社会保険料率とは? 各種社会保険料と標準報酬月額について

社会保険料率とは、各種社会保険料の負担額を算出する際に使われる割合のこと。今回は、各種社会保険料と標準報酬月額について解説します。

1.社会保険料率とは?

社会保険料率は、各都道府県が決めるもので、場所によって若干料率が異なります。2009年9月から都道府県単位で異なる保険料率にて運用されるようになりましたが、それ以前は全国一律でした。

社会保険料率が都道府県単位で運用され始めてから、上昇し続けています。全国一律であった時の保険料率は8.20%だったものの、2009年9月からは全国平均で9.34%。1%以上も負担額が増大しているのです。

社会保険料の負担について

従業員の保険料は従業員と会社で半分ずつ負担するため、保険料率と給与から保険料を算出すると、負担額が分かります。保険料率は毎年改定されており、年度によって若干料率が異なるのです。

さらに社会保険料と介護保険料は合算して計算されるため、40歳以上の従業員には社会保険料率に介護保険料率が加算されます。そのため雇用する側の負担も増えてしまうのです。

社会保険料の計算方法

保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率をかけて算出します。たとえば、下記のとおりです。

  • 毎月の保険料額:標準報酬月額×18.3%
  • 賞与の保険料額:標準賞与額×18.3%

上記で算出された保険料を事業主と被保険者で半分ずつ負担します。

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保険料率は住んでいる地域によって異なり、毎月の給与である標準報酬月額や賞与である標準賞与額に保険料率をかけると、実際に支払う保険料が算出されます

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2.社会保険料率にかかわる標準報酬月額について

社会保険料を算出する際は、給与に保険料率をかけて計算します。その際に給与として使われるのが標準報酬月額です。しかしこの標準報酬月額とはどのようなものなのでしょうか。ここからは、標準報酬月額について詳しくご紹介します。

標準月額報酬とは?

標準報酬月額とは、被保険者が事業主から受け取る毎月の給料などの報酬を一定の幅で区分したもの。対象となる報酬は、「基本給」「役付手当」「勤務地手当」「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」「残業手当」など、労働の対償として事業所から現金または現物で支給されるものです。

標準報酬月額は、等級制となっており、1等級から32等級に区分されています。たとえば22等級の場合、月額29万円から31万円までの人が同じ保険料として取り扱われるのです。

標準報酬月額の決まり方

被保険者の標準報酬月額は、事業主から提出された届書をもとに日本年金機構が決定します。標準報酬月額の決定のタイミングは、下記3つに大別されるのです。ここからは、それぞれの決まり方について見ていきましょう。

  1. 定時決定について
  2. 被保険者の資格を得たとき
  3. 随時改定について

①定時決定について

被保険者が事業主から受け取る報酬は、昇給などで変動します。そこで変動後の報酬に応じた標準報酬月額とするため、事業主は毎年1回7月1日になる前の3ヶ月に支払った報酬月額を提出し、その報酬総額を月数で割った額にて標準報酬月額を見直すのです。

これを定時決定といい、その年の9月から翌年の8月まで使用します。

②被保険者の資格を得たとき

新たに被保険者の資格を得た人の標準報酬月額は、下記の方法で決まるのです。

  • 月給、週給などの報酬:その報酬の額を月額に換算した額
  • 日給や時間給などの報酬:その事業所で前月に同様の業務に従事し、報酬を受けた人の報酬平均額
  • 上記の方法で計算できない場合:資格取得月の前1ヶ月間に同じ地域で同様の業務に従事し、報酬を受けた人の報酬額
  • 2つ以上に該当する報酬を受けている場合:それぞれの方法により算定した額の合計額

③随時決定について

昇給などにより報酬月額が大幅に変動した際、事業主からの届出にもとづいて標準報酬月額を改定します。これを随時改定といいその年の8月まで使用しますが、その年の7月以降に改定された場合は翌年の8月まで使用するのです。

随時改定は固定的賃金に変動があり、継続した3ヶ月間に支払われた報酬総額を3で割ったものの標準報酬月額を以前のものと比較し、2等級以上の差が生じた際に行います。

標準報酬月額では、等級表が作成されているのです。そのため表と自身の報酬月額を照らし合わせると、どの等級に当てはまるかが分かります

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3.健康保険料と介護保険料

社会保険料とは、健康保険や介護保険、厚生年金保険や労災保険、雇用保険にかかる保険料のこと。ここでは、健康保険と介護保険とはどのようなものか、それぞれの保険料率とともに解説します。

健康保険とは?

健康保険とは、国民皆保険制度のもと、日本国民全員が加入している公的医療保険のこと。代表的なものに、国民健康保険と健康保険が挙げられます。

  • 国民健康保険:健康保険やそのほか公的医療保険に加入していない人が対象の保険で、自営業者や企業退職後に任意継続をしない退職者が加入する
  • 健康保険:会社に勤める従業員や事業者が対象の保険で、協会けんぽと組合けんぽがある

健康保険の被保険者について

被保険者とは、健康保険に加入し、病気や怪我などをした際に必要な給付を受けられる人のこと。保険に加入している本人の扶養家族を被扶養者といい、同じく給付を受けられます。

ただし国民健康保険の場合、被保険者の扶養家族でも被保険者とならないので注意が必要です。被保険者・被扶養者は、月々に支払う保険料と医療機関に支払う医療費の一部負担によって、医療機関で治療を受けられます。

健康保険における適用除外について

適用除外とは、健康保険の適用事業所に使用されても被保険者になれない人のこと。下記に該当する場合は、船員保険・国民健康保険などほかの医療保険に加入する運びになります。

  • 所在地が一定しない事業所に使用される人
  • 国民健康保険組合の事業所に使用される人
  • 健康保険の保険者
  • 共済組合の承認を受けて国民健康保険に加入した人
  • 後期高齢者医療の被保険者

介護保険とは?

介護保険制度とは、平成12年4月にスタートしたもので、介護が必要になった高齢者を社会全体で支える制度です。制度の運営者(保険者)は、全国の市区町村。

40歳になると介護保険への加入が義務付けられ、介護保険料を毎月支払わなければならなくなります。介護サービスを受けるには、原則として1割の自己負担が必要です。

介護保険の被保険者について

介護保険の被保険者は、「65歳以上の第1号被保険者」と「40歳から64歳までの第2号被保険者」に分かれます。

  • 65歳以上の第1号被保険者:原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けた場合、いつでも介護サービスを受けられる
  • 40歳から64歳までの第2号被保険者:加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けた場合、介護サービスを受けられる

健康保険料と介護保険料の保険料率について

保険料率は都道府県ごとに異なり、加入者の医療費にもとづいて算出されます。都道府県でそれぞれ疾病予防などに取り組んでおり、医療費が下がれば、それが保険料率に反映されるのです。

また協会けんぽでは、平成30年度よりインセンティブ制度を導入。加入者の特定健診や特定保険指導、ジェネリック医薬品の使用割合などの取り組みの結果が保険料率に反映される仕組みとなっています。

第2号被保険者の保険料について

健康保険に加入する第2号被保険者が負担する介護保険料は、40歳になった月から健康保険の保険料とともに徴収が開始されます。介護保険料は医療保険料と同様に、原則被保険者と事業主で1/2ずつ負担する運びになっているのです。

国民健康保険に加入している場合、「所得割」「均等割」「平等割」「資産割」4つが自治体の財政によって独自に組み合わせて算出され、介護保険料率も異なります。

健康保険は、国民全員が加入しているのです。加えて40歳になると介護保険料の支払いも必要となります

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4.厚生年金保険料について

社会保険料のひとつである厚生年金保険料。厚生年金保険とは、国民年金に上乗せして給付される年金です。ここからは、厚生年金保険とはどのようなものか、その被保険者や保険料率、そして保険料の納め方について解説します。

厚生年金保険とは?

厚生年金は、主に会社員などが加入する年金で、事業主と従業員で半分ずつ負担するため、給与明細などに記載されている保険料の倍額が実際の納付額となります。

厚生年金の保険料は、毎年4月から6月に支払われる給与をベースに計算した標準報酬月額と賞与(標準賞与額)に対して、共通の保険料率をかけて算出するのです。

厚生年金保険の被保険者

厚生年金保険の被保険者は、厚生年金保険に加入している会社や工場、商店や船舶などの適用事務所に常時使用される70歳未満の人。これらの人は、国籍や性別、年金の受給の有無にかかわらず、厚生年金保険の被保険者になるのです。

「常時使用される」とは、雇用契約書の有無などにかかわらず、適用事務所で働き、労働の対価として給与などを受けるという使用関係が常用的であることを指します。

アルバイト・パートタイマーなどの扱いについて

パートタイマー・アルバイトなどでも事業所と常用的使用関係にある場合、被保険者となります。1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上である人は被保険者です。

要件を満たさない状況でも、「週の所定労働時間が20時間以上である」「雇用期間が1年以上見込まれる」場合などは被保険者となります。

厚生年金保険の保険料率について

厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正にもとづき平成16年から段階的に引き上げられていました。しかし平成29年9月を最後に引き上げが終了し、以降の保険料率は18.3%で固定されています。

厚生年金の保険料は、標準報酬月額に18.3%をかけると算出できるのです。

厚生年金保険料の納め方

厚生年金保険の保険料の徴収は、日本年金機構(年金事務所)が行います。

事業主は毎月の給与および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引き、事業主負担分の保険料と合算して、翌月の末日までに納めるのです。たとえば、6月分保険料の納付期限は、7月末日となります。

保険料を差し引く際は、前月の標準報酬月額に係る保険料を当月の給与から差し引けます。賞与の場合、標準賞与額に係る保険料をその賞与から差し引けるのです。

厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与に共通の保険料率である18.3%をかけて算出し、事業主が半分負担します

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5.労働保険料について

労働保険料とは、雇用保険と労災保険の保険料の総称です。原則、支払われた賃金をもとに算出しますが、保険料率の決定などがほかの保険と異なります。

最後に、雇用保険と労災保険とはどのようなものか、それぞれの保険料率とともに解説します。

雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者が失業した場合や、雇用の継続が困難な場合に必要な給付を行う制度のこと。雇用保険は、企業で働く労働者が加入対象で、経営者や個人事業主は加入できません。雇用保険の目的は、2つです。

  1. 「労働者が失業した」「雇用の継続が困難になった」場合などに必要な給付を行い、労働者の生活と雇用の安定を図る
  2. 労働者の再就職の支援・促進をする

雇用保険の被保険者

常用・パート・アルバイト・派遣など名称や雇用形態にかかわらず、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある場合、原則、被保険者になります。

しかし高校生や大学生などは上記の条件を満たしていても、被保険者にはなりません。ただし卒業後も同じ職場で継続して勤務する卒業見込みの学生や休学中の学生などが条件を満たす場合、特例として被保険者になるのです。

雇用保険の保険料率について

令和2年3月31日に「雇⽤保険法等の⼀部を改正する法律案」が国会で成⽴。令和2年4月1日から令和3年3⽉31日までの雇用保険料率は一般の事業で労働者負担が3/1,000、事業主負担が6/1,000となっています。

労働者負担分と事業者負担分を合わせた保険料率は、9/1,000です。保険料率は事業の種類によって異なり、たとえば建設の事業の場合、労働者負担が4/1,000、事業者負担が8/1,000で合わせて12/1,000となっています。

労災保険とは?

労災保険とは、雇用されている労働者が業務中や通勤中に起きた出来事に起因した病気や怪我、障害、あるいは死亡した場合に保険給付を行う制度のこと。正しくは、労働者災害補償保険といい、労災と略される場合もあります。

労災保険の対象は、業務上および通勤途上に起因したもののみです。労災保険においては、保険給付以外に、労働福祉事業も行っています。

労災保険の保険料率について

労災保険の保険料率は、労働保険徴収法などの規定にもとづき、事業の種類ごとに設定されているのです。

過去3年間の保険給付などにもとづいて算定した保険給付に要する費用の予想額を基礎としており、「過去3年間の災害率など、社会復帰促進等事業および事務の執行に要する費用の予想額そのほかの事情を考慮して定める」と規定されています。

労働保険は雇用保険と労災保険を総称したもの

労働保険とは、労働者災害補償保険(一般に「労災保険」という) と雇用保険を総称した言葉です。保険給付は両保険制度で別々に行われていますが、保険料の納付などについては一体のものとして取り扱われています。アルバイトなどを含む労働者が1人でも雇用されていれば、業種や規模に関わらず労働保険の適用事業となります。

労働保険料における負担割合について

労働保険料は、労働者の賃金総額に労災保険料率と雇用保険料率を合算した「保険料率」をかけて算出します。労災保険分は全額事業主負担、雇用保険分は事業主と労働者双方で負担するのです。

たとえば1年間に労働者に支払う賃金が300万円(労働者1名、毎月20万円×12ヶ月、賞与60万円)という小売業者の場合、労働保険料は、「300万円(賃金総額)×(3+9)/1,000(労災保険率+雇用保険率)=36,000円」となります。

被保険者負担分は9,000円、事業主負担分は27,000円です。

1名以上の労働者を雇用する事業所は、労働保険への加入義務があります。事業主は手続きを行い、保険料を納付しなければいけません。