職手当等の支払者に申告書が受理されると所轄税務署長に提出されたと見なされます。また申告書は、退職手当等の支払いを受ける前に提出する必要があるのです。実際は、退職手当等の支払いを受ける前日までに提出すれば問題ありません。

手続の対象者

申告対象は、退職手当等の支払いを受ける居住者(国内に住所がある人)です。外国人でも居住者なら申告対象となります。

しかし退職時に国内に住所がない非居住者は、居住者が受けられる各種優遇措置が適用されず、退職手当等の総額から、国内勤務期間に対応する金額の20.42%が源泉徴収されるのです。

必要な添付書類

その年中に、ほか退職手当等を受けた人は、その退職手当等に係る「退職所得の源泉徴収票」(退職手当等の受給時に発行される書類)を1部添付します。

これには、会社が退職手当として支払った金額とそこから天引きされた所得税と住民税、そして退職所得控除の金額が記載されているのです。

退職所得の受給に関する申告は、退職手当等の支払いを受ける居住者が対象となっています。支払者に書類を提出するという手続きです

3.退職所得の受給に関する申告書の書き方

ここからは、退職所得の受給に関する申告書の書き方について解説しましょう。申告書にはA欄からE欄まであり、必ず記載しなければいけない部分と、該当する場合は記載しなければいけない部分があるのです。

特定役員等勤続期間とは

特定役員等勤続年数とは、勤続期間のうち、特定役員退職手当(役員等勤続年数が5年以下の人が支払を受ける退職手当のうち、役員等勤続年数に対応する退職手当として支払いを受けるもの)などに係る勤続期間のこと。

役員などで勤続年数が5年以下の人を「特定役員等」といい、下記のような人が該当します。

  • 法人の取締役、執行役、理事、監事、会計参与、監査役
  • 国会議員や地方公共団体の議会の議員
  • 国家公務員や地方公務員

申告書:A欄について

退職所得の受給に関する申告書A欄は、すべての人が記載します。退職年月日や退職の区分、退職手当等についての勤続期間を記載するのです。

項目①:退職手当等の支払を受けることとなった年月日

A欄の①には、退職年月日を記載します。会社役員の退職手当等で、株主総会などの決議を必要とする人は、支払いを受ける金額が決議によって決められた年月日となるのです。

たとえば、年金の受け取りを一時金として受け取る「選択一時金」を希望した場合、退職年月日は「退職年金決定・改定請求書」の右上に記載があります。

項目②:退職の区分等

在職中に障がい者となったため退職した人は、「障害」を〇で囲み、()内に障害の状態、身体障害者手帳等の交付年月日などを記載します。そのほかの人は「一般」を〇で囲むのです。

またその年の1月1日現在、生活保護による生活扶助を受けている人は、生活扶助の「有」を〇で囲み、そのほかの人は「無」を〇で囲みます。

項目③:この申告書の提出先から受ける退職手当等についての勤続期間

退職所得の受給に関する申告書を提出して、今回支払いを受ける退職手当等についての勤続期間とその年数を記載するのです。勤続年数について、1年未満の端数を切上げとなります。

勤続期間は原則、支払者のもとで継続勤務をした期間。勤続期間の開始日は、すべて1日付けとします。また支払者から以前に退職手当等の支払いを受けている場合、以前の計算のもととなった勤続期間の末日以前の期間を除くのです。

申告書:B欄について

申告書B欄は、本年中ほかに退職手当等の支払いを受けた場合に、記載する部分です。本年中に支払いを受けたほか退職手当等についての勤続期間と、通算勤続期間を記載します。

項目④:本年中に支払を受けたほか退職手当等についての勤続期間

その年中に支払いを受けたほか退職手当等についての勤続期間を、先に支払いを受けた「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」をもとに記載するのです。

このような場合、「所定の退職一時金・解約一時金請求書」「申告書(写し不可)」「先に支払いを受けた退職所得の源泉徴収票・特別徴収票(写し可)」を提出します。

項目⑤:③と④の通算勤続期間

A欄③とB欄④の勤続期間について、重複する部分が二重とならないように通算した勤続期間とその年数を記載します。勤続年数は③と同様、1年未満の端数は切上げ、勤続開始日はすべて1日付けで記載するのです。

勤続期間には、病気などが理由で長期休職していた期間や過去に同一の支払者の下で勤務していた期間も含まれるので、注意しましょう。

申告書:C欄について

申告書C欄は、前年以前4年内に退職手当等の支払いを受けた場合に記載する部分です。勤続期間とその勤続期間と重複している期間を記載します。

項目⑥:前年以前4年内の退職手当等についての勤続期間

前年以前4年内に支払いを受けた退職手当等がある場合、4年内の退職手当等について勤続期間を記載します。なおその年に確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金の支払いを受ける場合、14年内となるのです。

ただし、4年内の退職手当等の収入金額が退職所得控除額に満たなかった場合、記載する勤続期間が収入金額に応じて異なるため注意しましょう。

項目⑦:③または⑤の勤続期間のうち、⑥の勤続期間と重複している期間

A欄③とB欄⑤の勤続期間のうち、C欄⑥の勤続期間と重複している期間を記載します。イ]欄には、この重複期間のうち、③または⑤の特定役員等勤続期間と重複する期間の有無を〇で囲むのです。

「有」の場合、その重複勤続期間およびその年数を記載します。勤続年数は、1年未満の端数は切り捨て。③と⑤は切上げですが、こちらは切り捨てですので注意しましょう。

申告書:D欄について

申告書D欄には、A欄またはB欄の退職手当等における勤続期間内に、前に支払いを受けた退職手当等における勤続期間の全部もしくは一部が通算されている場合、その通算勤続期間を記載します。

項目⑧・⑨:勤続期間に通算された前の退職手当等についての勤続期間

A欄③またはB欄④の勤続期間のうち、その勤続期間に通算された前の退職手当等についての勤続期間とその年数を記載するのです。勤続年数では、1年未満の端数を切り捨てます。

なおその支払者のもとで勤務していなかった期間で、今回の退職手当等の計算のもととなる期間に通算された期間は、そのほかの勤務先から前に退職手当等の支払いを受けている場合に限るのです。

また勤続期間のうち、特定役員等勤続期間の有無を〇で囲みます。「有」の場合は、その期間および年数を記載するのです。勤続年数は、1年未満の端数を切り捨てます。

項目⑩:③または⑤の勤続期間のうち、⑧または⑨の勤続期間だけからなる部分の期間

⑩には、A欄③またはB欄⑤の勤続期間のうち、⑧または⑨の勤続期間のみの期間とその年数を記載するのです。勤続年数については、1年未満の端数は切り捨てます。

[ロ]欄には勤続期間のうち、特定役員等勤続期間の有無を〇で囲むのです。「有」の場合は、その特定役員等勤続期間およびその年数を記載します。勤続年数は、1年未満は切り捨てます。

項目⑪:⑦と⑩の通算期間

⑪には、C欄⑦とD欄⑩の勤続期間について、重複する部分は二重にならないように通算した勤続期間とその年数を記載するのです。勤続年数は、1年未満の端数は切り捨てます。

[ハ]欄には、[イ]欄と[ロ]欄の勤続期間について、重複する部分が二重とならないよう通算した勤続期間とその年数を記載するのです。ここも、勤続年数1年未満は切り捨てます。

申告書:E欄について

E欄は、B欄またはC欄にて退職手当等がある場合、記載するです。先に支払いを受けたすべての退職手当等の内容を「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」をもとに記載し、その写しを添付します。

「支払者の所在地(住所)・名称(氏名)」欄には、B欄で記載した支払者の所在地(住所)および名称(氏名)を記載するのです。

国税庁のホームページから申告書をダウンロードできます。なお提出した申告書の原本は、事業所にて7年間の保存義務があるのです

4.退職により勤務先から受ける退職所得について

退職控除とは、退職所得の課税額計算にて、勤続年数に応じた金額を給付額から控除すること。

勤続年数が20年までの場合、「40万円×勤続年数(80万円より少ない時は80万円)」で算出します。勤続年数が15年の場合、「40万円×15年=600万円」になるのです。

勤続年数20年を超える場合、「(勤続年数-20年)×70万円+800万円」で算出します。たとえば勤続年数が40年の場合、「40年-20年)×70万円+800万円=2,200万円」になるのです。

所得税額の算出方法

退職所得は原則、ほか所得と別個で所得税額を算出します。退職金等の支払の際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している人については、退職手当等の支払者が所得税額および復興特別所得税額を算出するのです。

支払いの際に退職手当等の金額に応じた所得税などが源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。

なお申告書を提出していない場合は、退職手当等に20.42%の所得税および復興特別税が課税されるものの、これは確定申告によって精算可能です。

「退職が障がい者になったことに基因した」「前年以前に退職手当等を受けたことがある」場合は、退職所得控除額の計算方法が異なりますので、注意しましょう

5.退職所得の受給に関する申告書の注意点

「退職所得の受給に関する申告書に誤りがあった」「同じ年に複数箇所から退職手当等が支払われる」といった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。最後に、申告書における注意点について解説します。

退職所得の受給に関する申告書に誤りがあった場合

退職手当等の支払者は、受け取った退職所得の受給に関する申告書の記載事項に誤りがあったために徴収不足税額があると知った場合、速やかに不足税額を徴収し、納付しなければいけないのです。

徴収不足税額は、確定申告で精算できません。そのため、徴収不足税額があった人は退職手当等の支払者のもとで不足税額を是正しります。同一年に2箇所から退職手当の支給を受けた人などは、記載漏れに注意しましょう。

同じ年に複数箇所から退職手当等が支払われる場合

同一年に、すでにほかの会社から退職手当等の支給を受けている場合があります。複数の支払者に同時に申告書を提出する場合、申告書に提出した順番を記載します。

また申告書を提出する際、すでに支払われた退職金等の「退職所得の源泉徴収票」も添付しなければいけません。支払者はほかの支払者が支払った退職手当等の金額も含めて、源泉徴収税額を算出するのです。

すでに支払済の退職手当等と今回の退職手当等を合計した金額が退職所得の収入金額となります。

退職者から申告書の提出を受け、退職金などを支払った会社は、退職者に対して1ヶ月以内に退職所得の源泉徴収票を交付しましょう