時短勤務(短時間勤務)とは|制度の内容や勤務時間、注意点は?

時短勤務とは、フルタイムよりも勤務時間を短くする「短時間勤務制度」のことです。近年、働き方の多様化によって注目を集めています。時短勤務は、どのような特徴などを持つのでしょうか。

1.時短勤務とは?

時短勤務とは、一日のうちに定められた労働時間より短く働く勤務形態のこと。たとえば、7.5~8時間の所定労働時間を6時間に短縮する、出勤・退勤時間の変更、フレックスタイム制の導入などは、時短勤務の典型例です。

2009年の育児・介護休業法の改正によって、各事業主には時短勤務の導入が義務付けられました。

時短勤務には、所定労働時間の短縮だけでなく出勤・退勤時間の変更やフレックスタイム制の導入なども含まれます

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2.時短勤務の目的

時短勤務は家庭と仕事を両立できる制度づくりに向けて導入されたものです。詳しくいうと、「就労」と「結婚・出産・子育て」の二者択一構造が出来上がっていた社会において生まれた「少子化問題」対策のために、時短勤務制度が設けられました。

昨今、育児や介護と仕事の両立といったワークライフバランスが叫ばれるようになり、企業に時短勤務を導入する仕組みが進められたのです。

近年、働く上でワークライフバランスを重視する人が増えています。時短勤務に代表される制度を整えることで、人材確保につながるでしょう

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3.時短勤務と改正育児・介護休業法

ここでは時短勤務と改正育児・介護休業法の詳細について見ていきます。

時短勤務の義務化

時短勤務は、平成24年7月から全面施行されました。対象は平成22年6月30日時点で従業員数が100人以下だった企業で、101人以上の企業に関しては平成22年6月から施行されました。改正育児・介護休業法では以下のような規定を適用させる必要があります。

  • 短時間勤務制度の義務化
  • 介護休暇の創設
  • 子の看護休暇の拡大
  • 産後8週間以内の父親の育休取得促進

使用者の義務

改正育児・介護休業法では、以下3つの制度の導入が事業主(使用者)に義務付けられました。

  1. 短時間勤務制度:3歳に満たない子を養育する従業員が、1日原則6時間(5時間45分から6時間まで)の時短勤務を利用できるよう制度を整える
  2. 所定外労働の制限:所定労働時間を超える残業をさせてはいけない
  3. 介護休暇:介護の必要がある日に仕事を休めるようにする制度を整える

時短勤務とは、子育てや介護などの理由から、通常の勤務時間で働くことが難しい人たちを支えるための制度です

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4.時短勤務の導入状況

平成30年7月に厚生労働省が公開した「平成29年度雇用均等基本調査」によれば育児のための「短時間勤務制度」を導入している事業所は66.4%。平成27年は57.5%、平成28年では60.8%だったため、年々増加傾向にあると分かります。

最長利用可能期間は、3歳未満が最も高い57.0%(平成28年度は57.8%)、小学校就学の始期に達するまでが18.9%(同20.9%)、小学校就学までおよび入学以降が39.0%(同38.2%)でした。

介護のために短時間勤務制度を導入している事業所は、同調査によると61.6%(平成26年度は57.5%)でした

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5.時短勤務の特徴

ここではより具体的に時短勤務の特徴について見ていきましょう。

時短勤務の対象者

時短勤務の対象者は、以下のすべてに該当する労働者です。

  • 3歳に満たない子を養育する労働者
  • 1日の所定労働時間が6時間以下ではない労働者
  • 日々雇用される者ではない労働者
  • 短時間勤務制度が適用される期間に、現に育児休業をしていない
  • 労使協定(労働者と事業主との間で交わされた協定)により適用除外とされた労働者でない

時短勤務の対象外となる従業員

対して以下の労働者は、時短勤務適用の対象外となります。

  • 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 業務の性質、実施体制に照らして時短勤務を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

そもそも時短勤務とは、働きながらの子育てを容易にするための措置。そのため、できる限り適用対象となるよう努めることが求められているのです。

対象外となる従業員への措置

客観的に見て時短勤務の導入が困難だと認められた労働者に対しても、企業は以下のような代替措置を取らなければなりません。

フレックスタイム制度

フレックスタイム制度とは、原則的に労働者の自由な裁量で出勤・退勤時間を決定できる制度のこと。

多くの企業は、必ず会社にいなければならない時間を「コアタイム」とし、労働者はコアタイム中に勤務できるよう出社や退社の時間を調整しています。しかし必ずしもコアタイムを設けなければならないわけではありません。

時刻の調整

9時から18時の勤務を対象者のみ10時から19時にずらす、といった措置を「時差出勤制度」といいます。

この場合、1日の所定労働時間は変わりませんが、出勤・退勤時間を調節することで保育園の送り迎えや子どもの登下校時に出勤・退勤を合わせることができます。事業主は、これらの制度があることを、対象となる労働者に知らせる努力をしなければなりません。

事業所内に保育施設を設ける

代替措置には事業所内保育施設の設置や運営、これに準ずる便宜の供与も含まれています。たとえば、託児所やそれに準ずる制度を企業負担で用意するといった措置です。

会社の中に託児所を設ける、従業員にベビーシッターを雇うことを勧めるなどし、その上でその費用を会社が負担するという措置がこれに該当します。これらに加えて時短勤務が可能な部署に一時的に異動するといった措置も可能です。

時短勤務を利用できない人を育休明けにいきなり通常勤務にするのではなく、これらの代替措置によって、働き方の選択肢を増やしてみましょう

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6.時短勤務のメリット

では、時短勤務を取り入れるメリットを見ていきます。

時間に余裕が生まれる

時短勤務によって生活に余裕が生まれやすくなり、ワークライフバランスが実現しやすくなります。

病院や健康センター、公共施設など業務時間が17時までといった機関は少なくありません。もし、16時に退社できればこれらの機関に行ったり余裕を持って子どもを迎えに行ったりすることができるのです。

人材の確保

時短勤務の導入によって、育児や介護と仕事の両立といった選択肢が生まれます。これにより女性が出産によって今まで諦めてしまいがちだった「キャリアの継続」が実現しやすくなるでしょう。

選択肢が増えワークライフバランスが実現できれば、不本意な従業員の離職を防ぐことができます。時短勤務の導入が、結果的に人材の確保につながるのです。

時短勤務を取り入れることで乱れがちな生活パターンの改善にも取り組みやすくなります。仕事を続けながら子どもと向かい合う時間が増やせることは大きなメリットでしょう

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7.時短勤務のデメリット、課題

しかし、時短勤務にはデメリットや課題もあるのです。一体どんなものか、見ていきましょう。

収入が減る

時短勤務のデメリットとして多く叫ばれるのが給料、収入に対する不安です。育児・介護休業法には不利益な取り扱いを禁止する条例はありますが、業務時間が短縮した分、給料を減額することは法律違反ではありません。

つまり、短縮された時間に対する賃金の保障までは定められていないのです。労働者は、時間を短縮した分の給料が差し引かれる場合がある点を頭に入れておかなければなりません。

仕事に全力を注げない

時短勤務中は必然的に、仕事にかける時間が周囲に比べて短くなります。たとえ自分が中心となって進めたい業務があっても、時間の都合で思い切り仕事ができず、結果として諦めなければならない場面が出てくることも考えられるのです。

社員同士の問題など

「時短勤務の人は早く帰ることができて羨ましい」「時短勤務じゃない人には分からない大変さがある」など、時短勤務とそうでない人との間に溝ができてしまうことがあります。

時短勤務を行う本人だけでなく、周囲の労働者も気持ちよく働けるような環境づくりを意識しましょう。

時短勤務によるデメリットはどの企業であっても起こり得るもの。ほんの少しの思い違いがトラブルになる点を意識して、お互いを思いやるようにしましょう

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8.時短勤務を導入する際の注意点

実際に、時短勤務を導入する際の注意点を紹介します。

不利益取り扱い

育児・介護休業法では、時短勤務利用の申し出などを機に、その従業員に対して不利益な取り扱いをすることを禁止しています。不利益な取り扱いとは事業者が労働者に解雇や降格、雇止めなどの不利益をもたらすこと。

労働契約内容の変更や昇進に関して不利な状態に置く、業務時間が短縮した分以上に減給するなども不利益な取り扱いに含まれます。

就業規則への規定と周知

事業主は時短勤務の内容や手続きを就業規則などに明確に記載し、かつその内容を従業員に周知する義務があります。新人研修の際などで、時短勤務制度の存在や内容について周知しておきましょう。

労働者からの要望があった際、改めて周りに説明するといった工夫も効果的です。何も知らせずに時短勤務をスタートし、ほかの社員からの不公平感や現場トラブルなどを生まないよう注意しましょう。

手続き方法

時短勤務の適用手続きは、基本、事業主側で定めることができます。その際、複雑な手続きで申請を諦めさせてしまわないような配慮が必要です。育児休業や所定外労働の制限など、他の制度に関する手続きを参考にしながら適切に定めましょう。

時短勤務の適用を受けるには育児休業などと同様、1カ月前に申し出なければならない、とすることは問題ありません。

時短勤務の導入にはさまざまな注意点があります。しかし、勤務時間を選択できる制度を整えることで、貴重な人材の確保につなげられる可能性は高いです

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9.時短勤務の事例

実際に時短勤務を導入している企業とその制度はどうなっているのでしょうか。内容を紹介します。

全日本空輸(ANA)

全日本空輸(ANA)では、養育している子どもが9歳になる年の年度末まで、1日の所定労働時間を5時間(または6時間)にする制度を導入しています。また1日の所定労働時間は通常通りのまま、月勤務日数を少なくする「短日数勤務制度」も取得可能です。

そのほか本人の懐妊が判明した頃から一定期間休業できる「懐妊・育児休業制度」や、小学校に入学するまでの子どもに看護が必要な際取得できる「看護休暇(取得日数上限あり)」など、充実したサポート体制が整っています。

ワコール

ランジェリーやナイトウエアなどの製造販売を行うワコールは、2014年度に育児休業取得者のおよそ90%が育児短時間勤務を活用しました。

2006年度からの累計利用者数は育児短時間が697名、介護短時間が11名と従業員に時短勤務が定着していることが窺えます。

ワコールでは育児支援策を進めると同時に、制度を取得しやすい職場づくりを推進してきました。その結果、育児休業取得者の復帰率が100%となったのです。

トヨタ自動車

トヨタ自動車では、1日の所定労働時間を子どもが2歳になるまでは4時間、小学4年修了までは6~7時間と設定できる勤務時間短縮制度を導入しています。

また交替制勤務の職場には、子どもの小学4年修了まで常に6時半から15時の勤務シフトとする常1直勤務制度を設けているのです。

そのほか、本社地区内に2カ所、別地区に1カ所、0歳から小学校就学前までの子どもを対象とする事業所内託児所を設けました。交替制勤務社員のシフトや残業時間に合わせて開園しています。

サントリー

サントリーでは2005年に施行された「次世代育成支援対策推進法」に基づいて、出産・育児支援制度を拡充しました。子どもが中学校に進学するまで1日当たり2時間を限度とした時短勤務を導入しています。なお介護による時短勤務は最長9年まで取得可能です。

病時や緊急時のベビーシッター制度や育休後フォローアップセミナーなどの取り組みが評価され、日経DUAL主催の「共働き子育てしやすい企業ランキング2016」では見事、グランプリに輝きました。

さまざまな企業で長期的に豊かなキャリアを支援する制度が整備されています。これらの制度は女性だけではなく男性も対象です

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10.時短勤務導入の流れ、ステップ

最後に、時短勤務を導入する流れについて見ていきましょう。

  1. 目的や目標を決める
  2. 手続き方法などを決める
  3. 対象者の業務内容、賃金や評価の仕組みを考える
  4. 就業規則へ規定して周知
  5. 時短勤務制度の利用
  6. 問題や改善点を集める
  7. 必要に応じて制度を改革する

①目的や目標を決める

まずは時短勤務の導入目的を明確にします。従業員のニーズや自社の人員構成、人材活用戦略などを踏まえて自社の現状および将来の課題を検討しましょう。人材活用上の課題には以下のようなものが挙げられます。

  • 子育て期に当たる社員の離職を防止して定着を促進したい
  • 親等の介護を行う社員の離職を防止して定着を促進したい
  • スムーズな職場復帰を促したい
  • 意欲や能力の高い労働者のモチベーションを向上させて定着を促したい

②手続き方法などを決める

続いて、従業員の手間にならないような手続き方法を定めていきます。前述の通り、時短勤務の適用手続きは事業主が決定できるため、会社によって方法はさまざまです。

複雑な手続きで申請を諦めさせることがないよう注意しながら方法を決めていきます。また、手続きを行う際は育児休業や所定外労働の制限など、他制度の手続きの状況も踏まえて調整しましょう。

たとえば適用期間を1カ月単位とするといった場合はどうでしょうか。この場合、他の制度が労働者の申し出た期間について適用されることを踏まえると、適切ではありません。

③対象者の業務内容、賃金や評価の仕組みを考える

続いて時短勤務を利用する従業員に任せたい業務範囲や賃金、評価の仕組みを考えます。業務内容は仕事経験の機会を極力制約せず、フルタイムへの復帰を念頭に置いて本人のニーズやキャリア形成、円滑な業務遂行の観点から設定するとよいでしょう。

仕事の量は時短勤務に適した量に、仕事の質はフルタイムと同等に設定することが原則です。時短勤務に対する評価は成果目標による評価か、能力や行動による評価かによって異なります。

④就業規則へ規定して周知

これらの決められた内容を就業規則に規定し、従業員に内容を周知します。時短勤務に関する労働条件を就業規則に明文化しておくことで、不要なトラブルを未然に防ぐことができるのです。

時短勤務の適用範囲、転換、労働時間、休憩時間、休日および休暇、賃金、賞与、退職金、社会保険および労働保険の加入について明記し、自社の時短勤務制度に沿った就業規則を作成しましょう。

制度を根付かせるためにも、パンフレットやマニュアルの作成、Q&Aの整備や社内報などによる紹介も効果的です。

⑤時短勤務の利用

従業員は、就業規則に基づいて時短勤務を利用します。しかし、制度の利用後、フルタイムに復帰・転換するかどうかは導入目的によって異なるでしょう。

育児支援や介護支援、心身の健康不全対策のための時短勤務は、利用期間満了後にフルタイムに復帰します。対して新たな従業員獲得、パートタイム労働者の活用を目的とした時短勤務は、フルタイムへの転換だけでなく時短勤務が継続する可能性があります。

⑥問題や改善点を集める

時短勤務導入において生じた問題や改善点を集めます。具体的な課題として挙げられるのは、以下のような状況です。

  • 時間を短縮しても仕事量や内容は変わらないまま制度が形骸化している
  • 責任ややりがいのある仕事を任せてもらえない(補助的・定型的な仕事を割り当てられることが多い)
  • 時短勤務というだけで低い評価となり、昇進や昇格が大幅に遅れている
  • 時短勤務の長期利用によってモチベーションの低下やキャリア形成に遅れが生じる

⑦必要に応じて制度を改革する

前述した課題や改善点を用いて制度を改良します。ここでは、制度が形骸化しているという課題に対する改善案を例に見ていきましょう。

人事部門は関係者に運用改善に向けての取り組みを明確に伝え、管理職の職場マネジメントに対して必要な支援を行います。管理職は仕事配分を見直して協力体制を構築しましょう。

周囲の社員は制度利用者の立場を理解尊重した上で自分の仕事の進め方を見直すとよいでしょう。制度利用者本人は自ら効率的に仕事を進めるよう心掛けつつ、管理職に現状の改善に向けた相談を行います。

時短勤務を導入する際は、最初に目標を明確にしましょう。インタビューやアンケートなどを実施して、社員のニーズを知ることも有効です