労働関係調整法とは|労働三法や労働争議の調整などについて

労働関係調整法とは、労働争議の予防、解決を目的とした法律のことです。ここでは労働関係調整法を含む「労働三法」や労働争議の調整などについて解説します。

1.労働関係調整法とは?

労働関係調整法とは、「労働基準法(労基法)」「労働組合法(労組法)」と並んで「労働三法」のひとつに数えられる法律のこと。労調法と略される場合もあります。

労働関係調整法の目的・役割

労働関係調整法の目的は、労働関係の公正な調整を図り、労働争議の予防または解決をもって産業平和の維持、経済の興隆に寄与すること。

労働関係調整法の役割は、後述する「労働争議」によって労働者が使用者との紛争に発展した際、紛争解決に向けて労働委員会が斡旋・調停・仲裁を進める点にあるのです。

ほかにも安全保持施設の正常な維持や、進行を阻害する争議行為の制限または禁止といった規定が含まれています。

労働争議とは?

労働争議とは、労働者と使用者とのあいだに生じるすべての紛争のこと。労働関係の当事者間における主張が一致しないために、争議行為が発生している状態を指すのです。

労働争議は「争議行為を伴う争議」と「争議行為を伴わない争議」に分かれます。さらに前者の争議は行為の形態によって以下の5つに区分されるのです。

  • 怠業
  • 半日未満の同盟罷業
  • 半日以上の同盟罷業
  • 作業所閉鎖
  • そのほか(業務管理など)

労働関係調整法とは、労働関係の公正な調整を目的とした法律のことです。労使間に発生したすべての紛争を「労働争議」といいます

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2.争議行為とは?

争議行為とは、労働組合が要求の実現や抗議のために行う集団行動のこと。同盟罷業(ストライキ)や、怠業(サボタージュ)、作業所閉鎖(ロックアウト)などが該当します。

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発生届について

労働争議解決のため、労働委員会は常に最新の情勢を的確に把握しておく必要があります。事件によっては都道府県知事が調停の請求を行う場合もあるからです。

そのため、争議行為が発生した際、当事者は直ちに労働委員会または都道府県知事に発生届を出さなければなりません。届出の対象となるのはすべての事業です。

発生届は文書や口頭、電話など任意の方法で出せます。労働組合による争議行為は当該労働組合に、使用者による争議行為は当該使用者に届出の義務が生じるのです。

予告通知について

労働関係調整法第37条では公益事業にて争議行為を行う際、争議の予告通知が必要だと明示しています。

後述する公益事業に係わる事業で、関係当事者(公益事業における使用者と労働者の団体)が争議行為を行う場合、少なくとも10日前までにこれを通知しなければなりません。

なお予告通知の届出先は「労働委員会」と「厚生労働大臣又は都道府県知事」の両方です。争議行為の日時や場所、概要を記載した文書によって届出を行います。

公益事業とは?

予告通知で触れた「公益事業」について、もう少し詳しく見ていきましょう。労働関係調整法が規定する公益事業は、以下4つの事業です。

  1. 運輸事業(路線バスや鉄道、航空事業など、一般公衆の需要に応じて一定の路線を定め、定期的に旅客または貨物を輸送する事業)
  2. 郵便または電気通信事業
  3. 水道、電気またはガス供給事業
  4. 医療または公衆衛生事業

いずれも公衆の日常生活に欠かせない事業である点から、予告通知など特別な規制がされています。

争議行為は届け出が必要

争議行為が発生した際、当事者は直ちにその旨を届け出なければなりません。届出先は争議行為の発生区域や問題内容によって、次の2つに分かれます。

争議行為がひとつの都道府県区域内のみで発生した:届出先は、都道府県労働委員会または都道府県知事(船員法の適用を受ける船員に関しては運輸監理部長を含む地方運輸局)

争議行為が2つ以上の都道府県で発生した、または全国的に重要な問題である:届出先は、中央労働委員会(最寄りの都道府県労働委員会を経由することも可能)

ストライキやロックアウトなどに代表される争議行動とは、労働組合による要求の実現や抗議を目的とした集団行動のことです

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3.労働争議を調整する方法3つ

ストライキやサボタージュなどの集団行動を争議行為といいます。この争議行為を調整する方法には、何があるのでしょうか。ここでは労働争議を調整する3つの方法と、それぞれの調整を行う機関について解説します。

  1. 斡旋
  2. 調停
  3. 仲裁

①斡旋

斡旋とは、両者の間に入って問題がうまく解決するよう取り計らうこと。労働者側と使用者側、どちらからでも申請できます。

斡旋は、労働委員会が両当事者に対して解決を強制するものではありません。目的は、あくまで公正な第三者の立場から助言を与え、労使間が自主的に歩み寄ること。調整申請後は、事務局職員による実情調査から始まります。

労働争議を調整する方法のなかで、もっとも利用しやすいものといえるでしょう。

斡旋員

斡旋にて、労働委員会側の調整主体となるのは「斡旋員」と呼ばれる人たち。斡旋員候補者は、学識経験を有し、斡旋の規定にもとづいて労働争議の解決に向けた援助を与えられる者でなければなりません。

なお、労働委員会の管轄区域内に住んでいるかどうかは問われず、労働委員会の会長は名簿に記載された候補者から斡旋員を指名します。

申請後、斡旋員は労使間の争点を明らかにし、また整理するために労働者側・使用者側それぞれの主張を伺いながら斡旋作業を繰り返していくのです。

②調停

調停とは、それぞれの当事者に利害関係を有さない公平かつ中立な立場の第三者が労使間に入り、和解の成立に向けて協力する制度のこと。先に述べた斡旋と同じく解決を強制するものではないため、解決案の受諾は任意となっているのです。

労働委員会は、以下のいずれかに該当した場合に、調停を行います。

  • 労働者と使用者の双方から申請がなされたとき
  • 双方または一方から労働協約の定めにもとづいて調停の申請がなされたとき
  • 当事者の一方から公益事業に関する事件について調停の申請がなされたとき

調停委員会

労働委員会による労働争議の調停は、「調停委員会」が主体となって行われます。

調停委員会とは、「使用者を代表する調停委員」「労働者を代表する調停委員」「公益を代表する調停委員」からなる委員会のこと。使用者を代表する調停委員と、労働者を代表する調停委員は同数でなければなりません。

委員会には、公益を代表する調停委員から選挙によって選ばれた委員長を置きます。調停委員会では委員長による招集、また出席者の過半数をもって議事を決するのです。

③仲裁

仲裁とは、「争う労使のあいだに入って双方を和解させる」「当事者が選んで任せた第三者によって問題の解決を図る」行為のこと。斡旋や調停は解決案の受諾を強要しませんが、仲裁では労働協約と同一の効力をもって当事者を拘束するのです。

また仲裁では当事者申請以外の開始、つまり国民の日常生活や経済に重要な影響を及ぼす恐れがある場合でも、労働争議当事者の申請を待たずに調整を開始することはありません。

仲裁委員会

仲裁委員会とは、労働委員会の公益を代表する委員、または特別調整委員から関係当事者の合意によって選定された仲裁の調整主体のこと。労働委員会による労働争議の仲裁には、3人以上の奇数による仲裁委員会が必要です。

仲裁裁定は、労働協約と同一の効力を有します。そのため仲裁委員会では仲裁委員の過半数が出席しなければ会議を開いたり議決したりできません。なお、仲裁委員会の議事は、仲裁委員の過半数によって決まります。

労働争議を調整する方法は、「斡旋」「調停」「仲裁」の3つです。それぞれ主体となる人員や解決案受諾の要否などが異なるため、しっかりと区別しておきましょう

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4.労働関係調整法と間違えやすい3つの法律

労働関係調整法と混同しやすい法律は、3つあります。それぞれどんな内容なのか、見ていきましょう。

  1. 国営企業労働関係法
  2. 労働安全衛生法
  3. 労働契約法

①国営企業労働関係法

国営企業労働関係法とは、かつて公共企業体等労働関係法(公労法)と呼ばれた法律のこと。

目的は、「国営企業職員の労働条件に関する苦情または紛争の平和的解決を目指し、団体交渉の慣行と手続を確立して正常な運営を確保する」「公共福祉の増進・擁護」です。

当初は「国鉄」「電々公社」「専売公社」の三公および「郵便」「国有林野」「印刷」「造幣」の四現業を規律していましたが、三公社の民営化に伴いこれを改正。その後平成14年には、「特定独立行政法人等の労働関係に関する法律」と改題されています。

②労働安全衛生法

労働安全衛生法(安衛法)とは、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を醸成する目的で制定された法律のこと。目的を達成するための手段として以下を講じ、総合的かつ計画的な安全衛生対策を推進しています。

  • 労働災害防止のための具体的措置(危害防止基準や安全衛生教育などの実施)
  • 安全衛生管理体制の確立(総括安全衛生管理者や衛生管理者の選任、および安全委員会等の設置)
  • 国による労働災害防止計画の策定(労働災害減少を目的として、厚生労働大臣によって定められた中期計画)

③労働契約法

労働契約法とは、労働契約についての基本的なルールを明らかにし、個別労働紛争の防止、労働者の保護を図る目的で施行された法律のこと。

就業形態や働き方の多様化により、労働者の労働条件は個別に決定・変更されるようになりました。同時に個別労働関係紛争は年々増加傾向にあります。そのような情勢のなか、制定された法律です。

労働契約法では、「労働契約の基本的な理念」「労使対等の原則」「権利濫用禁止の原則」など労働契約に共通する原則を明らかにしています。使用者は就業規則の変更によって一方的にこれらを変更できません。

労働関係の安定を目指すという意味ではどの法律も同じです。それぞれの特徴や背景を理解したうえで区別するとよいでしょう

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5.労働環境調整法も含まれている「労働者三法」とは?

ここでは冒頭で触れた「労働者三法」について見ていきましょう。日本には労働者を守るさまざまな法律があります。なかでも基本となるのが「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」の3つで、これらをまとめて「労働者三法」といいます。

労働者三法の目的

労働者三法の目的は、労働の義務とともに発生する労働者の権利および労働者を守ること。労働契約を締結する際の労働条件は基本、労働者と会社の合意によって決まります。

しかし契約内容をまったくの自由にしてしまうと、一般的に会社よりも弱い立場にある場合の多い労働者にとって、不利な契約内容となる恐れもあるのです。

「低賃金や長時間労働など劣悪な労働条件のもとで労働契約を結ばないよう、一定のルールを設けて労働者を保護する」これが労働者三法の目的です。

労働基準法とは

労働基準法とは、賃金の支払いや休日など、労働条件の最低基準を定めた法律のこと。労働者三法のなかでも特に身近な法律でしょう。使用者(会社)が労働者を採用する際は、労働者に対して以下を明示しなければなりません。

  • 契約期間
  • 就業場所や従事する業務に関する内容
  • 始業・終業時刻、休憩や休日に関する内容
  • 賃⾦の決定方法や支払い時期
  • 退職に関する内容(解雇の事由含む)
  • 昇給に関する内容
  • 期間の定めがある契約を更新する場合の基準

労働組合法とは

労働組合法とは、「労働組合を作って会社と話し合いができる」などを保障した法律のこと。

労働組合法では、事項で解説する3つの権利からなる「労働三権」を保障しています。労働三権を具体的に保障するため、労働組合法では使用者に対して以下の行為を禁止しているのです。

  • 労働組合への加入や正当な活動を理由に解雇や降格、減俸や嫌がらせといった不利益な取り扱いをする
  • 労働組合の結成や運営に対する支配および介入をする
  • 正当な理由なく団体交渉を拒否する
  • 労働委員会に対する救済申し立てや発言、証拠提示を事由とする不利益な取扱いをする

労働者三法と間違えやすい「労働三権」とは?

労働者三法と間違いやすいものに「労働三権」があります。労働三権とは、労働者が集団となり、使用者と対等な立場で交渉できるよう以下3つの権利を保障したもの。

  • 団体権:労働者が労働組合を結成する権利
  • 団体交渉権:労働者が使用者と団体交渉する権利
  • 団体行動権(争議権):労働者が要求実現のために団体で行動する権利

憲法が保障するこれらの労働三権を具体的に示した法律が、「労働関係調整法」「労働基準法」「労働組合法」からなる「労働者三法」です。

労働者三法とは、労働者の権利を守るための法律です。ここでいう「労働者」には正社員だけでなく契約社員やパートタイム労働者、派遣社員なども含まれます