ポテンシャル採用とは|メリット・デメリット、年齢制限など

ポテンシャル採用とは、潜在的な資質や可能性などを重視して行う採用活動のことです。ここではポテンシャル採用のメリットとデメリット、導入している企業の事例について解説します。

1.ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用とは、スキルや経験ではなく、人材の将来性やポテンシャル(潜在能力)を重視した採用方法のこと

これまで中途採用といえば、即戦力となるスキルや経験がある人材を採用する「即戦力キャリア採用」がほとんどでした。労働力の減少が叫ばれる昨今、即戦力を採用していくのは難しいでしょう。

そこで近年注目されているのが、応募者の将来性を重視した「ポテンシャル採用」なのです。

ポテンシャルとは?【意味をわかりやすく】採用、高い人
「ポテンシャル採用を実施しよう・ポテンシャルが高くて素晴らしい」など、さまざまなシーンで用いられる「ポテンシャル」。ニュアンスや何となくの意味は分かっているものの、詳しい使い方や意味までは把握していな...

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【評価業務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

評価システム「カオナビ」を使って評価業務の時間を1/10以下にした実績多数!!

●評価シートが自在につくれる
●相手によって見えてはいけないところは隠せる
●誰がどこまで進んだか一覧で見れる
●一度流れをつくれば半自動で運用できる
●全体のバランスを見て甘辛調整も可能

カオナビの資料を見てみたい

2.ポテンシャル採用が今注目されるのはなぜか

ポテンシャル採用が注目されるようになった背景にあるのは、少子高齢化にともなう新卒学生の減少。

厚生労働省が2020年6月に発表したデータによると、2020年4月時点における大学生の就職内定率は98.0%でした。新卒は超売り手市場で、学生の取り合いになっていると分かります。今や新卒学生がまったく採用できなかったと嘆く中小企業も少なくありません。

こうした背景から「新卒」「中途」の枠組みを超えた「ポテンシャル採用」に注目が集まっているのです。

ポテンシャル採用と新卒採用の違い

「新卒採用」も広義に見れば「ポテンシャル採用」と同義といえます。企画や営業、管理系などの一般的な総合職では採用時、業務に関する知識やスキルの有無は問われません。入社後の研修やOJTなどを通じて習得するからです。

新卒採用とポテンシャル採用、どちらの採用活動でも担当者が行うのは応募者が持っている事実をそのまま評価すること。行動や事実から未来を予測して評価を付けることではありません。

ポテンシャル採用の年齢制限

「ポテンシャル採用」に具体的な年齢制限は定められていませんが、「ポテンシャル採用」では一般的に第二新卒、20代前半から半ばにかけての転職者をターゲットとしています。これは社会人歴が浅く、転職経験のない層です。

ただ、30代でもポテンシャルが高いと見込まれて人柄が企業にマッチしていれば、未経験枠で採用されるケースもあります。反対に、年齢が若ければ誰でも選考を通過できるわけではありません。

ポテンシャル採用は中小企業に最適

ポテンシャル採用といえば、大量募集をかける大手企業が率先して導入しているイメージがあるでしょう。しかし中小企業こそ取り入れたい採用方法です。新卒学生の数が減少しても、彼らの大手企業を志望する気持ちは変わりません。

つまり優秀な人材は有名企業や大手企業に流れやすく、中小企業はなかなか望む人材に出会えない傾向にあるのです。中途採用市場では出会えない人材を獲得できる点は、中小企業がポテンシャル採用を活用するメリットでしょう。

Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。
人事評価システム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

3.ポテンシャル採用のメリット

企業がポテンシャル採用を活用すると、どんなメリットが得られるのでしょうか。下記の4つについて解説します。

  1. 優秀な人材の採用
  2. 教育コストの削減
  3. 年齢構成のゆがみを解消
  4. ダイバーシティ化やイノベーションが期待できる

①優秀な人材の採用

近年、成長意欲があり仕事に対するモチベーションが高い若手人材ほど、働く価値観が変化しています。

多様な働き方が広がるなか「今後のキャリアや自身の適性を見極め、チャンスがあればマッチする企業に転職したい」と考える若手層が増えているのです。

こういった考えから、大手企業から中小企業、ベンチャー企業に転職するケースも増えてきました。ポテンシャル採用を導入すれば、それまで出会えなかった優秀な若手人材を獲得するチャンスが増えるのです。

②教育コストの削減

新卒採用で入社した社員には、ビジネスマナーや基本的なスキルなど、社会人としての知識を1から身に付けるための教育が必要となります。

しかしポテンシャル採用ではすでに社会人経験のある人材が集まるのです。そのため人材には言葉遣いやマナー、最低限のビジネススキルなどが身に付いています。つまりポテンシャル採用では教育にかけるコストと時間の削減が期待できるのです。

③年齢構成のゆがみを解消

「新卒採用を行っていない」「若手社員の退職が続いている」などで社員の年齢が高齢化した企業では、幹部不足やリーダー候補の不足といった課題が生じます。これらは企業の成長や組織運営上の問題になりかねません。

ポテンシャル採用には社内年齢構成のゆがみを解消し、将来の幹部候補やリーダー候補を育てるメリットがあるのです。

④ダイバーシティやイノベーションが期待できる

ポテンシャル採用のメリットには、企業の「ダイバーシティ化」や「イノベーションの期待」もあります。ポテンシャル採用によって応募者の間口を広げられれば、ほか業種や多職種の人材が集まるでしょう。

人材が同質化し、組織が硬直化したままで新たな知見を得るのは困難です。ポテンシャル採用によって異なる分野の考え方を取り入れられれば、新たなアイデアにつながる可能性は高まるでしょう。

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

4.ポテンシャル採用のデメリット

企業の若返りやダイバーシティ化などさまざまなメリットを持つポテンシャル採用ですが、デメリットも存在するのです。ここでは下記3つのデメリットについて解説します。

  1. 人材開発コストがかかる場合も
  2. 早期退職の懸念
  3. 前職の経験が悪影響を及ぼす場合も

①人材開発コストがかかる場合も

ポテンシャル採用で採用した人材は、社会人としての基礎的なスキルを持っていても実務経験がない場合も多いです。そのため入社後すぐの活躍は期待できませんし、期待した成果を発揮するまである程度の人材開発コストが生じます。

業務にかかわる教育・研修を別途行う必要があるため、新卒と異なる教育プランを用意しなければならない場合もあるのです。特に技術職をはじめとした専門性の高い職種は、一般職に比べ人材開発コストが高くなる傾向にあります。

②早期退職の懸念

新入社員が3年以内に離職する率は30%ほどといわれているもの。ポテンシャル採用で集まる人材は一度退職を経験している分、転職に抵抗がない可能性も少なくありません。

選考の際は「転職回数」や「勤続期間」、「退職理由」や「志望動機」などを改めて確認しておくとよいでしょう。

③前職の経験が悪影響を及ぼす場合も

「未経験=新しい環境に順応しやすい」とは限りません。就業経験がある場合、前職で身に付けた仕事に対する習慣や考えから抜けられない場合もあります。

それによりモチベーションの低下、人間関係の悪化につながる可能性は高いです。早く自社の運用に慣れてもらえるよう、別途教育や研修を検討しましょう。

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

5.ポテンシャル採用を成功させるポイント

メリットと同時に追加人材開発コストの発生や早期退職の懸念など、いくつかのデメリットを持つポテンシャル採用。成功させるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。

ここでは企業と個人、それぞれの立場からポテンシャル採用を成功させるためのポイントについて説明します。

企業

SNSやオンライン上の採用情報を充実させる

ポテンシャル採用において企業がもっとも意識すべきは「若手人材からの注目をいかに集めるか」という点です。ただ単にポテンシャル採用を始めても、若手人材にそれを認知してもらわなければ意味がありません。

「FacebookやTwitterなどのSNSを活用してポテンシャル採用に関する情報を発信する」「自社Webサイトや若手人材の採用に強い求人媒体を使う」など、若手人材に馴染みのある方法で採用情報を周知してみましょう。

ポテンシャル採用を明示する

ポテンシャル採用を行う際、その求人情報がポテンシャル採用だと明示しなければなりません。これが明示されていないと応募者は通常のキャリア採用と混同し、応募に踏み切らない可能性があるのです。

採用広告に「第二新卒可」「未経験OK」といった文言を盛り込み、本求人がポテンシャル採用であると伝えましょう。

求めるポテンシャルを明確にして、研修制度を組む

ポテンシャル採用において「どのような人材を求めているか」「どんな素養や人間性に着目するのか」を明確にする必要があります。着目するポテンシャルがあいまいなままでは、ポテンシャル採用は有効に機能しません。

またポテンシャル採用で迎えた社員には、戦力化に向けたサポートも必要です。社内の教育体制が不足している場合、オンラインの外部研修も活用してみましょう。

新卒採用に近い基準で評価する

応募者に実務経験を求めないポテンシャル採用では、新卒採用に近い評価基準を導入します。選考の際は前職の業務内容だけでなく、学生時代の経験からも応募者の資質を探りましょう。

応募者の経歴に空白期間がある場合、その間の取り組みについて確認します。また前職の退職理由をしっかりと聞き、消極的な退職ではない点を確認しておくと安心です。

グループワークなどでポテンシャルを見きわめる

面接で「前職ではどのような働き方をしていたか」と質問を投げかけ、応募者のポテンシャルを見極めましょう。「応募者の強みは何か」「培ってきた経験やスキルは入社後に任せたい仕事内容と合致しているか」なども確認します。

ポテンシャルが面接の質問だけで判断できない場合、グループワークやディスカッションを交えて確認するのもよいでしょう。

ポテンシャルが見極められる質問をする

応募者のポテンシャルを見極めるには、次のような質問が効果的です。

人柄を見極める

例:あなたの強みは何ですか? 当社のどういったところに生かせると思いますか?

志望動機や仕事に対するスタンスを知る

例:転職を通じて当社にどんなことを期待しますか?

退職理由の本音を見極める

例:退職の決め手となったのはどんなことですか?

個人

ビジネスマナーやコミュニケーション能力を磨く

続いて個人の立場からポテンシャル採用を成功させるためのポイントを見ていきます。ポテンシャル採用にて企業は、応募者の基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力を見ているのです。

まずはビジネスメールの書き方や電話の取次ぎ方、仕事の進め方など、社会人としての基本的なマナーが身に付いているか振り返ってみましょう。新しい環境でも柔軟に仕事ができるとアピールするのも効果的です。

ライフプランやワークバランスの理想像をイメージする

自身のライフプランやワークバランスの理想をイメージしておくのは、キャリアプランを考えるのと同じくらい重要となります。今だけを見るのではなく、人生の大きな目標や設計を決めてから面接に挑みましょう。

「結婚するならいつの時期にするか」「そのあと家族とどのような人生設計を立てるか」女性の場合、妊娠や出産後の復職率と満足度のリサーチも重要です。

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

5.ポテンシャル採用を導入している企業

大手企業での導入を皮切りに、今後ますますポテンシャル採用の活躍は進むと考えられています。実際にポテンシャル採用を導入し、新卒一括採用をいち早く廃止した「ヤフー」と、IT業界未経験でもチャレンジできる「サイボウズ」の事例を見ていきましょう。

ヤフー

ヤフーでは2016年の10月から新規一括採用を廃止しました。

「これまでの新卒採用や中途採用では、既卒や第二新卒などの機会損失が生じていた」「海外留学生や博士号取得者などの就職活動時期が多様化してきた」点から、柔軟な採用の枠組みが必要だと考えていたためです。

現在、新卒や既卒、第二新卒など経歴にかかわらず、30歳以下なら誰でも応募できる「ポテンシャル採用」を実施しています。ポテンシャル採用によってこれまで出会えなかった人材の採用を目指しているのです。

サイボウズ

サイボウズではこれまで、採用活動に年齢制限を設けていました。

しかし年齢や経験にとらわれず、一人ひとりの意欲、スキルに合わせた新しい可能性を応援したいという思いから「ポテンシャル採用」を実施。未経験でも知識習得が進められる教育体制を整えました。

その結果、営業や人事などIT業界未経験からの入社実績を築き上げたのです。