出産手当金とは? 制度の意味や条件、支給されないケースなどを詳細解説

出産手当金とは、妊娠、出産のために会社を休む期間の間、勤務先の健康保険から支払われるお金です。一体どのような仕組みなのか、出産一時金との違いなどさまざまな観点から説明しましょう。

1.出産手当金とは?

出産手当金とは、妊娠、出産のため会社を休む会社員や公務員に対して、勤務先の健康保険から支払われるお金のこと。休職中の被保険者や家族の生活を保障し、安心して出産前後の休養ができるように設けられているのです。

類似する言葉に出産一時金があります。こちらは出産費用を手助けするために健康保険から支給されるお金のことで、働いている、働いていないに関わらず受け取れるお金です。

両者はまったく異なるものなので、それぞれ忘れずに申請しましょう。

妊娠、出産のため会社を休み、給料を受け取れない期間の補償として健康保険から支払われるのが出産手当金です

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【評価業務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

評価システム「カオナビ」を使って評価業務の時間を1/10以下にした実績多数!!

●評価シートが自在につくれる
●相手によって見えてはいけないところは隠せる
●誰がどこまで進んだか一覧で見れる
●一度流れをつくれば半自動で運用できる
●全体のバランスを見て甘辛調整も可能

カオナビの資料を見てみたい

2.出産手当金が支給される条件とは?

続いて出産手当金を受け取れる条件について見ていきましょう。出産手当金の対象となるのは、以下3つの条件をすべてクリアしている人です。出産手当金を受け取れるそれぞれの条件について、詳細を見てみましょう。

  1. 健康保険の被保険者である
  2. 出産のために休職している
  3. 妊娠4か月(85日)以降の出産である

①健康保険の被保険者である

資格喪失日の前日(退職日)までの被保険者期間が継続して1年以上あれば、正社員ではないアルバイトやパートの場合でも出産手当金を受け取れます。

なお、自営業などで国民健康保険に入っている人、また任意継続被保険者の人は出産手当金を受け取れません(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く)。

②出産のため休職している

休んだ期間について給与の支払いがあっても、その給与の日額が出産手当金の日額より少なかった場合は、出産手当金と給与の差額が支給されます(1円未満四捨五入)。出産手当金の支給額より多い給与を受け取っている場合、その期間の支給が受け取れません。

③妊娠4か月~(85日~)での出産である

この条件には、妊娠4か月を過ぎてからの早産や死産、流産や人工中絶となった場合も含まれています。

また出産予定日より遅れて出産した場合、その期間についても出産手当金の支給対象となります。支給期間は「出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日」です。

85日未満での早産や死産、流産や人工中絶に対しての出産手当金は給付されません。

出産手当金の対象となるそれぞれの条件を確認し、費用面についての不安をできるだけ軽減しておきましょう

マネジメントに役立つ資料を無料でダウンロード!⇒こちらから

3.退職予定・退職済で出産手当金がもらえる条件

出産で退職予定またすでに退職している場合、出産手当金を受け取れないのでしょうか。

退職に伴って、社員は会社の健康保険から脱退します。出産手当金の受給要件から見れば給付の対象外ですが、以下の要件をすべて満たしていれば受給できるのです。

  1. 退職の時点で1年以上継続して健康保険に加入している
  2. 支給期間内に退職している
  3. 出産(予定日)から42日・多胎の場合は98日以内に退職している
  4. 退職日に出勤していない

①退職時に1年以上健康保険に継続加入していた

ひとつめの条件は、被保険者の資格を喪失する日の前日、つまり退職日までに1年以上継続して健康保険に加入していること。1年以上同じ会社で勤務しているのであれば、問題なくクリアできるでしょう。

ここで重要なのが「継続して1年以上加入している」かどうか。たとえば半年勤務して一時退職し、また半年勤務したという場合、出産手当金の受給対象にはなりません。また被保険者期間は、健康保険任意継続の被保険者期間を除きます。

②支給期間内に退職している

ふたつめの条件は、出産手当金の支給期間内に退職していること。詳細は後述しますが、出産手当金には以下のような支給期間があります。

  • 出産手当金の支給期間:出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日) + 出産予定日から遅れた出産日までの日数+出産日翌日以降56日までの範囲内

出産予定日以前42日には出産日当日も含まれ、期間内に退職していることがふたつめの条件となるのです。出産を機に退職を考えている人は、この条件を満たすよう退職日を設定しましょう。

③出産(予定日)から42日・多胎の場合は98日以内に退職している

前項と重複しますが、退職予定もしくは退職済で出産手当金をもらうには、出産(予定日)から42日(多胎の場合は98日)以内に退職している必要があります。

日数は実際の出産日、もしくは出産予定日から算出しましょう。なお出産日の当日は、出産の日以前の期間に含まれるので注意が必要です。

  • 出産手当金の支給期間:出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)+出産予定日から遅れた出産日までの日数+出産日翌日以降56日までの範囲内

出産予定日から遅れて出産した場合、その日数も出産日以前の期間に含まれます。

④退職日に出勤していない

退職日の当日は、出産手当金の支給期間である「出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)」に含まれます。つまり退職日当日に労働をしていない(収入がない)ことが必要になるのです。

退職日当日に働いて賃金が発生すると出産手当金の支給対象外となりますので、退職日の設定には注意してください。設定を間違えると給付を受けられなくなるため、会社側と相談しましょう。

妊娠4か月(85日)以上の出産であれば、死産や流産、母体保護法にもとづく人工妊娠中絶手術でも出産手当金の受給対象です

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

4.出産手当金の支給対象とされないケース

妊娠、出産をするすべての人が出産手当金を受けられるわけではありません。ここでは出産手当金の支給対象とされないケースを見ていきましょう。以下の場合は出産手当金の支給を受けられませんので注意が必要です。

  1. 本人が国民健康保険に加入している場合
  2. 本人が家族の健康保険の扶養に入っている場合
  3. 休職期間中に出産手当金以外の給与を受け取っている場合

①本人が国民健康保険に加入している場合

出産手当金は社会保険の制度で、支給条件に「健康保険の被保険者であること」が含まれています。つまり対象は勤務先の健康保険組合や協会けんぽ、共済組合などに加入している会社員や団体職員、公務員などです。

個人事業主やフリーランス、自営業などで国民健康保険に加入している人は、出産手当金の支給対象には含まれません。

出産手当金と似た制度に出産一時金があり、こちらは社会保険、国民保険どちらの場合でも一律支給されます。ふたつの制度は一見似ていますが、混同しないようにしましょう。

②本人が家族の健康保険の扶養に入っている場合

出産手当金を受け取るには、妊娠、出産をする本人が被保険者かどうかがポイントとなります。本人が家族の健康保険の扶養に入っている場合は、出産手当金を受け取れません。

たとえば、夫の健康保険の扶養に入っていて本人が加入していない場合は「出産手当金」を受け取れません。

しかし前述の通り、出産一時金は支給の対象となります。出産一時金は、1児につき42万円です(産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合、また妊娠22週未満の出産、死産等を除く)。

③休職期間中に出産手当金以外の給与を受け取っている場合

育児休業中は労働できないため、企業には給与の支払い義務がありません。出産手当金は、収入が減ってしまうために生じる不安を軽減するための補償です。

つまり休職期間中に出産手当金以上の給与を受け取っている場合、原則出産手当金の支給対象外となります。

出産手当金が適用される期間は、原則的に産前42日前から産後56日目までの98日間。期間中に出勤したり有給休暇を取得したりといった日については請求できません。

有給などで給与や出産手当金の時は差額を受け取れる

産前42日前から産後56日目までの98日間(多胎妊娠の場合は出産日以前98日間から出産日後56日間)に、有給や会社独自の制度などによって何らかの収入があった場合はどうなるのでしょうか。

その場合、それらの制度による支給額が出産手当金よりも低い場合のみ、その差額を受け取れる、となります。

しかし実際のところ、有給休暇の場合はその日の給与全額が支払われるのに対し、出産手当金は日額の3分の2に相当する金額、つまり有給休暇の満額の方が多くなるのです。

有給休暇は、職場復帰後についても考えて検討したほうがよいでしょう。制度の基準や条件をきちんと理解してスケジュールを組む必要があります

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

5.出産手当金が支給される期間と金額

それでは具体的に、出産手当金の支給期間が何日間になるのか、またいくら支給されるのかを見ていきましょう。

出産手当金が受けられる期間は一般的に「出産予定日の42日前から、出産の日の翌日以後56日目までに会社を休んだ期間」で、支給金額は「標準報酬日額平均の2/3相当」です。それぞれ詳しく説明しましょう。

出産日(出産予定日)以前42日~出産日の翌日以降56日まで

出産手当金が適用されるのは、原則的に「出産予定日の42日前から出産日の翌日以降56日目までの98日間」で会社を休み、給与の支払いがなかった期間。この出産手当金が支給される期間を産前産後休業、いわゆる「産休」です。

この期間は労働基準法における母性保護規定で定められています。産前産後の女性は出産日以前42日から産後56日までは働きたくても働けないため、その期間の生活を補償するために設けられたのが、出産手当金という制度です。

出産予定日以降の出産・出産予定日

出産予定日を過ぎて出産した場合、出産手当金の支給期間はどうなるのでしょうか。出産手当金は、出産予定日を過ぎた期間も支給の対象になります。

たとえば出産予定日から3日遅れて出産したケースを見てみましょう。予定日から遅れたその3日間も出産日以前の期間に含めて計算が行われます。つまり42日+3日+56日=101日間が支給期間です。出産手当金支給期間は、以下の計算式で算出できます。

支給期間=出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日

出産予定日以前の出産・出産日

それでは出産予定日よりも早く出産した場合、支給期間はどうなるのでしょうか。この場合は主産予定日がいつであったかに関わらず、実際に出産した日を基準にして産前・産後の期間を数えます。

出産日が早まったからといって、出産手当金の支給日数が少なくなるわけではありません。報酬が支払われていなければ、たとえ本人が働ける状態でも出産手当金の支給期間に数えられます。

出産が予定日より早まる可能性がある場合は、産休開始日より余裕を持って休業を取得しておくと安心です。

多胎の場合・出産日(出産予定日)以前98日

多胎妊娠、つまり双子や三つ子を妊娠した場合は支給期間が異なります。双子以上を妊娠した場合の出産手当金支給期間は下記のとおりです。

支給期間(多胎の場合)=出産予定日前98日+産後56日の154日

出産予定日を過ぎて出産した場合や、出産予定日より早く出産した場合も、1人の赤ちゃんを出産した際と同じ計算になります。

多胎妊娠の場合は、母体にかかる負担がより大きくなるといわれています。そのような理由から、産前休暇が6週(42日)から14週(98日)まで延長されているのです。

金額は標準報酬月額の平均額より算出する

赤ちゃん1人あたりに一律で支給される出産一時金に対して、出産手当金は出産する本人の給与額をもとに算出されるため、その金額は一律ではありません。1日当たりの出産手当金支給額は、以下の計算式で算出できます。

出産手当金の支給額=支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

ここでいう「支給開始日」とは、最初に出産手当金が支給された日です。

標準報酬月額が12カ月未満の場合

標準報酬月額が12か月に満たない場合、つまり他の社会保険に加入していた期間がある場合や空白の期間があった場合はどうなるのでしょうか。支給開始日以前の期間が継続して12か月に満たない場合、いずれかの計算で低いほうの額が適用されます。

  • 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  • 健康保険全加入者の標準報酬月額を平均した金額

自分で算出してもよいですが、所属する健康保険組合に問い合わせたほうが正確な金額が分かるでしょう。

人生に多々あるイベントのうち、出産は特に大きなもの。出産手当金に関する知識を身につけて費用面の不安を軽減しましょう

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

6.出産手当金の請求の流れ

被保険者や家族の生活を保障し、安心して産前産後の休業を送れるよう設けられた出産手当金ですが、待っていれば自動的にもらえるわけではなく、給付を受けるには申請が必要です。ここでは出産手当金を受け取るための手続きについて説明します。

総務・人事に手続方法を確認する

妊娠が判明したらまずは、職場の上司などに出産を報告します。その際、上司や総務、人事部などに出産手当金を受け取りたい旨を伝えておきましょう。

はじめに健康保険の加入期間や産休取得予定などから、本人に受給資格があるかどうかを確認します。

また産休が有給や退職に関わる場合、出産手当金の基準や条件をよく理解してスケジュールを組む必要があります。あわせてその後の手続きを会社経由で行うのかもしくは自分で行うのか、確認しておくとよいでしょう。

「健康保険出産手当金支給申請書」を取り寄せる

続いて「健康保険出産手当金支給申請書」を用意します。申請書は社会保険事務所から発行されていますが、企業の総務部や担当部署で準備している場合も。一度確認してみましょう。

事業所によっては個人で申請するよう指示される場合もあります。その際は管轄する社会保険事務所、もしくは協会けんぽのホームページからダウンロードして入手しましょう。申請には下記の書類も必要になりますので、あわせて準備しておきましょう。

  • 健康保険証(コピー可)
  • 母子手帳(コピー可)
  • 印鑑
  • 事業主の証明書類

産婦人科の医師・事業主の証明を取得する

出産手当金を申請する際、担当医師(もしくは病院)と事業主(会社)の双方から証明を受けます。事業主の証明書類は会社に用意してもらう必要があるため、あらかじめ担当部署に依頼しておきましょう。

医師・助産師の記入欄は、出産の際に入院する病院に提出して記入してもらいます。

申請書に記載漏れがあったり、提出する書類に不備があったりしなければ、出産手当金は1~2か月程度で指定した口座に振り込まれるのです。

なお、出産手当金の申請期限は産休開始の翌日から2年以内と決められていますので、忘れないように進めましょう。

出産によって収入の減る期間を保障するための出産手当金。きちんと手続きをして確実に受け取りましょう