継続雇用制度とは? 高年齢者雇用安定法、種類、対象者

継続雇用制度とは、高年齢者の雇用を確保するための制度です。ここでは継続雇用制度について解説します。

1.継続雇用制度とは?

継続雇用制度とは、年金受給年齢の引き上げに伴い、高年齢者の雇用を確保するための制度のこと。定年を迎えた高年齢者本人が希望した場合、企業は定年後も引き続き雇用します。継続雇用制度は、下記の2種類です。

  • 定年の段階でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ再雇用制度
  • 定年の段階で退職とせず、引き続き雇用する勤務延長制度

経過措置の者を除き定年後も引き続き働きたいと希望する人全員が、対象です。

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2.高年齢者雇用安定法と継続雇用制度

高年齢者の労働について理解を深めるため、高年齢者に関わる法律や制度について見ていきましょう。

高年齢者雇用安定法改正の背景

高年齢者雇用安定法改正の背景には、少子高齢化や社会保障制度の維持といった問題があります。少子高齢化による労働力人口の減少によって、企業の活力が損なわれつつあるのです。

また生産年齢人口が減少するなか、社会保障費の増加は大きな社会問題となっています。この2点を背景に、高年齢者が安心して長く働くための法整備が進みました。

高年齢者雇用安定法における努力義務

高年齢者雇用安定法における努力義務とは、下記のようなものです。

  • 定年年齢70歳への引き上げ
  • 定年廃止
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 高年齢者が希望した場合、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

努力義務の対象は、下記のとおりです。

  • 定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主
  • 一部を除き65歳までの継続雇用制度を導入している事業主

高年齢者雇用安定法の経過措置

継続雇用制度を導入する際、年齢で対象者を限定できる措置です。対象は2013年3月31日の高年齢者雇用安定法改正より前に、労使協定で「継続雇用制度の対象者を限定する基準」を定めた企業です。

なお経過措置は2025年3月31日に終了、2025年4月1日からは全企業が65歳までの雇用確保を義務づけます。

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3.継続雇用制度の種類と対象者

継続雇用制度の種類と対象者について、下記のポイントから解説しましょう。

  1. 定年後再雇用制度
  2. 定年後勤務延長制度
  3. 対象者

①定年後再雇用制度

定年で退職した社員を再度雇用する制度のこと。下記のような注意点があります。

  • 定年退職した段階で退職金が支払われる
  • 再雇用時に労働条件を、定年前の労働条件から変更できる
  • 再雇用時の労働条件変更を理由に極端に給与の引き下げを行うと、違法と見なされる場合もある

②定年後勤務延長制度

定年年齢を迎えた際、退職扱いにせずそのまま雇用を延長する制度のこと。雇用形態や労働条件、仕事内容などについて、定年前と定年後で変更は生じません。なお退職金の支払いは、雇用延長期間終了時となっています。

③対象者

継続雇用制度の対象者は、定年後も引き続き継続勤務を希望する全社員です。企業は定年を迎えた社員が継続雇用を希望した場合、原則、希望である継続雇用を受け入れなければなりません。

ただし一部要件を満たした企業には、対象者を限定できる経過措置があります。また対象者に関しては、別途定めがあるのです。

基本は無期雇用が対象

継続雇用制度の対象者は基本、期間に定めのない無期雇用の社員です。従って「パートタイマーやアルバイトなど期間に定めのある有期雇用社員」「直接雇用でない派遣社員」に、継続雇用制度は適用されません。

ただし同一の事業所に5年以上継続雇用され、無期転換ルールが適用となった社員は、継続雇用制度が適用される可能性もあります。

労使協定により基準を定めている場合

継続雇用制度の対象者に関しては従来、労使協定により継続雇用制度の対象者に関する基準を定めることが認められていました。しかし2013年の高年齢者雇用安定法改正により、対象者を限定する仕組みが廃止されたのです。

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4.継続雇用制度導入で企業が得られるメリット

継続雇用制度導入により、企業が得られるメリットとは何でしょうか。下記3つについて、解説します。

  1. 人手不足の解消
  2. スキルやノウハウの活用
  3. 助成金を申請できる

①人手不足の解消

少子高齢化により生産年齢人口は、2004年をピークにして減少しています。人材を安定して雇用できる継続雇用制度は、企業の人手不足の解消に大きな役割を果たしているのです。

②スキルやノウハウの活用

定年まで働いていた高年齢者には経験やスキル、ノウハウや人脈が豊富に蓄積されています。継続雇用制度によりそれらを活用し続けられるでしょう。

③助成金を申請できる

たとえば65歳超雇用推進助成金では、定年年齢の引上げや定年制度を廃止した企業に、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて20~160万円を助成しています。

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5.継続雇用制度導入で企業に生じるデメリット

継続雇用制度導入で企業に生じるデメリットとは何でしょうか。下記2つについて解説します。

  1. 世代交代が進まない
  2. マネジメントがしにくくなる

①世代交代が進まない

高年齢者が企業に在籍し続けると、世代交代が進まず若手社員のモチベーションも低下しやすくなります。

②マネジメントがしにくくなる

再雇用制度により役職者が一般社員として職場に戻ってくると、組織としてのヒエラルキーが正常に機能しなくなり、マネジメントがしづらくなります。

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6.継続雇用制度導入の流れ

継続雇用制度導入の流れには、3段階のプロセスがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 人事管理制度の見直し
  2. 制度や措置の選定
  3. 労働基準監督署への届け出

①人事管理制度の見直し

たとえば下記のように人事管理制度をトータルで見直します。

  • 職務や職務遂行能力を重視した制度への見直し
  • 職業能力評価基準の設定
  • 社員の能力、意欲に応じた配置や処遇の実現
  • 勤務形態や退職時期など多様な働き方に対応するための新たな制度の構築

②制度や措置の選定

継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度があります。自社の個別事情に合わせてどの制度を利用するか、労使で意見をすり合わせて制度や措置を選定しましょう。

制度には経過措置も盛り込まれているため、概要をしっかりと理解しながら選定作業を進めます。

③労働基準監督署への届け出

継続雇用制度を選定したら、その内容を就業規則に規定します。そして下記を労働基準監督署に提出するのです。

  • 就業規則変更届(様式自由)
  • 社員代表から意見を聴取した証明となる意見書
  • 就業規則の変更部分が確認できる書類(様式自由)

意見書には、社員の代表の署名・捺印が必要です。

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7.継続雇用制度を導入する際の注意点

継続雇用制度導入時の注意点は、4つです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 再雇用時の賃金設定
  2. 無期雇用契約に転換した社員がいる場合
  3. 制度利用を拒否
  4. 保険と税金

①再雇用時の賃金設定

多くの会社が貢献度といった要素を基準に、再雇用時の賃金を定年退職時の50~70%で設定しています。極端な賃下げは、労働契約法違反に該当する可能性もあるので気をつけましょう。

仕事内容や責任範囲などをもとに、高年齢者本人の了解を得て賃金を決定することが必要です。

②無期雇用契約に転換した社員がいる場合

定年制が適用されるのは正社員です。パートやアルバイト、派遣社員は、継続雇用制度の対象者になりません。しかし有期雇用契約者が無期転換ルールによって無期雇用契約に転換した場合、定年制や継続雇用制度の対象者になる可能性もあります。

③社員に継続を拒否された場合

継続雇用制度では、社員が雇用の継続を希望する点が要件になります。そのため継続を希望しない場合、退職扱いになるのです。

この場合、企業が当該社員に対し合理的な裁量の範囲で労働条件を提示していれば、雇用を継続しなくても高年齢雇用安定法違反とはなりません。

④保険と税金に関する手続き

継続雇用制度の利用にあたり社員の給与が大幅に減額されたときは、社会保険料の変更といった手続きを行わなければなりません。

なお住民税は継続雇用時の賃金に比例せず、前年の所得に応じて金額が決まるため、「住民税の割合が高くなる可能性」を事前に説明しておきましょう。

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8.継続雇用制度導入に関する助成金

継続雇用制度導入に関する助成金があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  2. 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

①特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

雇用されることが困難と考えられる対象者を雇用した際、一定の要件を満たした事業主に支給される助成金です。

  • 特定就職困難者コース
  • 生涯現役コース
  • 発達障がい者・難治性疾患患者雇用開発コース
  • 三年以内既卒者等採用定着コース

など8つのコースがあります。

対象となる事業主

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象は、下記の要件を満たした事業主です。

  • 雇用保険の適用事業主である
  • 対象社員をハローワークまたは民間の有料・無料職業紹介事業者などの紹介により雇い入れる

支給額

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給額は、対象社員の類型や企業規模で決定されます。たとえば短時間社員以外の高年齢者(60歳以上65歳未満)や母子家庭の母の場合、助成対象期間は1年間で、1人あたり60万円(50万円)です。

②特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

雇用した日の年齢が満65歳以上である社員を事業主が雇用すると受けられる助成金のこと。対象となる求職者の要件は、下記のとおりです。

  • 助成金を申請する事業主から雇用された日の年齢が満65歳以上
  • 助成金を申請する事業主から雇用された日に、1週間の労働時間が20時間以上になる社員といった、失業状態でない人を含む雇用保険被保険者

対象となる事業主

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)の対象となる事業主には、下記のような要件があります。

  • ハローワークや職業紹介を行う民間の事業者などから、対象社員を雇用した事業主
  • 対象の社員を1年以上雇用することが確実、かつ高年齢者雇用保険被保険者として雇用する事業主

支給額

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)の支給額は、下記のとおりです。

  • 短時間社員以外は助成期間1年間で70万円(中小企業以外の事業主は60万円)
  • 短時間社員は助成期間1年間で50万円(中小企業以外の事業主は40万円)

③65歳超雇用推進助成金

下記を行う事業主に対して支給される助成金です。

  • 65歳以上への定年引上げ
  • 高年齢者の雇用管理制度の整備
  • 高年齢の有期契約社員の無期雇用への転換

65歳超雇用推進助成金には、3つのコースがあります。

65歳超継続雇用促進コース

高年齢社員の雇用を継続するため下記いずれかを実施した企業に、かかった費用の助成を行うもの。

  • 65歳以上への定年の引き上げ
  • 定年の定めの廃止
  • 希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入
  • 他社による継続雇用制度の導入

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者の雇用推進を目的として、賃金や人事処遇制度、労働時間や健康管理制度など雇用管理制度の整備を実施した事業主に行われる助成のこと。

要件は「高年齢者雇用管理整備措置の実施」「雇用管理整備計画の認定」を行うことで、支給額は支給対象経費×60%です。

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上や定年年齢未満、両方の要件を満たした有期契約社員を無期雇用社員に転換させた事業主に対し支給するもの。支給額は、下記のとおりです。

  • 対象社員1人あたり48万円(中小企業事業主以外は38万円)
  • 生産性要件を満たす場合には対象社員1人につき60万円(中小企業事業主以外は48万円)