労働安全衛生法とは? メリット、ストレスチェック制度、違反した場合の罰則

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康、よい職場環境の確保を目的とした法律です。
背景や遵守によって得られるメリット、企業が行うべき項目や違反した場合の罰則などについて解説します。

1.労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法とは、「職場における労働者の安全と健康の確保」「快適な職場環境の形成促進」を目的とする法律のこと。1972年に制定されました。

「労働災害防止のため危害防止基準の確立」「責任体制の明確化」「自主的活動の促進」といった総合的・計画的な推進により、目的の達成を図っています。

労働者の安全・健康を確保するため、労働安全衛生法に従い、さまざまな措置を講じる義務が企業にはあります。英語では「Industrial Safety and Health Act」と表記します。

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2.労働安全衛生法を遵守すると得られるメリット

労働安全衛生法を遵守すると得られるメリットは、下記の4つです。それぞれについて見ていきましょう。

  1. 生産性の向上
  2. コスト削減
  3. 労働者のモチベーション向上
  4. 事故防止

①生産性の向上

労働者が、安全な作業を行うための正しい知識を持って業務を行うと、企業全体の生産性向上につながります。現場での事故やトラブル防止にもなり、予想外のロスも発生しません。安全衛生管理が行き届いた環境の存在は、企業の大きな利益につながります。

②コスト削減

作業管理や教育を徹底すると、労働者のオペレーティングミスを減らせます。「部材や薬品といった消耗品の取り扱いミスによるロスを減らす」「機材の操作ミスによって負傷した際の人的な損失を防ぐ」なども可能です。

③労働者のモチベーション向上

労働者が「働きにくい」と感じる環境を解消すると、仕事に対するモチベーション向上が期待できます。労働者たちの声に耳を傾け、改善すると、自分たちの声が反映されたと実感するため、労働者たちの活力になるのです。

④事故防止

現場の安全衛生管理を徹底すると、重大な事故につながるリスクを軽減できるのです。近年、長時間労働による過労死が社会問題となっています。物理的な事故だけでなく精神面が起因となるトラブルにも気を配る必要があるでしょう。

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3.労働安全衛生法における企業が行うべき重要項目

労働安全衛生法は、企業が義務を怠った場合、罰則が科される可能性もあります。企業が行うべき重要項目を解説します。

  1. 安全衛生の担当者を選任
  2. 衛生委員会・安全委員会の設置
  3. 労働者への安全衛生教育の実施
  4. 労働災害防止措置
  5. 定期自主検査
  6. リスクアセスメント
  7. 危険物・有害物の取扱とラベル表示
  8. 危険業務の就業制限
  9. 労働者の健康保持

①安全衛生の担当者を選任

労働者が50人以上の事業所は、安全管理者と衛生管理者、産業医を選任します。労働者数が300人以上の事業所はくわえて総括安全衛生管理者を選任しなくてはなりません。10人以上50人未満の場合は、安全衛生推進者の選任を行う必要があります。

②衛生委員会・安全委員会の設置

衛生委員会は、労働者が50人以上の事業所が、業種問わず設置しなくてはなりません。

安全委員会は、「労働者が50人以上の事業所で林業・鉱業・建設業などの業種」「労働者が100人以上の事業所で電気業、ガス業、熱供給業などの業種」の場合、設置する必要があります。

③労働者への安全衛生教育の実施

労働者の人数にかかわらず、雇入れ時や作業内容の変更時に安全衛生教育を行います。また新任の指導者や監督者への教育も義務付けられているのです。危険有害業務に携わる労働者には、資格取得や法令で定められた特別教育を実施しましょう。

④労働災害防止措置

労働安全衛生法第4章では、労働災害防止に向け、事業者が講じるべき措置について規定しています。たとえば「機械・器具そのほか設備」「爆発性の物・発火性の物・引火性の物」などによる危険の防止措置です。

⑤定期自主検査

ボイラーやクレーン、第一種・第二種圧力容器など、労働安全衛生法施行令第15条1項で指定された機械は使用開始後の一定期間ごとに、所定の機能を維持しているか点検しなくてはなりません。また検査結果は3年間の保存が義務づけられています。

⑥リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、労働災害の予防手段。リスクの大きさにもとづいて対策の優先度を決め、リスクの除去や低減措置を検討し、その結果を記録する安全衛生管理手法です。労働災害発生後に行う事後対策とは異なります。

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⑦危険物・有害物の取扱とラベル表示

表示義務または文書交付義務の対象物質以外のものでも、「爆発性の物や発火性の物などの危険物」「健康被害が生じる可能性のある化学物質や化学物質を含む製剤などの有害物」を取り扱う際、容器や包装にラベル表示およびSDS交付が努力義務になっています。

⑧危険業務の就業制限

就業制限とは、免許保有者や技能講習修了者などの資格を有する労働者しか特定の業務に就けない制限のこと。就業制限が発生する業務や必要な資格については、労働安全衛生法施行令や労働安全衛生規則に詳細が定められています。

⑨労働者の健康保持

労働者の健康管理は、労働者の健康保持のために会社が行うべき対策で、「作業環境測定」「健康診断」「病者の就業禁止」などが義務づけられています。身体的なケアだけでなく精神的ケアにも着目した対策が必要でしょう。

健康診断は義務

労働者が1人でも、健康診断を実施しなくてはなりません。労働者が50人以上の場合、健康診断の結果を労働基準監督署へ報告するよう義務づじぇられています。労働安全衛生規則第43条で定められた11項目について、健康診断を行うのです。

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4.2015年の労働安全衛生法改正で追加された「ストレスチェック制度」

2015年の労働安全衛生法改正で「ストレスチェック制度」が追加されました。以下で詳しく解説しましょう。

ストレスチェック制度とは?

ストレスチェックを実施し、結果にもとづいて医師による面接指導などを行う取り組みのこと。労働者数50人以上の事業場は、実施が義務づけられています。一方、50人未満の事業場の実施は努力義務です。

ストレスチェック制度の目的

目的はうつ病をはじめとする労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること。検査結果を労働者にフィードバックして、労働者自身のストレスへの気づきをうながし、職場環境を改善する目的もあります。

義務化対象となる企業

労働安全衛生法によって、50人以上の労働者がいる事業場では年1回の実施が義務づけられています。実施しなかった場合の罰則はないものの、労働安全衛生法第100条で労働基準監督署への報告が義務づけられているのです。

ストレスチェック制度にかかわる人と役割

ストレスチェック制度にかかわるのは以下の人々です。

  • 制度の実施計画の策定担当者…衛生管理者またはメンタルヘルス推進担当者など
  • 実施者…医師、保健師厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師や精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師
  • 実施者のサポート…産業保健スタッフ、事務職員
  • ストレスチェックの対象者…「期間の定めのない労働契約により使用される者」および「週労働時間数が、通常の労働者の、週の所定労働時間数の4分の3以上」の両方の要件を満たす労働者

導入前の準備

まず会社として、ストレスチェック制度を実施するための方針を示します。次に事業所の衛生委員会で、面接指導者や実施対象者の選定方法、結果の保存方法などストレスチェック制度の具体的な実施方法などを話し合うのです。

ストレスチェック結果の保管

厳重なセキュリティが確保された適切な場所に、実施事務従事者が責任を持って保管します。保管期間は5年間。保管方法は書面記録と電磁的記録があります。事業場にあるサーバー内にデータを保管するのも可能です。

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5.労働安全衛生法に違反した場合の罰則

労働安全衛生法では、規制に違反した場合の罰則が定められています。違反に関する事例とともに詳しく解説しましょう。

3年以下の懲役または300万円以下の罰金

重度の健康障がいを生ずる化学物質を製造や輸入、使用や提供した場合、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が適用されます。行為者を罰するほか法人(個人経営の場合は人)に対しても罰金刑が科せられるのです。

1年以下の懲役または100万円以下の罰金

特定機械等の製造許可を受けていない場合、個別検定・型式検定を受けていない場合

  • 製造の許可を受けずに化学物質を製造した場合
  • 指定試験機関の役職員、労働安全・衛生コンサルタントが職務に関して知り得た秘密を漏洩した場合

などです。

6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金

  • 危険防止や健康障がい防止について規定されている事項を、事業者が実施しなかった場合
  • 特定機械等の製造時の検査等を受けなかった場合、個別・型式検定に合格していない機械等を使用した場合
  • 製造許可対象の化学物質を許可条件で製造しなかった場合

などです。

50万円以下の罰金

  • 安全管理者や衛生管理者を選任しなかった場合
  • 個別・型式検定に合格していない機械等に虚偽の表示をした場合
  • 雇い入れ時に安全衛生教育を行わなかった場合
  • 定期健康診断や特殊健康診断を行わなかった場合

などです。

労働安全衛生法違反に関する事例

労働安全衛生法における多くの罰則は、両罰規定(違反した行為者(責任者)と、その事業主体である法人や人も罰せられるもの)になっています。労働安全衛生法違反に関する事例を見ていきましょう。

事例①

石油化学製造工場にて爆発が発生し、作業員が死傷した事件です。労働安全衛生法違反および業務上過失致死傷が問われました。会社に対して罰金50万円、現場の統率者であった製造部製造課課長に対して禁固2年執行猶予3年の判決が出ています。

事例②

2階建木造家屋の解体工事を行っていた労働者が墜落して死亡した事件です。労働者に安全帯を使用させていない労働安全衛生法違反があるため、事業所は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されました。