STEM教育とは? 必要性、取り組み、伸ばせるスキル、バリエーションについて

「STEM教育」とは、「科学」「技術」「工学」「数学」教育を統合した、国際的な教育システムです。今回はSTEM教育について解説します。

1.STEM教育とは?

STEM教育とは、

  • Science(科学)
  • Technology(技術)
  • Engineering(工学)
  • Mathematics(数学)

の4科目にスポットライトを当てて、ITと科学技術の向上を図る教育方法のこと。目的は、国内外の社会で活躍できる人材の育成です。

次世代の子供を育てる教育システム

STEM教育は4科目に力を注ぎグローバル社会に対応できる人材を生み出す、次世代の子どもを育てる教育システムとなります。しかしSTEM教育の目的は、IT技術に優れた人材を生み出すだけではありません。

自分で学習して自分で理解する力を求められる今後のIT社会や国際社会に向け、「自発性」「創造性」「判断力」「問題解決力」を持った子どもの育成が、STEM教育本来の目的なのです。

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2.STEM教育の必要性

近年注目され始めたSTEM教育ではなぜ、「科学」「技術」「工学」「数学」の4科目にスポットを当てているのでしょう。ここでは、STEM教育の必要性について説明します。

なぜSTEM教育が必要なのか

STEM教育は、IT社会に対応するスキルを育てるためだけのものではありません。理数系のSTEM4科目を学ぶと、「考察や分析」「課題の発見と解決」などが行えるようになります。

また子どもの頃からプログラミングに触れると、ITリテラシーを高められます。さらに身に付けた知識の転用や活用を加えると、新しい価値の創造も可能となるのです。

ITリテラシーを高められる

STEM教育のプログラミング学習によって子どもの頃からITリテラシーを高め、IT化社会に適応する人材を育成できます。

STEM教育でプログラミングが必修化されている理由は、「世の中のほとんどのものにプログラミングが使われている」。これらを子どもの頃から認識させ、仕組みが理解できる力を育てるのです。

思考力・行動力を身に付ける

思考力・行動力を伸ばすためにSTEM教育が必要とされます。これらは次世代ならず現在のビジネスでも必要とされる能力です。科学では現象を観察して、そこに対する疑問を感じ取り、仮説を複数立て、試行錯誤して解決へ導きます。

STEM教育の目的は、工作や実験ときには遊びなどをとおして工程を経験させ、思考力・行動力の養成することでもあるのです。

日本の課題

日本は科学技術の進歩が著しい反面、成長スピードに人材のスキルが追い付いていません。すでにAI技術や自動運転技術などのスキルを持つ人材が不足している状況に陥っています。

そのため次世代と現代ともに、AI技術や語学などのスキルが複数備わった人材を育成しなくてはならないという課題を抱えているのです。

STEM教育によって、自分で問題を発見して解決する論理的思考がある人材を育成できるようになります

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3.日本と世界でのSTEM教育への取り組み

日本のSTEM教育への取り組みは、世界と比較して遅れているといわれます。理由として挙げられるのは、日本が教育システムを変更するのに4年の歳月がかかる点です。

2016年に考案された小学校でのプログラミング教育の必修化は、4年後の2020年に実施されました。ここでは日本だけでなく、世界のSTEM教育への取り組みについて説明します。

日本

小学校におけるプログラミング教育の必修化が、2020年に実施されました。またSTEM教育研究センターでは、「STEM教育における学習内容の体形化」「指導者の育成について」研究を進めています。

さらに子どもを対象とした、ロボット研究の無料体験会なども開催しているのです。先進的な理数教育を学ぶ教育施設として、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)も設置されました。

文部科学省の指定を受けている学校は現在全国で200校以上。大学やほかのSSHと共同研究や交流が行われており、これらの活動をとおして世界に通用する科学技術人材を育成しています。

アメリカ

アメリカはSTEM教育を先導した国です。いち早くこれからの時代に必要な能力が何かを見極め、教育システムを改善しました。

「SMET」と呼ばれる科学リテラシーの底上げを目的とした教育システムが1990年代に導入されたものの、2001年にSTEMと呼称を変更。オバマ元大統領はSTEM教育に力を入れ、STEM関連の深刻な人材不足の解消に向けて活動しています。

中国

中国ではプログラミング思考だけに特化せず、次世代のAI化時代に適応できるAIスキルの向上を目的としたSTEM教育を行っているのです。

2018年から2020年にかけて、小学校・中学校・高等学校で省ごとにSTEM教育を必修化。学校が外部機関に依頼して、研究所や企業から専門家を呼び、授業を行っています。

シンガポール

シンガポールは、日本の20年先をいっていると称されるほどSTEM教育が進んでいるのです。

座学だけでなく体験実習に力を入れ、STEM人材の育成を行っています。小学校から中学校にかけてSTEM教育が行われ、プログラミングや電子工作などをとおして体験学習を実施しているのです。

授業は通常の教師と専門教員が担当します。専門教員は、数学や科学など関連分野の修士号や博士号を取得している場合も少なくありません。

STEM教育はアメリカが先導し、現在では中国やシンガポールなどさまざまな国で取り入れられています。必修化や体験学習など、自国にあった教育方法が実施されているのです

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4.STEM教育で伸ばせるスキル

STEM教育では、プログラミング授業をとおして仕事でも役立つスキルを伸ばせます。それぞれのスキルについて、説明しましょう。

  1. 論理的思考
  2. 問題解決力
  3. チームワーク

①論理的思考

プログラミングを行ううえで、論理的思考は必要不可欠。プログラミングにはルールがあり、守りながら目的を達成するにはどうしたらいいかを考えねばなりません。

またプログラミングは、チームメンバーと目的や方法などを共有して進める場合が多い分野です。自分の考えを相手に理解してもらい協力を仰ぐためには、論理的思考にもとづき、根拠や理屈を含めた説明が必要となります。

②問題解決力

問題解決力とは、問題を見つけてそれを解消する力のこと。まずはうまくいかないことを「解決しなければならない問題」と認識できるかが重要です。次に「どうしてこの問題が起きたのか」「何をどのようにすれば解決できるのか」考えます。

たとえば利益を生み出したい場合、「利益を生み出すには売上を伸ばす必要がある」「なぜ売上が上がらないのか」「購買履歴を調べたら客単価が安い」「では客単価を上げるにはどうしたらいいか」まで、自分で突き詰めて考えられる必要があるのです。

③チームワーク

科学では実験を繰り返し、新しい答えや現象を導き出します。このとき個々で実験を行うのではなく、チームとして実験を行うことがほとんどです。

チーム作業では、それぞれのスキルや専門性を生かして役割を担い、メンバー同士が協力して試行錯誤します。そのためSTEM教育でも、集団の中でそれぞれのスキルを生かす授業が行われているのです。

STEM教育では「論理的思考」「問題解決力」「チームワーク」など、仕事をするうえで重要なスキルを伸ばせます

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5.STEM教育で人材を育てるための企業の取り組み

STEM教育で人材を育成するため、世界中で取り組みが行われています。ここでは、実際行われているSTEM教育への取り組み3つについて、解説しましょう

  1. 人材育成のICT化
  2. LMS
  3. LXP

①人材育成のICT化

STEM人材を育成するために学校でSTEM教育が行われるようになったものの、人材のSTEMスキルは近年のICT化に追いついていません。学校以外でもSTEM教育をする時間が必要とされるため、企業への協力も求められています。

「若者向けに体験学習を実施する」といったように、ICT化の促進が期待されているのです。

②LMS

LMSとは「Learning Management System」の略称で、受講者の動きを管理できる学習管理システムのこと。

eラーニングによって場所や時間を選ばずに教育を受けられるため、すでに大企業をはじめ多くの企業が導入しています。受講者のアクセス履歴や受講時間などを管理でき、個々の進捗や理解度を把握できる点もメリットです。

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③LXP

「LXP」とは「Learning Experience Platform」の略称で、検索機能を備えたソフトウェアサービスのこと。研修管理システムとも呼ばれます。

受講者は自分が勉強したい内容に合った教材などを検索できるうえ、LXPが受講履歴を分析しておすすめの教材などを紹介してくれるのです。受講者それぞれの生活や環境、担当業務などに合わせてコンテンツや学習環境を自由に変えられます。

STEM教育の提供

「東京急行電鉄」と大手IT企業の4社「サイバーエージェント」「ディー・エヌ・エー」「GMOインターネット」「ミクシィ」の計5社が協力し、「Kids VALLEY未来の学びプロジェクト」を行っています。

これはSTEM教育を行う人材不足の問題解決を解消するため、各社の強みを生かしたSTEM教育の提供です。カリキュラム開発や教員の研修、ワークショップやイベントの開催などが実施されています。

STEM教育では、LMSやLXPを活用した教育が進められている一方、スキルや知識をもった教員が不足しています。学校だけでなく企業の協力が必要とされているのです

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6.STEM教育のバリエーション

STEM4科目以外にも、これからの時代に役立つスキルを合わせた教育システムがいくつか存在します。ここでは下記4つに分けたSTEM教育のバリエーションについて、説明しましょう。

  1. STEAM教育
  2. STREAM教育
  3. eSTEM教育
  4. GEMS

①STEAM(スティーム)教育

「STEAM教育」とは、STEM教育に「A」つまり「Art(芸術、教養)」を含めた5科目にスポットライトをあてた教育システムです。

「ものづくりには科学技術の知識だけでなく、根本的な教養の考え方や発想力と独創性、デザイン性が必要」という考えがもとになっています。STEAM教育の目的は「独創的で創造的な思考」「教養の習得」「ものづくりにおけるデザイン性の向上」などです。

A(アート)を追加した理由

Art(芸術や教養)は、理数系とかけ離れた考え方になっています。その「A」を追加する目的は、テクノロジーと哲学を融合させる点にあるのです。

機械的に物事を考え、論理的思考だけで仕事をするのではなく、正解がない芸術的思考を加えます。それにより多くの疑問を感じ取ったり問題解決のために発想したり想像力を養ったりする点が、期待されているのです。

日本の取り組み

日本では、STEM教育の一環として体験学習型の「科学の甲子園」が行われています。内容は、地球の重さを求める問題を解く大会や、限られた部品や機材でモーターカーを制作するレース大会などです。

また「STEM教育研究センター」では、ロボットコンテストやアニメーション製作など、子どもたちが実勢しながらプログラミング技術を学べる取り組みが進められています。

海外の取り組み

海外では、日本よりSTEAM教育への取り組みが進んでいるのです。中国では学習ロボットの組み立てといったものづくりをとおして、楽しみながらSTEAMスキルを学べます。

シンガポールでは、博士号や修士号を取得した教員から「なぜSTEAM教育が必要なのか?」といったような教養の部分からSTEAM教育を実施。アメリカでは、「創造性」「意欲」などのライフスキル(非認知能力)向上にも、力を入れているのです。

②STREAM(ストリーム)教育

「STREAM教育」とは、STEAM教育に「R」つまり「Robot(ロボット技術)」を加えたもの。これからは、AI技術がより発達します。そういった世界でロボット技術は必要不可欠になるでしょう。そこで「ロボットに対する知識やスキルを身に付ける」のです。

20年後には仕事の50%は人からロボットに取って代わるとされるこれからの時代。ロボットへの理解やロボット技術は、生きていくうえで必要なスキルになるでしょう。

③eSTEM(イーステム)教育

「eSTEM教育」とは、「environmental STEM」の略称で、環境教育をSTEM教育に加えた教育システムのこと。

科学技術の発展、工業化やAI化などのテクノロジーの進展が進むにあたって、森林破壊や異常気候、地球温暖化や近代化による公害問題などが生じています。これらの社会環境に配慮できる人材の育成が目的です。

④GEMS(ジェムズ)

「GEMS」とは、体験をもとに自分で考えて取り組める人材を育成する取り組みのこと。「Great Explorations Math and Science」の略称です。

GEMSでは数学や科学を勉強する際に、「仮説」「研究」「概念の理解」「応用」というサイクルを取り入れています。自分で実験などを考案して実施し、課題の解決を目指すのです。

STEM教育だけでなく「STEAM教育」「STREAM教育」「eSTEM教育」「GEMS」など、次世代を育成するさまざまな教育方法が世界中で行われています