【失業保険】給付制限が3か月から2ヶ月になる条件は?

失業保険の給付制限が3か月から短縮されるケースのポイントは、離職した日から5年間さかのぼるまでに離職が何回あったかどうか、です。ここでは失業保険の給付制限が3か月から短縮されるケースについて解説します。

1.失業保険の給付制限が3か月から2ヶ月に短縮される条件は?

法改正により、令和2年10月1日以降に同様の理由で離職した労働者は、5年間のうち2回まで、給付制限期間が3か月から2か月に短縮されます。これまで「正当な理由がない自己都合による退職」だった場合の給付制限期間は、3か月でした。

3回目の離職日からさかのぼった5年間、自己都合による離職が1回だとすると、3回目の離職に関係する失業等給付の給付制限期間は2か月となります。離職した日から5年間さかのぼるまでに、離職が何回あったかどうか、がポイントになるのでです。

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失業保険の給付制限が3か月のままのケース

失業保険の給付制限が3か月のままのケースは、下記のとおりです。

  • 3回目の離職日から5年間さかのぼるまでに2回の自己都合による離職があった場合
  • 令和2年9月30日以前に自己都合で離職しているケース

一方、令和2年9月30日以前の離職については5年間の対象となりません。よって令和2年10月1日以降の離職にかかる失業等給付の給付制限は2か月となります。5年間さかのぼったときの離職した回数と、離職した日にちがポイントです。

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2.失業保険の給付制限が3か月から短縮された背景

2019年10月、雇用保険制度等の見直しが検討されました。しかしこの時点で求人数が求職者の数を大幅に上回って推移していたのです。そのため、基本手当の受給者実人員は減少傾向にありました。

このような状況もあり、転職を考えている労働者が安心して就職活動にのぞめるよう、支援する必要が生まれたのです。そして安易な離職を防止するという趣旨から外れないよう、給付制限期間を3か月から2か月に短縮すると決定しました。

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3.自己都合退職とは?

退職は、その理由によって自己都合退職・会社都合退職にわかれます。自己都合退職は、労働者が「自らの意志で退職する」こと。たとえば下記のようなものです。

  • 転職
  • 結婚、出産、妊娠などライフステージの変化
  • 勤務条件の相違(賃金、労働時間、業務内容など)
  • 家族の介護や看護
  • 病気やケガによる退職
  • 懲戒解雇

会社都合退職との違い

会社都合退職とは、労働者が退職するおもな原因が、企業側にあるもののこと。下記のような理由にて、企業側から労働契約の解約を求められた場合が当てはまります。

  • 企業の倒産
  • 企業のリストラ計画
  • 事業所の廃止
  • 解雇

なお会社都合退職の場合は給付制限がありません。7日間の待期期間が完了すれば支給が開始されます。

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4.失業保険とは?

失業して収入がない人の生活を維持し、安定した環境のなか再就職をしてもらうために支払われる保険金のこと。公的な保険制度の一種で、正式名称を「雇用保険」といいます。

労働者は給与から天引きされる形で保険料を支払っており、離職すると次を見つけるまでの間に国から失業保険が支給されるのです。失業保険を受け取るには、失業前の職場から「雇用保険被保険者証」をもらい、ハローワークで申込みます。

受給金額や期間、条件は、失業前の被保険者としての期間や年齢、退職の理由などによって異なるのです。

失業保険の加入対象

失業保険の加入対象は以下のとおりです。

  • 31日間以上働く見込みがある
  • 所定労働時間が1週間に20時間以上である
  • 学生ではない

31日間以上働く見込みがある

この条件は「31日間以上雇用が継続しない」と明確に記載されていない場合を除いて、すべてが該当します。たとえば下記の場合、31日間以上働く見込みがあることになります。

  • 雇用契約に「更新の可能性がある」などの規定がある
  • 31日未満で雇い止めすると明確に示されていない

雇用契約に更新規定がなくとも、労働者が実際に31日以上雇用された実績がある場合、この条件に該当します。

所定労働時間が1週間に20時間以上である

労働時間には、次の2種類があります。

  1. 法定労働時間…労働基準法で決められている労働時間。週40時間、1日8時間とされている
  2. 所定労働時間…法定労働時間の範囲内で自由に決めた労働時間

正社員以外のパートやアルバイトでも、所定労働時間が週20時間以上であれば、雇用保険の加入対象者として検討されます。

学生ではない

学生は原則、雇用保険に加入できません。ただし学校を卒業する前に就職しており、卒業後も引き続き同じ企業に勤務する予定で、一般労働者と同じように勤務すると認められるケースでは、雇用保険の加入対象になるのです。

また通信教育や夜間、定時制の学生も雇用保険の加入対象となります。そして上記の場合も、下記のような雇用保険の加入条件を満たさなければなりません。

  • 31日間以上働く見込みがある
  • 所定労働時間が1週間に20時間以上である

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5.失業保険の給付制限が3か月から短縮された場合の給金額

結論からいえば、失業保険の給付制限が3か月から短縮されたとしても、支給金額は変わりません。大まかにいえば、退職前の給与日額のおよそ50~80%をもらえるのです。

失業保険で1日あたりにもらえる金額は、退職前6か月間の給料の総額(残業代を含むが賞与は除く)と退職したときの年齢に応じて決まります。ただし、上限額は決まっているので注意が必要です。

計算方法

基本手当日額は、離職前6か月間に支払われた給与の総額を180で割った金額の50~80%。賃金の額が低い人ほど高い率になります。計算式にすると、以下のとおりです。

  • 賃金日額=退職前6か月間の給与総額÷180
  • 基本手当日額=賃金日額×45~80%(賃金日額と年齢によって率が異なる)
  • 基本手当を受給できる総額=基本手当日額×所定給付日数

支給金額の上限と下限

離職した労働者の賃金日額にもとづき、基本手当日額を算定しています。賃金日額は離職直前の6か月間で支払われていた賃金から算出した金額で、金額には上限額と下限額が設定されています。

賃金日額は年齢に関係なく下限額が2,500円で、上限額は年齢による区分があるのです。

  • 29歳以下…1万3,630円
  • 30~44歳…1万5,140円
  • 45~59歳…1万6,660円
  • 60~64歳…1万5,890円

賃金日額の上限・下限に伴い、雇用保険の支給金額にも上限額と下限額が出てきます。
下限額については年齢に関係なく2,000円となり、上限額は年齢による区分があります。

  • 29歳以下…6,815円
  • 30~44歳…7,570円
  • 45~59歳…8,330円
  • 60~64歳…7,150円

支給金額のサンプル

35歳女性が雇用保険に13年加入し、会社都合で退職。賃金日額は13,000円で、再就職するために離職から365日かかったと仮定したモデルケースを用いて、支給金額を計算してみましょう。

  • 基本手当日額…13,000円×50%=6,500円
  • 所定給付日数…240日
  • 給付日数…365日間失業していたが所定給付日数により240日
  • 失業保険の金額…基本手当日額(6,500円)×給付日数(240日)=156万円

失業保険は全額を一括支給するわけではありません。4週間ごとに失業日数に応じて支給されます。

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6.失業保険の給付制限の3か月が免除されるケース

自己都合退職者でも失業保険の給付制限の3か月が免除されるケースについて、「特定理由離職者」の内容を中心に説明します。

特定理由離職者

自己都合による退職でも、下記のように労働者の意思に反するような正当な理由があるケースでは「特定理由離職者」に認定されます。認定されると待期期間が終わったあと、給付制限期間がなく支給を受けられるのです。

  • 人員整理で、希望退職者の募集に応じた
  • 有期労働契約の更新を希望したが、認められず離職した
  • 父や母の扶養や介護など、家庭事情の急変によって離職した
  • 配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になった
  • 出産や育児によって離職し、受給期間の延長措置を受けた
  • 特定の理由で、通勤が困難になった

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特定理由離職者と認められる方法

特定理由離職者に該当するかどうかについて、自分で決められるわけではありません。

まずハローワークで求職を申し込む際、担当者から状況や事情に関するヒアリングを受けます。そこでの内容や公的な書類により特定理由離職者として正当な事実があると確認できれば、特定理由離職者として認められるのです。

たとえば介護を理由とした離職の場合、要介護認定が公的な証明になります。しかし、下記のような点から就業できないほどの状況ではないと判断されると、特定理由離職者と認められない可能性も高いです。

  • 要介護度が軽度なため介護の手がそれほどかからない
  • 重度の介護認定であってもほかの介助者がいる

特定受給資格者との違い

離職し労働者は「特定受給資格者」「特定理由離職者」などとよばれ、より手厚い手当を受けられるようになります。それぞれの意味は、下記のとおりです。

  • 特定受給資格者…倒産・解雇などの理由により、再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた人
  • 特定理由離職者…特定受給資格者以外の人で、期間の定めのある労働契約が更新されなかったりそのほかやむを得ない理由により離職したりした人

特定受給資格者と特定理由離職者に給付制限はありません。年齢と勤続年数により、所定給付日数が決まります。

新型コロナによる離職も特定理由離職者に該当

新型コロナウイルス感染症によって離職した労働者も、特定理由離職者と認める特例措置が設けられています。新型コロナウイルス感染症による離職については、次のような条件に該当すれば認められます。

  • 同居の家族が新型コロナウイルス感染症に感染して、看護または介護が必要となった
  • 本人の職場で感染者が発生、または本人もしくは同居の家族が「基礎疾患を有する」「妊娠中である」「高齢である」などを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で子どもの養育が必要となり、自己都合離職した

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7.失業保険の給付制限期間3か月でアルバイトは可能?

自己都合による離職の場合、待期期間を過ぎれば失業保険の給付制限期間中でもアルバイトが可能です。

自己都合で離職すると、2か月または3か月の給付制限期間があります。期間中は無収入となるため、生活が困窮する場合もあるでしょう。こうした状況を回避するためにアルバイトが認められているのです。

ただし雇用保険の加入条件を満たす働き方になると「就職」と判断され、失業保険を受給できなくなります。アルバイトをする際は、週20時間を超えないよう労働時間を調整するとよいでしょう。