リカレント教育とは? 大学で「学び直す」社会人学生の数、再教育の効果・目的

人生100年時代が到来した日本で注目を集めるのが、リカレント教育です。リカレント教育とは、学校を卒業し就職した後も、必要に応じて教育を受けることを指します。昨今ではDX(デジタルトランスフォーメーション)における人材不足の解決や人材価値向上の手段として関心を集めています。

海外においては、就職して積んできたキャリアを一旦中断して大学などの高等教育機関に戻り、その後、またキャリアを再開させるライフコースが出来上がっているのです。日本においては、リカレント教育の制度設計と定着が人事面での大きな課題でしょう。

1.リカレント教育とは?

リカレント教育とは、学校教育を終えて就職した後、必要に応じて教育機関に戻って学習を続け、そしてまた就職する……と生涯にわたり周期的に学びとキャリアを繰り返すことです。

欧米でよく見られるリカレント教育の姿とは、就職後、キャリアを築くうえで必要な知識や技術を習得するため、大学などの高等教育機関に戻ってフルタイムで学習し、その後そこで習得した知識や技術、資格を以てさらなるキャリアアップを図るというものです。

男女共同参画型社会を目指し、また高齢化社会となる日本でも、一旦家庭に入った女性や中高年層の再就職、社会参加のためにもリカレント教育は重要視されています。

リカレント(recurrent)の意味

リカレント(recurrent)は、再発する、周期的に起こるという意味です。

リカレント教育の歴史と社会的背景

リカレント教育の生まれた歴史や社会的背景を見てみましょう。

リカレント教育は、後に首相となる当時のスウェーデン教育大臣オルフ・パルメ(Olof Palme)が1969年にベルサイユで開催された欧州教育大臣会議において紹介したのが始まりです。

すぐに関心を示したのは経済協力開発機構(OECD)で、翌1970年にリカレント教育を公式採用します。その3年後1973年に報告書「リカレント教育 -生涯学習のための戦略-」が公表され、国際的に広く認知されるようになったのです。

報告書には、人生の初期、いわゆる青少年期にのみ集中していた教育政策を、個人の全生涯にわたって労働、余暇、その他の活動などと共に交互に行うことの有用性が述べられました。

MEMO
日本でも1974年に文部科学省が『リカレント教育:生涯学習のための戦略』を出版しています。従来の教育が青少年を主たる対象としており、そのことが青少年の社会参加や社会貢献の機会を少なくした恐れであると述べられています。

また労働経験や社会経験を積んだ後で学習をするとより高い学習効果が期待できることなども記されています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を背景に注目が集まる

リカレント教育はDXの文脈でも注目されています。DXとは簡単に説明すると、デジタル技術を活用して企業の業務やサービス、組織を変革することです。DX推進において重要なデジタル技術やそのトレンドは変化の速度が早く、時代遅れになりがちです。そのため専門的な知識やスキルでもDX推進の足かせになってしまうリスクがあります。

こうした問題を解決するために、継続的な学びを実践するリカレント教育が求められているのです。労働者自身の取り組みも必要ですが、企業がリカレント教育を支援する仕組みづくりがDXでは重要とされています。

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2.日本でのリカレント教育の現状

リカレント教育が知られる前の日本では、学校を卒業して就職した後の教育は、企業の社員教育でまかなう時代が続いていました。

リカレント教育の必要性が認識された今、大学の社会人入試の実施、社会人を対象とした大学および大学院への編入、夜間大学や専門職大学院の設置、大学公開講座など学びの場の整備が徐々に進んでいます。

カルチャーセンターや通信教育など民間の力もあり社会人の学びの機会は、確実に増加しているのです。

大学・大学院等で再教育を受けたい社会人が多い

文部科学省発表の「社会人の学び直しに関する現状等について」に、興味深い統計があります。

大学卒業以上の学歴を持つ社会人1,761人に対するアンケート調査の結果、再教育を「受けたい」もしくは「興味がある」と回答した人は89%いました。再教育で利用したい教育機関として回答が多かったのが、「大学院」「大学(学部)」です。

これにより、学びたいと考える社会人が非常に多いと分かります。また学びの場として専門性の高い高等教育機関を希望していることから自分の仕事に直結する知識、ノウハウ、スキルのほか幅広く学びたいという様子もうかがえるでしょう。

大学(学士課程)の社会人入学者数

文部科学省が発表した「社会人の学び直しに関する現状等について」内にある、高等教育機関で学び直しを行っている人数(2015年3月時点集計※注)では11.1万人という結果が発表されています。

そのうち大学(学士課程)への社会人入学者数は10,162人と約10%を占めていることが分かりました。

注意
複数の既存調査を基に作成しているため、各データの調査対象年度は統一されていません

大学院の社会人入学者数

同調査で大学院への社会人入学者数は17,517人という結果になっています。これは大学の10,162人を上回る数値で全体の約16%を占めることが分かりました。

このような結果から社会人が学び直しを考えたときは大学よりもより専門知識が深められる大学院への進学を望んでいることがうかがえます。

目的は「仕事に必要な専門的知識」の習得が最多

「大学教育に関する職業人調査」(2009年 東京大学<科学研究費調査研究>)によると大学卒の社会人が行っている学び直しの内容で最も多いのは、「仕事に必要な専門的知識」となっています。

大学院で学び直す目的については、技術系、事務・営業系を問わず「現在の仕事を支える広い視野」という答えが多数でしたが、技術系の社員だけで見ると「先端的な専門知識」、「現在の職務に直接必要な知識」の習得と回答する人が多い結果となりました。

この調査結果から分かるように職種や職務の違いで学び直しに求める目的に違いがあるようです。

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3.日本でのリカレント教育の課題

日本はリカレント教育の普及により、社員の成長や教育に対する価値観を大きく変えようとしています。

  • 働きながら学ぶ
  • 大学や大学院で専門知識を身に付ける
  • 生きがいや趣味を深く追求する

などリカレント教育は広義に解釈されています。しかし普及段階ということもあり、まだまだ課題が多いことも否めません。

25歳以上の入学者の割合の国際比較 (2012年)

文部科学省の報告書「社会人の学び直しに関する現状等について」では、就業を目的とする高等教育機関への入学者のうち25歳以上の割合を示した国際比較データ(2012年)が掲載されています。

それを見るとOECD各国平均は約35%に達し、社会人学生も相当数含まれる一方、日本人の社会人学生比率は約21%と低いとわかります。

また大学入学者のうち25歳以上の割合はOECD各国平均が約20%に達しているだけでなく社会人学生も相当数含まれる一方日本人の社会人学生比率は1.9%と27カ国中最下位であると記されています。

個人の課題

文部科学省の報告書では、個人の課題についての言及もあります。多くの社会人が自分の職業に必要な専門的知識や技能を習得するために高等教育機関で再教育を受けたいと考えています。それにもかかわらず現実にはいくつもの障害により学び直しができていないのです。

学び直しが叶わない要因として、

  • 職場の理解が得られない(職場が修学を認めていない)
  • 勤務時間が長くて時間が確保できない
  • 社会人や企業のニーズに合ったカリキュラムや教育方法が提供されていない
  • 受講料の負担が大きい

といったものが挙げられています。

企業側の課題

社会人をリカレント教育へと送り出す企業側の課題も明らかになっています。

現状は原則として社員の大学院修学を認めていない企業の数は約半数にのぼります。また実際に過去3年間に社員を大学院へと送り出した企業は約8%、全額を社員の自己負担とすると負担が大きい大学院の授業料を企業が負担したのは12%とこちらも低迷しています。

社員の修業機会を創出する、そのための制度設計を実行する、これをしない限り、リカレント教育は根付きにくいといえます。また、社員の費用負担をどう減らすのか、といった問題にも本腰を入れて取り組まないと、せっかく作った制度も絵に描いた餅で終わるでしょう。

課題のまとめ

リカレント教育は40年以上も前に提唱されてきたもので、リカレント教育の必要性や有効性は広く社会に浸透してきました。しかし、これまでのリカレント教育の機能は、主として企業内教育で提供される範囲のものでしかなく、もはや限界に達しています。

学び直しの一番の壁となるものは時間と費用の2つです。

時間については、有給教育休暇の制度といったものが効果的でしょう。しかしいくら時間があっても、費用を全額社員に負担させてしまうと実行性は限りなく低くなります。企業としては費用の全額もしくは一部補助が必要でしょう。

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4.リカレント教育を提供する外部企業例

経済産業省経済産業政策局の報告書「人生100年時代の社会人基礎力とリカレント教育について」には、具体的なリカレント教育の事例が掲載されています。

報告書にある「人生100年時代の社会人基礎力」とは、人生100年という超長寿時代で活躍し続けるために必要な3つの能力のことです。

3つの能力とは具体的に、

  1. 考え抜く力
  2. 前に踏み出す力
  3. チームで働く力

と定義されています。これらの能力を伸ばすために有効な方法がリカレント教育なのです。

経済産業省が紹介する4つの企業

人生100年時代の社会人基礎力の普及のために有効とされるのが、リカレント教育。その趣旨に賛同した企業の具体的事例を、経済産業省が紹介しています。4社ほどご紹介しましょう。

  1. ベネッセi-キャリア(アイキャリア)
  2. リクルートマネジメントソリューションズ
  3. 社会人材コミュニケーションズ(知命塾)
  4. Schoo(スクー)

①ベネッセi-キャリア(アイキャリア)

ベネッセi-キャリアは、対象を大学生から新人社会人に限定して制度を導入。大学での正課授業を柱とし、そのほか社会で必要とされる能力を伸ばすことを目的としています。

主な制度の内容は、下記の通りです。

  • 今までの自分の振り返り
  • これからの目標設定を促すアセスメントの実施
  • 働くことの意味を意識する動機付けを促すキャリア形成支援

対象が大学生から新社会人と限定されていますが新社会人の定着や社会人へのスムーズな移行に一役買っている制度といえるでしょう。

②リクルートマネジメントソリューションズ

リクルートマネジメントソリューションズの制度は新社会人から中高年の社会人まで幅広い層を対象とすることから注目されています。中高年層は、企業内で多く職務経験を積んでいますので、リカレント教育の有効性が期待できるでしょう。

リクルートマネジメントソリューションズでは、制度の目的を下記の2つに絞っています。

  1. 企業の持続的成長
  2. 個人の成長

そのために必要な人や組織を多面的に測定していくアセスメントを提供しています。また行動を変えることを促す気付きや学びをいかに多く提供できるかといったトレーニングを導入。意図的で計画的な役割転換(トランジション)をデザインすることに力を注いでいます。

③社会人材コミュニケーションズ(知命塾)

社会人材コミュニケーションズ(知命塾)の対象は社会人です。対象の広さから、社内に制度が浸透している様子がうかがえるでしょう。

特にミドルシニア層に対してリフレクションのプログラムを提供しています。プログラムでは自分自身の経験を振り返るワークが多数用意されています。

  • マインド改革
  • スキルの棚卸しで自分の強みを発見
  • 新たなスキル取得

といったキャリアの「リ・クリエーション」メソッドを提供しているのです。またリカレントプログラムとのタイアップで、再就職支援まで一貫して取り組んでいるのも大きな特徴です。

④Schoo(スクー)

Schoo(スクー)は社会人など時間がない人でも気軽に学ぶことができるオンライン動画学習サービスを提供している会社で、全世代を対象として制度設計を行っています。自社の強みを活かし、社会人基礎力ゼミを展開しているのです。

社会人基礎力を発揮するため、

  • 書く力
  • 聴く力
  • 話す力

上記3つの力にコミットするワークショップ形式の授業などのコンテンツを提供しています。いつでも、どこでも、誰でも気軽に学習できるコンテンツを社員にも適用しており、それが自社事業をさらに付加価値の高いものに仕上げられている典型的な事例といえるでしょう。

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まとめ

リカレント教育とは、「社会人などが大学などの高等教育機関にてフルタイムで学習し、そこで習得した知識や技術、資格を以てさらなるキャリアアップを図る」ことです。

実際に導入している企業はまだ少ないのが現状ですが、

  • 考え抜く力
  • 前に踏み出す力
  • チームで働く力

といったリカレント教育で育まれる社会人基礎力は、企業や社員にとって非常に魅力的でしょう。時間と費用といった課題を克服できる制度を整えるなど、具体的な導入を検討してみてはいかがでしょうか。