DX投資促進税制とは? 【わかりやすく解説】税額控除、申請方法について

国内企業の競争力強化および日本の経済成長を実現するために、経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。

AIやIoT、クラウドシステムなどのデジタル技術を活用し、レガシーシステム(時代遅れのシステム)からの脱却などを目標に、さまざまな施策を行っているのです。

その施策のひとつに、2021年に導入された「DX投資促進税制」という優遇措置があります。このDX投資促進税制の内容や対象、条件などを解説します。

1.DX投資促進税制とは?

DX投資促進税制とは、DXを進める企業に対して行われる優遇措置制度です。2021年3月26日に可決され、2021年6月16日の「産業競争力強化法の一部改正」として公布、2021年8月2日から施行が開始されています。

DX投資促進税制は、菅政権が目玉政策の一つとして掲げたデジタル改革の具体策のひとつです。そもそも「DX」とは、簡単にいうと「データやデジタル技術を活用し、ビジネスモデル改革や競争力向上を実現すること」です。

そのため企業がDXに取り組む際は、デジタル技術や設備の導入が必要となります。そこで政府は企業の費用負担を軽減するために、DX投資促進税制という優遇措置を取り入れたのです。

DX促進税制の対象となるのは、全社規模でDXに取り組む企業。部署単位や拠点単位での適用はありません。またDX促進税制の優遇措置を受けるには、事業適応計画を作成し、経済産業大臣の認定を受け、設備の導入を行う必要があります。

参考 3 法人課税---令和3年度税制改正 令和3年3月財務省

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2.DX投資促進税制はいつからいつまで利用できるのか?

DX投資促進税制の適用期間は、2021年8月2日から2023年3月31日までです。

そのためDX投資促進税制の優遇措置を受けるには、2023年3月31日までに経済産業大臣による事業適応計画の認定を得て設備投資を始める、つまり設備などの導入費用を支払っていなければなりません。実際にシステムなどを導入し、データの連携までを行っていなくてはならないのです。

また、事業適応計画の作成には財務状況や取り組み内容を明らかにする必要がありますし、提出してから認定されるまで約1か月ほどかかります。優遇措置の要件をクリアするためにやるべきことが多数あるので、時間に余裕をもって計画する必要があるでしょう。

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3.DX投資促税制の内容

DX投資促進税制は、すべての企業が申請できるわけではありません。対象企業や措置内容、適用金額などについて詳しく解説します。

対象事業者

DX投資促進税制の対象事業者は、「青色申告書を提出する認定事業適応事業者」です。つまり経済産業大臣から事業適応計画の認定を受けた企業であっても、青色申告書を行っている企業でなければなりません。

青色申告書とは、事業者が行う確定申告の種類。青色申告では日々の収支や経費などを正規の簿記(複式簿記)方式で記した帳簿を税務署へ提出します。

つまり青色申告を行っている企業には、DX投資で生じた資産の増加や費用の支払い、設備の減価償却といった記録が正しく残るのです。

なお企業要件に規模の制限はなく、中小企業であっても大企業であっても要件を満たせばDX投資促進税制の優遇措置を受けられます

税制措置

DX投資促進税制で受けられる優遇措置は、以下のうちいずれか一方を選択できます。

  • 税額控除
  • 特別償却

税額控除は原則3%となっていますが、自社グループ外の法人とデータの連携あるいは共有を行う場合は5%を適用。

また「カーボンニュートラル投資促進税制」が同時に適用される場合、双方を合わせて法人税額の20%までが上限となります。特別償却は投資額の30%まで経費計上が可能です。

適用金額

DX投資促進税制には、適用金額の上限と下限が設けられています。投資費用の全額に対して優遇措置が適用されるわけではありません。適用金額は以下のとおりです。

  • 上限:300億円まで
    「カーボンニュートラル投資促進税制」の控除を受ける場合は、合計は法人税額の20%までです。
  • 下限:投資額が、売上高に対して0.1%以上
    たとえば売上高が10億円であれば100万円以上の投資金額が必要となります。

対象資産

DX投資促進税制の対象となる資産は、次のふたつです。

① 情報技術事業適応設備
企業がDX推進のために整備した以下の設備です。
●新設や導入、あるいは増設や改定された特定ソフトウェア
●特定ソフトウェアを活用するために必要な機械や装置および器具や備品

② 事業適応繰延資産
●特定ソフトウェアの導入や装置の整備のために支出した費用のうち、繰延資産にあたるもの

DX投資促進税制を適用する設備について、機械や装置および器具や備品は特定ソフトウェアと連携して使用するものに限られます。また繰延資産は、クラウドシステム導入時にかかる初期費用が想定されています。

適用期限

DX投資促進税制の適用期間は2023年3月31日までです。ただしこの期間内に、事業適応計画の認定を受けて実際に資産を事業で利用していなければなりません。適用期限までに計画書や費用明細などの書類を提出しただけでは認められないので注意しましょう。

また優遇税制の認定にも約1ヶ月の猶予期間が必要です。企業内での準備期間を含めると早急に動き出す必要があるでしょう。

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4.DX投資促進税制の認定要件

DX投資促進税制の優遇措置を受けるためには、「デジタル(D)要件 」と「企業変革(X)要件 」をすべて満たさなければなりません。なお事業適応計画においても、これらの要件を満たしたうえで、経済産業大臣の認定を受ける必要があります

デジタル(D)要件は、データの連携や共有、セキュリティなどに関する要件、企業変革(X)要件は生産性や売上などに関する要件です。

そのため経理部門だけでなく、DX部門やIT部門、IR部門などシステム関連の部門、さらに営業部門や製造部門、経営層なども交えて、全社一体となった取り組みが必要となるでしょう。

デジタル要件(D要件)

デジタル(D)要件 では、3つの要件を満たさなければなりません。各要件は以下のとおりです。

  • 既存のデータと他の法人などのデータとを合わせて連携させること
  • クラウドを前提としたデータの連携や活用の仕組みを構築すること
  • 情報処理推進機構による審査を受けて、DX認定を取得すること

DX認定制度とは、情報処理推進機構が優良な取り組みを推進している企業として認定する制度で、2020年5月15日に施行された改正情報処理促進法で設置されました。

情報処理技術の活用における方向性や方策、体制や設備など6つの項目を審査し、一定のレベルに到達していると認定を受けられます。つまりDX認定を受けたうえで、クラウドを活用したデータ連携を踏まえた事業適応計画になっていることが重要なのです。

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企業変革要件(X要件)

企業変革(X)要件では、ふたつの要件を満たさなければなりません。各要件は以下のとおりです。

  • 企業や事業グループ全体の意思決定にもとづいて決定されていること(取締役会等の決議文書添付などが必要)
  • 生産性や売上高などで、一定以上の効果が見込まれること

効果については事業適応計画に目標を定める必要があります。経済産業省などで指定している目標は以下のとおりです。

  • 商品等1単位あたりの製造原価を8.8%以上削減するなど
  • 計画期間内で、ROAを2014年から2018年の平均に対して1.5%ポイント向上させる
  • 計画期間内で、売上高伸び率を過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイント以上向上させる

これらの目標を実現するには、経営層はもちろん営業部門や製造部門などが主体となり、全社で売上高や生産性向上に対するアクションを進める必要があります。

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5.DX投資促進税制の主な適用ステップ

DX投資促進税制の適用は2023年3月31日までの時限措置です。税制適用までのステップを正確に把握したうえで、スピード感をもって取り組みましょう。

税制の内容確認

DX投資促進税制の内容や要件を理解する必要があります。しかし要件を満たすには、全社的な視点で検討しなければなりません。

まずは現在自社が置かれているシステム活用の状況を把握しましょう。部門を横断したプロジェクトとなるため、各部門へのヒアリングや情報取集が必要です。情報がそろったら導入促進のための議論を十分に行い、「自社が要件を満たしているか」や「目標を達成していけるか」などを検討したうえで、取り組むかを決定しましょう。

DX認定取得

DX認定とは2020年に改正施行された「情報処理の促進に関する法律」で新設された認定制度。IPA(情報処理推進機構)が実施しており、事業規模を問わずすべての事業者を対象としています。

認定の条件は、「デジタルガバナンス・コード」と呼ばれる基準を満たし、「DX-ready(企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」)」であること。DX認定は以下の4分野から6項目にわたって審査されます。

  • 経営ビジョン・ビジネスモデル
  • 戦略(組織やデジタル技術活用など)
  • 成果と重要な成果指標
  • ガバナンスシステム

申請はIPAのWeb申請システム「DX推進ポータル」で通年受け付けており、必要書類などもDX推進ポータルで提出できます。

事業適応計画の作成と申請

DX投資促進税制を活用するためには、作成した事業適応計画を提出して申請し、経済産業大臣の認定を受けなければなりません。事業適応計画に記載する項目は以下のとおりです。

事業の目標
実現したい方向性、生産性向上や新需要開拓の指標などを、具体的な数値や時期を含めて記載する

事業の内容
新たな商品やサービスの生産や販売導入など、デジタル技術を活用した具体的な内容を数値や時期を含めて記載する

投資の内容
デジタル技術に対する具体的な投資内容を、種類や機能、数量や金額、時期など具体的な数値を含めて記載する

また事業適応計画の認定申請時には、あわせて「情報技術事業適応に係る確認申請書」を提出しなければなりません。

投資資産の取得と税務申告

認定された事業適応計画にもとづいてソフトウェアや設備などを導入し、運用を開始します。適用事業年度が終了したら、優遇措置(特別償却もしくは税額控除)を適用して税務申告を行いましょう。

どの種類の減価償却資産に該当するか判断に迷ったら、所轄の税務署へ相談することをおすすめします。

税務申告のほかには、適用事業年度の終了から3か月以内に「実施状況報告書」を提出しなければなりません。

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6.そのほかDXに関連する制度

DX推進に活用できる制度はDX投資促進税制だけではありません。ここでは「IT導入補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、ITツールの導入費用を補助する制度。ITツールとは、パッケージソフト本体やクラウドサービスの導入などを指します。主に中小企業や小規模な事業者を対象としていますが、条件には、業種や織形態、資本金や従業員数などが定められています。

なお補助金額は枠によって異なり、一律ではありません。補助金額は以下のとおりです。

【通常枠】ソフトウェアやクラウドの利用、あるいは導入などの費用を補助
A類型:30万円から150万円未満
●B類型:150万円から450万円以下

【低感染リスクビジネス枠】テレワークや非対面化などの取り組みに要する費用を補助
●C類型:30万円から450万円以下
●D類型:30万円から150万円以下

参考 IT導入補助金:トップページIT導入補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、主に製造業の経営革新支援する制度です。生産性向上を目的としたサービスや商品開発、生産プロセスの改善などで必要となる費用を補助します。

機械装置やシステム構築、クラウドサービス利用などの費用も補助金の対象なので、DX推進においても活用できる制度です。補助金の対象は中小企業または小規模事業者。ただし法人格を持たない任意団体や地方公共団体、個人事業主は対象外です。

補助金額は以下のとおり、型によって異なります。

  • 一般型:1,000万円まで
  • グローバル展開型:3,000万円まで

なお2021年1月には「ビジネスモデル構築型」も設置されていましたが、2022年1月時点では公募を行っていません。

参考 ものづくり補助金ものづくり補助金総合サイト