プレゼンティーズムとは?【意味を簡単に】アブセンティーズム

人事労務の仕事を通じて、「プレゼンティーズム」という言葉に触れる機会が増えている昨今。「プレゼンティーズム」は、従業員の健康に対する投資対効果を測定するための指標として注目を集め始めています。

今回は、

  • プレゼンティーズムとは?
  • アブセンティーズムや損失
  • 発生する背景
  • 対応や対策
  • 健康経営とその事例について

などについて詳しく解説していきます。

1.プレゼンティーズムとは?

プレゼンティーズム(presenteeism)とは、心身の不調によって思うようにパフォーマンスが取れなくなる状況のこと。

軽度のうつや頭痛など、多少の無理をすれば出社できるレベルの病気でもたらされるプレゼンティーズムによって、全米では多額の損失が出ているともいわれています。また、身体的な病気の場合、他社員にうつってしまうこともあるのです。

presenteeismの意味

プレゼンティーズム(presenteeism)とは、working while sickのことであり、日本語では「疾病就業」と訳されます。

プレゼンティーズムとは、従業員が出社していても何らかの不調のため、パフォーマンスが伴わない状況のことです

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2.アブセンティーズムとは?

アブセンティーズム(absenteeism)とは、不調による休みが続いたり、無断欠勤が生じたりすること

企業の労務管理において、このアブセンティーズムが生産性の低下を引き起こす要因として長年問題視され、火急の課題として予防と対策がメインに行われてきました。

しかし、近年では出社はしているものの本来のパフォーマンスを発揮できないプレゼンティーズムのほうが組織全体としての損失が大きいことがわかってきたのです。

アブセンティーズムとは、不調による休みが続いたり、無断欠勤が生じたりすること。しかし、近年では、プレゼンティーズムのほうが問題視されています

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3.プレゼンティーズムが引き起こす損失、コスト

では、プレゼンティーズムが引き起こす損失とコストを見ていきましょう。

プレゼンティーズムの損失割合が大きいのは女性

東京海上日動健康保険組合の調査によると、プレゼンティーズムの損失割合の平均値は39.2%でした。さらに、プレゼンティーズムの損失割合を男女別に見ると、女性のほうが大きくなっていると判明したのです。

これは、女性特有の体調不良が影響している可能性があると考えられています。また、年齢別に見ると男性、女性ともに年齢を重ねるごとにプレゼンティーズムの損失割合は低下しているのです。これは、仕事への自信などが影響しているともいえるでしょう。

プレゼンティーズムで生じる年間の推定損失額

ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社の調査によると、年収400万円とした場合、プレゼンティーズムで生じる年間の推定損失額は健康な人で60万円、高ストレス者で109万円、超高ストレス者で139万円でした。

ストレスの影響は、日々の生活の中で少しずつ蓄積していくもの。過度なストレス状態にある社員が企業に与えるマイナスの影響はどれくらいかについての理解を深める上で、参考になるでしょう。

プレゼンティーズムの損失割合は女性のほうが大きく、ストレスを抱えているほど、生じる損失額は大きくなります

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4.プレゼンティーズムの要因、発生する背景

これまでの日本では、勤勉は美徳とされてきました。そのため、多少の不調で休むことははばかられ、多くの従業員が出社を選択してきたのです。

気象情報会社のウェザーニュースが行った「日本の風邪事情」調査によると、日本人が風邪で熱が出て欠勤するボーダーラインは平均で37.9℃。病気欠勤は頻繁に起こりませんが、プレゼンティーズムは日頃から発生していると分かります。

これまでの日本では、勤勉は美徳とされ、多少の不調を押して出社することは珍しくなく、プレゼンティーズムは日常的に発生していました

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5.プレゼンティーズムへの対応、対策、対処法

企業は、健康経営の視点からプレゼンティーズムの対策ができます。その対処法を見ていきましょう。

声掛けをする

体調不良と見られる人に声を掛けて気遣い、無理をしなくていいのだという風土をつくることが大切です。

以前と比べて元気がない、顔色が悪い、ミスが増えているなど職場仲間の変化を感じたら、お互いに声を掛け合い、その人の仕事を手伝ってあげたり、休養を取って早めに回復できるようフォローし合ったりしましょう。

日頃のやりとりからお互いの健康状態を確認し合うことが肝要です。

相互でサポート

従業員同士でサポートできる風通しの良い空間をつくり、相互でサポートすることが普通となる環境にします。これにより、不調があっても誰かがカバーできるようになるでしょう。

職場では個人の生産性にこだわるより、互いの良いところを伸ばし合い、苦手な部分をサポートし合って、組織全体の生産性を高めるよう意識を改革します。このような雰囲気づくりには職場の心理的安全性の確保が欠かせません。

ハラスメントに注意する

ハラスメントはどんなものであれ、対象者の不調を招く事態となります。どんな些細なものでもハラスメントに発展する可能性があるので、早めに対処していきましょう。

職場のスタッフの多様性がある昨今、どのような言動がハラスメントと受け止められるのか、ハラスメントに対する正しい知識を持つことが大切です。ハラスメントに近い行為に対しては、指摘し合い、互いが協力して、お互いが抑止力となる必要があります。

相談窓口を設ける

人事部など、従業員同士や上司や部下といった直接の関係から離れた部署が相談窓口を設けることも重要です。それにより、何かあったときの駆け込み寺となります。人事部などの既存の部署に専任職員、兼任職員を置いて対応しましょう。

従業員の健康維持・健康増進の取組の効果促進のため、担当する職員については、専門資格を持つ職員を配置し、研修などを実施します。また取組に対して、企画立案段階から役員会にかけるなど、体制の整備も重要です。

プレゼンティーズムへの対処法には、声掛けをするなど従業員同士でできること、相談窓口を設けるなど企業側でできること、それぞれあります

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6.プレゼンティーズムと健康経営

ここからは、プレゼンティーズム対策としての健康経営について詳しく見ていきましょう。

健康経営とは?

健康経営とは、企業が従業員の健康を保つ職場環境づくりに努めて、全体の生産性を向上させる戦略のこと。

従業員の健康管理・健康増進は、単に医療費という経費削減にとどまらず、生産性の向上、企業イメージの向上などの効果を得ることができ、かつ企業のリスクマネジメントとしても重要です。

従業員の健康管理者は経営者であり、その指導の下、健康管理を組織戦略に則って展開することがこれからの企業経営にとって重要となるでしょう。

健康経営とは? 要件、健康経営オフィスの考え方
健康経営とは、企業が従業員の健康維持、促進を戦略的に進めることです。ここでは、健康経営について解説します。 1.健康経営とは? 健康経営とは、従業員の健康を個人の問題と片づけず、経営的視点からとらえ...

経済産業省の定義

経済産業省による健康経営の定義は、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」。従業員への健康投資を行うことで、組織が活性化し、結果として業績向上、株価上昇につながるとされているのです。

ヘルシー・カンパニー

健康経営の語源はアメリカの心理学者ロバート・ローゼンが1980年代に提唱した「ヘルシー・カンパニー」です。

「従業員が健康であることが収益性の高い企業をつくる」という意味を持ちます。日本においては、企業経営と従業員の健康管理の両立を目指すことを目的として普及し、「健康経営」と呼ばれるようになりました。

健康経営とは、企業が従業員の健康を保つ職場環境づくりに努め、それにより全体の生産性を向上させるという戦略です

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7.健康経営の事例

最後に、効果を上げている健康経営の企業事例を4社ご紹介します。

カオナビ

クラウド人材管理システム「カオナビ」を提供しているカオナビでは、健康経営の一環として、社員の運動量や睡眠状況などの調査や、残業を減らす取組であるオフィス内にコンビニを設置。

さらに、リラックスタイムを設けて生産性や集中力の向上を狙う仮眠スペースの設置などを行い、効率化や健康などさまざまな観点からの施策を行っています。また、健康組合の健康に関するイベントも積極的に広報し、社内認知度の向上も図っているのです。

ローソン

大手コンビニエンスストアのローソンでは、2005年から従業員とその家族の健康づくりに取り組んでいます。

健康診断受診率100%を達成し、その健診結果から従業員の健康を把握。健康について学習するeラーニングや健康づくりの取組を一定期間行うなどの条件を満たすとPontaポイントが最大1万ポイント付与される「ローソンヘルスケアポイント」を実施しています。

それに加え健康リスクに合わせた施策を積極的に行っているのです。

オムロン

大手電気機器メーカーであるオムロンでは、運動量や睡眠、食事のカロリーなど5つのものさしをもとに、健康促進を図っています。

たとえば、2017年からウェアラブル活動量計を用いた良質な睡眠確保の施策を行っています。睡眠を見える化すると同時に、社内医療職による睡眠教育を実施。睡眠不足による集中力低下、日中の眠気による業務への支障を防止しています。

また、睡眠によって疲労回復などのさまざまなメリットがあるとしているのです。

TOTO

水まわり住宅総合機器メーカーであるTOTOは、3年連続健康経営優良法人として認定されました。健康管理・メンタルヘルス対策・健康増進を三本柱とし、健康配慮への取組を行っているのです。

定期健診の実施やイントラネットの活用により健康情報を共有し社員の健康意識を高める取組、全国の事業所に在籍する産業保健スタッフが集まる「ヘルスケア推進ワーキング」の実施など、さまざまな点から社員の心と体の健康づくりに努めています。

健康経営を導入し、成功している企業に共通しているのは、コストではなく「投資」として取り組んでいる点といえます