雇い止めとは?【わかりやすく解説】規定、要件、解雇との違い

雇い止めとは、有期労働契約者の期間満了をもって労働契約の更新を拒否することです。ここでは解雇との違いや雇い止めの通告方法、無効になるケースや注意点などについて説明します。

1.雇い止めとは?

雇い止めとは労働期間の定めがある非正規雇用の労働者(有期労働契約者)に対し、労働契約の期間終了時に契約の更新を拒むことです。近年では「派遣切り」と呼ばれ社会問題となっています。

労働契約期間が終了する際に会社が期間を延長せず、契約を終了させる雇い止めですが、一時的な仕事や季節限定の仕事などは、毎年働いていたとしても雇い止めの対象には含まれません。お歳暮の時期限定のレジ打ちや、年末年始だけのアルバイトなどがこれに該当します。

コロナ渦で増加傾向

2020年代に世界的な流行となった新型コロナウイルスの感染拡大が、解雇や雇い止めの増加に拍車をかけました。厚生労働省の調査によれば、2020年に新型コロナウイルス拡大の影響で解雇や雇い止めにあった労働者はおよそ8万人と報告されています。業種別にみるともっとも多いのは製造業、以下小売業、飲食業、宿泊業と続いています。

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2.雇い止めと解雇の違い

雇い止めと混同されがちな用語に「解雇」が挙げられます。雇い止めでは従業員の意向にかかわらず、使用者が有期労働契約の更新をしないのに対して、解雇では使用者の解約権行使による一方的な労働契約の解約を意味しています。

契約満了後に打ち切ることを雇い止め、使用者都合で契約を打ち切ることを解雇と区別するのが一般的です。

解雇に近い不当なものもある

契約の終了に際して、会社側と従業員側の双方が合意していれば問題はありません。しかしなかには事実上の解雇に近い、不当な扱いもあります。

たとえば1年の雇用契約で6年間更新し続け、今後も当然更新されるものと思っていた雇用契約が突然更新を打ち切られるといった事例です。ほかにも労働者にとって契約の更新を当然のものと考える事由があったにもかかわらず雇用契約が更新されなかった事例などが後を絶ちません。

雇い止めの対象となる雇用形態

後述する「派遣切り」の扱いに代表されるように、雇い止めの対象となりやすいのが有期労働契約を締結している派遣労働者です。派遣社員はもともと決まった期間での契約となっていることが多く、無期雇用契約の従業員に比べるとどうしても不利益を被りやすくなります。また雇用主も派遣先ではなく派遣元となるため、同じ内容の仕事をしていても正規雇用の社員に比べて労働条件が低いこともあります。

派遣切りとの違い

「派遣切り」とは派遣先の都合で派遣契約を打ち切ることです。ほかにも派遣先企業ではなく雇用されている派遣会社や派遣事業者から更新を拒否されること、解雇されることを指して「派遣切り」という場合もあります。

一方、契約が終わっても契約を更新せず、満了して打ち切るのが「雇い止め」です。派遣切りと雇い止めは同じ意味で使用されることが多いですが、派遣切りは雇い止めの一種と考えるのが一般的です。

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3.雇い止めの要件

企業が雇い止めを実施する際は、いくつかの要件を満たす必要があります。雇い止めの対象となるのは以下要件に該当する労働者です。

  1. 期間の定めのある契約更新を3回以上更新している
  2. 契約期間(1年以下)の労働契約を更新、または反復更新し、最初に労働契約を締結してから継続して通算1年を超えている
  3. 1年を超える契約期間の労働契約を締結している
  4. 有期雇用契約の上限(3年または5年)に達している
  5. 契約期間を設けていない契約を締結し、その有期雇用契約が満了している

雇い止めの実施はトラブルが起こりやすいため、契約を締結する際にしっかりと確認しておくことが重要です。有期雇用契約社員向けの就業規則を用意したり、労働契約書に有期雇用契約社員規定を添付したりすると安心でしょう。

雇い止めの予告

詳細は後述しますが、使用者が有期労働契約を更新しない場合は、その旨を労働者に予告しなければなりません。あらかじめ契約を更新しない旨が明示されていない限り、使用者は少なくとも契約期間が満了する日の30日前までにその予告をしなければならないのです。

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4.雇い止めの通告方法

使用者が有期労働契約を更新しない労働者に「雇い止めの予告」を行う際は、面談あるいは書面でその旨を通知します。円満に雇用契約を終了させるためには、ルールをしっかりと理解した適切な対応が欠かせません。ここでは雇い止めの通告方法とそれぞれの注意点について説明します。

面談

面談で雇い止めの通告をする方法です。労働者のその後の生活を考慮し、遅くとも契約満了の1か月前までに直接伝えます。

面談の席で労働者側が雇い止めを不服とした場合、契約の更新をしない理由について公的に明記した証明書を請求されることがあります。その場合、使用者は契約期間満了以外の理由を記載した証明書をすみやかに用意しなければなりません。

書類

雇い止めの通告を書面で行う方法もあります。事業縮小のためや担当していた業務の終了、中止にともなってなど、契約を更新しない理由を明記した「雇い止め通知書」を提示する方法です。

契約終了時のトラブルを防ぐため、契約の不更新を告知した際に受領のサインをもらっておくと安心です。なお「雇い止め通知書」は公式な文書となるため、対象者名や会社名、代表者印などに漏れがないよう注意する必要があります。

テンプレートの使用は可能

「雇い止め通知書」を作成する際にテンプレートが活用できることを覚えておくといいでしょう。インターネット上には「雇い止め通知書」の雛型や参考文例が多数掲載されています。契約満了とは別の理由を明示する際にテンプレートを参考にすれば、公的書面にふさわしい文面が簡単に作成できるのです。

電話やメールでの通知について

雇い止めの通告方法に法的な規定はありませんが、通知の性質上、口頭に加えて書面での通知が望ましいとされています。通告したことを明確にするためにも、雇い止めの理由を明示した通知書を作成しておくと安心です。

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5.雇い止め法理とは?

雇い止めを法的に制限することを「雇い止め法理」といいます。これは有期雇用労働契約をしている労働者を保護する目的で、雇い止めの実施に一定の制限をかける考え方です。雇い止めに関するルールを定めたものといえます。

雇い止め法理の目的

「雇い止め法理」の目的は、労働者の働く権利を適切に保護することです。「雇い止め法理」は過去の最高裁判例を原理としてできたものであり、それが労働契約法上規定されています。ですから、会社は期間が満了しても自由に契約を打ち切ったり、更新を拒否したりすることはできません。

これが法定化されるまでは法律としての効果がなかったため、雇い止めに関する意義を申し立てるには裁判の判決を受けるしかありませんでした。

雇止め法理が成立する要件

「雇い止め法理」が成立するのは、以下の要件を満たす場合です。

1.これまでの契約更新を考えた際に、その契約が実質的に期間を定めていない契約と同等になっているもの
2.1.に該当しなくても、当事者間の日常のやり取りや業務の性質などから「労働者が雇用の継続を期待するのが合理的である」と一般的に考えられる状況であること

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6.雇い止めは拒否できる? 無効になるケース

有期労働契約者の期間満了をもって労働契約の更新を拒否する雇い止めですが、すべての雇い止めが有効となるわけではありません。予告のないものや合理的な理由のないもの、契約更新を繰り返したあとの雇い止めなどは無効となります。

予告のない雇い止め

前述のとおり、「合計3回以上雇用契約を更新している場合」「1年以下の雇用契約を合計1年以上更新している場合」「契約期間が1年を超える雇用契約の場合」は、契約満了の30日前までに「雇い止めの通告」を行います。この通告が事前に行われていない場合の雇い止めは、労働者保護の観点から無効と判断されやすくなるため注意が必要です。

契約更新を繰り返した後の雇い止め

契約期間満了で更新をしない雇い止めは原則として有効ですが、過去に契約更新を繰り返したケースでの雇い止めは無効と判断されやすい傾向にあります。業務の実態が実質的に期間の定めのない契約と変わらないと判断されたケースや、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられるケースなどは無効となる場合があります。

合理的な理由のない雇い止め

雇い止めを実施する際は客観的に合理的な理由が必要です。労働契約法第19条では「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは雇止めを認めない」とする雇い止め法理を定めています。

契約更新当初から更新回数の上限が設定されていた、あるいは担当していた業務が終了、中止したなどの合理的な理由のない雇い止めは無効になります。

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7.雇い止めする際の注意点

企業が雇い止めを実施する際は、予告や理由の明示などいくつか注意すべき点があります。ここでは雇い止めをする際の注意点を3つ説明します。

雇い止めの予告を行う

「雇い止め法理」の明文化によって、企業の都合で簡単に雇い止めを実施することができなくなりました。労働基準法第20条には、少なくとも30日前までに予告しなければならない旨が明記されています。

この予告義務を怠った場合は労働基準法違反となります。6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意が必要です。

雇い止めの理由を明示する

雇い止めを実施する際は、あらかじめ契約締結時の明示事項として更新の有無や判断基準を雇用契約書に記載する必要があります。契約は「自動的に更新する」、あるいは「更新しない」のか。「契約期間満了時の業務量により判断する」、あるいは「従事している業務の進捗状況により判断する」などを記載して、雇い止めに際するトラブルを未然に防ぎます。

契約期間について配慮する

労働者の契約期間についても配慮が必要です。契約を1回以上更新し、さらに1年以上継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新する場合は、企業は労働者の希望と実態に応じて契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。なお、契約期間の上限は原則として3年です(一定の条件を満たす場合は5年)。

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8.雇い止めの理由の例

前述のとおり、正当な理由のない雇い止めは無効となります。雇い止めを実施する際は、以下のような合理的な理由が必要です。

事業縮小

雇い止めを実施する理由のなかでも代表的なものが、事業の縮小です。2020年代は特に新型コロナウイルスの流行拡大による売り上げの減少、事業の縮小にともなう雇い止めが多く見られました。担当していた業務が終了した、工期満了を待たずに中止したなどの理由は雇い止めの理由として合理的であると判断されます。

勤務態度

無断欠勤を繰り返した、職務命令に対する違反行為を行ったなど、勤務態度に明らかな不良があればそれは雇い止めの理由として認められます。再三の注意に応じなかったり、他従業員の労働にマイナスの影響を与えたりして裁判になった事例は過去にいくつもあります。

事前の合意

契約締結当初から更新回数の上限が決められていた場合や、契約更新時に次回以降契約を更新しないことが合意されていた場合も、雇い止めの正当な理由として認められます。言った言わないのトラブルを引き起こさないためにも、有期雇用契約社員向けの就業規則を用意し、労働契約を締結する際に明示しておきましょう。