出産手当金とは、健康保険に加入する被保険者が出産のため休業した期間に支給される給付金で、日額は標準報酬月額の平均÷30×2/3で計算します。産前42日・産後56日の計98日間が対象で、総額は約43万〜65万円が目安です。本記事では、支給条件・対象外ケース・計算方法・退職時の扱い・申請手順・他の給付金との違いまで網羅的に解説します。
今回は出産手当金について、振り込まれる時期や支給条件、申請方法や支給額の計算方法などを解説しましょう。
目次
1.出産手当金とは?
出産手当金とは健康保険の被保険者が出産のために休業し無給となる期間の生活を支えるための給付金で、産前6週間・産後8週間が対象です。
労働基準法第65条では、女性が妊娠した場合、産前6週間と産後8週間の休暇が得られる権利が定められています。
産休に入ると仕事ができず、その間無給状態になります。出産手当金はお金の心配をすることなく休養を取るための支援です。受給するには「出産手当金支給申請書」を準備し、健康保険組合または協会けんぽに提出します。
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2.出産手当金はいつ振り込まれる?
出産手当金は産休終了後に申請し、申請から振込まで1〜2か月かかるため、産休開始直後に申請すれば出産日から約3か月後が目安です。
出産手当金が振り込まれるのは、産休終了後です。産休が終了してすぐに申請手続きした場合、支給日までは1〜2か月ほど。産休に入ってすぐに申請手続きすれば、出産日から約3か月後に振り込まれます。
振り込まれるタイミングは、加入する健康保険によって異なるため、正確な振込日程を知りたい場合には加入する保険者に問い合わせてみましょう。
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3.出産手当金の支給対象者
支給対象は「勤務先の健康保険に被保険者として加入」「妊娠4か月以降の出産」「出産のため休業中」の3条件をすべて満たす人です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①健康保険の加入 | 勤務先の協会けんぽ・健康保険組合に被保険者として加入(扶養は対象外) |
| ②妊娠4か月以降 | 妊娠85日以上での出産・流産・死産が対象(4か月未満は対象外) |
| ③出産のため休業 | 産前産後に休業し、給与が無支給または手当金日額未満であること |
出産手当金には以下3つの支給条件があり、すべて満たす場合に支給対象者となります。
- 勤務先で健康保険に加入している
- 妊娠4か月以降に出産した
- 出産のために休業している
下記で、支給対象者の条件を詳しく解説していきます。
①勤務先で健康保険に加入している
協会けんぽや各協会団体の健康保険組合、勤務先の健康保険組合などに加入している従業員が対象です。出産する従業員本人が被保険者として健康保険に加入している必要があり、配偶者の扶養で健康保険に加入している場合は対象外となります。
つまり、配偶者の扶養に入りながらパートをしている女性は出産手当金が受け取れませんが、パート先で被保険者として健康保険に加入している場合は支給対象です。なお、国民健康保険に出産手当金に該当する制度はありません。
②妊娠4か月以降に出産した
健康保険では、妊娠から4か月(85日)以上を経過してからの出産または流産を「出産」と定義しており、出産手当金も妊娠4か月以降の出産が対象です。
妊娠4か月以降であれば、流産や人工中絶、死産の結果となった場合でも支給対象となりますが、妊娠4か月未満での流産や死産は対象外です。
③出産のために休業している
出産のために休業して出産前後の給与をもらっていない、または給与額が出産手当金の日額よりも少ない従業員は支給対象です。一方、出産の前後に通常通り働いていた、または給与額が出産手当金の日額より多い場合には支給されません。
なお、出産手当金に類似する「出産育児一時金」は、休業有無や給与額に関係なく支給されます。出産手当金と混同されやすいため、どちらも対象である場合は申請を忘れないよう注意しましょう。
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出産手当金は健康保険に加入している女性が利用できる制度です。しかし支給されないケースもあります。ここでは、出産手当金が支給されない(もらえない)主な4つのケースをご紹介しましょう。
国民健康保険に加入している
国民健康保険の加入者・配偶者の扶養に入っている人・任意継続被保険者・産休中の給与が手当金日額を超える人は原則として支給対象外です。
| 不支給ケース | 理由 |
|---|---|
| 国民健康保険に加入 | 国保には出産手当金に該当する制度がない |
| 配偶者・家族の扶養 | 被保険者本人でなければ対象外 |
| 健康保険の任意継続 | 任意継続期間中の出産手当金は原則支給されない |
| 産休中の給与が日額超 | 給与が手当金の日額を上回ると支給されない |
個人事業主やフリーランスとして働いているといったように勤務先の健康保険の加入条件を満たさない場合、国民健康保険に加入します。国民健康保険に、出産手当金に該当する制度がないため支給はありません。
念のため、勤め先に国民健康保険に加入する従業員がいる場合、その旨を事前に伝えるとよいでしょう。出産手当金の支給がない人には、代わりの措置として有給休暇を取得してもらうなど、希望に合わせて適切に対応してください。
配偶者や家族の扶養に入っている
出産手当金の支給対象となるのは、出産する本人が被保険者として健康保険に加入する場合のみであり配偶者や家族の扶養として健康保険に加入する場合は支給されません。
つまり、妻が夫の勤務先に申請して手当金をもらえず、同様に親の扶養家族である娘の出産も対象外です。
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健康保険を任意継続している
退職後、一定条件を満たせば前職の健康保険の加入が継続できる制度が任意継続です。任意継続では前職の健康保険に加入している状態ではあるものの、出産手当金は対象外となります。ただし、任意継続の方でも以下条件に限って受け取ることが可能です。
- 退職日まで1年以上継続して健康保険の被保険者である
- 資格喪失日(退職の翌日)時点で出産手当金を受給していた
- 退職日当日に勤務していない
産休中の給与が手当金の日額を超える
勤め先によっては、規定により産休中も変わらず給与が支給される場合もあります。この場合産休中に受け取る給与額が出産手当金の日額を超えると出産手当金が支給されません。
産休に有給休暇の取得を検討している人は、出産手当金の日額を超える可能性があるため要注意です。出産手当金の受給と有給休暇の取得のどちらが得かを検討しましょう。
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5.出産手当金の対象期間と金額の計算方法
出産手当金はいつからいつまでの期間を対象に、いくら支給されるのでしょうか。ここでは、出産手当金の対象期間と計算方法を解説します。
出産手当金の対象期間
支給対象期間は出産日以前42日〜産後56日の計98日間で、日額は「支給開始日以前12か月の標準報酬月額平均÷30×2/3」で算出します。
| 区分 | 対象期間 |
|---|---|
| 単胎妊娠 | 出産日以前42日+産後56日=計98日 |
| 多胎妊娠(双子等) | 出産日以前98日+産後56日=計154日 |
| 予定日より遅れた場合 | 上記に遅れた日数分を加算 |
| 予定日より早まった場合 | 早まった日数分の支給額が差し引かれる |
出産手当金の支給対象期間は、出産日以前42日から出産日翌日以降56日までの範囲内で休業し、給与の支払いがなかった期間です。双子など多胎妊娠の場合は、出産日以前98日が対象期間です。
予定日が遅れた場合はその日数もプラスされ、対象期間は以下のように計算されます。
出産予定日42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日
反対に、出産が予定日より早まった場合、その日数分の1日あたりの支給額が差し引かれます。
出産手当金の計算方法
1日あたりの出産手当金額の計算式は、以下のとおりです。
【支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
総支給額は「1日あたりの支給額×98日」で計算されます。なお、支給開始日とは、最初に出産手当が支給された日です。たとえば、標準報酬月額の平均が20万円のケースでは、以下のように出産手当金が計算できます。
| 日額 | 20万円÷30日×2/3=4,444円 |
| 総支給額 | 4,444円×98日=43万5,512円 |
なお、上記の例で出産が5日遅れた場合、「4,444円×5日=22,220円」が加算されます。
支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合
支給開始日の以前の期間が12ヶ月未満の場合は、次のいずれかの低い金額を使用して計算します。
- 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
- 標準報酬月額の平均額:30万円
6.退職予定・退職時の出産手当金はどうなる?
退職後も「被保険者期間が継続1年以上」かつ「退職日に出産手当金の受給条件を満たしている(退職日は出勤しない)」場合は継続受給できます。
退職した場合でも、以下条件を満たせば出産手当金が支給されます。
- 被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期がある
- 資格喪失時に出産手当金を受けている、または受ける条件を満たしている
被保険者期間は、任意継続期間を除きます。また退職日に出勤した場合は継続給付を受ける条件を満たさないため、退職の翌日以降に出産手当金は支給されません。
出産を機に退職予定の人は、「出産予定日前42日+産後56日+出産予定日から遅れた出産日までの日数」に退職している場合に限り支給対象となるため、会社に相談して退職日を調整することをオススメします。
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出産手当金は、申請書の入手から記入・提出を経て、審査完了後に指定口座へ振り込まれるまで、通常1〜2か月程度かかります。
産休開始前に申請書を準備し、出産後に医師の証明を受けてから提出する流れが一般的です。スムーズに手続きを進めるために、以下の手順を事前に確認しておきましょう。なお申請期限は出産日の翌日から2年間ですが、産休終了後にまとめて申請するケースが一般的です。申請書は全国健康保険協会(協会けんぽ)のWebサイトからダウンロードできます。
申請書の入手→本人情報・医師記入欄・事業主証明の記入→健康保険組合または協会けんぽへ提出→1〜2か月後に口座振込の流れで進みます。
出産手当金の申請には、規定の書類が必要です。従業員は出産を報告する際、出産手当金を受給したい旨を人事や総務に伝えるとスムーズに進みます。なお、この時に手続きを会社側が行うのか、自分自身で行うのか確認しましょう。
下記で、申請から入金までの流れを解説します。
- 健康保険出産手当金支給申請書を用意する
- 必要書類を準備・記入する
- 必要書類を提出する
- 産後に出産手当金が入金される
①健康保険出産手当金支給申請書を用意する
申請書は各社会保険事務所から発行されているため、協会けんぽや健康保険組合のWebサイトからダウンロードします。会社側で用意しておくと、従業員から申し出があった際にスムーズです。企業によっては、総務部や人事部が代理で申請する場合もあります。
②必要書類を準備・記入する
提出書類は、以下4種類です(健康保険の種類によって異なります)。
- 健康保険出産手当金支給申請書
- 健康保険証(写し)
- 母子手帳(写し)
- 事業主からの証明書
上記と合わせて、印鑑も必要です。申請書には「本人情報」「医師・助産師記入欄」「事業主証明」の情報を記入します。医師・助産師の記入欄があるため、申請は産後に一括で済ませるのがオススメです。
事業主の証明書類は会社側が用意する書類であり、従業員の賃金や出勤状況を記載します。なお、業主印の押印が必須であるため、担当者は押印を忘れないよう気をつけましょう。
③必要書類を提出する
健康保険組合や協会けんぽに書類を提出すれば、申請が完了です。なお申請期限は産休開始の翌日から2年以内と期間は長いものの、忘れないようできるだけ早く申請しましょう。
④産後に出産手当金が入金される
申請からおよそ1〜2か月後に指定口座に一括で振り込まれます。たとえば5月1日に出産し、5月末に申請した場合、産休期間の終わった7月以降に申請が受理され、8月末〜9月末頃に振り込まれるイメージです。
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8.出産手当金以外の妊娠・出産時に利用できる補助金・給付金
出産手当金のほか、妊娠・出産児に利用できる補助金・給付金をご紹介します。
出産育児一時金
出産育児一時金(50万円)は国保加入者や扶養家族も対象で、育児休業給付金は男女とも対象となるため、出産手当金と併用して受給できます。
| 制度 | 支給額 | 対象者 |
|---|---|---|
| 出産手当金 | 標準報酬月額÷30×2/3(日額) | 健康保険の被保険者本人 |
| 出産育児一時金 | 50万円(一部48.8万円) | 健保・国保の被保険者または被扶養者 |
| 育児休業給付金 | 休業開始時賃金日額×67%(6か月超は50%) | 雇用保険に12か月以上加入する男女 |
出産育児一時金は、健康保険や国民保険の被保険者が出産した時に支給される補助金です。
支給額は令和5年4月より8万円引き上げられ、現在は50万が支給されます。産科医療補償制度に未加入の医療機関等での出産や妊娠週数が22週に達していない出産の場合は、支給額が48.8万円となります。勤務先の健康保険に加入している人は、出産手当金と合わせて受給可能です。
出産育児一時金は、出産手当金では支給対象外だった配偶者や家族の扶養に入っている人や国民健康保険に加入している人も対象となります。
被保険者または被扶養者が妊娠4か月(85日)以上で出産した場合に対象となり、受給するには加入する健康保険組合に自身で申請手続きを進める必要があります。
育児休業給付金
育児休業給付金は、育児のために休業する人が復職することを前提に支給される給付金であり、男性の育休取得時も対象です。申請は、勤務先経由で最寄りのハローワークで行います。
受給対象となるのは産休前の2年間のうち12か月以上働く雇用保険加入者で、子どもが1歳になる前々日まで支給されます。
なお、特例として保育所等の入所を希望していたが入所できなかった場合、所定の要件を満たすことで、最長で2歳になるまで期間が延長される場合もあるのです。
支給額は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」で算出され、育休開始から6か月経過後は50%で計算されます。
育児休業給付金(育休手当)とは? もらえる条件、いつから?
「育児休業給付金」とは、育児休業給付金は、育児休業中の労働者に支給される給付金です。子育て支援の一環として、一定期間、収入の一部を補填し、仕事と育児の両立を支援します。
2022年10月の育児・介護休...
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よくある質問
出産手当金と出産育児一時金は両方もらえますか?
はい、両方受給できます。出産手当金は産休中の所得補償として健康保険から支給され、出産育児一時金は出産費用の補助として支給されるもので、目的が異なるため併給が可能です。勤務先の健康保険に被保険者として加入していれば両方の対象となり、それぞれ別に申請手続きを行います。
帝王切開で出産した場合、出産手当金の支給額は変わりますか?
帝王切開であっても出産手当金の支給額は変わりません。出産手当金は出産の方法に関係なく、産前42日・産後56日の休業期間に対して支給されます。なお、帝王切開は健康保険の療養の給付(3割負担)や高額療養費制度の対象にもなるため、手術費用の自己負担を軽減できます。
出産手当金の申請を忘れていた場合、さかのぼって請求できますか?
出産手当金の申請期限は、産休開始の翌日から2年以内です。この期間内であればさかのぼって請求できます。ただし、2年を過ぎると時効により請求権が消滅するため、できるだけ早く申請しましょう。申請が遅れた場合でも支給額は変わりませんが、振込時期がその分遅くなります。
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