EVPとは? 背景やメリット、例や作成のステップ、手順、事例について

EVPとは、従業員に対して企業が提案できる価値のこと。英語の「Employee Value Proposition」の頭文字を取った略語で、直訳すると「従業員価値提案」を意味するのです。

「EVP」の定義や背景、メリット、事例や作成のステップ、手順などを示しながら詳しくご紹介します。

1.EVPとは?

EVPとは、企業が従業員に対して提供できる価値のこと。英語の「Employee Value Proposition」の頭文字を取った略語で、直訳すると「従業員価値提案」を意味します。

長らく浸透していた「従業員は企業にどのような利益をもたらすか」という概念ではなく「企業が従業員に対してどれくらいの給料や、どのような福利厚生を提供できるか」ということを考えるのがEVPなのです。

EVPの意味

ここでは、EVPの正式名称である「Employee Value Proposition」を掘り下げます。

Employeeの意味

英語の「Employee」を直訳した場合、会社員や従業員、労働者、社員、被雇用者を意味します。

Valueの意味

英語の「Value」を直訳した場合、価値、進化、有用性、真価、価格、代価、値打ち、値打ち相当の物を意味します。

Propositionの意味

英語の「Proposition」を直訳した場合、主張や計画、提案、提示、案、陳述、条件の提示を意味します。

「Employee Value Proposition」の頭文字を取ったものがEVP。従業員に企業が提案できる価値を意味します

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2.EVPが広まった背景

EVPが近年広まっている背景にあるのは、従来の終身雇用制度や年功序列制度にメリットを感じなくなった従業員が転職活動をし、転職市場が活性化しているという状況です。

また社員の離職率の高さに対するリテンションや、新規採用における優秀な人材の獲得のためともいえます。

人材の不本意な流出を避けるために、働きがいや福利厚生をより一層充実させるなど、積極的にEVPの向上を実践する企業が増加する傾向にあるのです。

社員の離職率の高さに対するリテンションや優秀な人材の獲得などが、EVPの広まる背景にあると分かります

3.EVPのメリット

ここでは、EVPのメリットについて具体的に見ていきましょう。

従業員満足度と定着率の向上

EVPという明確なメリットを享受できることで、従業員の満足度は高まります。それによって離職率の低下と定着率の向上を促進できるでしょう。

さらにモチベーションの向上や働きがいに結び付くため、「できるだけ長くこの会社で働きたい」と希望する社員の増加にもつながります。

優秀な人材の確保

転職が決して珍しいことではなく、人員の流動が目立つ欧米諸国では、採用ブランドのひとつとしてEVP構築に注力する企業も多く見られます。企業としての魅力を応募者に認知してもらうため、会社案内などで詳しく記載するケースも増えているのです。

EVPによって引き起こされる採用ブランドが優秀な人材確保の呼び水になる、と言っても過言ではありません。

ステークホルダーのイメージアップ

会社として何を大切にしているか、どういった行動をする従業員が評価されるのか、内容を掲げるだけでは伝わりません。

従業員へ提供する価値は、従業員からも行動や成果として返ってくる、つまり、双方が価値提供を行い続けることが重要です。

会社として大事にしていること、このような会社にしていきたいということは、常に経営理念や行動指針とリンクしているもの。EVPを明確に設けることで、会社理念の浸透を促進できます。

EVPには社員の離職を防ぐだけでなく、優秀な人材の確保や、ステークホルダーのイメージアップというメリットがあります

4.EVPの例、たとえば何がある?

EVPにはどのような例があるのでしょうか。見ていきましょう。

手当や昇給

EVPの代表的な例として「手当」や「昇給」があります。当然ながら従業員が企業で働く最大の目的は、「お金を稼ぐ」ことといっても過言ではありません。つまり給与やボーナスは、EVPとして最も即効性がある要因のひとつだと考えられるのです。

とはいえ金銭的なメリットのみでは、中長期的な効果を望むのは難しいもの。オリジナル手当の導入、昇給の機会、回数の見直しなども不可欠でしょう。

勤務体制の充実

育児中の女性社員に向けた短時間勤務体制の導入、本部から離れた場所へのサテライトオフィスの設置、出社しなくとも自宅で業務を円滑に行えるリモートワークの導入などが代表的な例です。

働き方の見直しが注目される昨今、さまざまな働き方に対応できる勤務体制の充実は、企業のEVPにとって重要な要素となるでしょう。

休暇

すでに予定されている企業の休日や有給休暇の見直しだけでなく、新たにオリジナルの休暇を設定するという取り組みも必要です。

働きがいのある仕事は、従業員にとって大きなモチベーションのひとつになるでしょう。しかし一方でプライベートの充実や資格取得の勉強、きちんと休む、などに費やす時間も必要です。

そのため、EVPの提供を強化する企業の中には、新規の休暇の設定を行うケースが多く見られます。

キャリア開発

企業が全面的に、社員のキャリアアップやキャリアチェンジの実現に協力すると、中長期的な人材育成につながります。継続すれば、最終的には生産性向上も図れるでしょう。

キャリア開発には研修の提供、在籍する年数を問わず希望する業務に就ける機会の提供などがあります。企業全体で社員キャリアをサポートしていきましょう。

相談窓口

いくら働きがいのある仕事に就けたとしても、精神面・体力面で疲労を感じてしまう社員も昨今では少なくありません。その一方で、悩みを抱えても同僚や上司に直接相談することに抵抗を覚える社員も多いとされています。

企業内に誰もが相談できる窓口を設置し、産業カウンセラーと話し会える場所や機会を設けることも必要です。

EVPには給与のアップだけでなく、新規の休暇の設置やキャリア開発などさまざまなものがあると分かります

5.EVPを作成するステップ、流れ、手順

ここでは実際にEVPを作成するステップや流れ、手順などを見ていきましょう。

自社の分析

EVPを構築する際、自社の分析は非常に重要です。

現状の価値を調べる

まず、現状を知るために、自社の価値を分析します。

社員がその企業で働く目的は何か、ワークライフバランスを取ることができるのか、また風通しが良い社風であるのかなどについて細かく分析しましょう。社内の部署やチームに対して、会社で働きたいと思う理由などをヒアリングするのも有効とされています。

方向性を定める

明確な企業体制の方向性を定めることも重要です。そのためにも、企業の経営方針や事業内容、さらに長期的な展望などを細かく洗い出しましょう。

洗い出された展望や課題に向けてどのように向かっていくのか、またそれにはどのような計画や期間、適切な人材確保が必要なのかを綿密に分析することも不可欠です。

他社や従業員の調査

またEVPを構築するにあたっては、他社や従業員の調査も必要となります。

他社の調査

他社では具体的にどのようなEVPを提供しているのか、それに対して自社で取り入れられそうなものはあるのか、という調査も欠かせません。

競合含めた他社が行う事例をピックアップし、企業が従業員への付加価値提案として導入しているさまざまな制度をチェックします。

社内公募制度などの人事制度だけでなく、リモートワークなどフレキシブルな就業形態、ワークライフバランスなどの調査も併せて行うとよいでしょう。

従業員の調査

実際に企業で働く従業員に対してアンケートを実施することも重要です。実施するアンケートでは、従業員がその企業のどのような点に満足しているのか、どのようなEVPを欲しているのかを調べます。

結果の分析が終わったら、アンケートの回答に基づきEVPとなる要素をまとめていくのです。しかしEVPは一度つくったら完了ではありません。見直しを適宜実施し、従業員の要望を組み込みながら実情に沿ったものか、確認していきましょう。

EVPの絞り込み

社内で会議やミーティングを開き、上記で挙げた社内アンケートや、従業員へのヒアリングによって得た情報に基づいて、実際にどのようなEVPを導入すべきか、新たな有効なアイデアはないかを絞り込みます。

そこから会社の経営方針や中長期的な将来への展望などを視野に入れながら、洗い出されたアイデアを絞り込みましょう。

EVPの決定と構築

ここでは、実際にEVPを決定し、社員が必要とする制度や体制などを構築していきます。同時に適切な人材配置も行っていきましょう。その際、企業の価値や文化、風土を反映することも重要です。

また企業が実際に提供できる要素や、今後向かっていくべき方向性も確認します。それぞれの項目を抽出し、フレキシブルな内容になるよう整えながら、企業として何ができるかを決定していきましょう。

EVPの周知

構築が完了した後は、決定したEVPを社内外に広く周知し、理解を深めてもらうように進めます。周知は企業のホームページやウェブサイトだけでなく求人媒体や各種SNS、採用研修、企業説明におけるムービーや資料などで幅広く行いましょう。

EVPは、採用時におけるプロセスに活用するだけでなく、その後のキャリア開発や研修などに積極的に組み込むことが有効だと考えられています。

PDCAサイクルを意識

生産技術における品質管理などの継続的改善手法、いわゆるPDCAサイクルを意識することも必要です。PDCAとは、Plan→ Do→ Check→ Actという4段階によって業務の継続的な改善を目指した手法のこと。作成したEVPはこのサイクルで活用しましょう。

周知して終わりではなく、定期的に分析や調査を行い、再度EVPの決定や構築を進めていくことが重要なのです。

EVPを構築する際は、適切なステップを踏むだけでなく、PDCAサイクルを意識することも重要です

6.EVPの事例

ここでは実際に展開されている、さまざまな企業の事例をご紹介します。

ソニー

ソニーでは社員自身の意思による異動を目指す「社内募集制度」や、兼務によってさらなる成長を狙う「キャリアプラス制度」、仕事の成果にオファーが届く「FA制度」など、社員の意思ややる気を尊重する体制が整っています。

また革新的な商品の創出を目的とした研修を幅広く実施したり、社員のライフスタイルに合わせた一定の配慮やさまざまな施策を提供し続けたりして、多様性の推進に注力しているのです。

サイバーエージェント

サイバーエージェントでは女性社員が出産・育児の後でも、それまでと同様に働くことができる就業環境を提供しています。

オフィスの最寄り駅から2駅以内に住む従業員に補助金を支給する「2駅ルール」、入社3年以上から年5日の有給休暇を取得できる「リフレッシュ休暇 休んでファイブ」など独自の体制を用意。

ワークライフバランスの推進を図るだけでなく、エンジニアの支援や社内部署異動公募など、従業員のキャリア育成に力を入れています。

マクドナルド

マクドナルドでは、全世界共通の教育システム「ハンバーガー大学」や独自の人事評価制度などを構築しています。全世界で共通する教育機関を設置し、社員の育成に力を入れているのです。

またフレックスタイムや在宅勤務などのワークライフバランス、キャリアアップなどの制度をEVPとして導入。社員の成長の機会を提供し、すべての社員を尊重するという想いが込められた「People Promise(ピープルプロミス)」を掲げています。

ユナイテッドアローズ

ユナイテッドアローズは社員の価値の創造を目的とした、「いきいきと働ける職場」「公正公平な職場環境」「従業員の健康と安全」「人材育成の環境作り」という4つのポイントでEVPを構築しています。

また独自の教育システム「束矢大學」導入や、幅広いキャリアチャレンジを狙うキャリア自己申告制度、内部通報制度や目標管理制度などを設けているのです。さらに、社内における意識調査なども積極的に取り組んでおり、注目を集めています。

会社それぞれのEVPを見ると、ユニークかつ斬新な取り組みが構築されていると分かります