ペインポイントとは? 見つけ方、ゲインポイントとの違い

ペインポイントとは、コストをかけてでも解決したい問題や悩みのこと。ここではビジネスにおけるペインポイントの考え方や同義語などについて解説します。

1.ペインポイントとは?

ペインポイントとは、コストをかけてでも解決したい問題や悩みのこと。「ペイン」とは「痛み」のことで、ときには購買行動を抑制するほど「不快」「不便」の程度が大きい問題を指します。

この言葉に関して重要なのは「コストをかけてでも」という点。「お金を払ってでも解決したい」とはつまり、そこに新規ビジネスのヒントがあることを意味しています。よって多くの企業がこのペインポイントを注視しているのです。

ペインポイントとゲインポイント

「ゲイン(Gain)」は「ペイン(Pain)」と対になる用語で、「得る」「増やす」といった意味の英語。ビジネスでは、ユーザーがニーズを満たすうえで増やすべき要素を指します。

たとえばユーザーのニーズが「海外旅行を楽しみたい」だった場合、ゲインの一例は「眺望のよいホテルに泊まりたい」になります。一方、ペインの一例は「できるだけ飛行機代をカットしたい」です。

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2.ペインポイントと混同しやすい用語

ペインポイントは「希望」「要望」を含むため、ほかの言葉と混同しがちです。類義語の正確な意味を把握しておきましょう。

  1. ニーズ
  2. ウォンツ
  3. インサイト
  4. シーズ

①ニーズ

「要求」「需要」などを意味する言葉のこと。マーケティングで使用される場合、「顧客の欲求」という意味で用いられるのです。

「顧客の欲求」には、自覚をともなわない「潜在ニーズ」、実現方法まで認識している「顕在ニーズ」、さらに解決不能なニーズなども含まれます。これらはさらに「ペインをともなうニーズ」と「ペインをともなわないニーズ」に分類可能です。

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潜在ニーズと顕在ニーズ

潜在ニーズは、顧客本人が自覚していない要望で、掘り下げていくと真のニーズが見える場合もあります。顕在ニーズは逆に自覚している要望です。

たとえば「車が欲しい」理由が「通勤時間を減らしたい」点に起因しているとしましょう。

そこで理由を掘り下げると「睡眠時間を増やしたい」「最近よく眠れない」といった悩みを引き出せる場合があるのです。つまりこのユーザーの真のニーズは「快適な睡眠」となります。

一方顕在ニーズは明確です。たとえば「請求書発行件が多いのでシステム化したい」といったもの。

顕在ニーズはマーケティングを通じて把握しやすいです。一方、潜在ニーズは外部からの働きかけで本人がはじめて自覚する場合も多いため、把握に時間がかかります。

②ウォンツ

「欲求」を意味する言葉で、ビジネスでは「ニーズを満たすための具体的な製品やサービスへの欲求」を指すのです。ウォンツは下記3つに分類されます。

  • 基本ウォンツ:ニーズを満たすための製品やサービスに対する基本的な欲求
  • 条件ウォンツ:基本ウォンツを満たしたうえで、さらに理想に近づくために生じる欲求
  • 期待ウォンツ:満たされると期待される欲求

ウォンツはニーズと密接な関係があります。しかしペインポイントとは明確な違いがあるのです。

③インサイト

「洞察力」を意味する言葉で、ビジネスでは「人に行動を起こさせる無意識の心理」を指します。ユーザー自身も自分のインサイトには気づいていません。

ニーズは顕在ニーズと結びついています。しかしインサイトは、ほかのニーズとのつながりがほとんどありません。たとえば普段「なんとなくその製品を選んでいる」理由をユーザー自身も説明できない場合、それはニーズではなくインサイトといえます。

④シーズ

企業活動におけるシーズとは、開発や販売における発想の元になる物事のこと。「種」を意味する言葉です。

このシーズが指すのは企業が所有する事業の種、つまり開発技術そのものや販売ノウハウ、蓄積した顧客データなど広範なものにあたります。これらはビジネスの起点と定義でき、ペインポイントとは根本的な意味で明確な違いがあるのです。

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3.ペインポイントの活用シーン

ペインポイントは「開発」「差別化」「提案や訴求」などに役立つため、主にマーケティングや営業、企画で活用されます。

  1. 製品やサービス・新事業などの開発
  2. 他社との差別化
  3. 営業

①製品やサービス・新事業などの開発

ペインポイントは市場価値の高い製品やサービス、新事業などの開発において大いに活用できます。ペインポイントを解決できる製品やサービスには進んでお金を出そうとする顧客も多いため、開発できれば売上や市場占有率、企業価値などの向上が期待できます。

ただし表面化しているペインポイントばかりではありません。隠れたニーズとそれに関するペインポイントを掘り起こすことも必要となります。

②他社との差別化

顧客がお金を払ってでも解決したいと思っている問題や悩みに対して独自の解決策を提示すれば、競合他社との差別化へ直結するでしょう。

独自の解決策を提示した企業は顧客からの信頼や注目が高まるので、今後の購買などで優先的に自社製品などを検討してもらえるようになるのです。マーケティングや営業の戦略において差別化は重要な要素。ペインポイントを起点に考える企業も少なくありません。

③営業

顧客が抱えるペインポイントを営業担当者が把握していれば、的確なクロージングを行えるため、成約率も高まります。顧客のペインポイントの詳細を理解したうえで、「この製品やサービスならばそれを解決できる」と提案できるからです。

そのため営業やマーケティングの基本は「ペインポイントの把握と解決」とさえいわれています。

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4.ペインポイントを見つけるためのフレームワーク

ペインポイントを見つけるためにはフレームワークを実行するとよいでしょう。ここでは4つのフレームワークを説明します。

  1. ペインストーミング
  2. カスタマージャーニーマップ(Customer JourneyMap)
  3. バリュー・プロポジション・キャンバス(Value PropositionCanvas)
  4. 共感マップ

①ペインストーミング

顧客が抱えているペインポイントを洗い出し、その詳細を掘り下げていくためのフレームワークのこと。作業から多くのペインポイントを発見可能です。発見した課題は、頭文字が「PAIN」となる4点を軸に掘り下げていきます。

  • Person(対象となる人物)
  • Activities(対象となる人物が毎日とっている行動)
  • Insights(目的達成のために行っている行動や利用しているツール)
  • Needs(顧客の欲求、最大のペインポイント)

②カスタマージャーニーマップ(Customer JourneyMap)

特定の製品やサービスを顧客が購入するに至るまでの行動や思考を可視化する図表のこと。顧客を旅人になぞらえて、行動を時系列に記載します。目標は俯瞰的な目線で顧客との接点を見出し、最適なアプローチ方法を考案することです。

書きこむ顧客の思考には顧客の悩みやニーズなども含まれるため、ペインポイントの明確化や掘り下げに活用できます。想定される顧客像(ペルソナ)が複数存在する場合、それぞれのカスタマージャーニーを作成しましょう。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップの作成手順は、以下の4つです。

  • ターゲットとする顧客像の明確化:自社の製品やサービスの販売においてターゲットとなる顧客像を明確にする
  • 顧客の行動を記入:ターゲットとした顧客がとると考えられる行動をマップに記入していく
  • 顧客の内面に生じる変化を記入:さまざまな行動をとるなかで顧客の内面に生じる変化をマップに記入していく
  • 情報の整理と対策の検討:記入した内容を整理し、それらに応じた対策について検討していく

③バリュー・プロポジション・キャンバス(Value PropositionCanvas)

自社の製品やサービスと顧客が持つニーズとの関係性を可視化するフレームワークのこと。バリュー・プロポジションは「顧客に提供する価値の組合せ」を意味します。

目的は自社の製品やサービスの特徴を明確にすると同時に、ターゲットとする顧客のニーズとの相性を分析すること。

作業の過程で提供できる製品やサービスと顧客ニーズとのギャップを明確にできます。また顧客が持つペインポイントに対する自社の製品やサービスの有効性について検証できるのです。

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バリュー・プロポジション・キャンバスの作り方

バリュー・プロポジション・キャンバスの作成手順は、4つです。

  • 提供できる価値とターゲットの明確化:提供できる製品やサービスの基本的な価値とターゲットを明確にする
  • ターゲットが持つニーズの明確化:ターゲットが持つニーズを分析し、記入していく
  • ターゲットに提供できる製品やサービスの価値を明確にする:ターゲットに提供できる製品やサービスの価値についても分析し、より詳しく記入する
  • ニーズと価値の相性の分析:ニーズと価値の相性を分析し、ターゲットに対して効率的なアプローチが可能か確認する

④共感マップ

顧客体験を「見る」「聞く」「考える」「話す」「痛みを感じる」「欲する」の6つに分け、分析する図表のこと。図表上に顧客の体験を詳細に記入していくと、顧客の目線からニーズやペインポイントを分析できます。

記載内容を特定の製品やサービスに接したときの顧客体験に限定すれば、マーケティングへの活用も可能です。顧客の側に立って製品やサービスの価値を見極めるうえで共感マップは不可欠といえるでしょう。

共感マップの作り方

共感マップの作成手順は、以下の3つです。

  • ターゲットの明確化:ターゲットとする顧客の特徴を詳しく設定する
  • 想定される顧客体験を記入する:「見る」「聞く」「考える」「話す」「痛みを感じる」「欲する」という6つの要素を軸に、想定される顧客体験をマップ上に記入していく。この過程で、ターゲットの条件に合致する人を対象としたインタビューやアンケートを実施するのも有効
  • 記入した内容の分析:記入した内容を分析し、顧客へのアプローチ方法の検討へつなげる

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5.ペインポイントを探すときの注意点

ペインポイントは一般的に、顧客の置かれた状況を俯瞰的にとらえられるカスタマージャーニーに沿って考えます。ペインポイントを探すときの注意点について説明しましょう。

  1. ターゲットではなく「ペルソナ」を設定する
  2. ユーザー視点を持つ
  3. 対価を支払う価値があるかを検討する

①ターゲットではなく「ペルソナ」を設定する

ペインポイントを探す際は、最初に「ペルソナ」を設定しましょう。ペルソナとはターゲット像をより詳細にしたもので、年齢や居住地などの基本情報だけでなく、家族構成や休日の過ごし方なども含めるのです。

ペルソナを絞ると対象となる顧客は少なくなってしまうでしょう。しかし具体的なペインポイントの抽出が可能となるのです。

②ユーザー視点を持つ

製品やサービスに対して最終的にお金を払うかどうかの判断をするのは顧客自身です。よってペインポイントはユーザー視点で探します。

企業が製品やサービスを開発する際は、利便性や新機能、刷新性などに注目する場合が多いでしょう。しかしユーザーは必ずしもそれらを望んでいるとは限りません。そこでユーザーの側に立って、悩みの種であるペインポイントを探します。

③対価を支払う価値があるかを検討する

ペインポイントを探す際、自社の製品やサービスに対価を支払う価値があるかどうか、つまり事業として成立するか、慎重に検討しなくてはなりません。

顧客が「ぜひともお金を払いたい」という価値を持った製品やサービスでなければ、時間と費用をかけて開発しても購買されないからです。

ペインポイントを見出したら、それが「あったら嬉しい」レベルなのか「どうしてもすぐに買いたい」レベルなのかを見極めてから、事業化を検討します。

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6.ペインポイントの活用事例

ペインポイントを探す際、活用事例を参照するのもおすすめです。ここでは大手企業におけるペインポイントの活用事例を解説します。

P&G「ファブリーズ」

ファブリーズは、消費財メーカーであるP&Gの代表的な製品のひとつ。その開発に際しては、ペインポイントの抽出が入念に行われました。

従来、日本の生活習慣では、衣類の臭いが気になった場合にとられる行動は「洗濯」か「我慢」が主流でした。そのためカーテンや布団など洗濯しにくいものは、多少臭いが気になっても我慢する人が多数を占めていたのです。

P&Gではこの「我慢」をペインポイントととらえて製品開発に着手。「臭いのもとにスプレーする」という新しい提案とともにファブリーズの販売を開始した結果、同製品は多くの人に購入されました。

味の素「CookDo(クックドゥ)」

食品メーカーの味の素が「CookDo」を開発した際も、ペインポイントの抽出が行われました。結果、共働き家庭の増加で自宅調理に割ける時間が少なくなったことと、その一方で調理において手を抜いていると思われたくない人が一定数いると判明したのです。

そこで味の素ではこのことをペインポイントとして、CookDoの開発に着手。短時間で調理できるうえ、冷凍食品ほど手を抜いているようには見えない点が話題を呼び、大ヒット製品となりました。

Netflix

「Netflix」は、アメリカのコンテンツ制作と提供を行うNetflixの動画ストリーミングサービスです。かつて自宅で映画を見るにはレンタルビデオ店へ足を運び、映像メディアをレンタルしなければなりませんでした。

しかしこのようなレンタル事業には、返却の手間がかかったり延滞金が発生したりする点でペインポイントが存在していたのです。

もともとオンラインのレンタル事業を行っていたNetflixは、これらを解消したオンライン完結型のストリーミングサービスを提供し、急激に利用者数を伸ばしました。