標準報酬月額表とは?【見方を解説】厚生年金、計算表

標準報酬月額表とは、報酬月額の区分ごとに設定されている金額票のことです。ここでは標準月額表の見方や着目すべきポイントなどについて解説します。

1.標準報酬月額表とは?

標準報酬月額表とは、報酬月額に応じて区分された金額表のこと。厚生年金は32段階、健康保険は50段階の等級に区分されています。

標準報酬月額は、あくまで社会保険料を計算しやすくするための金額です。実際に支給された報酬の額とは完全に一致しないため注意しましょう。

標準月額報酬表に係る標準報酬制について

平成27年10月より、給与から控除される保険料年金、短期給付などの算定基礎は「標準報酬制」となりました。

それまでの「手当率制」に代わり原則、年に1回、4月から6月までの報酬平均額をもとに「標準報酬月額」を算出します。そしてその額をその年の9月から翌8月までの標準報酬月額として保険料などの算定基礎とするのです。

標準報酬月額表とは報酬月額に応じて「厚生年金は32段階、健康保険は50段階」と区分を設け、それを表にしたものとなります

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2.標準報酬月額表の見方を解説

標準報酬月額表はどのような点を見ればよいのでしょう。ここでは健康保険と厚生年金および介護保険、そして労使折半という4つの側面から、標準報酬月額表の見方について解説します。

健康保険の等級は標準報酬月額によって50の等級に分けられる

健康保険の等級は、標準報酬月額によって第1級の5万8,000円から、第50級の139万円まで50の等級に分けられています。詳細金額は都道府県ごとに作成されているため、確認が必要です。

標準報酬月額の上限該当者が3月31日時点で全被保険者の1.5%を超えた場合、その年の9月1日から標準報酬月額の上限を改定できます。

厚生年金の等級は標準報酬月額によって31の等級に分けられる

厚生年金の等級も、健康保険と同じく標準報酬月額によって区分されています。厚生年金の場合は1等級の8万8千円から、32等級の65万円までの計32等級です。被保険者の標準報酬月額は、事業主から提出された届書にもとづいて日本年金機構が決定します。

介護保険における第2号被保険者に関して

「介護保険の第2号被保険者」とは、40歳以上64歳未満の医療保険加入者のこと。第2号被保険者は、加齢に伴う疾病が原因で要介護(要支援)の認定を受けた際、介護サービスを受けられます。

健康保険料率(9.87%)に介護保険料率(1.79%)が加わる計算です。40歳になった月から、医療保険料と一体的に徴収されます。

労使折半について

健康保険および厚生年金保険は、会社と社員(被保険者)とで半分ずつ負担します。これを「労使折半」と呼ぶのです。会社は社員の個人負担額と合わせて、協会けんぽや年金事務所に毎月納付しなければなりません。

なお自営業者を対象に設けられた国民健康保険や国民年金は本人が「使」であるため、当然ながら労使折半の概念はありません。

健康保険と厚生年金、ともに保険料率がたびたび改正されます。年度末に行政機関から送付される資料を忘れずに確認しましょう

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3.標準報酬月額表で着目すべきポイントとは?

標準報酬月額表を確認する際、どのような点に注意すればよいのでしょう。ここでは以下4つの視点から、標準報酬月額表で着目すべきポイントについて解説します。

  1. 厚生年金基金に加入している場合の厚生年金保険料率
  2. 納入告知書の保険料について
  3. 賞与にかかる保険料について
  4. 被保険者負担分に端数が存在するとき

①厚生年金基金に加入している場合の厚生年金保険料率

厚生年金基金とは、厚生年金に上乗せして給付を行う企業年金基金の運営組織です。加入している場合、厚生年金保険料は基金ごとに定められている「免除保険料率」を控除した利率(2.4%から5.0%)が適用されます。

料率は加入している基金によって異なるため、免除保険料率および厚生年金基金の掛金は加入する厚生年金基金に確認する必要があるのです。

免除保険料率とは

免除保険料率とは、厚生年金基金に加入している事業主および加入員が、国に納めるのを免除される保険料率のこと。

免除保険料率は、代行部分の給付を賄うために必要な保険料率(代行保険料率)をもとにして決定され、個々の基金ごと2.4%から5.0%の範囲内で異なります。

②納入告知書の保険料について

健康保険および厚生年金保険の保険料徴収は、日本年金機構(年金事務所)が行っています。日本年金機構が事業主から提出された標準報酬月額および賞与支払等の変動に応じて、毎月20日頃送付しているのが「保険料納入告知額通知書(保険料納入告知書)」です。

この納入告知書に記載されている保険料額は、被保険者個々の保険料額を合算した金額です。また合計した金額に円未満の端数があった場合、端数を切り捨てた額が記載されます。

③賞与にかかる保険料について

賞与にかかる保険料率は原則、標準賞与額(賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額)に保険料率を乗じた金額になります。

なお年3回以下の賞与は別途保険料が徴収されるため、標準報酬月額の報酬に含まれません。年4回以上支給される賞与が、経常的に支払われる報酬の扱いになります。

健康保険の場合、標準賞与額の上限は年間573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計)。厚生年金および子ども・子育て拠出金の場合、月額150万円となります。

④被保険者負担分に端数が存在するとき

被保険者負担分、つまり標準報酬月額表における折半額の欄に1円未満の端数がある場合、どのような扱いになるのでしょう。

事業主が給与から被保険者負担分を控除する場合と、被保険者が被保険者負担分を事業主へ現金で支払う場合とで、端数の扱いに違いがあります。

  • 事業主が控除する場合:被保険者負担分の端数が50銭「以下」の場合は切り捨て、50銭を「超える」場合は切り上げて1円とする
  • 被保険者が支払う場合:被保険者負担分の端数が50銭「未満」の場合は切り捨て、50銭「以上」場合は切り上げて1円とする

被保険者負担分に端数が存在し、事業主と被保険者間で特約がある場合、その特約にもとづいて端数処理をします

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4.間違えやすい「標準報酬月額」と「標準賞与額」について

「標準報酬月額」と混同しやすいものに「標準賞与額」があります。それぞれ報酬・賞与の対象となるものが異なるため、しっかりと区別しておきましょう。ここでは「標準報酬月額」と「標準賞与額」の違いについて解説します。

標準報酬月額について

これまで述べてきたとおり「標準報酬月額」は労使折半で負担する厚生年金保険・健康保険・介護保険を算出する基準となる報酬です。被保険者が事業主から受ける毎月の報酬月額を、厚生年金保険は32等級、健康保険は50等級に区分しています。

標準報酬月額は、以下3つのタイミングで決定されるのです。

  1. 資格取得時:社員を雇用し、就業規則や労働契約などにもとづいた報酬月額を届け出るとき
  2. 定時決定:4月から6月に支払った報酬月額の平均にもとづいて決める
  3. 随時改定:昇給や降給によって報酬月額が大幅に変動した場合

報酬として扱われるもの

標準報酬の対象となるのは、基本給のほか以下の各種手当です。

  • 勤務地手当
  • 家族手当
  • 通勤手当(課税非課税を問わず)
  • 役付手当
  • 住宅手当
  • 残業手当

いずれも労働の対償として事業所から現金もしくは現物で支給されるものが報酬として扱われます。標準報酬には、先に触れた年4回以上支給される賞与も含まれます。

標準賞与額について

「標準賞与額」とは、被保険者期間中に支給された賞与額から1,000円未満を切り捨てた額のこと。たとえば年間の賞与支給総額が98万5,000円だった場合、標準賞与額は98万円になるのです。

標準賞与額には、健康保険の場合は年間累計額573万円、厚生年金保険の場合は1か月あたり150万円と、それぞれに上限が定められています。また育児休業等によって保険料免除期間に支払われた賞与についても、年間累計額に含まれます。

賞与として扱われるもの

標準賞与として扱われるのは、被保険者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給すべてです。賃金や給料、俸給や賞与などの名称は問われません。

ボーナスや繁忙手当といった金銭によるもののほか、自社製品といった金銭以外で支給されるもの(金銭で換算する)も賞与の対象となります。なお結婚祝金や大入袋など、労働の対象にならないものは含まれません。

標準報酬月額の上限改定について

標準報酬月額の上限は、健康保険と厚生年金、ともに一定の基準を満たしている場合に引き上げられます。

  • 健康保険:標準報酬月額の上限該当者が、3月31日現在で全被保険者の1.5%を超えた場合は、その年の9月1日から一定範囲で上限の改定が可能
  • 厚生年金:年度末における全厚生年金被保険者の標準報酬月額平均を2倍した額が、標準報酬月額の上限を上回る状態が続く場合

標準報酬月額の決定について

先にも触れた標準報酬月額の決め方について、もう少し掘り下げてみましょう。標準報酬月額の決め方は、4つです。

  1. 随時改定
  2. 定時決定
  3. 被保険者資格の取得時
  4. 育児休業といった休業を終了したとき

なおパートタイマーやアルバイトの場合、1カ月あたりの勤務日数が「17日以上かそれ未満か」によって異なります。

①随時決定

「随時改定」とは、大幅な昇給や降給などによって、後述する定時決定で適用された標準報酬月額が実態とそぐわない場合、新しい報酬月額に変更できること。改定された標準報酬月額が、次の定時決定までの標準報酬月額となります。

以下の要件を満たしている場合、随時改定による標準報酬月額の変更が可能です。

固定的賃金の変動に伴う報酬の差が、2等級以上発生している

3カ月引き続いて報酬の支払基礎日数が17日以上

②定時決定

標準報酬月額は基本、「定時決定」で決まります。4月・5月・6月の3カ月に受けた報酬平均額を等級区分にあてはめて、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定する方法です。なお以下いずれかに該当する場合、定時決定は行われません。

その年の6月1日から7月1日までのあいだに被保険者となった人

7月から9月までのいずれかの月に、随時改定または育児休業といった休業を終了した際の改定が行われる人

③被保険者資格の取得時

新規に被保険者の資格を取得した場合、標準報酬月額はどのように決まるのでしょう。この場合月給や週給など一定の期間によって報酬が定められているものについては、その報酬額を月額に換算した額となります。

また日給や時間給、出来高給などの報酬は、前月に同事業所で同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬平均額が適用されるのです。

2つのどちらでも計算できない場合、資格取得月の前1カ月間に同地方で同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬額となります。

④育児休業といった休業が終了した場合

育児休業といった休業が終了した場合(終了日において3歳に満たない子を養育する場合に限る)も、標準報酬月額の調整が行われるのです。休業中も社会保険が適用となっている場合、復帰後に見込まれる報酬と休業中の報酬に大きな差が生じると予想されます。

休業終了後3カ月の報酬平均額から算出した報酬月額と、休業前とを比べて1等級以上差が発生する場合、標準報酬月額の変更が可能です。この場合、事業主による「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出が必要になります。

標準報酬月額は基本、「定時決定」によって決まるのです。しかし定時決定時期以降に社員を採用した場合や、育児休業といった休業が終了した際の調整も可能となっています

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5.あわせて覚えておきたい「国民健康保険」と「厚生年金」について

標準報酬月額について学ぶ際、各種社会保険とあわせて理解しておきたいのが「国民健康保険」と「厚生年金」。ここでは国民健康保険の被保険者と保険料、また厚生年金の被保険者と保険料ついて解説します。

国民健康保険の被保険者

国民健康保険(通称国保)とは、すべての人が何らかの医療保険に加入すると決まっている我が国の「国民皆保険制度」の中核をなす制度のこと。

病気や怪我をした際に安心して医療を受けられるよう、加入者(被保険者)が普段から保険料を納め、地域の医療確保と健康の保持増進に貢献する制度なのです。

国民保険の加入対象(被保険者)となるのは、健康保険組合や共済組合など、会社の健康保険に加入していない下記のような人となります。

  • 自営業の人
  • 会社を退職して職場の健康保険を辞めた人
  • 職場の健康保険に加入していないパートやアルバイト

国民健康保険の保険料について

国民健康保険に加入しているすべての人に、給付を受ける権利と保険料を納める義務があります。

国民健康保険料の具体的な計算方法や保険料率は、各自治体や国民健康保険組合によって異なるものの基本「国民健康保険料=基礎(医療)分保険料+後期高齢者支援金分保険料+介護分保険料」で算出されるのです。

保険料は医療費の貴重な財源となるため、保険料が不足すると十分な給付が行えず、被保険者の医療費負担が大きくなってしまいます。必ず期日までに納めましょう。

厚生年金の被保険者

厚生年金とは、国民年金に上乗せして給付される年金のこと。原則、以下に該当する人が加入対象(被保険者)となります。

  • 厚生年金保険に加入している社員
  • 工場や商店、船舶などの適用事業所に常時使用されている社員
  • 一定の条件を満たした非正規雇用
  • 公務員

いずれも原則、入社した時点から70歳まで加入できます。またここでいう「常時使用される」とは、雇用契約書の有無と関係なく労務の対償として給与や賃金を受けるという使用関係を指すため、試用期間中の社員も加入の対象となります。

厚生年金の保険料について

厚生年金の保険料は以下の計算式で算出され、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。

  • 毎月の保険料額=標準報酬月額×保険料率
  • 賞与の保険料額=標準賞与額×保険料率

保険料率は平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月を最後に引上げが終了。現在は18.3%で固定されています。

厚生年金の保険料徴収を行うのは日本年金機構(年金事務所)です。事業主は毎月の給与および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引き、事業主負担の保険料とあわせて翌月末日までに納付しなければなりません。

日本の公的年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社等に勤務している人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています