【行き過ぎ?】ジェンダーフリーとは? 取組、問題点

世界にはまだまだ、性別による差別があふれています。その現状を解決するために、近年「ジェンダーフリー」という考えが広がってきているのです。

1.ジェンダーフリーとは?

「ジェンダーフリー」とは、社会的に決められている「男性像」や「女性像」にとらわれず、個人の意思で自由に行動や発言や選択をしていくという考え方のこと。

そもそもジェンダーとは?

「ジェンダー」は、日本語で「社会的性別」と訳されます。社会的性別とは社会一般的に考えられている「男性らしさ」や「女性らしさ」といわれる役割や行動、考え方のことで、生物学的な性別の区別ではないのです。

たとえば「男性が働いて女性が家事を行うべき」など、性別で役割を決めてしまうような考え方が社会的性別となります。ジェンダーフリーを理解するためにもまず、「ジェンダー」の意味を理解しておきましょう。

ジェンダーフリーについて

ジェンダーフリーとは、「社会的性別にとらわれず、誰もが平等かつ自由に行動できること」。仕事や生活にて、男女の社会的性別にかかわらず自由に行動や発言でき、さまざまな選択ができるようにする、という考え方や取り組みです。

世界各国でもジェンダーフリーの推進や改善が進められており、さまざまな企業がジェンダーフリーに取り組んでいます。

ジェンダーギャップ指数

「ジェンダーギャップ指数」とは、男女の格差を数値で表したもので、代表的なジェンダーフリーの指標のこと。2006年から毎年調査されており、世界経済フォーラムにて、各国のジェンダーギャップ指数がランキング形式で発表されているのです。

ジェンダーギャップ指数は、「経済・教育・健康・政治」の4分野で集計され、数値が1に近いほどジェンダーギャップが少ないことを意味します。

ジェンダーギャップ指数とは|問題点をわかりやすく解説
世界全体でよく使われるようになった「ジェンダーギャップ指数」。ジェンダーギャップ指数は男女平等格差指数とも呼ばれ、2006年から毎年発表されています。 ジェンダーギャップ指数について詳しくみていきまし...

不動の1位はアイスランド

アイスランドは、2009年から12年連続でジェンダーギャップ指数の1位を獲得した国です。

1975年時点でアイスランドは、男女の賃金格差が60%もありました。その現実に奮起した女性の90%がストライキを起こて、仕事や家事を放棄するという事件が発生したのです。

この事件をきっかけに女性の社会進出が増え、5年後にはアイスランド初の女性大統領が誕生。現在まで3人の女性大統領が誕生しており、ジェンダーギャップ改善に成功した国といえるでしょう。

日本のジェンダーギャップの現状

2021年の日本の総合ジェンダーギャップ指数は0.656。全156か国中120番目の順位で、先進国の中では最も低い順位です。前年は153か国中121位のため、ほとんど改善されていないといえるでしょう。

日本では特に政治分野のジェンダーギャップ指数が0.061と低く、その順位は世界147位です。日本女性の政治進出が少ない現状を表しているといえます。

ジェンダーフリーに関連する用語

世界中でジェンダーフリーに対する関心が高まってきたため、さまざまなジェンダーフリー関連用語を耳にするようになりました。ここでは「ジェンダーフリー」「LGBT」「ジェンダーニュートラル」という用語について説明します。

  1. ジェンダーレス
  2. LGBT
  3. ジェンダーニュートラル

①ジェンダーレス

「ジェンダーレス」は、世間に存在している社会的または文化的な性差を無くしていこうという考え方のこと。仕事や生活にて、さまざまな男女の境界を無くすことが目的です。

日本での取り組みとしては、

  • 性差を含んだ呼び方である「保母」「看護婦」を「保育士」「看護士」に訂正した
  • 学校制服で女性がスカートではなくスラックスを選択可能にした

などが挙げられます。

②LGBT

「LGBT」とは、セクシャルマイノリティ(性的少数者)の人たちを指す用語。語源は「Lesbian(レズビアン)」「Gay(ゲイ)」「Bisexual(バイセクシュアル)」「Transgender(トランスジェンダー)」の頭文字です。

ジェンダーフリーには、LGBTへの配慮や取り組みも含まれます。LGBTの尊厳や社会運動では「レインボー(虹)」モチーフがよく使われており、そこには多様性や調和などの意味が込められているのです。

③ジェンダーニュートラル

「ジェンダーニュートラル」とは、性別という垣根を超えて中立を目指す考え方のこと。ジェンダーフリーと似ているものの、こちらは男女の平等に焦点を当てています。

アメリカのニューヨークでは、2017年から共有スペースのないすべてのトイレはジェンダーニュートラルにすると定められ、あらゆる性別の人がこのトイレを利用できるようにしました。

また性別を気にしなくてもいいようなデザインの化粧品や、ファッションが増えているのもジェンダーニュートラルのひとつといえるでしょう。

ジェンダーフリーという考え方が世界で広まり、日常でもさまざまなジェンダー用語が使われるようになりました。しかし日本におけるジェンダーフリーへの取り組みは、十分とはいえません

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2.ジェンダーフリーが抱える課題

ジェンダーフリーの実現を目指すにあたり、日本でも多くの問題を抱えています。とくに日本は「政治」と「経済」のジェンダーギャップが高く、働き方に関する課題は山積みです。ここではジェンダーフリーが抱える2つの課題について説明します。

  1. 男女間の賃金格差
  2. 役職の男女比

①男女間の賃金格差

男女間の賃金格差は改善すべき大きな課題です。年々格差は埋まりつつあるものの、2019年の調査では、男性の賃金を100%とした場合、女性の賃金割合が74.3%と男女で25%もの賃金格差が見られているのです。

近年、格差を埋めるためワークライフバランスに配慮している企業も増えています。そこでは女性が結婚や出産した際にも仕事が続けられるような体制や制度を導入しているのです。

②役職の男女比

日本の女性管理者の割合は世界でも最低水準となっており、大きな課題となっています。

諸外国ではさまざまな対策がなされているのです。たとえば「取締役会の女性比率を25%以上に増やす制度」「女性管理職の比率が60%未満の企業に改善を命じるといった措置」など。日本でもこのような制度や政策を推進していく必要があるでしょう。

日本が抱えるジェンダーフリーの課題は多く、とくに賃金格差と女性管理職の割合は大きな問題です。格差を埋めるには、国をあげた改革が必要でしょう

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3.企業におけるジェンダーフリーの意義

ジェンダーフリーへの関心が高まる昨今、日本の企業でもジェンダーフリーに配慮した取り組みが多く実施され、その意義が見出されています。ここでは、企業におけるジェンダーフリーの意義について説明します。

  1. ダイバーシティ経営の推進
  2. 幅広い人材の確保
  3. 国際競争力への対応
  4. 投資先としての価値向上

①ダイバーシティ経営の推進

ダイバーシティとは性別や年齢、キャリアや経験や働き方などにこだわらず、多様な人材を採用し、それぞれの能力を最大限に発揮できるような機会を提供すること

ダイバーシティ経営は、そのような多様な人材を企業活動や経営戦略などに生かし、企業価値の創造や向上につなげていくことです。

②幅広い人材の確保

ジェンダーフリーを取り入れると、優秀な人材を確保できます。労働人口の減少が進む日本にて優秀な人材を確保するには、性別や年齢や人種にとらわれない採用が必要でしょう。そのためには管理職や採用担当者の考え方から改革していくことが大切です。

ジェンダーフリーに配慮した社内ガイドラインや規則などの整備、研修やトレーニングなどを実施する企業も増えています。

③国際競争力への対応

日本の国際競争力調査では、「労働力の多様性」が低い水準となっており、現在も下がり続けています。これは日本の企業がグローバル化に対応できていない現況の表れでしょう。

ジェンダーフリーを推進して優秀な人材を確保し、自社のグローバル化を目指してICT化や組織改革などを行う必要があります。

④投資先としての価値向上

ジェンダーフリーの推進をはじめとしたダイバーシティ経営は、海外では企業価値や株主価値の源泉とされており、これは投資の世界でも重視されています。

近年、日本国内でもこの傾向が強く見られるようになりました。投資先としての価値を向上させるという点でも、ジェンダーフリーの取り組みは意義があるといえるでしょう。

企業がジェンダーフリーを取り入れる意義は、「ダイバーシティ経営の推進」「幅広い人材の確保」「国際競争力への対応」「投資先としての価値向上」などです

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4.ジェンダーフリーに関する国や自治体の取り組み

国や自治体、企業などでジェンダーフリーに向けてさまざまな取り組みが実施されており、なかには自治体独自のものもあるようです。ここではジェンダーフリーに関する国や各自治体の取り組みについて説明します。

政府

政府が行っているジェンダーフリーの取り組みとして挙げられるのは、2015年に制定された「女性活躍推進法」。女性活躍推進法とは仕事で活躍したいと思う女性が、その個性や能力をしっかりと発揮できるようにする法律です。

法律の制定後、事業主に対して、女性の活躍に関する課題の分析や数値目標の設定、それを達成するための計画の公表などが求められるようになりました。

東京都

東京都の取り組みは「都市間ネットワーク(CHANGE)」の設立です。都市間ネットワーク(CHANGE)とは、男女平等に参画できるようにする世界的な取り組みのこと。

目的はバルセロナやフリータウン、ロンドンやロサンゼルス、メキシコシティそして東京都を共同設立都市として、ジェンダーフリーに関する取り組みや手法などを共有することです。

福岡県

福岡県の事例は「福岡県男女共同参画推進条例」。これはジェンダーフリーに関する男女の性差をなくすことを目的とした条文です。条例にもとづき、福岡では女性の就労状況や地域における男女共同参画状況などを調査して公表しています。

実は、条例が最後に更新されたのは2002年。福岡県はかなり前からジェンダーフリーの考え方を浸透させられるよう、積極的に取り組んでいたとわかります。

兵庫県豊岡市

兵庫県豊岡市では、多様性を受け入れてジェンダーギャップが解消できるまちづくりを行っています。兵庫県豊岡市の人口減少の問題を考えるにあたって、「若い女性が豊岡市を選んでいない」ことが一番の原因と判明したためです。

女性が活躍できる場を増やすためには、女性の活躍を「見える化」する必要があるとして、ワークイノベーションを推進。現在も子育て中の女性の就労やキャリア形成をサポートし、働きやすい職場づくりを進めています。

広島県広島市

広島県広島市は2006年から毎年「広島市男女共同参画推進事業者表彰」を行っています。これは女性の能力発揮や職域拡大、仕事と家庭の両立などを積極的に支援した企業を表彰する取り組みです。

2020年の表彰企業は、企業内保育所を設置して育休からの復職の支援を行い、女性管理職の割合で60%超を達成しています。

企業だけではなく、国や県、市町村単位でもジェンダーフリーに関するさまざまな取り組みが行われているのです

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5.ジェンダーフリーに関する企業での取り組み

ジェンダーフリーの取り組みを行っている企業も増えており、1社で複数の取り組みを進めている企業も少なくありません。ここでは3社の取り組みについて説明します。

  1. 資生堂
  2. P&G
  3. 大阪ガス

①資生堂

「資生堂」は化粧品を扱っている企業というのもあり、ターゲットにしている顧客の実に9割が女性です。また社員の7割を女性が占めています。女性と密接な関係を持っている企業がゆえに、ジェンダーフリーに関する取り組みを積極的に行っているのです。

2000年から男女共同参画のため「ポジティブアクション5つの目標」を定め、さらに「ジェンダーフリー委員会」を設置しました。そこでは女性が幹部に昇進できるような仕組みや風土づくりをしています。

②P&G

「P&G」は、ジェンダーフリーはもちろん、多種多様な人材を確保できるよう数多くの政策に取り組んでいます。

たとえば毎年3月に行う「社外スピーカーによるダイバーシティとインクルージョンの重要性に関する講演会」や、ダイバーシティ経営を推進するために研修の開催、在宅勤務を行えるような制度など。こうした取り組みにより、優秀な人材が確保されました。

③大阪ガス

「大阪ガス」では、LGBTに関する取り組みを積極的に行っています。企業内でも企業行動基準に「人権の尊重」をうたっており、就業規則にこそ明記されていないものの、あらゆる性差別の禁止を周知しています。

さらに本人の心の性に合わせた制服の着用も認めているのです。ロッカーや更衣室、トイレに関してもジェンダーフリーに配慮した設備を用意しています。

世間でもジェンダーフリーの認知はどんどん広がってきているのです。今後もジェンダーフリーに力を入れる企業は増えていくでしょう

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6.企業がジェンダーフリーに取り組むために必要なこと

企業がジェンダーフリーに取り組むためには「ポジティブアクション」が必要で、その具体的な内訳は下記の3つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 社内での意識改革
  2. 多様な人材の採用
  3. 柔軟な働き方の推進

①社内での意識改革

社員に対しては、意識改革が必要です。ジェンダーフリーの考えが浸透していない企業で取り組みを行うためにもまず、性別による「こうあるべき」という考え方を取り払いましょう。

ただし取り組みを行っても全員がすぐ理解できるとは限りません。社員に向けて研修を行う、あるいは学習の機会を与えるといった対策も必要でしょう。

②多様な人材の採用

採用する際、長く働ける人材を選びがちですが、年齢や性別、国籍にかかわらず多様な人材を採用しましょう。またその社員が成長できる環境や、活躍できる場づくりも必要です。

こうした取り組みによってジェンダーフリーはもちろん、グローバル化にも対応できるようになり、ダイバーシティ経営の推進にもつながるでしょう。

③柔軟な働き方の推進

女性に活躍の場を広げるためには、ワークライフバランスの拡充、つまり柔軟な働き方の推進が不可欠でしょう。女性には妊娠や出産など、仕事に影響するライフイベントが起こる可能性も高いです。

その際在宅ワークへの切り替えや出勤時間の調整といった柔軟に対応できるよう、あらかじめ環境や体制づくりを進めておきましょう。

企業はジェンダーフリーを推進するために必要なことは、「社内での意識改革」「多様な人材の採用」「柔軟な働き方の推進」の3つです