M&A(エムアンドエー)とは? 歴史や背景、特徴、メリットやデメリット、流れやステップについて

M&Aは、企業の経営戦略を実現する有効な手段で、適切に実施できれば、企業が抱える経営課題を解決し、大きな成果を挙げることが可能です。

今回は、

  • M&Aが生まれた背景や歴史
  • M&Aの特徴や手法
  • M&Aを実行するメリット・デメリット
  • M&Aを進める基本的なプロセス

などを紹介します。M&Aの検討前に主な内容を把握しておきましょう。

1.M&A(エムアンドエー)とは?

M&Aとは企業間の合併や買収のこと。M&Aと聞いて「敵対的買収」を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、M&Aという名称を構成する単語の意味通りに、M&Aにはいくつか種類があるのです。まずは用語の意味をしっかり理解しましょう。

M&Aという言葉の意味

M&Aとは「Merger and Acquisition」の略語で、企業の「合併」と「買収」を意味します。

Mergerの意味

「Merger」は2つ以上のもの(複数)がまとまるという意味で、日本語では「合併」や「合同」と訳されます。

Acquisitionの意味

「Acquisition」は価値あるものを手に入れるという意味で、日本語では「取得」「獲得」「習得」と訳されます。

M&Aには、買い手側には事業拡大のメリットが、売り手側には経営課題の解決と事業継続のメリットがあります

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2.M&Aの歴史

M&Aの歴史を振り返ると理解が深まります。日本とアメリカを比較しながら現在までの変遷を把握しましょう。

日本におけるM&A

日本におけるM&Aは、19世紀末頃の不況下に始まり、20世紀中頃にかけて財閥による再編が進みます。1930年代にM&Aは最盛期を迎え大型合併が加速しますが、終戦後の財閥解体により下火になりました。

80年代になるとバブルを背景に海外企業のM&Aが増加し、バブル崩壊後は事業再編のためのM&Aが進んだのす。2005年以降はIT企業によるM&Aが目立ち始め、現在は事業継承型M&Aや国際競争力を高めるためのクロスボーダーM&Aが増えています。

アメリカにおけるM&A

アメリカでM&Aが始まったのは19世紀とされています。1960~70年代にはコングロマリット化を目的とした買収が進み、80年代にはLBOなどの手法が登場してM&Aが活発化しました。

90年代に入るとマネーゲームとしてのM&Aは収束し、事業戦略上のM&Aが活発になります。そしてITブームに乗って2000年代にピークを迎えますが、その後下火となり、2005年頃から再び活発化して近年は100兆円規模で推移しているのです。

M&Aは近年のブームではなく長い歴史を経て現在に至っています。M&Aを進める際は、その歴史からメリット・デメリットを学ぶことが大切です

3.M&Aが広まった背景、原因

M&Aは、経営上の課題を解決する戦略的手段として有効なケースが多いため、日本では、国内市場の縮小化や後継者不足、人材難によるスキル・リソース不足を背景に近年急増しています。

M&Aを行うと、買い手側は人材やノウハウなどの経営資源を手に入れて新規事業の立ち上げや事業拡大に活用でき、売り手側は蓄積したナレッジや技術を失うことなく事業を存続できるのです。

後継者不足が深刻な中小企業では事業承継M&Aが、海外へ活路を見出す企業ではクロスボーダーM&Aが増加しています

4.M&Aの特徴、タイプ

M&Aの手法(スキーム)にはさまざまな種類があります。合併と買収を意味する狭義のM&Aから広義のM&Aまで、基本的な手法を説明しましょう。

合併

複数の会社を1つに統合する手法を合併といい、合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。

吸収合併:1つの法人格を残してそれ以外を消滅させ、消滅する会社(消滅会社)のすべての権利(資産)・義務(負債)などを残った会社(存続会社)が承継する

新設合併:新たな会社を設立して、合併する全消滅会社のすべての権利・義務などを新設会社に承継させる

買収

買収の手法は3つに分かれます。

  1. 事業譲渡
  2. 株式取得
  3. 会社分割

それぞれの特徴は下記の通りです。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の全事業、もしくは一部の事業を第三者に譲渡すること。「事業」には有形資産だけでなく、人材、債務、ブランド、ノウハウ、顧客リストなどの無形資産も含まれます。

事業譲渡によるメリットは、買い手側は不要な資産や帳簿外の債務を引き継ぐ恐れがなく、売り手側は不採算事業だけを売却して優先順位の高い事業に集中できること。一方、デメリットは会社の規模が大きくなるほど手続きが煩雑で時間がかかることなどです。

株式取得

保有株式を第三者へ譲渡することを株式取得、または株式譲渡といいます。手続きが簡便なため、中小企業のM&Aではよく見られる手法です。

株式を取得する方法には、「相対取引」「市場買付」「TOB(公開買付)」「株式交換・移転」など。また新株取得の方法として、「新株予約権の行使」や「第三者割当増資」などがあります。

株式取得にあたっては、株主が個人の場合には所得税と住民税が、法人の場合には法人税がかかるので注意しましょう。

会社分割

会社分割には「新設分割」と「吸収分割」の2つの手法があります。

  • 新設分割:会社分割で新設会社をつくり、そこに事業などを承継させる手法で、分社化して行う場合や、複数企業が合弁会社をつくって行う場合などがある
  • 吸収分割:会社分割により既存の会社に事業等を継承させる手法で、事業を引き継ぐ承継会社が株式を取得して資本参加する場合や、事業譲渡のような形で現金を支払って行う場合などがある

提携など

M&Aにおける提携にはさまざまな種類があります。提携に関連する用語ととともにそれぞれの提携の形を見ていきましょう。

提携

提携(アライアンス)とは、複数の企業が資金・技術・人材などの経営資源を出し合い、共同で事業を行うこと。提携の手法には、下記のようなものがあります。

  • 販売店や代理店で販売業務を行う「販売提携」
  • 生産業務を他社に委託する「生産提携・OEM提携」
  • ライセンス契約などにより技術や人材を活用して行う「共同開発・技術提携」

いずれの場合にも、複数の企業が強みを持ち合うことで相乗効果を得て競争力が高まるといったメリットがあります。なお、業務提携に資本の移動は伴いません。

委託

委託とは、M&A実務を開始するために、M&Aアドバイザリーとの提携仲介契約を締結すること。M&Aアドバイザリーとの契約にあたり、以下のような内容を検討します。

  • M&Aアドバイザリーはどういう役割を果たすべきか
  • 実務(事業や経営の委託)に関する業務の内容
  • M&A実務遂行にかかる費用
  • 契約期間

契約締結前までに上記に関する疑問点をクリアにしておく必要があります。特に「M&A実務遂行にかかる費用」の確認は重要でしょう。

M&Aアドバイザリーごとに手数料(費用)が異なるため、場合によっては大きなコストがかかることも。後々後悔しないためにも、任せっきりで契約を締結しないよう気を付けましょう。

共同事業

共同事業とは、複数の企業が共同で行う事業のことで、例として、事業協同組合などが挙げられます。事業協同組合が行っている共同事業にはさまざまな種類があります。いくつか抜粋して以下に紹介しましょう。

  • 共同生産・加工事業
  • 人材養成事業
  • 共同受注事業
  • 共同販売事業
  • 福利厚生事業
  • 研究開発事業

上記以外にも、時代や環境の変化に対応して生まれた事業もあります。近年では異業種の企業が結び付いてお互いのノウハウや技術などを提供し合い、新製品を研究したり地域資源を活かしたビジネスチャンスの創出へつなげたりする事業も生まれているのです。

合弁会社設立

合弁会社(合弁企業)とは、複数の企業が資本を出し合い、共同で事業を行う会社のこと。M&A用語としてジョイント・ベンチャーといわれることもあります。

合弁会社の設立方法は2種類あります。

  1. 複数の企業が共同出資して新しい会社を設立する方法
  2. 既存企業に共同で資本参加して、既存の株主・経営陣と共に経営していく方法

一般的には前者が多く、日本市場に参入したい外国資本との共同出資で運営されます。

資本参加

資本参加は広義のM&Aスキームのひとつで、株式譲渡などにより他社の株式を取得し、議決権を得て経営に介入する方法です。

資本参加を受ける企業は、対価として一部株式を渡すことで、会社や事業を売却せずに資本提供を得られます。

資本参加は、合併・買収と提携の中間に位置する手法で、合併・買収のように独立性を失わず、提携よりも関係性を強化しながら効率的に成長を図れます。ただし、出資比率によってはリスクが生じる場合もあるので注意が必要です。

M&Aを検討する際は、1つ1つのスキームをよく理解して、自社の課題を戦略的に解決できるものを選びましょう

5.M&Aのメリット

M&Aは経営課題を解決する有効な手段のひとつです。適切に行うと、売却側(譲渡側)と買収側(譲受側)の双方に大きな利益をもたらします。

売り手のメリット

M&Aによって売り手側にもたらされる主なメリットから、下記を説明します。

  1. 創業者利潤
  2. 後継者確保
  3. 企業の発展

①創業者利潤

中小企業(オーナー企業)におけるM&Aで事業のすべてを譲渡する場合、手続きが簡単な株式譲渡の手法が多く用いられます。

株式譲渡では、現在の株式価額に将来の超過収益力(潜在的な企業の価値)を上乗せした評価が一般的なため、他のスキームよりも大きな創業者利潤(創業者利益)を確保できるのです。

②後継者確保

経営者の高齢化や人手不足などを背景に後継者不足の問題を抱える中小企業では、M&Aを用いて最適な他社へ譲渡すると後継者を確保できます。後継者が見つかれば事業の存続を見込める上、経営にあまり詳しくない親族に承継するよりもうまくいきやすいです。

また廃業するより、多くの資金を得られる場合があるのも利点といえるでしょう。

③企業の発展

M&Aにより後継者問題が解決すれば、長年かけて蓄積してきた技術やノウハウを無駄にすることなく、引き続き事業に活用できます。

また譲渡先から得た新たなリソースによって、さらなる発展も望めるでしょう。従業員の雇用を確保できたり、取引先に安心感を与えられることも大きなメリットでしょう。

買い手のメリット

M&Aを行うことで得られる買い手側の主なメリットから、事業やシェアの拡大、コストの削減を説明します。

  1. 事業やシェアの拡大
  2. コストの削減

①事業やシェアの拡大

買い手側は、売り手の事業を承継することで、必要な技術やノウハウ、ナレッジなどを比較的短期間で取得できるため、時間やコストをかけることなく、スピーディーに事業の拡大や多角化を図れるのです。競合に差をつけてシェアの拡大も見込めるでしょう。

②コストの削減

仕入れ先や販売先のM&Aでは仕入れコストが下がりますし、顧客を共有できる企業のM&Aではコストをかけずに販売先が確保できます。技術などを活用できる企業のM&Aでは開発費を抑えられるでしょう。事業規模が大きくなるため、スケールメリットも得られます。

戦略的ツールであるM&Aは、企業が抱える課題を解決するとともにきなメリットをもたらし、企業の存続と発展を実現します

6.M&Aのデメリット、問題点、課題

M&Aにはメリットがたくさんある一方で、デメリットもあります。売り手と買い手の立場から、デメリットを見ていきましょう。

売り手のデメリット

M&Aによって売り手側にもたらされるデメリットのうち、「希望価格との相違」「労働環境の変化」について説明します。

  1. 希望価格との相違
  2. 労働環境の変化

①希望価格との相違

事業や株式を希望価格で売れるとは限りません。買い手との間で希望する価格に相違が生じた場合、想定通りに譲渡できない可能性も。最高のタイミングを見極めて、最適な相手に譲渡することがM&Aを成功させるコツです。

M&Aに詳しい専門のアドバイザリーをパートナーに迎え、アドバイスをもらいながら売り時を捉えましょう。

②労働環境の変化

事業の売却により、労働環境が変化することも。労働条件や企業風土が大きく変われば、従業員と会社との間にミスマッチが起こることもあるでしょう。

またこれまでの担当者が変わるため、契約条件が変更されたり契約自体を見直されたりするなど、取引先にも影響を及ぼす可能性があることも想定しておきましょう。

買い手のデメリット

M&Aによって買い手側にもたらされるデメリットのうち、「債務の発生」「従業員からの反発」について説明します。

  1. 債務の発生
  2. 従業員からの反発

①債務の発生

買収後に、予想していなかった簿外債務が発覚することも。これを避けるため一般的に、譲受を実行する前にデューデリジェンス(買収監査)を行います。賃借対照表上に記載のない債務を見落とさないためにも、財務の観点からしっかりリスク管理を行いましょう。

②従業員からの反発

社風の異なる企業と融合することで労働環境が変わり、買い手側と売り手側の従業員間で軋轢が生まれることも。社員同士で反発すれば、パフォーマンスが下がり、モチベーションが低下した社員が辞職することも考えられます。

これを避けるためには、M&Aの実行前後で交流を深め、信頼関係を築けるよう取り計らいましょう。

M&Aの良い面だけでなくデメリットも確認して、自社が求めるM&Aのスキームを見極めることが大事です

7.M&Aの流れ、ステップ

M&Aを成功させるには、実行前に基本的な流れをつかんでおくことが大事です。進行の手順を1つずつ見ていきましょう。

STEP.1
検討
何を目的にM&Aを行うのか、M&Aによって何を実現したいのか、どんな企業とM&Aを進めたいかを明確にします。M&Aの目的は経営戦略に合っている必要があるため、それについても確認した上で、M&Aのスキームを検討するのです。

中小企業同士では多くの場合、株式譲渡や事業譲渡が選ばれますが、状況によっては他のスキームが適している場合も。信頼できる専門家・仲介会社などと契約して進めると的確なアドバイスを得られます。

STEP.2
リサーチ

M&Aの候補企業を探すため、多角的に調査してリスト化をします。まず候補先を絞るために大まかに設定した条件に合致する企業、シナジー効果の高そうな企業をリストアップしたロングリストを作成するのです。

続いて、ロングリストから自社の経営戦略や目的に合いそうな企業をピックアップしてM&Aの候補先を綿密に絞り込んだショートリストをつくります。リスト内企業の業務内容、市場シェア、売上高のほか、提携によるメリット・デメリットなども調査します。 

STEP.3
資料に関する確認

情報漏洩のリスクを避けるためにも、M&Aはできるだけ秘密裏に進めます。しかしある程度具体的になった段階で、関係者に情報開示(ディスクローズ)して同意を得る必要があるのです。

特にオーナー企業の場合、株式を保有する親族などに早めに開示・同意を得て、その上で、買い手側に経営情報などを公開してもよいかを確認します。幹部社員に対しては交渉の最終段階で開示して、協力を仰ぎます。また同意を得ることが難しそうな株主に対しては、事前に対策を講じるのです。

STEP.4
候補先に打診

仲介会社などを通して、業種や業務内容、財務状況、社員数、譲渡理由などを記載したノンネームシート(一次情報)を候補先に提出し、M&Aについて打診を行います。ノンネームシートを作成する際は、企業名が特定されないように気を付けなければなりません。

M&Aを成功させるには、情報漏洩への注意が重要です。ノンネームシートを受け取った側は、相手先が経済的価値のある会社か、思い描く経営戦略に合致しているかどうかなどを確認してM&Aを検討します。 

STEP.5
合意形成に向けた話し合い

候補先が興味を示したら、NDA(秘密保持契約)を締結して、会社名や財務内容などの重要情報を渡します。開示情報を見て経営戦略に合わない場合、断られることもあります。

双方のM&Aの意向がある程度固まったら、経営陣同士のトップ面談を行い、価額を含めて話し合うのです。トップ面談の場では、双方の経営方針に関することなどさまざまな質疑をし、合意形成に向けて面談を重ねて、疑問や不明点をクリアにしていきます。 

STEP.6
基本合意契約書の締結

M&Aを進める場合、買い手側は売り手側に買収方法、買収価額などの提案条件が記載された意向表明書を提出します。売り手側がこの意向表明書を確認し、合意に達したら、基本合意契約書を締結するのです。

M&Aでは買収価格をはじめ利益相反が起こる場合も。リスクをなるべく避けるためにも、交渉期間や独占交渉権に関する内容なども契約書に盛り込むのが一般的です。独占交渉権を付与した後に、売り手企業が他の企業と交渉することはできません。 

STEP.7
監査

基本合意契約書の締結後、最終譲渡契約書を交わす前の大事なステップとして買い手側は、財務調査・法務調査を実施してリスクを洗い出すデューデリジェンス(買収監査)を行います。

買い手側は、はデューデリジェンスのレポートを確認して、このままM&Aを行うか、条件面等の再交渉を行うかなどを判断するのです。疑問点などが解消され、買い手側が問題ないと判断した場合、最終条件の交渉に移行します。

STEP.8
譲渡契約書の締結

最終条件の交渉では、基本合意契約書の内容とデューデリジェンスの結果を見比べて、差異があった部分を中心に話し合います。

細かい調整を含めて一連の作業が終了し、取締役会や株主総会で承認を得て、買い手・売り手共に最終的にM&Aを実行することが決定したら、いよいよ最終譲渡契約書の締結です。

最終譲渡契約書を締結する段階で、M&A実行後の運営体制などPMI(統合作業)について話し合い、意見をすり合わせておくことで、スムーズに統合できます。 

STEP.9
譲渡決済

最終譲渡契約書の締結後、譲渡に必要な作業をすべて終えるクロージングのステップに進みます。買い手と売り手でクロージング時に行われる内容は異なります。

買い手側は、売り手側に譲渡対価を支払い、売り手側は、買い手側に株式や会社代表印などを引き渡すのです。オーナー企業などでは、個人用に購入した車などの買い取り作業などが発生することも。これらクロージング作業の終了をもって、M&Aは完了します。 

M&Aが成立するまでのプロセスを知って理解を深めると、より戦略的な視点からM&Aを検討できるようになります