【事例あり】自律型人材とは? デメリット、特徴、育成方法

自律型人材とは、業務の意味を理解して自らの判断で責任を持って行動できる人材のこと。ここでは自律型人材のメリットや特徴、育成方法などを解説します。

1.自律型人材とは?

自律型人材とは、業務の目的や意義を理解して、自分の意思で臨機応変に行動できる人材のこと。激しく変化し続ける社会環境のなかで、指示を待たずに動ける能動的な人材が求められています。

自律型人材の定義

自律型人材の公的な定義はありません。一般的には、以下のような3つの特性を持つ人が自律型人材と定義されます。

  • 自分の中に明確な行動規範を持っている
  • 与えられた業務の目的や意味を自ら考えられる
  • 上司からの指示がなくても、やるべきことを理解して主体的に行動できる

そもそも自律とは?

自らを律すること。自分の価値観や自ら定めた規範に従って、自分をコントロールしながら行動することを指します。

同じ発音に「自立」があり、こちらは経済的に独り立ちしているなど、他人に頼らない状態を示す言葉です。一方自律は、他人の指示ではなく自分の規範に従うという行動の基準を表しています。

自律型人材の反対は?

自律型人材の対義語は「依存型人材(上司や同僚から指示された仕事だけをコツコツとこなす人材)」です。目まぐるしく変わる現在のビジネス環境では、多くの会社が自ら考えて行動できる自律型の人材を求めています。

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2.自律型人材の特徴

多くの会社が求める「自律型人材の特徴」は以下の4つです。それぞれの特徴について説明します。

  1. 主体性
  2. 強い責任感
  3. 自分らしさを確立
  4. 提案力

①主体性がある

自律型人材は、主体性を持って物事にあたります。

主体性とは、やるべきことを自ら考えて責任を持って行動すること。自律型人材は、自ら「仕事の目的」「自分の役割」「自社に貢献するには何をするべきか」を考えて、責任をもって実行します。

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②強い責任感がある

自律型人材には、責任感が強い傾向にあります。

他人の指示ではなく自らの意思で行動するため、結果に対して強い責任感を覚えるのです。そのためミスをした場合も、自分自身の責任と考えて、行動を振り返り状況を改善できます。

③自分らしさを確立している

自律型人材は、周りに流されない信念を持っています。

つねに自分の価値観でやるべきことを判断するため、確固とした「自分らしさ」を確立しているのです。そのため他人の考えに左右されない、独創的なアイデアを仕事に反映できます。

④提案力がある

自律型人材は、高い提案力にも優れています。

周りに流されない価値観を確立しているため、会議で自分の意見を積極的に発信できるのが特徴です。

また責任感が強く、自分の提案が採用されれば、成果を出すために率先して行動します。そのため目標達成のために積極的に意見交換をして、最善の行動を模索できるのです。

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3.自律型人材が活躍する組織

自律型人材を最大限に生かせるのは「ホラクラシー組織」と「ティール組織」です。ここではふたつの組織について説明します。

ホラクラシー組織

役職などの上下関係が存在しない組織運営方法のこと。代表的な会社には、アメリカのアパレル系通販会社のザッポス社が挙げられます。

ホラクラシーでは、意思決定権や責任の所在がそれぞれの部署やプロジェクトチーム、または各個人に分散しており、単純明快な組織形態といえます。役割分担は業務ごとに行われるため、成果を上げるには個々の社員が主体性を持って働くことが重要です。

そのためホラクラシー組織では、自律型人材の活躍が期待されます。

ティール組織

指示系統がなくても個々の社員が目的を理解して行動し、進化していく組織のこと。

ティール組織では、上司は部下に対して細かい指示や管理を行いません。意思決定の権限や責任は個々の社員にあり、それぞれが組織の目標達成のために工夫しながら、能動的に業務を遂行します。

ホラクラシーが、フラットな組織を構築するためのルールが存在する経営手法なのに対し、ティール組織は、個々が持つ規範で機能する組織概念だといえるでしょう。

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4.自律型人材を育成するメリット

自律型人材を育成すれば「業務の効率化」「独創的なアイデア」「管理職の負担軽減」などが期待できます。ここでは、会社が自律型人材を育成するメリットを説明しましょう。

  1. スピード感のある業務遂行
  2. 上司の負担軽減
  3. テレワークへの対応
  4. オリジナリティあるアイデアの創出

①スピード感のある業務遂行

自律型人材が活躍する会社では、スピード感を持って効率的に業務を遂行できます。自律型人材は、状況に応じて自らの判断で行動できるため、イレギュラーな事態に遭遇した場合でも、上司の指示を待つ必要がないからです。

能動的に行動できる社員が増えれば、業務のスピードや稼働率が上がります。また自分の行動規範に従って考えながら行動できる社員が増えれば、ミスは減少して生産性が向上するでしょう。

②上司の負担軽減

部下が自律型人材であれば、細かい指示や管理を行う必要がないため上司の負担が軽減します。自律型人材は、自分に割り振られた業務の意味や目的を理解して、自ら工夫して作業を進められるからです。

社内に多くの自律型人材が育てば、管理職が指示やマネジメントに費やしていた時間を、会社にとってより価値のある業務に充てられます。

③テレワークへの対応

テレワークといった多様化する働き方に適しています。自律型人材には細かい指示は必要ないからです。

上司の視線が届かない場所でも、自身がもつ規範に従って行動し、計画的に業務を遂行していきます。そのため業務の遅延が生じる心配もありません。

④オリジナリティあるアイデアの創出

自律型人材は自分らしさや高い提案力を持っているため、自律型人材が活躍する組織では、オリジナリティ溢れるアイデアが生まれやすくなります。

独創性のある提案は直接イノベーションを生み出すだけでなく、社内に新風を吹き込んでアイデアを提案しやすい風土を醸造するでしょう。

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5.自律型人材育成上のデメリット

自律型人材には「育成に多くの時間を要する」「コミュニケーション機会の損失によりチーム運営に問題が生じる」といった側面もあります。ここから自立型人材のデメリットを説明します。

  1. 育成時間
  2. チーム運営の支障

①育成時間

自律型人材の育成では多岐にわたるスキルを習得させる必要があるため、長い時間がかかります。効率よく育成するには、研修プログラムの構築が有効ですが、その準備に多くの労力や費用が必要となるからです。

研修を自社で行うのが難しい場合、オンライン動画サービスを利用する方法があります。教材は準備されており、手間やコストを抑えられます。

②チーム運営の支障

自律型人材が多く活躍する会社は、チーム運営に支障をきたすリスクを考慮しなければなりません。自律型人材は、自分の規範に従って考えながら業務を遂行できる反面、チーム内での情報共有や円滑なコミュニケーションの不足に陥るケースもあるからです。

自律型人材の育成を成功させるには、チームプレーへの意識を根付かせる必要があります。

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6.自律型人材の育成方法

早期に自律型人材を育成しようとして、やみくもに着手すると失敗を招きかねません。ここでは自律型人材の育成方法について説明します。

  1. 自律型人材の定義を明確化
  2. 会社の方針説明
  3. 柔軟な異動制度の構築
  4. 社員が挑戦しやすい環境整備
  5. 外部の研修を利用

①自律型人材の定義を明確化

自律型人材の育成に取り組むには、どのような人材を育てたいのかを明確にする必要があります。一口に「自律型人材」といっても、求める社員像は組織によって異なるからです。

社風や方向性や現在の業務状況などと照らし合わせて、自社が必要とする自律型人材を定義しましょう。期待するスキルや資質、行動を具体的にイメージすると理想の人材の特徴が鮮明になります。

②会社の方針説明

自律型人材を育成するうえで、会社の理念や方針を深く理解させる必要があります。たとえ自分の判断で行動できたとしても、会社の方針や戦略からずれていては意味がないからです。

そのため自律型人材の育成では、単に能動的に行動するのではなく自社にとって最良の行動を選択できる人材の育成を重視しましょう。

③柔軟な異動制度の構築

自律型人材の育成を促進するには、個々の社員が柔軟に部署を選択できる異動制度の構築もオススメです。ほかの部署を経験すると視野が広がり、業務の意味を主体的に考えるきっかけになるからです。

キャリアの自律を促すため「社内公募制度」「社内FA制度」「ジョブローテーション制度」などを設けている会社もあります。

④社員が挑戦しやすい環境整備

自律型人材を育成するには、社員が挑戦しやすい環境を整えることが大切です。

育成過程の社員は「自分の判断が間違っていたらどうしよう」と不安になるもの。しかし「失敗してもフォローしてもらえる」という心理的安全性が確保されていれば、勇気を持って挑戦し経験を積めるのです。

「失敗してもフォローする」「どんな発言も否定しない」という職場環境を作ると、人材育成を促進できます。

⑤外部の研修を利用

研修プログラムを構築するには、自律型人材の育成に関するノウハウが欠かせません。社内だけで自律型人材の育成が困難な場合は、外部研修を活用するのもオススメです。

外部研修を利用する際は、座学だけでなく実際の業務と関連づけて実践できるものを選択するとよいでしょう。研修内容をふまえて実践すると、「自律」の意味をより深く理解して身につけられます。

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7.自律型人材育成のポイント

自律型人材の育成には、育成期間の確保や環境などが大切です。ここでは自律型人材の育成を成功させる5つのポイントを説明しましょう。

  1. 長期的な育成
  2. 経験学習サイクル
  3. 責任のある仕事の経験
  4. 管理職のスキルアップ
  5. 社員が自ら考え行動できる環境

①長期的な育成

自律型人材の育成には長い時間がかかります。今まで培ってきた性格や習慣、価値観を根幹から一新する必要があるからです。育成期間を長期的なスパンでとらえ、「焦らずゆっくりと変化させていく」意識を持つとよいでしょう。

②経験学習サイクル

自律型人材の育成を促進するには「経験学習サイクル」を、日常的に社内で実践してみましょう。

経験学習サイクルとは、アメリカの組織行動学者デービッド・コルブ氏が提唱した理論。学習は、「経験、内省、持論化、実践」を繰り返すことで、より深く身につけられると提唱しています。

この理論にもとづくと人は経験を自分のなかに落とし込んで持論化すると、正しい判断ができるようになるわけです。自律型人材が新しい経験を積んだら、振り返りおよびそのアウトプットを行うタイミングを設けるとよいでしょう。

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③責任のある仕事の経験

自律型人材への育成過程にある社員には、責任がある仕事を多く経験させましょう。自分で考えて業務を遂行する環境を整えることが、社員の成長を促すからです。

誰でも責任がある仕事を任されれば、指示がなくても自分で考えて業務を進め、最善の行動を選択するようになります。これを何度も経験することで、自ら判断して行動することが習慣化されるのです。

④管理職のスキルアップ

社内に自律型人材を育てるには、管理職のスキルアップは不可欠です。

自律型人材の育成を成功させるには「心理的安全性」が確保されていなければなりません。つまり育成過程の社員が失敗したときは、上司である管理職が適切にフォローして軌道修正する必要があるのです。

管理職にフィードバックやコーチングの正しいスキルを身につけさせる研修を実施するとよいでしょう。

⑤社員が自ら考え行動できる環境

自律型人材の育成で大切なのは、社員が自発的に行動できる環境を整えること。自律型人材に成長するための知識やスキルは研修で習得できます。しかし学んだことを業務で実践するには、日々の学習やスキルのアップデートが必要です。

社員が自発的に学んだり、自らの判断で行動したりできる職場環境を整えるのは重要といえます。

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8.自律型人材の育成事例

多くの企業が、自立型人材の育成に着手し、利益増加や離職率低下などの成果につながっています。ここでは5つの事例を説明しましょう。

  1. リコー
  2. NTTテクノクロス
  3. ヤマハ
  4. JAしまね
  5. カインズ

①リコー

リコーは、基本理念「リコーウェイ」を指針とした自律型人材の育成を推進し、変化に強い企業風土の醸成を目指しています。

「社員本人が自らのキャリアオーナーである」と考え、「キャリア支援制度」「社内公募制度」など、社員自らが学び考え判断し、行動できる環境を整備したのです。

各ビジネスユニット(BU)が自律的な体質強化を行った結果、2021年度は営業利益が854億円増加となり、前年度と比べて大幅に改善しました。

②NTTテクノクロス

NTTテクノクロスは従来の社内研修を見直して「選択型研修」を導入し、さまざまなテー中から自分が学びたい内容を選んで参加できるシステムを作りました。

その結果、同じテーマに興味を持つさまざまなステータスの人材が集まるようになり、社内コミュニケーションが活性化したのです。

さらに社員が自分の目指すキャリアや、そのために必要な知識やスキルは何かを自ら考えるようになり、自律型人材への土壌が形成されるきっかけとなっています。

③ヤマハ

ヤマハは、「自らキャリアを切り開いていく強さを身につけて欲しい」という考えから「ありたい姿」を再設定し、自分の枠を超えることを目的とした研修を実施しました。この研修をきっかけに、以下のような自律型人材への成長が期待されています。

  • チャンスを逃さず積極的に行動できる
  • 現状に満足せず、理想の自分を追求できる
  • 自分の軸や方向性が明確にできる

④JAしまね

JAしまねは、短期間でレベルの高い人材を育成するために新人研修の質を向上させ、仕事への意識改革を実施。研修には「マインドセットの浸透」「働く意義の追求」「フォローアップ研修」などが盛り込まれています。

最初にマインドセットを行ったことで学ぶ意欲が向上。短期間で高い効果を上げることに成功しました。またフォローアップでは、新人同士のコミュニケーションが促進されるうえ、現場での悩みを共有し解消する効果があり、新人の離職率が低下しています。

⑤カインズ

カインズは、多様化する市場ニーズに対応するため、自律型組織への転換に取り組んでいます。具体的には「自分のキャリアは自分で考える」「その達成に向けて自ら学ぶ」など5項目のコンセプトと、社内公募制度などのキャリア支援を提示。

取り組みの結果、自分たちのやるべきことが明確化し、個々の社員が高い意識を持って主体的に仕事に取り組むようになりました。