ノーマライゼーションとは? 意味、定義、基本理念、日本の現状・課題について【バンク-ミケルセン提唱】

高齢者、障害の有無といった年齢や社会的マイノリティといったことに関係なく生活や権利などが保障された環境を作っていく考え方を、ノーマライゼーションといいます。

この考え方は、現代の日本の福祉政策の根本理念として定着しています。

  • ノーマライゼーションの意味や定義
  • 基本理念やわが国における現状
  • 課題

について学び、ノーマライゼーションへの理解を深めていきましょう。

1.ノーマライゼーションとは? 定義や概念、由来

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ノーマライゼーションは福祉用語として定着しつつあり、一般社会ではここにきて徐々に広まりを見せるようになりました。

ここでは、ノーマライゼーションの語源、ノーマライゼーションの考え方、定義や概念といったことについて話を進めます。ノーマライゼーションの新たな側面を発見してください。

【語源】ノーマライゼーションの父、N・E・バンク-ミケルセンが提唱

ノーマライゼーションの提唱者といわれているのはデンマークの社会省にいて知的障害者施設の担当になったニルス・エリク・バンク-ミケルセンです。

障害者の親と共に生活環境の改善に取り組み「1959年法」と呼ばれている法律に、「ノーマライゼーション」という言葉を盛り込んだことがきっかけでした。

ノーマライゼーションという言葉には、知的障害者の親たちの、「障害者でも一般市民と同様の生活や権利が保障されている社会を」という強い願いが込められています。

ノーマライゼーションの考え方

ノーマライゼーションとは、広義で解釈した社会的マイノリティを含めた人たちに一般市民と同じ普通(ノーマル)の生活や権利が保障されるよう、環境を整備することです。

声高に叫ばれる理由として考えられるのは、障害者や社会的マイノリティを取り巻く環境がノーマライゼーションの理念とは間逆の普通でない(アブノーマル)な状況であったからでしょう。

バリアフリーとの違い

ノーマライゼーションと類似した言葉に小さな子供や高齢者、障害者といった社会的弱者の社会参加を妨げている物理的、精神的な障害を取り除くために設備やシステム、制度を整備するバリアフリーという言葉があります。

1974年のバリアフリーに関する国連障害者生活環境専門家会議の報告書で「バリアフリーデザイン」が作成されたことがきっかけとなり、広くこの言葉が知られるようになりました。

物理的バリアフリー 段差にスロープやエレベーターをつける
コミュニケーションのバリアフリー 手話通訳
言語バリアフリー 観光立国が外国人旅行者の利便性を高めることを目指す

このようにさまざまなバリアフリーの概念が構築されています。

ユニバーサルデザインとの違い

ユニバーサルデザインとは、老若男女、障害、国籍、文化、言語、能力などを問わずに快適に利用、使用できる施設や製品などの設計のことで、アメリカのノースカロライナ州立大学デザイン学部のロナルド・メイスによって提唱されました。

ユニバーサルデザインのコンセプトを「できるだけ多くの人が利用可能なデザインにすること」とし、障害者も含めたすべての人たちが使いやすいデザインにすることを最重要課題としました。

現代では、

  • スロープつきの歩道橋といった設備
  • パソコンの画面表示を見やすくする
  • 音声認識で文字表示を可能とする
  • 目印などピクトグラムを用いて表示する

といったような形で幅広い取り組みがなされています。

英語で「障害者」は何と呼ぶ?

英語では、障害者のことを「disabled people」という言い方はしません。英語では、「people with disabilities」と言い、障害を持つ、あるいは障害と共に生きる人という意味の言葉となっています。

また、子供の場合も「children with special needs」、すなわち、特別なニーズのある子供という言葉を使うのが一般的です。障害=マイナスではなく、個性と捉えて広く社会で受け入れようとする姿勢がうかがえます。

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2.ノーマライゼーション誕生の歴史をわかりやすく解説!

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ノーマライゼーションの定義や概念、混同しがちな言葉との違い、障害者とは英語でどう表現しているのか、などを見てきました。

ここでは、デンマークで誕生したノーマライゼーションの背景や歴史について、法律や事例、原理、ゆかりのある人物などを挙げながら、分かりやすく解説していきたいと思います。ぜひ理解を深めてください。

デンマークで、知的障害者の親の会による訴え

ノーマライゼーションが生まれたのは、デンマークです。当時デンマークでは、知的障害者は施設に収容、隔離されるなどして家族と離れ離れの生活を余儀なくされていました。

そして1950年、知的障害者の親の会が「知的障害者の待遇改善運動」を起こし、知的障害者でも家族と一緒に生活する権利があることを主張したのです。

当時社会省にいたニルス・エリク・バンク-ミケルセンがこの運動に参加し、「ノーマライゼーション」という言葉と概念を提唱しました。

1959年法(知的障害者福祉法)成立

ニルス・エリク・バンク-ミケルセンや知的障害者の親の会の熱心な運動は、とうとう国を動かしました。

「知的障害者のために可能な限りノーマルな生活状態に近い生活を創造する」として1959年に知的障害者福祉法が成立し、障害者にも一般市民と同様の生活や権利などが保障されるようになりました。

この法律には「ノーマライゼーション」という言葉も盛り込まれており、運動によって障害者の人権が広く世の中に認められたきっかけとなったのです。

理念が世界へ広まる

その後、ノーマライゼーションの概念は世界に広がります。1960年代、ノーマライゼーションの理念はイギリス、スウェーデンといった北欧諸国、そしてアメリカでも当たり前に受け入れられるようになりました。

スウェーデンでノーマライゼーション活動の中心となっていたベンクト・ニィリエはノーマライゼーションの概念を「社会の主流となっている規範や形態にできるだけ近い、日常生活の条件を知的障害者が得られるようにすること(1969年)」と整理、成文化、原理化しました。

B・ニィリエの8つの原理

ベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションを知的障害者が一般人と同等の生活を送るために必要とされている生活のリズムや環境について8つの原理に整理しています。

生活リズムやサイクルに関する原理
  • 一日のノーマルなリズム
  • 1週間のノーマルなリズム
  • 1年間のノーマルなリズム
  • ライフサイクルにおけるノーマルな体験
経済、環境、自己決定など成文化した原理
  • ノーマルな要求と自己決定の尊重
  • 異性との生活
  • 一般市民と同じ経済水準
  • ノーマルな環境水準

ベンクト・ニィリエは、原理が満たされたときにノーマライゼーションが実現できるとしたのです。

W・ヴォルフェンスベルガーの「社会的役割を実現」

ニルス・エリク・バンク-ミケルセンやベンクト・ニィリエが広めたノーマライゼーションの概念は、W・ヴォルフェンスベルガーによってアメリカで進化を遂げます。

W・ヴォルフェンスベルガーは、アメリカやカナダでノーマライゼーションの概念を紹介し、実際の政策に導入します。

それまで知的障害者の価値が低く捉えられていたことに着眼し、知的障害者の価値そのものを高めるために「知的障害者の社会的役割」の実現と脱施設化を実践しました。

インテグレーション(統合教育)

インテグレーションとは、健常者と障害者が違うということを認識したうえで、同じ場所で教育を受けるという意味の言葉です。

日本の重度障害児は就学できない状況が続き、その多くは自宅や施設で日常を送っていました。1979年に養護学校義務化が決定すると、養護学校に通えるようになりましたがその半面、普通学級での就学を妨げることになったのです。

しかしインテグレーションの考え方が浸透したことで、教員の専門性向上や財源の確保といった課題を抱えながらも、希望校への就学機会が認められるようなケースが増加しています。

メインストリーミング(主流化教育)

メインストリーミングは、ある分野において主流であること、主軸である一群といった意味があります。日本語では主流化教育と訳されることが多いようです。

福祉政策の観点から捉えたメインストリーミングとは、一般的に主流とされている健常児の通う学校に障害児の生活を置くことを意味します。

健常児、障害児といった区別意識を持つことなく、同じ空間で社会生活を営むことを意味しますので、ノーマライゼーションと同じような解釈ができるともいえるでしょう。

インクルージョン(包括教育)

インクルージョンとは、1980年代のアメリカにおいて、障害児教育の分野で「包括教育」として普及した理念です。統合教育と訳される言葉に、インテグレーションがあるのは前述のとおりです。よって、インクルージョンを包括教育と訳すことで両者を区別しています。

インテグレーションとの大きな違いは、障害児が学校で過ごす大半を普通学級で過ごす点です。初等教育や中等教育における多くの時間を普通学級で過ごせる権利を障害児が持つことは、インクルージョンならではの概念です。

3.日本のノーマライゼーション、現状と法律

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ノーマライゼーションの歴史や世界で使われている言葉の意味については理解できたでしょうか。

ここでは、日本のノーマライゼーションを法律的な側面から現状分析してみます。日本には、支援費制度、障害者自立支援法、障害者総合支援法、障害者差別解消法などがありますが、制度の概要や問題点に焦点を当てて考察しましょう。

法改正の経緯

日本の法改正について、下記の内容を見ていきます。

  1. 支援費制度
  2. 障害者自立支援法
  3. 障害者総合支援法
  4. 障害者差別解消法

①支援費制度

支援費制度は2003年4月に施行した、国、都道府県、市町村、サービス提供者、利用者が支え合い、障害者の自己決定や自己選択を尊重する福祉サービスです。

立場 内容
利用者
  • 市町村に支援費の申請をする
  • 都道府県知事から指定された事業者と契約を交わし、サービスの提供を受ける
市町村
  • 利用者からの申請にのっとり支給決定をする
  • 指定事業者に支援費の支払いをする
指定事業者
  • 利用者負担金の支払いを受ける
  • 市町村に支援費の請求を行う

支援費制度の問題点

支援費制度は、21世紀にふさわしい福祉サービスとして紹介されていたのですが財政は実質半年で破綻しました。

地方は予算額をコントロールする役割を担っていた中央へのパイプを持っておらず、一般財源の脆弱さが表面化し、このような結果となってしまったのです。

サービスの利用者数も大幅に増加し、

  • 財源の問題
  • 障害種別ごとの格差
  • サービス水準の地域格差

といった新たな格差問題も生じたことが、支援費制度の問題点だったといえるでしょう。

②障害者自立支援法

障害者自立支援法は「障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から障害者基本法の基本的理念」にのっとり、2006年4月に施行されました。

  • 利用者の声を第一に考えたサービス体系を打ち出す
  • サービス提供主体を市町村に一元化する

などで障害の種類にかかわらない共通の福祉サービスを可能としました。支給決定手続きの明確化や就労支援の強化にも力を入れるとともに国の財政責任を明確化して安定的な財源を確保することを改革の柱としたのです。

障害者自立支援法の問題点

障害者自立支援法は国が財政責任を明確化したことで安定した財源が確保されたように見えたのですが、それは応益負担か一般財源かといった、二者択一の選択に迫られた結果がもたらしたものです。

自立に向けた十分なサービスを障害者が受けられることと予算の安定化の問題は関わりを持ちません。よって取引自体が割に合わないものであったといえるのです。

③障害者総合支援法

障害者自立支援法に変わって2013年4月に施行されたのが障害者総合支援法です。

障がい者制度改革推進本部において行われてきた検討結果を踏まえ、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるため」に、「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するため」の法律として実施されました。

各所、

  • 都道府県 専門性の高い相談支援
  • 地域生活支援事業 地域活動支援センター機能の強化や相談支援、意思疎通支援

このような事柄に取り組みます。

障害者には、

  • 訓練給付
  • 自立支援医療
  • 介護給付

などの自立支援給付が行われる仕組みです。

④障害者差別解消法

2016年4月から、障害者差別解消法がスタートしました。

障害者差別解消法では、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること」が目的として掲げられています。

国や都道府県、役所、会社などの事業者による「不当な差別的取り扱いの禁止」や、負担が重すぎない範囲で障害者の意思に対応する「合理的配慮の提供」といった内容が盛り込まれています。

厚生労働省の取り組み

厚生労働省は、障害者の自立と社会参加を目指してさまざまな取り組みを実践しています。

  • 福祉サービスの選択において、障害者の主体性が尊重されるノーマライゼーションの推進
  • 利用者が事業者と直接契約を行う新しい障害者福祉サービス利用の仕組み作り
  • 支援費制度の対象者ではない精神障害者に対しても安定的なサービスの利用を可能とするよう、抜本的な制度改革
  • 推定人数258万人ともいわれている精神障害者に対しての精神医療・保健・福祉サービスの確保や自立と社会復帰の促進支援
  • 障害者の社会参加を推進するために情報の提供や奉仕員の養成・派遣といった支援
  • 全国障害者スポーツ大会の開催

などです。

共生社会政策と7か年戦略とは?

内閣総理大臣を本部長とする障害者対策推進本部は、1995年12月に「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」を決定しました。

  1. 地域で共に生活するために
  2. 社会的自立を促進するために
  3. バリアフリー化を促進するために
  4. 生活の質の向上を目指して
  5. 安全な暮らしを確保するために
  6. 心のバリアを取り除くために
  7. 我が国にふさわしい国際協力・国際協調の推進

といった項目でそれぞれに具体的な戦略が設定されています。

4.日本のノーマライゼーションの課題

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日本において、ノーマライゼーションの概念は一部では認知されつつありますが、定着するには、

  • 地域に受け入れる制度が整っていない
  • 政治的課題
  • 理念が浸透していない

などまだまだ課題は多いです。

ノーマライゼーションが今後の日本に定着するのか、その未来を左右しかねない課題について見ていきましょう。

脱施設化の問題点

日本の施策における目的は、障害者を施設に収容することでしたがノーマライゼーションの概念が定着しつつある今、健常者と障害者が共に暮らす仕組み、つまり脱施設化を目指す動きが進んでいます

しかし、

  • 障害者を地域で受け入れる制度や仕組みが整っているか
  • 施設を出た後の障害者の社会の受け入れ体制が整っているか

というと難しいのが現状です。

健常者と同じ生活を送ることが困難な障害者も多いため、なかなか施設の外に出ていけない課題もあります。

政治的課題

ノーマライゼーションを推進するには、制度作りや財政的な問題をクリアする必要があります。

つまり政治家の働きがポイントとなる場面が多くありますが、一般的に政治家は、なかなか一票につながらないとされる障害者政策に関して、積極的に取り組んでいるとはいえません。

政治家の意識が障害者に向かなければ、実現可能な具体的政策提言や十分な予算配分といった根幹となる部分を後回しにされてしまう可能性は高いでしょう。

理念が広く一般に理解されていない

ノーマライゼーションが抱えている問題はまだあります。それは一般にノーマライゼーションの理念や概念が浸透していないという現状です。

  • 障害者問題に関わっている
  • 福祉関係の仕事に就いている
  • 会社で人事の仕事に携わっている

という場合、知識や理解があるでしょう。

しかし一般社会でノーマライゼーションといった場合、「言葉を知っているけれど実質のところは…」「初めて聞く言葉」といった反応も少なくないのです。

5.ノーマライゼーションを学ぶ学生たち

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多くの課題を抱えているノーマライゼーションですが、明るい未来も見えています。現在、さまざまな場面でノーマライゼーションを学ぶ機会が設定されており、ノーマライゼーションを学ぶ学生など若い世代も多くいるのです。

最後に、資格取得の勉強を通してノーマライゼーションを学んでいる学生たちをご紹介しましょう。

看護師国家試験(国試)の必修問題

看護師国家試験では、ノーマライゼーションが必修問題に設定されています。障害者の看護に携わることもある看護師には、ノーマライゼーションへの正しい理解と、その実践に対する知識を蓄えることが必要不可欠です。

国家試験に必ず出題されるため、看護師を目指す学生は積極的にノーマライゼーションについて吸収しています。

その他、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士など

介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士などの資格は、障害者に接する場面が想定されるため、資格取得試験にノーマライゼーションの知識や理解を問う問題が出題されているのです。

福祉系の資格を取得するために、ノーマライゼーションの知識を学ぶことは今や常識となっています。