コワーキングとは? コワーキングスペース、メリデメを解説

大企業だけでなく中小企業にとっても大きな経営課題のひとつとなった働き方改革。働く人々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための改革が、求められています。

コワーキング、テレワーク、SOHO、ノマド。さまざまな働き方を聞くようになって久しいですが、ここでは改めて「コワーキング」についてご紹介します。

1.コワーキングとは?

「コワーキング」とは2005年頃からアメリカのサンフランシスコで広まった働き方のこと。主に個人事業者(フリーランス)や小規模法人(スモールカンパニー)がオープンなスペースを共用しながらそれぞれ働くことを指しています。

各自が自分の仕事をしながら自由にコミュニケーションを図ることで情報や知識を共有し、互いに貢献しあうワーキング・コミュニティの概念、またそのスペースを総じて「コワーキング」と呼ぶのです。

言葉の意味

「コワーキング(コワーカー)」という言葉の意味について確認していきましょう。

コワーカーの意味

「コワーカー(co-worker)」とは「一緒に仕事をする協力者」という意味を持つ言葉です。広義では同僚や協業パートナーなどもコワーカーに含まれます。

場所の縛りがない環境で働いている人たちによるワークスタイル「コワーキング」。日本では2010年頃からコワーキングの概念が広まってきました

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【人事・労務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

カオナビならコストを抑えて労務管理・タレントマネジメントを効率化!

●紙やExcelの帳票をテンプレートでペーパーレス化
給与明細の発行や配布がシステム上で完結できる
年末調整の記入や書類回収もクラウドで簡単に
●人材情報の一元化・見える化で人材データを活用できる
●ワークフローで人事評価の運用を半自動化できる

詳しくはこちらから

2.コワーキングが広まった背景

ランサーズ株式会社が公開した「フリーランス実態調査」によると、2018年のフリーランス人口は1,119万人で、人口に占める割合は17%。2015年の同調査では913万人だったため、大幅に伸びていることが分かります。

「コワーキング」という働き方が広まった背景は何でしょうか。

最大の理由に挙げられるのは、インターネットやテクノロジーの進化です。それによりフリーランス(副業含む)という立場で仕事がしやすくなり、コワーキングという働き方やコワーキングスペースが増えていったのです。

副業、フリーランスの経済規模は本調査を開始した4年前と比べて約3倍に。経済規模は8兆円近い数となりました

社労士監修!2024年度版:人事・労務法改正対策ガイド。
社会保険適用拡大、労働条件明示ルール、障害者法定雇用率等の変更をわかりやすく解説!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

3.コワーキングと他の働き方の違い

コワーキングと似た言葉に「ノマドワーク」や「テレワーク」といった働き方があります。

ノマドワークとの違い

「ノマド(nomad)」とはもともと「遊牧民」を指す言葉です。情報化社会とそれを支える技術の進歩により、遊牧民のように場所を自由に変えながら働くことを「ノマドワーク(nomad work)」といいます。

「ノマド」は自宅のパソコンやスマートフォンなどを使って喫茶店や移動中の車内など、特定の仕事場を持たずに働く働き方です。

場所や時間に縛られないのはテレワークと同じですが、雇用契約を結んでいないフリーランスが多いのがノマドワーク(ノマドワーカー)の特徴です。

ノマドワーカーとは? 向いている職種、スキル、メリット
ノマドワーカーとは、遊牧民のようなワークスタイルのことです。本記事では、ノマドワーカーについて解説します。 1.ノマドワーカーとは? ノマドワーカーとは、 オフィスやデスクといった特定のワークスペー...

テレワークとの違い

「テレワーク」とはICT(インターネットなどの情報通信技術)を用いて時間や場所を自由に選べる働き方のこと。働き手の仕事と生活の調和(ワークライフバランス)の実現や、労働力不足解消などを解決する働き方として注目を集めています。

テレワークでは自宅や近くのサテライトオフィスなどを利用するため、通勤の負担を大きく減らせることや住む場所の自由度が広がるといったメリットがあります。

しかしリアルなコミュニケーションが減るため孤独を感じやすかったり、自己管理ができないと生産性が落ちたりといったデメリットもあるのです。

自由度の高い働き方が増えてきた昨今。場所に縛られないコワーキングやノマド、テレワークといった柔軟な働き方の導入を検討することも「働き方改革」の第一歩といえるでしょう

入社手続き、年末調整、人事評価、スキル管理など時間が掛かる人事業務を効率化。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」でリーズナブルに問題解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

4.コワーキングのメリット

「コワーキング」といった働き方にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

雑談ができる

「コワーキング」はもともとワークスペースを複数のメンバーで共用し、自由にコミュニケーションを図ることで生まれたワーキング・コミュニティです。

自宅で一人黙々と仕事をしていると現実世界と距離感を感じてしまうことや気分転換が難しいと感じることもあるでしょう。その点コワーキングなら、働く場所を同じくするだけでなく、互いに情報と知恵を共有する「雑談」を楽しむこともできます。

場所を提供する通常のレンタルオフィスと異なり、情報や知見がその場に集まる「人」によってもたらされるのがコワーキングの大きな特徴なのです。

縁ができる

コワーキングでは「場所」ではなく「人」に重きを置くため、仕事を通じて共感しあえる仲間に出会うきっかけになります。

フリーランスのウェブワークやIT系、デザインなどの仕事は仕事中に孤独を感じることも少なくないでしょう。コワーキングスペースには常に誰かしら仕事している「仲間」がいるため、個々で仕事をしていても共通認識を持って取り組むことができるのです。

学びの機会となる

コワーキングスペースによっては勉強会やセミナー、交流イベントなどを開催しているため、参加することで学びの機会を増やせるでしょう。またイベント参加がコラボレーションや協業プロジェクト誕生のきっかけになることも。

交流を促進するためのレイアウト設計や休憩所などが設けられているコワーキングスペースもあります。積極的に利用すれば新たなビジネスチャンスづくりに役立つでしょう。

集中できる環境

一人で仕事をしていると、ときには怠けて生産性を落としてしまうことも。コワーキングスペースには同じ目的を持ったフリーランスやスモールカンパニーが集まっています。

周囲が集中して仕事に取り組んでいるため、一人であっても会社と変わらない空気の中で強制的に仕事モードに切り替えることができるのです。またカフェと違って周りの目を気にする必要がありません。

仕事とプライベートにメリハリをつけ、適度な緊張感をもって仕事に取り組むことができるのです。

インフラとワークスペースが低コストで確保できる

どんなスタイルであっても仕事環境を整えることは重要です。高速なWi-Fiや電源、コピー機やウォーターサーバーなど業務によってはさまざまな機器が必要になる場合もあるでしょう。

また、賃貸物件を事務所にすると、賃貸料や光熱費、通信設備費など多額の費用がかさみます。コワーキングスペースで作業場や設備を共有すれば、低コストでインフラとワークスペースが確保できるのです。

コワーキングスペースには仕事のできる環境や出会いのチャンスなどさまざまなメリットがあります。考え方次第でさまざまな使い方ができるでしょう

社労士監修!2024年度版:人事・労務法改正対策ガイド。
社会保険適用拡大、労働条件明示ルール、障害者法定雇用率等の変更をわかりやすく解説!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

5.コワーキングのデメリット

さまざまなメリットがあるコワーキングですが、もちろんデメリットも存在します。

雑音が多い

複数のメンバーでワークスペースを共有し雑談やコミュニケーションを図るため、必然的に話し声や雑音が発生します。

中には打ち合わせ用のフリースペースや会議室等が設置されているコワーキングスペースもありますが、自分以外にも働いている人がいる以上、話し声や雑音を完全にシャットダウンすることはできません。

自宅やレンタルオフィスと違い、ワーキングスペースのほとんどはセパレートのないワンフロアです。周囲の音に敏感な方は対策が必要でしょう。

ワークスペースが狭い

コワーキングスペースは基本的に仕切りのないワンフロアのフリーアドレスです。席を固定せずその時に空いている席を利用しますが、場合によっては十分な作業スペースが確保できない場合も。

施設によっては視界を遮るパーテーションがないだけでなく、ノートパソコン1台を置くスペースしかないケースも珍しくありません。資料を広げたい、手荷物が多い、周辺機器を多数使用したいといった際、不自由な思いをすることもあるのです。

コミュニティ

自由にコミュニケーションを図ることが魅力のコワーキングですが、時にはそれが人間関係の悩みに発展することも。コワーキング内ですでにコミュニティが出来上がっていたため、輪の中に入りづらかい、雰囲気になじめない可能性も想定できます。

気を付けたいのがすべてのコワーキングスペースが必ずしも新ビジネスを生み出すところではない、また仕事を探す場所ではないということ。

はじめから稼働日すべてをコワーキングスペースで過ごすのではなく、少ない頻度で、また異なるコワーキングスペースを利用して肌に合うと感じたスペースを探してみるとよいでしょう。

セキュリティ

コワーキングスペースには多くの人が出入りします。取り組んでいる仕事が機密情報を扱う場合、業務内容を他人に見られないよう十分気を付けなくてはなりません。

パソコンの画面やデスクに広げる資料などは特に気を付けましょう。またお手洗いなど席を立つ際、すべての荷物を持ち歩くわけではないので、盗難の恐れもあります。

機密情報を扱う際はオープンスペースを避けて個室を利用する、席を離れる場合は必要最低限の機器を持ち歩くなど自己管理を徹底しましょう。仕事の打ち合わせなど会話内容にも注意が必要です。

コワーキングにはメリットもデメリットも存在します。利用価値を見極め、自分に合ったコワーキングスペースを探すことが重要です

入社手続き、年末調整、人事評価、スキル管理など時間が掛かる人事業務を効率化。
タレントマネジメントシステム「カオナビ」でリーズナブルに問題解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

6.コワーキングスペースとは?

「コワーキングスペース」とはその名の通り、コワーキングを行う人たちが集まるスペースのことです。

従来の働く場所を共有するだけのシェアオフィスとは異なり、コミュニケーションを通じて情報や知恵を共有する空間をコワーキングスペース、もしくはコワーキングオフィスと呼び、東京都内を中心に全国各地に増加しています。

コワーキングスペースとは? メリット、シェアオフィスとの違い
コワーキングスペースとは、さまざまな業種、職業のひとが集まる共有オフィスのことです。ここではシェアオフィスとの違いやコワーキングスペースを利用するメリット、選び方や利用方法などについて解説します。 ...

コワーキングスペースの市場規模

法人向け不動産のトータルソリューションプロバイダー、CBRE日本法人が2018年に発表した特別レポート「コワーキングオフィス - 新たな働き方のプラットフォーム」によれば、2018年9月時点での都内コワーキングスペースは346拠点にのぼります。

これは東京23区の賃貸オフィス全体の面積の約1%に相当する規模ですが、東京23区の賃貸オフィス成約面積に対するコワーキングオフィスの開設面積の割合で見ると、2018年上半期時点で約8%に到達しているのです。

コワーキングオフィスの市場規模は、当面拡大が続くと予想されています。

労働力不足が深刻化する中、生産性向上はどの企業も大きな課題です。リモートワークを含む多様な働き方を推奨する中でコワーキング市場もしばらく増加傾向が続くと考えられるでしょう

社労士監修!2024年度版:人事・労務法改正対策ガイド。
社会保険適用拡大、労働条件明示ルール、障害者法定雇用率等の変更をわかりやすく解説!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

7.コワーキングスペースの実態

2017年、日本都市計画学会によってコワーキングスペースの運営実態に関する調査研究が行われました。

空間構成と設備

東京、神奈川、千葉、埼玉でコワーキングスペース事業を行っている企業229社(うち53社回収、回収率23.1%)を対象にした調査によると、共有デスクを設けたスペースが施設の大半、91%を占めています。

次いで打ち合わせなどで使用する会議室が66%、催しごとなどで利用できるイベント会場が51%、図書コーナーが36%、自習スペースが26%と続きます。

このことから用途が限られている空間に比べて、広いシーンで利用できる空間は需要が高いことが分かります。

専有と共有の座席数

専有オフィススペースの座席数は、30席以上が17%と最も多い結果に。次いで20席以上30席未満が15%、10席以上20席未満が15%と続きます。対して共有オフィススペースの座席数は30席以上が29%、15席以上30席未満が37%、15席未満が31%です。

40%が専有オフィススペースを設けていないのに対して、共有オフィススペースを全く設けていないのはわずか4%でした。大小ありますが、15から30席程度の共有オフィススペースを設けているコワーキングスペースが多いという結果となりました。

サービス内容

サービス内容の調査に関しては、すべての施設でWi-Fi利用が可能という結果になりました(100%)。コワーキングという働き方自体がインターネットやテクノロジーの進化に伴うものなので当然の結果といえるでしょう。

次いでコピーなどができる複合機の設置が91%、プロジェクター・スクリーンの貸し出しが81%、郵便物の受け取りが74%、イベントの企画や開催が70%と続きます。

中にはメンバー同士のマッチングサービスが42%、受付代行が17%、子どもの一時預かりが4%とユニークなサービスも見られました。

イベントで扱うテーマ

イベントに関しては半年に1回以上10回未満の回答帯が多い結果となりました。扱うテーマは73%が利用者同士の交流会です。コワーキングスペースが仕事を通じて共感し合える仲間に出会えるチャンスや新規ビジネスのチャンスといわれる所以はここにあります。

次いでビジネスに関する知識、スキルに関する講習会が40%にも及ぶ点から、利用者のニーズもうかがえます。また地域まちづくりに関する会議も24%と注目を集めています。コワーキングスペースは地域活性の場所としても高いニーズがあるのです。

イベント告知方法

そのほかにも趣味や娯楽に関する座学・体験教室が31%、企業支援の相談会が29%、ITに関するビジネススキル講習会が27%と続きます。これらの告知方法は85%がFacebookです。

またホームページが75%、Twitterが38%、ブログが23%と続くことからインターネットを通じた告知が盛んであることが分かります。さらに口頭伝達が42%を占めることから、コワーキングスペース利用者間でのコミュニケーションが盛んであることも分かります。

本調査ではスペースの一日利用(ドロップイン)やPC貸し出しなどのサービスは、都心に位置する施設より23区外や地方都市部に位置する施設のほうが多かったという結果も出ています

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

8.コワーキングスペースとその他ワークスペースの違い

コワーキングスペースとその他オフィスとの違いについて確認しておきましょう。

サテライトオフィス

「サテライトオフィス(satellite office)」とは企業が本社から離れた地点や地方に設置するオフィスのことで、本社を中心に衛星(サテライト)のように配置されることからその名で呼ばれるようになりました。

サテライトオフィスには自社が専用で利用する「専用型」と、複数の企業で共有する「共用型」があります。いずれの型でも一般的に、本社と同じように通常通りの勤務ができるよう設備や通信環境が整っているのです。

レンタルオフィス

「レンタルオフィス(rental office)」はICTや備品など事務所に必要な設備があらかじめ備えられた空間です。複数名が同じフロアで仕事をするコワーキングスペースと異なり、その多くは個室となっています。

特徴は、会社の規模や用途によって設備や場所、オプションサービスを選べる上に住所を登記できる点。また椅子やデスクなどの備品も含まれ、会議室をはじめとした共用設備も利用できることから通常の貸事務所とほぼ同等の機能を備えているといえます。

バーチャルオフィス

広義でレンタルオフィスに属するものとして「バーチャルオフィス(virtual office)」というオフィスがあります。レンタルオフィスやコワーキングスペースとの最大の違いは「実際にオフィスとして利用するかしないか」という点です。

バーチャルオフィスは事業を始める際に必要な住所や電話番号など、基本的な情報だけを借りることができるサービスです。業務スペースはないため、レンタルオフィスより安価に住所を借りることができます。

シェアオフィス

コワーキングスペースと似ている部分が多いのが、複数の人と共有して使う「シェアオフィス」です。

2つの間に明確な線引きはありませんが利用者同士が交流を図りコミュニティを形成するコワーキングスペースに対して、シェアオフィスは作業の場として利用されることが多いです。

同じスペースを複数の利用者で共有しますが、パーテーションや簡易的な壁によって各スペースが区切られており、契約スペースは自由に活用できます。

それぞれ異なる特徴を持つワークスペース。利用の目的を明確化し、働き方に合ったサービスを使い分けるとよいでしょう