育児休暇とは?【簡単に解説】給与、条件、休業との違い

育児休暇は、子どもを養育することを目的として設けられた休暇制度で、近年、「イクメン」という言葉も誕生し、男性の育児休業の取得率の向上にも注目が集まっています。

そんな育児休暇について、

  • 育児休暇とは?
  • 育児休暇の期間
  • 育児休業手当の計算や申請方法
  • 男性社員の取得期間
  • 企業の事例

などから説明します。

1.育児休暇とは?

育児休暇とは子を養育する労働者のための育児を目的とした休暇のこと。1歳に満たない子どもを育てる労働者が取得できる休暇制度で、育児休暇だけでなく育児休業と呼ばれることもあります。

1992年、育児休業法の施行に伴い、各企業で育児休暇制度を導入する流れが一気に広まったのです。

さらに、1995年には育児・介護休業法として、法律に基づいて育児のための休みが運用されることになりました。これにより、子育てと仕事の両立といった問題を含め、社会全体に対して育児休業へのより一層の理解と徹底が図られています。

育児休暇と育児休業の違いとは?

育児休暇と育児休業は類似した言葉で、それぞれ混同して使用しがちです。しかし厳密には、違う意味があります。

  • 育児休暇:休暇中に育児をするという意味で、広義で育児のための休暇取得を意味する。法律の適用外のため、権利の保障や給付制度などはない
  • 育児休業:育児介護休業法に基づいて取得できる休業制度。法律の中でさまざまな権利が保護されており、休業中に減じた収入を補う給付制度がある
育休の定義
「育休」と略した言葉を用いた場合、育児休業の意味で用いていると解釈するのが一般的です

育児休暇は、子を養育する労働者の育児を目的とした休暇です。育児休業は、法律に基づいて取得できる休業です

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2.育児介護休業法とは?

育児介護休業法は、1992年施行の育児休業法がベースとなり、1995年に育児介護休業法に改正された法律です。育児や家族の介護を行う労働者に対し、仕事や家庭生活を両立できるように支援することを目的としています。

育児介護休業法が定める制度

育児介護休業法は、労働者が行う育児や介護に関して定めている法律です。この法律は、幼い子どもや介護を要する家族を持つ労働者が、育児や介護をしながら働き続けることができるように設けられました。

中でも育児休業に関しては育児休業の取得の際に条件が定められており、原則として、

  • 1歳に満たない子を養育する労働者を対象
  • 当該労働者が事業主に申し出る

といった要件を満たした場合には、育児休業を取得できます。

育児介護休業法の改正(2017年1月施行)

2017年1月の施行で、育児介護休業法の改正が行われました。

改正内容には、

  • 有期契約社員の育児休業の取得条件の緩和
  • 介護休暇の半日単位での取得を可能とする
  • 対象となる子の範囲の拡大
  • 妊娠や育児を理由にしたパワハラ、マタハラ防止策の義務化

などが盛り込まれ、働きながら育児や介護をする労働者の支援体制が強化されました。

育児介護休業法は、
・幼い子供
・介護を要する家族
を持つ労働者が、育児や介護をしながらも働き続けることができるように設けられた法律です

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3.育児休業の期間はいつから?

1歳に満たない子の育児をするための育児休業の期間がいつから開始されるのかは、産前産後休業期間と併せて正しく理解しておく必要があります。

  • 産前休業:出産予定日の6週間前から取得できる
  • 産後休業:出産翌日から始まり、8週間就業できない期間として設定されている

育児休業は、出産後8週間の産後休業の翌日から取得する権利が発生します。

具体例

出産予定日が2019年6月15日だと仮定しましょう。

産前産後休業は、下記のようになります。

  • 産前休業は出産予定日の6週間前である2019年5月5日から出産予定日の2019年6月15日まで
  • 産後休業は出産予定日の2019年6月15日の翌日である6月16日から8週間後の2019年8月10日まで
  • 育児休業は産後休業の終了した日の翌日2019年8月11日から、子が1歳になるまでの2020年6月14日まで

育児休業の期間について正しく理解しておきましょう。期間は、産後休業が終了した翌日から子が1歳になるまでとなっています

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4.育児休業の取得条件

育児休業の取得条件を確認しましょう。

  • 子が1歳に達するまで(延長も可能)、労働者の申し出により育児休業の取得が可能
  • 父母共に育児休業を取得する場合、子が1歳2カ月に達するまでの間、労働者の申し出により育児休業の取得が可能(パパ・ママ育休プラス)
  • 産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても労働者の申し出により再度の育児休業取得が可能(パパ休暇)

育児休業の取得要件に、労働者からの申し出が入っている点に注意してください。

「パパ・ママ育休プラス」の取得の条件

パパ・ママ育休プラスとは、育児休業期間を2カ月延長し、母親だけでなく父親の育児参加を促すための制度で、2010年から始まりました。

パパ・ママ育休プラスを利用する場合、

  • 配偶者が、子が1歳に達するまでに育児休業を取得している
  • 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前である
  • 本人の育児休業開始予定日が、配偶者が取得している育児休業の初日以降である

といった要件を満たす必要があります。

「パパ休暇」の取得の条件

パパ休暇とは、産後8週間以内の期間内に父親が育児休業を取得した場合、特別な事情がなくても父親が育児休業を再度取得することができるというもの。男性の育児参加機会を増やすことを目的とする制度です。

パパ休暇を利用する場合、

  • 子の出生後8週間以内に育児休業を取得している
  • 子の出生後8週間以内に育児休業が終了している

といった要件を満たすことが必要です。

パパ・ママ育休プラス、パパ休暇といった新制度が設けられました。育児休業の取得には、労働者からの申し出が必要です

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5.育児休業の延長はいつまで?

育児休業の期間、延長方法、延長するための条件についてまとめておきます。

育児休業を延長したい場合、まず会社に「育休の延長をしたい」旨を伝えます。育児休業は、延長条件を満たしたとき、子どもが2歳になる誕生日の前日まで期間を延長できると規定されているのです。

延長を希望する場合、

  • 子どもが1歳を迎えるときに1歳6カ月を迎える前日までの延長
  • 1歳6カ月を迎えるときに2歳になる誕生日の前日までの再延長

を申し出る必要があります。

なお、延長の条件は、下記のようになっています。

  • 子どもが認可保育所等に入所できないとき
  • 子どもを育てる予定のあった人が、病気、ケガ、妊娠などの理由で子どもを育てることが難しくなったとき

共働き世帯の延長方法

パパ・ママ育休プラスは、父親と母親が共に育児休業を取得して育児の機会を増やすことを目的とする制度で、2010年からスタートしました。制度を活用すれば、原則的に1年と定められている育児休業期間を、子どもが1歳2カ月を迎えるまで延長できます。

また、保育所に入所できなかったなど延長条件を満たした場合、子どもが2歳になる誕生日の前日まで延長を申し出ることもできます。

育児休業は、労働者が申し出をしないと取得できません、休業期間や条件をしっかり確認しておきましょう

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6.育児休業中にもらえる手当とは?

雇用保険では、雇用継続給付として育児休業中に支給される手当である育児休業給付を設けており、これは、育児休業中に一定以上給与が支払われなくなった場合に支給されます。

支給対象者は、一定の要件に該当する短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者を除く被保険者です。

当該被保険者が1歳になるまでの子(特別な理由がある場合には1歳6カ月になるまで)を養育するための休業をした場合に、育児休業給付金が支給されます。

育児休業給付金(育休手当)の支給要件

育児休業給付金は、受給資格のある労働者が支給要件を満たした場合に支給されます。

受給資格は、下記の3点です。

  1. 雇用保険の一般被保険者、または高年齢被保険者である
  2. 育児休業を開始した日以前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある
  3. 有期雇用契約の労働者は、休業開始時において「同一の事業主のもとで、1年以上雇用が継続している」「子が1歳6カ月までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない」に該当している

また、

  • 支給単位期間の初日から末日まで被保険者である
  • 各支給単位期間において就労日数が10日(10日を超える場合は、労働時間が80時間以下)以下であり、各支給単位期間において支払われた賃金がある場合は、休業開始前に受けていた平均賃金と比べて80%未満の賃金である

も受給要件となっています。

育児休業給付は、一定条件を満たした受給資格のある労働者が支給要件を満たした場合に支給されます

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7.育児休業給付金の支給額の計算方法

育児休業給付金の支給金額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(※育児休業開始から6カ月経過後は50%)」で計算します。

休業開始時賃金日額は、「育休」開始6カ月前までさかのぼり、6カ月分の収入の合計(保険料などが引かれる前の額で賞与は除く)を180日で割って算出します。

育児休業給付金の月額を算出する場合は、育児開始時賃金日額に支給日数(育休中に月間、すなわち1支給単位期間で仕事を休む日の数。一般的に30日)を乗じ、さらに67%を掛けて計算します。

ただし、

  • 育児休業給付金には月額49,848円~301,299円という下限と上限がある
  • 育児休業給付金が支払われる期間中に、休業前の月給の80%を超える賃金が支払われたときは育児休業給付金が支給されない

といった要件があります。

給与別・計算方法の具体例

月給20万円の場合を例に、育児休業給付金の具体的な金額を見てみます。最初の6カ月は休業1カ月当たり13.4万円となります。さらに育児休業開始から6カ月を過ぎた残りの期間は、休業1カ月当たり10万円が支給されることになるのです。

育児休業給付金は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%(※育児休業開始から6カ月経過後は50%)で計算します

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8.育児休暇中の社会保険料免除

育児休業中は給与の支払いがなくなるため、当該労働者に対して、育児休業の開始月から育児休業終了前月まで社会保険料が免除される制度も整備されています。

免除額は月単位で計算されており、日割りでの計算は行いません。年収360万円の労働者を例にして社会保険料の免除額を考えると、

  • 健康保険料14,850円×15カ月=222,750円
  • 厚生年金27,450円×15カ月=411,750円

健康保険料と厚生年金の保険料額を合算すると、社会保険料免除額は634,500円となります。

育児休業中の住民税

育児休業中の労働者は、「雇用保険から育児休業給付を支給」「社会保険料の免除」といった制度を利用できます。

しかし、住民税に関しては免除されません。その理由は住民税の仕組みが、前年の住民税を翌年に支払う制度だからです。

そのため、前年に給与収入がある場合、産休や育児休業中でも住民税の支払い義務が生じます。社会保険料は免除になりますが、住民税の支払い義務は存在する点を理解しておきましょう。

育児休業中は、
・育児休業給付金が支給される
・社会保険料が免除される
・住民税は支払い義務がある
という点を確認してください

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9.派遣社員やパート・アルバイトの育児休暇

育児介護休業法において育児休業を取得することのできる対象者は、原則として「1歳に満たない子を養育する労働者」です。性別要件もないため、当然、男性労働者も育児休業の取得対象者になっています。

また、対象者の要件に雇用契約についての要件もありません。そのため派遣社員やパートタイマー、アルバイトといった有期契約の労働者でも、一定の条件に該当する労働者であれば育児休業を取得できます。

有期契約労働者が育児休業を取得する際の条件は、下記の2点です。

  1. 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
  2. 子が1歳6ヶ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない

育休を取得できない従業員

育児休業は、原則として「1歳に満たない子を養育する労働者」が対象となっていますが、その対象から除外されている労働者もいるのです。

  • 日雇い労働者
  • 申し出時点に同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の有期契約労働者
  • 育児休業終了後に引き続き雇用される見込みがない有期契約労働者

などは、労働契約の性質上、育児休業の対象外となっています。

育児休業は、原則として「1歳に満たない子を養育する労働者」が対象です。対象となる労働者、対象外の労働者の要件を把握しておきましょう

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10.育児休業の申請方法(提出書類など)

労働者が産休や育児休業を取得する際、申請方法を事前に確認しておけば、いざというときスムーズに対応できます。まず、労働者の産休から職場復帰までの流れを把握しておきましょう。

  • 産前休業(出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から出産当日まで)
  • 産後休業(出産の翌日から8週間)
  • 育児休業(産後休業終了日の翌日から子供の1歳の誕生日まで)

一般的には上記の休終了後、職場復帰となります。

産前産後休業(産休)取得時の申請・手続き

産前産後休業取得時の申請・手続きには、産休中の社会保険料の免除手続きや出産手当金の申請があります。

育休取得時の申請・手続き

育児休業取得時の申請・手続きには、社会保険と雇用保険の2種類があります。

育休中の社会保険料の免除手続き

労働者が育児休暇に入ったら、会社は管轄年金事務所へ育児休暇中の社会保険料の免除に関する必要書類を提出します。書類の提出によって、社会保険料は従業員負担分と会社負担分の両方が免除になるのです。

育児手当金の受給資格の確認

育児休暇を開始した日の翌日から、育児休業給付金の受給資格を確認できます。実際の申請はまだ先になりますが、会社は、管轄のハローワークへ育児手当金の受給資格確認のための必要書類を提出してください。

育児休業給付金の申請

育児休暇開始後1カ月が経過したら、育児休業給付金の初回申請をお勧めします。申請に際しては、賃金台帳や母子手帳のコピーが必要になる場合もあるので、添付書類を事前に確認しておきましょう。

育休終了後の手続き

育児休業終了後、企業は社会保険の手続きを行います。

終了届の提出

育児休業中は、社会保険料が免除されます。もし、申請をして社会保険料の免除を受けていた労働者が育児休業終了予定日前に育児休業を終了したといった場合、会社は免除期間を終了させるため、日本年金機構へ育児休業の終了を届け出なければなりません。

会社が管轄年金事務所に育児休業終了に関する必要書類を提出して、育児休業中の社会保険料の免除期間が終了します。手続きに遅滞が生じないよう注意してください。

社会保険料の報酬月額変更届の提出

育児休業が終了したら、育児休業終了後の社会保険料を新たに算出します。育児休業前と職場復帰後の給与額に違いが生じた際、当該労働者が不利益を被らないようにするためです。

育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間の給与の平均額に基づいて、4カ月目以降の労働者の社会保険料を改定できる仕組みがあります。

会社は、育児休業復帰後3カ月が経過したとき、管轄の年金事務所に必要書類を提出します。給与額に見合った社会保険料を算定するために必要な処理ですので、忘れないようにしてください。

厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例の申し出

育児休業が終了したら、厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例の申し出も併せて行います。これは、短時間勤務によって社会保険料の納付額が少なくなっても、当該労働者の将来受け取る年金額が少なくならないようにするための仕組みです。

厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例の申し出は、社会保険料報酬月額変更届と同時に管轄の年金事務所へ提出します。

産休や育児休業を取得する労働者に関しての手続きについては、それぞれの段階で漏れのないように行ってください

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11.企業における育児休業取得の現状

企業が育児休業についてどのように取り組んでいるのかを調べた調査があります。平成29年度の仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業から読み解く、企業における育児休業取得の現状を簡単に解説しましょう。

女性・男性社員それぞれの育児休業の取得率

平成29年度、仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業によると、男性の育児休業取得率の平均値は、

  • 正社員は4.2%
  • 有期契約労働者は1.8%

一方、女性の育児休業取得率の平均値を見ると、

  • 正社員は95.2%
  • 有期契約労働者は89.2%

正社員、有期契約労働者共に男性の育児休業取得率の低さが際立っていると言わざるを得ません。また、男女共有期契約労働者より正社員のほうが育児休業の取得がしやすい職場環境であることも読み取れます。

出産・育児における男性社員の育児休業の取得期間

出産・育児における男性社員の育児休業の取得期間についての回答を見ると、

  • 最も取得が多い期間は「1週間未満」(58.3%)
  • これまでの取得の中で最も長かった取得期間は「1週間未満」(46.0%)
  • 男性正社員からの要望が多い期間は「わからない」(44.1%)
  • 職場や業務への影響の視点から、比較的取得しやすい最長期間は「1週間未満」(37.9%)

という結果が出ています。

この調査では、男性の休業期間の短さがはっきりと表れています。その理由として考えられるのは、職場や仕事への影響を考えると育児休業を取得しにくい、男性社員自身が育児休業をどのように利用していいのか困惑している状況などが挙げられるでしょう。

調査結果から、男性の育児休業の取得が思うように進んでいない現状が浮き彫りになりました

12.企業のワークライフバランス支援の具体例

企業は、雇用している労働者の仕事と育児の両立を支援していく必要があります。男性社員の中でも、仕事と育児の両立に関する支援の必要性についての調査で、55.9%が「感じている」「まあ感じている」と回答しています。

ワークライフバランスの重要性が高まる中で、企業自体も新たなフレームワークを構築していく必要に迫られているのです。

法定を上回る対応をしている企業数

育児に関する制度などで法定を上回る対応を行っているかを調査した結果を見てみると、「行っている」が32.8%という結果が出ています。

また、 従業員規模別に見ると「301人以上」の従業員規模で育児に関する制度などで法定を上回る対応を「行っている」割合が最も高く、56.4%でした。

この結果から、従業員規模の大きい大企業では、育児に関する制度を設けたり法定以上の施策を実行したりするなど、積極的な対応をしていると分かります。

企業事例:協和「子育て100万円プラン」

協和は、「子育て100万円プラン」を実施している企業です。

もともと協和では、子育てに関する施策を積極的に推進しており、育児で1年、2年休んでも、職場復帰の際には正社員の地位が約束されているといった、育児休業を取得した労働者の支援に取り組んでいました。

2014年6月からは協和グループに3年以上在籍する労働者の子ども(健康保険の被扶養者)を対象に「子育て100万円プラン」を導入しました。

  • 誕生祝い30万円
  • 小学校入学祝い30万円とランドセル
  • 中学校入学祝い20万円
  • 高校入学祝い20万円

計100万円を支給する制度で、子育てに必要な費用を成長段階に応じて補助し、労働者の育児を支援する施策として非常に注目されています。

男性社員が育児休業を取得しやすい雰囲気

男性社員が育児休業を取得するには、育児休業が取得しやすい雰囲気がポイントになります。

育児休業を取得しやすい雰囲気別で男性育児休業取得率の調査結果を見ると、男性が育児休業を取得しやすい企業の育児休業取得率は、「15%以上~100%」が22.1%を占めていました。

男性が育児休業を取得しやすい雰囲気がある企業では、育児休業について上司や同僚なども含めた職場の理解が進んでいると推測できます。つまり、職場の理解がベースとなって男性正社員の育児休業取得率が高くなるのです。

企業事例:日本ユニシス

日本ユニシスは、 厚生労働省主催の「イクメン企業アワード2018 両立支援部門」においてグランプリを受賞した企業です。

男性の育休取得率や育休取得日数の両方に関して、時間はかかりながらもそれぞれの値を増加させています。急激な変革ではありませんが、社内の意識を徐々に改革していった結果、男性が育休を取りやすい企業風土を醸成しつつあるのです。

そして、その結果が「イクメン企業アワード2018 両立支援部門」のグランプリにつながったといえるでしょう。

企業は、男性も育児休業を取得できるように育休取得率や育休取得日数のアップに向けて積極的に支援していく必要があります

13.両立支援等助成金とは?

政府が行っている、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業に対する助成金は下記の6種類です。

  1. 出生時両立支援コース
  2. 介護離職防止支援コース
  3. 育児休業等支援コース
  4. 再雇用者評価処遇コース
  5. 事業所内保育施設コース
  6. 女性活躍加速化コース

企業や経営者は、両立支援等助成金を活用しながら仕事と家庭生活の両立の積極的支援を考えることが必要です

14.働き方改革と仕事・育児の両立支援

働き方改革の中でも、仕事と育児の両立を積極的に支援しています。働き方改革のために実施されている取り組みとして評価が高い順に見てみると、

  • 有給休暇の取得促進の呼びかけ:20.6%
  • ノー残業デーの設定:15.9%
  • 「担当者が不在時に他の人が仕事を代替できる体制づくり:13.2%

徐々にではありますが、仕事と育児を多角的な視点から支援していく体制が構築されつつあるのです。企業は改革の趣旨をよく理解して、労働者が働きやすい制度の設計や環境の整備に力を注ぐことが求められています。

働き方改革でも仕事と育児の両立支援を積極的に推進しています。企業にも積極的な取り組みが期待されています