LLP(有限責任事業組合)とは? LLC(合同会社)との違い・株式会社との違い

「LLP」とは全員が有限責任を持つ自由社団のことで、有限責任事業組合(Limited Liability Partnership)の略称です。この記事では、LLPについて解説します。

1.LLP(有限責任事業組合)とは?

LLPとは、構成員全員が平等に有限責任を負い、権限やルール、配当などを自由に変えられる自由な社団のこと。2005年に経済産業省より定義付けられた新しい組合制度で、日本語では「有限責任事業組合」といいます。

合同会社と似た事業形態ですが、LLPは法人ではありません。

LLPが誕生した背景

2005年経済産業省がLLP法を制定した背景には、海外でLLPやLLC(有限責任会社)による共同出資、共同経営といった合弁企業(ジョイント・ベンチャー)の流行があると考えられます。

当時の海外では、新規立ち上げ株式会社数にせまるほど多数のLLPが立ち上げられていました。国内でも企業同士の協力によって新しいアイデアやサービスが生まれる社団づくりのため、日本独自のLLP法が制定されたのです。

LLP法とは?

LLP法とは、日本版のLLPに関する法律で、正式名称は「有限責任事業組合契約に関する法律」。目的はジョイント・ベンチャーの推進です。2005年5月27日に成立し、2カ月後の8月1日に施行。これにより日本でもLLPを設立できるようになりました。

LLPは民法組合の特例として定義付けられ、以下の3つの特徴があります。

  1. 出資者全員の有限責任
  2. 内部自治の徹底
  3. 構成員課税の適用

LLPとは、構成員全員が平等に有限責任を負い、権限やルール、配当などを自由に変えられる自由な社団のこと。日本語では「有限責任事業組合」といいます

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2.LLPの特徴

LLPには有限責任や内部自治原則、構成員課税など株式会社にはない特徴があります。類似される「LLC」や「JV」と混同される場合も多いので、LLPならではの制度や特徴について知っておきましょう。ここではLLPの特徴について説明します。

  1. 有限責任
  2. 内部自治原則
  3. 構成員課税

①有限責任

LLPの組合員は、その出資額に応じた有限責任を負います。出資すれば個人や法人を問わずにLLPの組合員になれるうえ、組合員は出資額以上のリスクを負いません。

たとえばその事業が大きな負債を負ったとしても、組合員が返済したり責任を負ったりする必要がないのです。出資者はベンチャーやスタートアップといったリスクが生じやすい事業へ参加しやすくなります。

②内部自治原則

LLPでは内部自治原則がとられており、利益や権限が出資額に関係なく自由に配分を決定できます。出資額による配分ではなく、貢献度や労働負荷などで配分を決めるのも可能です。

原則は「総組合員の同意を得ること」とされていますが、組合契約書に同意を必要としないと明記しておけば同意も不要となります。ただし重要な財産の処分や分与、あるいは多額の借財などに関しては総組合員の同意が必要です。

③構成員課税

LLPは法人格を持っていないため、利益に対する課税が組合員へ直接行われる「パススルー課税」が適用されます。法人格を有している団体では一般的に、組織に対して法人税が課税され、出資者には所得税が課税されるのです。

この場合、組織と出資者への二重課税が生じます。一方LLPでは、組合員が法人であれば法人税、個人であれば所得税を課税するのです。LLP自体には課税されないため、節税効果があるといわれています。

LLPの特徴は、「有限責任」「内部自治原則」「構成員課税」の3つです。どれも株式会社にはない特徴といえます

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3.LLPが活用される分野と組合員になる要件

LLPはどういった分野で活用されているのでしょうか。組合員になる要件とともに解説します。

LLPが活用される分野

法人と個人、分野や企業規模を超えて共同事業を行う際に活用されます。よく見られるのが、「大企業同士の共同開発」「ベンチャー企業と中小企業の共同生産」「ベンチャー企業と個人の共同事業」「起業家が共同出資して創業する団体」など。

活用分野では、農業や街づくり、ITやソフトウェア開発、燃料電池や人工衛星などが検討されています。

組合員になる要件

LLPでは組合員になるための要件を限定しておらず、法人と個人のどちらでも組合員になれます。なお法人格をもたない民法上の組合はLLPの組合員に認められません。民法法人で組合員になる際は、一人の個人を職務執行者に設定することが必要です。

非居住者や外国法人であっても組合員になれます。ただし組合員全員が非居住者や外国法人であることは認められず、ひとり以上の居住者か内国法人が必要です。

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4.LLPと類似ワードの違い

続いてLLPと混同される類似ワードについて説明します。LLCやJVとの違いや、馴染み深い株式会社との違いをおさえておくとLLCへの理解が深まるでしょう。

  1. 「LLC」との違い
  2. 「JV」との違い
  3. 「株式会社」との違い

①「LLC(合同会社)」との違い

LLC(Limited Liability Company)とは、合同会社のこと。2006年5月から会社法で認められるようになった比較的新しい会社形態でAmazonやGoogle、Apple Japanなども合同会社です。

組合員課税や有限責任などの特徴を持ち、法人格もあります。そのため所得課税はLLCにされるのです。会社設立時のコストが安く、組合員課税による節税効果も期待できます。

②「JV」との違い

JV(ジョイント・ベンチャー)は、個人や法人などが共同出資して事業を立ち上げて出資者同士がそれぞれ設備や資金、人材や能力を出し合うもので、合弁企業とも呼ばれます。LLPの特徴をもった事業形態です。

新しい会社を立ち上げる場合が多いものの、既存企業の一部を買収して共同経営する場合もあるようです。JVの例では、ビックカメラとユニクロの共同店舗である「ビックロ」が挙げられます。

③「株式会社」との違い

株式会社は企業が発行する株式によって資金を調達する会社です。出資者が企業の株式を購入し、企業はその代金を元手にして事業活動を実施します。業績が上がって利益が出たら、株主へ配当を還元する仕組みです。

このとき出資者の利益率は、出資額に比例して配当されます。株式会社は法人格を有しているので所得課税は企業に課税され、業務を行う際や利益の配当には株主総会や取締役会が必須です。

LLPと混同されやすい「LLC」「JV」「株式会社」それぞれとの違いをおさえておくとLLCへの理解が深まるでしょう

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5.LLPの活用事例

LLPが日本に導入されてからどのように活用されてきたのでしょうか。あらゆる分野で活用できるLLPは、新しい事業を始める際、選択肢のひとつとして注目されています。ここではLLPが実際に活用された例を見ていきましょう。

NTT-グリーン有限責任事業組合

NTT-グリーン有限責任事業組合では、NTTグループが排出するCO2削減を目指して、太陽光といった自然エネルギーによる電力発電を行っています。

全国約170カ所にも及ぶLLPやNTT施設などの拠点で、屋上や施設内などに太陽光パネルによる太陽光発電システムを導入しました。同組合では、NTTグループのサービスを通じて社会全体のCO2排出を削減するというのも目的としています。

アベニールポルテ有限責任事業組合

アベニールポルテ有限責任事業組合では、「趣味を仕事にしたい」「将来お店を持ちたい」と思っている女性に、実現の場を提供しています。

百貨店やイベント会場でそれぞれの商品やサービスが販売できる機会を設けて、夢へのステップアップを手助けしているのです。

さまざまな分野のサービスが一般向けに公開できるよう、フラワーアレンジメントや洋菓子販売、公開講座などのイベントでブースを設けたり店舗を用意したりしています。

uki Partners 有限責任事業組合

uki Partners 有限責任事業組合は、個人クリエイターやアニメ制作の中小企業が出資するLLPです。アニメの制作管理やプロモーション、販売までをプロデュースしています。

日本のアニメーションは、世界からも高い評価を受ける日本文化のひとつ。しかしアニメクリエイターにはアイデアを発表する場が与えられていません。

中小企業であるアニメ制作会社は制作委員会へ参加できず、やはり業界へ貢献する機会を得られずにいます。uki Partners有限責任事業組合では、優秀なスキルやアイデアから生まれたコンテンツを世界に配信することを目的としているのです。

LLPは、「Co2排出の削減」「夢を持つ女性の手助け」「アニメコンテンツの配信」とさまざまな形で活用されています

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6.LLPのメリット

LLPを株式会社と比較すると、設立や運営に関するメリットが多いといえます。費用や設立期間、決算などLLPならではのメリットについて説明しましょう。

  1. 設立する費用が安い
  2. 設立までの期間が短い
  3. 組合員の任期がない
  4. 決算公告義務がない

①設立する費用が安い

株式会社を設立する際には25万円の法定費用が発生します。しかしLLPの法定費用は6万円です。代表印を作成しても、10万円以内に抑えられるでしょう。

税金も株式会社では法人への課税となるので、赤字でも年額最低7万円の税金がかかります。対してLLPは個人への課税となるため、団体としての税金領収は0円です。

②設立までの期間が短い

LLPの設立にかかる期間はおおむね10日程度。株式会社であれば20日程度必要なため、LLPの設立期間は半分ほどです。申請に不備がなければ、申請から1週間ほどで立ち上げられるでしょう。

起案から実際に業務を開始するまでの期間が短くて済むので、タイミングを逃さずに新規事業を始動できます。

③組合員の任期がない

LLPは組合員で構成された社団であるため、定めなくてはならない役職や任期がありません。株式会社では代表取締役や取締役などの役職を任命しておく必要があり、その任期は原則2年間と定められています。

次の代表や任期を設定する必要がないので、組合員の入れ替えや人事業務の手間がかからず人事的労力を減らせるでしょう。

④決算公告義務がない

LLPでは決算公告をする必要がありません。株式会社の経営者は、決算公告義務(出資者である株主に対して会社の状況を報告する)があります。今後の出資額などに影響するので、株式会社における決算公告は重要な役割を担っています。

一方LLPは組合員が出資しているため、多くの手間と時間が必要な決算公告をしなくてよいのです。

LLPならではのメリットは、「設立する費用が安い」「設立までの期間が短い」「組合員の任期がない」「決算公告義務がない」の4つとなります

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7.LLPのデメリット

LLPにもデメリットがあります。どのような内容か見ていきましょう。

  1. 法人格ではない
  2. 株式会社に組織変更できない

①法人格ではない

法人格がない点は、ときにデメリットともなりえます。まずLLP名義では契約が締結できず、財産を保有できません。

また法人税がかからず節税できる点はメリットですが、利益が大きくなる分組合員への税金も大きくなってしまうのです。法人の場合の税率は一律。利益率によっては、LLPより法人団体のほうがよい場合もあります。

②株式会社に組織変更できない

あとから法人格のある組織へ変更できません。「業績が大きくなったから途中で株式会社へと組織変更する」のは認められていないのです。株式会社へと組織変更をする場合、一旦LLPを解散して新しく株式会社として登記しなければなりません。

上記に述べた税率の兼ね合いからも一定以上の利益率が見込まれた場合、解散して法人化するほうがよいでしょう。

LLPのデメリットは、「法人格ではない」「株式会社に組織変更できない」の2つです

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8.LLPの登記方法

LLP登記には、株式会社と同様に法務局への申請が必要です。しかし登記を申請する前に組合員との契約といった事柄を行わなければなりません。ほかにも税務や社会保険に関係する届出が必要です。

ここではLLPを登記する方法と流れについて解説します。

設立準備

LPP設立の準備として、組合の立ち上げ発起人が「設立基本事項」を決めていきます。内容は下記のとおりです。

  • 所在地
  • 事業内容
  • 目的
  • 組合の存続期間
  • 組合員の出資額
  • 組合員の人数
  • 組合員の条件
  • 職務執行者
  • 事業団体名称
  • 事業年度

なおLPPの名称には、最初か最後に「有限責任事業組合」といった名称を入れなければなりません。

契約書作成

次に組合員と交わす組合契約書を作成します。LLPの場合は組合員それぞれと契約を交わしていくため、組合員の数分を用意しておきましょう。

また契約書には絶対的記載事項(必ず明記しておかなければいけない事項)と、任意的記載事項(必要に応じて記載する事項)があります。絶対的記載事項は以下の8つです。

  • 組合の名称
  • 事業目的
  • 組合事務所の所在地
  • 組合員の氏名と住所
  • 組合契約の効力発生日
  • LLPの存続期間
  • 組合員の出資の目的と金額
  • 組合の事業年度

出資金の振り込み

組織を登記するためには、登記費用とは別に出資金が必要です。契約書の作成後に、LLP設立にあたっての出資金を払います。振り込みは組合員の口座で行うものの、現金出資の場合は払込証明書を作成しましょう。

金銭以外では不動産や債権などでの出資も可能です。この場合は財産引継書を作成する必要があります。

各種届出

必要書類を揃えて法務局に申請を行い、不備がなければ2週間足らずで登記完了です。しかし登記完了で手続きが終わるわけではありません。

登記完了後も各種届出が必要です。登記謄本や印鑑証明を取得できるようになるので、税務関係や保険関係について届け出ましょう。

法定3帳簿の作成と業態によっては許認可等申請手続きも必要です。従業員を5人以上雇う場合、社会保険加入手続きも行わなくてはなりません。

LLPを登記する際の方法と流れは、「設立準備」「契約書作成」「出資金の振り込み」「各種届出」です。時間や手間がかかるのであらかじめ準備しておきましょう