出張とは? 出向との違い、労働時間、出張費の相場、出張旅費規程

出張とは、業務のため通常とは異なる場所へ出向くこと。ここでは出張と出向の違いや、出張費の相場、費用の削減方法などについて説明します。

1.出張とは?

仕事のため臨時でほかの場所へ出向くこと。もともと戦陣用語として使用された言葉です。戦場に出て陣を張る「出張り」が起源で、それを音読みしたのがはじまりでした。

「出張」という言葉自体が使われるようになったのは明治時代以降といわれています。

出向との違い

出向とは、自社会社の本店や支店、あるいは関連会社へ異動すること。

出張は業務指示を受けて出張先で業務するため、異動が生じないうえ日帰りや数日間で終わるのです。なかには数カ月におよぶ長期出張もあります。

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2.出張時の労働時間

出張時の労働時間は、どのように算出するのでしょう。一般的に「移動時間」を含めるか含まれないかが大きなポイントとなるのです。ここでは移動時間が「労働時間となるケース」「労働時間とならないケース」また「出張時の残業代」について説明します。

移動時間は原則、労働時間に含まれない

労働時間とは、社員が事業者の指揮監督下にある時間のこと。出張時の移動時間は、通常の通勤時間と同じように「業務を命じられていない状態」であるため、一般的に労働時間にはならないのです。

また移動時間が早朝や深夜という時間帯でも時間外労働にはなりません。ただし会社によって規定が異なる場合もありますので、確認が必要です。

休日中の移動も同様

休日の移動時間も一般的に、労働時間に含まれません。

労働基準法の解釈例規では「出張中の休日は、その日に旅行する場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示があるケース以外は休日労働として取り扱わなくても差支えない」(昭和23年3月17日基発461号、昭和33年2月13日基発90号)としています。

たとえば月曜早朝の会議のために日曜夜に出発したとしても、日曜の移動時間は労働時間とならないのです。

移動時間が労働時間に含まれるケース

移動時間が労働時間に含まれるケースもあります。たとえば上司からの指示で必要な資料や商品などを運搬する場合です。

また上長と一緒に移動中に打合せをする場合についても労働時間となる可能性があります。つまり移動中に会社指示のもと業務を行っている場合、労働時間に含まれるのです。

出張時の残業

出張時に残業が発生した場合、実労働時間で計算できる場合と、みなし労働時間制により残業代が出ない場合に分けられます。

たとえば出張先で上司が同行した場合、指揮監督を受けるため残業代が出ます。しかしみなし労働時間制を採用している場合、出ない可能性が高いでしょう。

みなし労働時間制での計算が一般的

出張時の残業代が支払われるか否かについては、事業所における「みなし労働時間制」の適用の有無によって分けて考える必要があります。

みなし労働時間制は、実際の業務時間にかかわらず一定の時間業務を行ったとみなせる制度です。「事業所外における労働時間の算出がかんたんではない」という理由からこの制度が設けられています。

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3.出張にかかる費用

出張に発生する費用は出張場所や目的、宿泊施設によって金額も大きく変化するもの。ここでは一般的な出張を想定し、宿泊費や支払い方法、精算方法や出張手当、交通費の相場について解説します。

宿泊費

宿泊費の精算には2種類の方法があります。

  • 実費精算:宿泊にかかった費用を社員が立て替えて後日事業所が本人に支払う。社員に対して過不足なく宿泊費を支給できる
  • 定額支給:宿泊料金にかかわらず事業所が社員へ一定額支給。社員がどの宿泊施設を利用しても一定の金額が支給できるため、公平性を確保できる

出張手当

出張手当とは、社員が通常の勤務地とは異なる場所で労働する際、精神的・肉体的疲労への慰労や諸雑費補填という意味合いで支給される手当のこと。宿泊費や交通費、駐車場料金などの出張経費とは違います。

事業所によっては「出張日当」と呼ばれ、金額は事業所ごとに定められているのです。

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交通費

交通費とは、出張時に利用する新幹線や飛行機、レンタカーなどにかかる費用のこと。出張のために必要とされる手段であれば経費となります。

しかし歩ける距離にもかかわらずタクシーを利用した、飛行機で移動するべきところを新幹線で移動したなど、合理的でないと判断されると、経費として認められない可能性が高まります。事前に上司へ確認しておきましょう。

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4.出張旅費規程の策定

出張旅費規程とは、出張にかかる諸経費の取り扱いについて定めた規程です。内容や数値などについて法律上の明確なルールはありません。事業所ごとに妥当額を自社で決められるもので、規程の内容は異なります。

規程策定のメリット

出張旅費規程を策定すると、3つのメリットが得られます。

  1. 出張者本人が出張手配を行いやすくなる:出張旅費規程には交通費や宿泊費、飲食費などさまざまな項目がある。出張者は各項目を踏まえて手配を行えばよいので予定を立てやすくなる
  2. 出張手当支給により社員のモチベーションが向上:出張者に支給する出張手当は非課税所得のため、社員のモチベーション向上に寄与
  3. 経理側が管理しやすくなる:経理担当者の業務も複雑になります。たとえば出張者が本来必要のないルートで航空機を利用した場合、精算時にさまざまなトラブルが生じる。出張旅費規程があれば出張の経費精算が管理しやすくなる

規程策定のデメリット

一方でデメリットも考えられるのです。

出張旅費規定を策定しない場合、役員のみに出張日当を支給できます。しかし策定するとすべての社員に支給するため、支出が増えるのです。

また出張旅費規定の作成によって、節税効果に重点を置き、必要以上に出張旅費を支給してしまうケースも考えられます。

出張旅費規程の作成手順

まず「出張の定義」をしっかり定めます。これにより出張費の不正受給といったトラブルを回避できるでしょう。ただし各部署にて、書類作成といった作業が増加する可能性も高まります。

出張の定義・目的・申請方法を定める

まず事業所における「出張」の定義を決め、規程活用の目的を明確にしましょう。出張前の適切な手続きや「〇〇日前までに申請が必要」など、具体的な申請方法も決めていきます。また「上司やそのほかの部門からの承認が必須」といったルールも記載するのです。

範囲を定める

続いて出張旅費規程の適用範囲を定めます。原則、出張旅費規程の対象は経営層のみならず、すべての社員です。「社長や役員は○円」「一般社員は○円」と、役職に応じて支給額に差をつける点について問題はありません。

またアルバイトやパートといった非正規社員が出張するケースなどについても、記載します。

支給額を定める

交通費や宿泊費、日当などの上限金額について決めます。交通費では新幹線のグリーン車利用の可否なども役職ごとに定め、宿泊費についても役職に応じて金額を決めていくのです。

一般的に社長や役員、管理職や一般職などとそれぞれの役職ごとに上限を定めます。出張日当も同様、それぞれの役職ごとに支給する額を定めるのが通常です。

雛形を活用して作る

雛形を活用すると、必要事項が組み込まれているため便利です。雛形の多くに「出張の目的」や「適用範囲」「旅費の種類や定義」「出張の定義や区分」などが、細かく記載されています。

出張旅費規程における節税のための注意点

作成後、出張時に発生する旅費の支給が認められる範囲を理解しておきましょう。宿泊費の支払い方法ひとつで、定額支給を行えなくなるからです。事前に節税になるルールを十分に理解しておきます。

交通手段を規定

どのような交通機関でも、宿泊費や日当を定額支給できます。一方、「どの移動手段まで可能か」を定めなければなりません。これによって「経営層はビジネスクラスを利用しても、その費用を定額で支給できる」と規定できるのです。

また航空券や特急券のように「購入する時期により料金が変動する」ものには通常、実費を支給します。

書類は保管する

出張旅費規程をもとに支給した場合でも、領収書は残します。出張した証拠がわからなければ、出張旅費として処理できません。一般的には、出張後に「出張旅費精算書」を記入し、担当部署に提出して保管します。

これによって出張の証明となるのです。日付や場所、訪問先や案件についても記載しましょう。

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5.出張費を削減するには?

出張費を削減するにはどうしたらよいのでしょう。たとえば社員に削減指示をしただけでは少々の効果が生じても、目標数値の達成に長い年月が必要です。ここでは出張費削減のためにできることを紹介します。

  1. 格安航空や早割を活用
  2. 外部に委託
  3. Web会議システムを活用
  4. 出張管理システムを導入

①格安航空や早割を活用

社員の出張予定が具体的に決まったら、格安航空券や早割、または航空券と宿泊のセット商品の活用、新幹線の回数券などの利用を検討しましょう。部門でそれらを共有すると出張旅費の削減を図れるのです。

NECグループの企業では、割安航空券や契約ホテルの利用により、出張旅費の1割削減を達成できたと発表しています。

②外部に委託

社内で行っていた出張手配を、出張手配に特化した企業や旅行代理店に委託するのも出張費削減のための方法です。

委託手数料が発生するものの、社員自身で手配するより交通費や宿泊費などを安く抑えられる可能性も高くなります。長期的に見るとコスト削減につながる可能性も高いでしょう。また社内の業務工数カットを目指せます。

③Web会議システムを活用

テレビ会議やオンライン会議の利用も出張費削減のための効果的な手段です。これによって、社員の飛行機や新幹線を使っての長距離移動はもちろん、宿泊費の発生を抑えられます。

また出張による疲労の軽減、時間の節約などさまざまなメリットが期待できるのです。ただしオンライン会議を行う場合、出張したほうがよい業務とそうでない業務を見極めてからにしましょう。

④出張管理システムを導入

出張管理システムを導入すると、飛行機や新幹線などのチケットやホテルを格安で予約できるのです。

さらにシステム上でホテルや各種交通機関チケットの支払いに法人カードを一律で設定すると、ポイントを貯められます。これによって旅費交通費だけでなく、出張費全体の削減も期待できるのです。