PDCAサイクルは古い? 今注目のOODAとの違いやメリット

生産管理や品質管理など、事業活動のサイクルを表すPDCAですが近年、「PDCAはもう古い」という声も挙がっているのです。それはなぜなのでしょうか。今回はPDCAが古いといわれる理由や、それにかわる新たなメソッドについて解説します。

1.PDCAはなぜもう古いとされているのか?

PDCAは、業務改善のフレームワークとして注目を集めていました。しかし近年では、通用しにくい手法といわれ始めています。

なぜなら状況は刻一刻と変化するため、計画を立てて実行したときにはもう状況が変わっている場合も多いのです。また評価や改善へ進んでも、そのやり方はすでに通用しないという事態もあり得ます。

PDCAが古いといわれる最大の要因は、「現代業務の効率化にそぐわない」つまりスピード感に欠けるといった問題点にあるのです

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2.PDCAサイクルの手法

はじめに、PDCAサイクルの基本を整理しておきましょう。PDCAは次の頭文字を取ったフレームワークで、業務の効率化を目指す手法のひとつとして注目を集めました。

  1. Plan(計画)
  2. Do(実行)
  3. Check(評価)
  4. Action(改善)

PDCAサイクルはマネジメントサイクルとも呼ばれ、製造業やIT業界、スポーツの分野など幅広い場面で活用されているのです。それでは4つのステップを見ていきましょう。

①計画する〈Plan〉

はじめに、企業組織として目指すべき目標を掲げ、その目標を達成するための計画(Plan)を作ります。例は下記のとおりです。

  • 受注率10%以上
  • 12月のTOEICで600点以上を獲得する

ここでは、5W2Hの7項目を意識し「いつまでに何をするのか」を具体的に組み上げるのがよいとされています。

②実行に移す〈Do〉

実行計画を立案したら、その計画に基づいて行動(Do)します。実行する際は時間を測ったり数値を記録したりするなどして、行動のログを残しましょう。記録を見直すと、行動の振り返りや分析、改善策の検討が可能になります。

③検証する〈Check〉

続いて、実行の結果を検証(Check)します。「実行結果は最初に設定した目標に届いているか」「目標に対してどのくらいの達成度になったか」などを、具体的な数値を用いて定量的に測定するのです。これにより客観的に分析できます。

計画どおりに進んだら「何が成功のポイントになったか」、計画どおりに進まなかったら「何が原因なのか」見直しましょう。

④対策や改善を行う〈Action〉

検証結果を受けて、今後どのような対策や改善が必要かを検討するのがAction(改善)のステップです。よりよい結果を出すにはどの部分を強化すればよいのか、うまくいかなかった部分にはどのような改善策が必要か、などを具体的に考えていきます。

次サイクルのPlanを意識して考えることも必要です。

PDCAにとって重要なことは?

計画を立てて実行しただけでは、問題点の改善に進みません。PDCAサイクルを回す際は「目標」と「期間」を明確化し、「何のために行っているのか」をはっきりと意識しましょう。

また継続的にサイクルを回すためにも、定期的に進捗状況を確認し、次の改善策を見つけていくのです。

PDCAサイクルを回す際は必ず、検証(Check)を確実に行いましょう。重要な点は、「失敗しても的確な評価を行う」「改善につなげる」です

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3.PDCAのメリットとデメリット

品質管理の国際基準「ISO9000」や「ISO14000」にも影響を与えているとされるPDCAには、いくつかのメリットとデメリットが存在します。一体どのような内容なのか、それぞれ解説しましょう。

メリット1:目標達成に必要な能力が向上する

組織の目標を達成するには、従業員一人ひとりの自主的・自律的な活動が必要です。そこでPDCAを活用すると、役割に応じた目標が明確になります。

組織や個人の目標が明らかになり、問題解決に向けた道筋を立てられれば、着地点とのズレを防ぎながら目標を達成できるでしょう。

メリット2:現状の課題や問題点、不足がクリアになる

現状の課題や問題点、不足点などを具現化できることも、PDCAサイクルを回すメリットのひとつ。PDCAでは、はじめに目標を定め、その目標を実現するための計画・実行・見直しを進めます。

PDCAサイクルを回していくなかで何が課題なのか、その課題を解決するには何が必要なのか、成功の要因には何があるのかなどを明確にできるのです。

メリット3:経験から学ぶ力を身に付けられる

PDCAサイクルを回していくなかで、うまくいった場合は何が要因だったのか、何が不足していて失敗したのかを自主的に学んでいきます。自身の経験から今後の行動にフィードバックできるノウハウが学べるのは、PDCAを実行する大きなメリットでしょう。

経験から学ぶ力を身に付けると、失敗の確率も下がるうえ、品質改善や本人の自信にもつながります。

デメリット1:改善するには時間がかかる

PDCAのデメリットとして特に大きいのが、改善するために時間がかかるという点。PDCAは改善アイデアを思いついてすぐ実践するわけではなく、計画と実行に対して評価を行ったのちに、改めて改善に取り組みます。

改善の反映前に計画・実行・評価といったプロセスを踏むため、おのずと時間がかかってしまうのです。

デメリット2:前例主義が多い点

PDCAはあくまでも、過去に実施した施策や行動を評価して改善案を生み出す考え方。そのためどうしても前例主義が多くなりがちなのです。

分析対象は過去の実績となるため、新しいアイデアが生まれにくい点もデメリットに挙げられます。改善を行う際は、外部の意見を積極的に取り入れたり、ほかの事例を参考にしたりして革新的な改善を意識する必要があるのです。

デメリット3:PDCAサイクルが目的化されてしまう

PDCAサイクルをうまく回せない原因として多いのが、PDCAサイクルを計画すること自体が目的になっているというケース。計画の策定や実行、評価などを行うにはどうしてもコストがかかります。

PDCAは品質管理や業務改善などを実施するための手段に過ぎず、計画の立案自体が目的ではありません。コストと効果のバランスを見ておかないと、デメリットばかりが目立つ結果となる可能性も高いのです。

PDCAには働くうえで必要な自主性や応用力が身に付くといったメリットがある一方、「改善に時間がかかる」「前例主義になりがち」といったデメリットも存在します

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4.OODAループの意味やPDCAサイクルとの違い

PDCAサイクルが古いといわれる近年、PDCAに代わるメソッドとして「OODA(ウーダ)ループ」の活用が注目されています。「OODA(ウーダ)ループ」とは、4つのステップで行われる問題解決のメソッドです。

  1. Observe(観察)
  2. Orient(状況判断、方針決定)
  3. Decide(意思決定)
  4. Action(行動・改善)

もともと航空戦に挑むパイロットの戦術として編み出されました。ビジネスシーンにおいては状況や状態に応じて意思の決定を行う手法として、日本でも多くの企業が取り入れ始めています。それぞれの段階を詳しく見ていきましょう。

OODAループとは?【PDCAサイクルとの違いをわかりやすく】
OODAループとは、迅速な意思決定・行動を行うためのフレームワークです。「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」4つから構成され、目標や課題...

①観察<Observe>

Observeとは、固定概念に固執せず、自分以外の外部状況に関する情報を収集する段階のことで観察や監視と訳される言葉です。

既存の品質管理や市場、競合などをしっかりと観察し、正確なデータを観察しますOODAループはこの「生きたデータ」の観察から始まるのです。

②情勢への適応<Orient>

Orientとは、Observeの段階で収集したデータをもとに「判断価値を含んだインフォメーション」として生成する段階のこと。

「仮説構築」に言い換えるとイメージしやすいでしょう。集めた情報を統合して分析し、自身が置かれている状況を判断したうえで戦略の方向性を定めます。

ここでは厳密なプランまでは策定せず、とりあえずの仮説として方向付けを行うのです。過去の判断や他者判断の誤りに気付くことが重要になります。

③意思決定<Decide>

Decideとは、Orient(情勢への適応)で判断した内容をもとに、行動を具体化するための手段を選択すること。

  • 自分もしくは組織がどうなりたいのか確認する
  • 1.に対する選択肢をリストアップする
  • 1と2を照らし合わせ、最も効果的と思われる方針・計画を策定する

これらのプロセスを踏み、OODAループの最終段階「Action(行動・改善)」につなげるのです。

④行動<Act>

Decide(意思決定)で採択された方針に基づいて、実際の行動に移ります。ここでは一度決めた行動に縛られる必要はありません。行動しながら状況を随時確認し、迷った場合や状態が変化した場合はObserve(観察)に戻ってOODAループを繰り返します。結果に一喜一憂せず、次のOODAループに繋げていくことが重要です。

PDCAとの違い

PDCAは計画を立てて実行し、それを評価・分析したうえで次のAction(行動・改善)に移る手法ですが、OODAは現状の観察から始まります。そのためOODAはPDCAと比べて、分析から実行までをスピーディに実施できるのです。

PDCAには改善点を見つけやすい一方で予定調和になりやすいといった特徴があり、OODAには綿密な計画策定をしないため既存の発想にとらわれないといった特徴があります。

OODAが向いている企業の特徴

OODAでは状況に応じてその都度意思決定を行います。そのため市場や心理状態などの変化が多い環境にある個人やスタートアップ、ベンチャーなどに向いている手法といわれているのです。

OODAは、PDCAにおける「Do」の結果が出るより先に次の「Action」を進められるため、環境変化に対応しやすいマネジメントです。明確に定められていない工程のなかで意思決定を行う必要がある企業は、PDCAよりOODAが向いているでしょう。

PDCAとOODAはどちらがより優れているかを比較するものではありません。目的に応じて使い分けましょう

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5.OODAのメリット・デメリット

綿密な計画を立てる時間がないときや、その必要性がないシーンを想定して開発されたOODAにも、いくつかのメリットとデメリットが存在するのです。ここではOODAのメリットとデメリットを整理していきます。

OODAのメリットとは?

OODAのメリットは、何といっても状況の変化に強いこと。OODAでは観察から意思決定までのループを高速で回していきます。PDCAのように上層部の計画立案を待ってから行動する必要がないため、現場の状況に合わせて臨機応変に対応できるのです。

OODAはあくまでも現場が起点。状況の変化に応じて早いスタート、都度の修正が可能です。

OODAのデメリットとは?

OODAでは個人が自ら考えて動きます。言い換えれば組織としての統制が難しくなるのです。組織でOODAを使う際は、「全員が同じ方向を向くためのビジョンやミッションの共有」「トップマネジメントのリーダーシップ」が必須となります。

またOODAにはスピード感が求められる反面、情報収集や判断が疎かになりやすいといったデメリットも潜んでいるのです。

OODAはスタートの早さや臨機応変な対応が得意な反面、組織の統率が難しくなるといった特徴があります

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6.OODAが必要とされる理由2つ

変化やスピード、イノベーションといったキーワードが飛び交う現代でも、PDCAは十分有効なフレームワークです。それではなぜOODAが必要とされるのでしょう。ここではOODAループが必要とされる理由2つについて解説します。

  1. ビジネス環境の激しい変化に適応するため
  2. AIやSNSの急速な発達

①ビジネス環境の激しい変化に適応するため

ひとつはビジネス環境の激しい変化に適応するため。プロダクトライフサイクルの短期化や価値観の多様化により、ビジネス環境はかつてのプロダクトアウト型から短サイクルの利⽤型が広がっています。

安定した売上の見込みが難しい近年、変化する消費者のニーズに合わせて製品やサービスを変えていかなければなりません。

②AIやSNSの急速な発達

これまでは一部の部署でしか顧客情報を収集できませんでした。しかしAIやSNSの発達により誰でもリアルタイムに顧客の声をピックアップできるようになったのです。

SNSやAIを活用し、OODAループを高速で回していけば、変化し続ける消費者ニーズに合わせた対応策が打ち出せるでしょう。

ビジネスシーンが刻一刻と変わる現代を生き抜くためには、緻密な計画を立てるよりも素早い判断が必要なのです

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7.OODAを機能させるには?

OODAを機能させるには、どういった点に注意すればよいのでしょうか。ここではOODAループを回す際の注意点について、次の3つの観点から解説します。

  1. 具体的なビジョンの共有
  2. 結果に一喜一憂しない
  3. 情報共有の徹底

①具体的なビジョンの共有

OODAのメリット・デメリットの項目でも触れたとおり、組織でOODAを使う際、具体的なビジョンの共有が欠かせません。ビジョンや組織方針が統一されていないまま現場に判断を任せることは、責任の丸投げと同義です。

ビジョンを統一して上司と部下の認識が同じになれば、部下は上司からの指示を待つだけでなく、先を見据えた提案ができるようになります。

②結果に一喜一憂しない

OODAを機能させるには、結果に一喜一憂しないことも重要です。「それは闇雲に行動するだけで、実のところ意味がないのでは?」という心配の声もあるでしょう。しかし方向が明確に定まっており、行動の結果を踏まえて次の実行を見直せれば問題ありません。

結果がうまくいったとしても、またうまくいかなかったとしても、OODAループを回していくうちに経験や情報が蓄積されます。ビジョンが統一されており、後述するObserve(情報収集)が適切に行われていれば、自然と精度は高まるでしょう。

③情報共有の徹底

OODAループのなかでも特に重要とされるのが、最初に実行されるObserve(情報収集)。OODAをより機能的な手法とするためには、できるだけ多くの「生きた情報」に触れ、個々が収集した情報をリアルタイムに共有できる環境が不可欠です。

市場や業界、顧客や競合他社、取引先企業の動向など、あらゆる情報の共有を徹底させましょう。また調査・観察を行う際は固定概念や過去の経験をもとにした常識に固執せず、ありのままの状況を受け入れることが重要になります。

OODAを機能させると、自ら考えて動ける個人が増えていきます。変化の激しいビジネス環境で生き残るには「自走する組織」が必要なのです