地域手当とは? 目的、公務員と民間企業の違い、具体例

求人票でよく見られる地域手当とはどのようなものでしょうか。職種による違いや具体的な例など、地域手当について詳しく解説します。

1.地域手当とは?

地域手当とは、都市部といった物価の高い地域に勤務する従業員に対して支給される手当のこと。基本給にプラスされて手当のひとつとして支給されるもので、勤務地手当や地域給などとも呼ばれています。同じ会社の社員でも、勤務地によって生じる物価といった支出の差を補てんするのが目的で、公務員や民間企業で採用されているのです。

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地域手当の特例

地域手当には、下記のように特例もあるのであわせて確認しましょう。

  • 地域手当の特例(人事院より抜粋)
  • 大規模空港の区域に設置されている官署に在勤する官署については、特例措置として、1級地以外の最高支給割合である15%を超えない範囲内の支給割合による地域手当を支給する

特例の適用となる職員をめぐる状況に特段の変化がないため、1級地以外の最高支給割合が16%となる点に伴い、特例の上限を15%から16%に改める

地域手当の注意点

会社の方針で、地域手当の支給が取りやめになる場合もあります。地域手当がある会社に入社すれば、地域手当が支給される勤務地に配属された従業員は、必然的に地域手当が支給されます。

地域手当は地域による給与の差を調整する措置として設けているもの。会社方針により地域手当が廃止されつつあります。あてにしていた手当が突然廃止され、給与が少なくなる可能性もあるので注意しましょう。

地域手当の目的は、勤務地によって生じる物価などの支出の差を補てんすることです。廃止する企業も増えています

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2.地域手当の目的

地域手当の目的は、勤務地によって生じてしまう支出の差を穴埋めすること。一般的に、現地採用者には支給されません。国家公務員の規程をもとにしており、地方公務員や民間企業でも採用されています。下記3つの手当について解説しましょう。

  1. 都市部に支給される都市手当
  2. 山間部や離島に支給される特地勤務手当
  3. 冬に雪が多く降る地方に支給される寒冷手当

①都市部に支給される都市手当

都市手当とは、物価が高く民間企業の賃金の高い地域に勤務する従業員に支給される手当のこと。たとえば東京都近辺や京阪神地方などです。

ほかの地域よりも住居費をはじめ物価が高く、生活費が高くなると予想されます。成田国際空港や関西国際空港、中部国際空港の周辺もほか地域よりも物価が高いので、高い支給割合で支払われるのです。

②山間部や離島に支給される特地勤務手当

特地勤務手当とは、山間部や離島など生活を送るうえで不便な地域に勤務する従業員に支給される手当のこと。こうした地域は、本島よりも毎日の生活に必要な物資の運搬費がかかると予想されるもの。

支給金額は地域によって異なります。国家公務員の規程では、給与の月額の約4~24%が支給されるのです。また特地勤務手当に準ずる手当もあり、この場合、給与の月額約2〜6%が支給されます。

③冬に雪が多く降る地方に支給される寒冷手当

寒冷手当とは、積雪が多くほかの地域よりも暖房費がかさむ地域に勤務する従業員に支給される手当のこと。たとえば北海道・東北・北陸地方などです。国家公務員の規程によると支給は11〜3月の寒冷期に限られており、下記のような金額が支給されます。

  • 扶養家族がいる場合…月に1万7,800円~2万6,380円
  • 独身の場合…7,360円〜1万340円

地域手当の目的は、都心部・山間部や離島・寒冷地など、勤務地によって生じる支出の差を穴埋めすることです

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3.国家公務員の地域手当について

公務員や民間企業で採用されている地域手当は、国家公務員の規程をもとにしています。生活を送るうえで不便な地域に勤務する職員、社員に支給される手当ですが、地域によって金額が変わるのです。国家公務員の規程では月額給与の約4〜25%が支給されます。

地域手当の主な支給地域と割合について

地域手当には都市手当・特地勤務手当・寒冷手当があり、地域によって支給割合が異なります。都市部に支給される都市手当の支給割合は、次のとおりです。

  • 1級地…東京23区−20%
  • 2級地…大阪市・横浜市−16%
  • 3級地…さいたま市・千葉市・名古屋市−20%
  • 4級地…神戸市−12%
  • 5級地…水戸市・大津市・京都市・奈良市・広島市・福岡市−10%
  • 6級地…仙台市・宇都宮市・甲府市・岐阜市・静岡市・津市・和歌山市・高松市−6%
  • 7級地…札幌市・前橋市・新潟市・富山市・金沢市・福井市・長野市・岡山市・徳島市・長崎市−3%

地域手当の計算方法とは?

地域手当の計算方法は「(給料月額+給料の特別調整額+扶養手当)×支給割合」。このように支給割合によってもらえる金額が変わるのです。それぞれの計算方法について説明していきましょう。

  1. 都市手当
  2. 特地勤務手当
  3. 準特地勤務手当

①都市手当の場合

都市手当とは、勤務地によって生じる支出の差(必要生活費など)を考慮して支払われるもの。金額は「(俸給月額+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当)の月額×支給割合」にて算出されます。

たとえば俸給が30万円(俸給の特別調整額6万円、専門スタッフ職調整手当5万円、扶養手当3万円)の場合、「(30万+6万+5万+3万)×3〜20/100=1万3,200円〜8万8,000円」となるのです。

支給割合20%の東京23区は8万8,000円、支給割合3%の札幌市・前橋市・新潟市などは1万3,200円の都市手当が支給されます。

②特地勤務手当の場合

特地勤務手当とは、生活を送るうえで不便な地域に勤務する職員に支払われるもの。金額は、「{特地官署に勤務することになった日の(俸給+扶養手当)の月額×1/2+現に受ける(俸給+扶養手当)の月額×1/2}×支給割合」にて算出されます。

支給割合は、僻地の中でも比較的便利とされる1級地が4%、もっとも不便な地域とされる6級地が25%です。

たとえば俸給が30万円(扶養手当3万円、勤務日の月額が28万円)の場合、「{(28万+3万)×1/2+(30万+3万)×1/2}×4〜25/100=1万2,800円〜8万円」といった式になります。

③準特地勤務手当の場合

準特地勤務手当とは、特地勤務に準ずる手当で月額俸給の約2〜6%が支払われるのです。金額は、「異動等の日の(俸給+扶養手当)の月額×(2~6%)」にて算出されます。

たとえば俸給が30万円(扶養手当3万円、勤務日の月額が28万円)の場合、「(28万+3万)×(2%〜6%)=6,200円〜1万8,600円」といった式になるのです。

  • ※俸給:収入から国家公務員に支払われる手当を引いた基本給
  • ※扶養手当:配偶者や子どもなど扶養親族のいる職員に支給される手当

地域手当の異動保障ってなに?

地域手当の異動保障は、地域手当支給地域に6カ月を超えて勤務した職員が、「地域手当の支給がない」「地域手当が低い」地域へ異動になった際、3年間支給される国家公務員の地位手当です。

異動後の1年間は、異動の日の前日に在勤していた地域と同じ支給割合が支給され、2年目は、8割が地域手当として支給されます。

国家公務員の総合職は特に異動が多いとされており、地域手当のほかにも異動保障という制度があるのは職員にとってありがたいといえるでしょう。

公務員や民間企業が採用する地域手当は、国家公務員の規程をもとにして算出されます。支給金額は月額給与の約4〜25%です

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4.地方公務員の地域手当について

地方公務員の地域手当は、自治体により異なります。「国家公務員の都市手当・特地勤務手当・寒冷手当」にあたる手当のほか、僻地手当を設けている自治体もあるのです。地域手当を実施している自治体は、2019年において全国で26.3%となっています。

地域手当の相場はどのくらい?

地域手当の支給率(2019年4月1日時点)は、国の基準と同様である場合が340件(19.0%)、国の基準を上回る場合が66件(3.7%)、下回る場合も66件(3.7%)。下記で詳細を見ていきましょう。

  • 都道府県…国の基準と同様である場合が4件(8.5%)、国の基準を上回る場合が1件(2.1%)、下回る場合が27件(57.4%)
  • 指定都市…国の基準と同様である場合が19件(95.0%)、国の基準を上回る場合が0件(0.0%)、下回る場合が0件(0.0%)
  • 市町村…国の基準と同様である場合が294件(17.3%)、国の基準を上回る場合が65件(3.8%)、下回る場合が39件(2.3%)

支給状況はどのくらい?

地域手当の支給状況(2019年4月1日時点)は、全国で470件(26.3%)。東京都23区では100%実施されており、都道府県は32件(68.1%)・指定都市は19件(95.0%)・市町村が405件(23.2%)となっています。

地域手当支給団体数(市町村)の内訳は、次のとおりです。

  • 1級地(20%)…23団体(1.3%)
  • 2級地(16%)…24団体(1.4%)
  • 3級地(15%)…31団体(1.8%)
  • 4級地(12%)…23団体(1.3%)
  • 5級地(10%)…54団体(3.1%)
  • 6級地(6%)…150団体(8.6%)
  • 7級地(3%)…100団体(5.7%)

地域手当の問題点

地域手当の廃止や見直しの要望が多くあるのも事実です。もっとも大きな問題とされているのが、自治体の違いによる格差が生じていること。同地域の民間企業との賃金差は解消できていても、近隣の自治体でも地域手当の格差が生じる場合もあるのです。

大阪府内でも大阪市が2級地(16%)ですが、大阪市が生活圏のほかの自治体は6級地(6%)や7級地(3%)となっています。

地域手当を実施している自治体は「全国で26.3%」「都道府県は68.1%」「市町村は23.2%」です

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5.民間企業の地域手当について

民間企業の地域手当は、企業ごとに地域手当を設定しており、手当を採用していない企業も多くあります。同じ企業で同じ仕事をしているにもかかわらず、配属された地域によって給料に差が生じる点から、廃止する企業も少なくありません。

民間企業の地域手当とは?

民間企業の地域手当とは、給与の地域差を調整するために制度として設けているもの。ただし地域手当に法的な規程はありません。あくまでも補てんで、地域手当を実施していない民間企業も多くあります。

支給内容は、各企業の業務実態や内部事情・会社側の地域手当に関する考え方などによって大きく異なるのです。そのため地域手当の内容は、各企業の現状をふまえて独自に決めていくものとされています。

民間企業における地域手当の平均

厚生労働省の2015年の調査によると、企業平均で2万2,776円。しかし企業によって金額の差が大きく、まったく支給しない会社も多くあります。

海外や全国展開している大企業や大手企業のほとんどが、地域手当を採用しているとされているのです。地域手当の有無や金額について確認しておくとよいでしょう。

民間企業の地域手当は企業ごとに設定されており、企業平均で2万2,776円です。一方で、手当を採用していない企業もあります

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6.地域手当は公平?

地域手当は、自治体による格差が生まれていると問題になっています。支給割合が1級地の東京23区では月給の20%、2級地の横浜市や大阪市は16%と高い支給割合です。しかし7級地の札幌市や前橋市になると3%のように低くなります。

全国へ転勤することが前提の国家公務員

全国への転勤が前提の国家公務員とは、キャリア官僚のこと。地域手当は、民間企業の賃金水準を適切に反映するための制度です。

勤務地が異動するたびにキャリア組の職員の給与水準は変わります。しかし物価が高い都会から物価の低い地方に異動するという状況に逆にあたる異動で、そのたびに給与が大きく変動するのははたして適切なのでしょうか。

原則的に転勤しない国家公務員

原則的に転勤しない国家公務員とは、地方ブロック採用のノンキャリア組です。原則的には東北ブロックや四国ブロックなど、全国をブロックに分けた範囲内で採用し、異動もブロック内で実施します。

キャリア組のような全国の異動はなく、地域手当が支給されてもそう大きく変動しません。そのため不公平感は小さいでしょう。

国家公務員には、全国を転勤するキャリア組と原則的に転勤のないノンキャリア組があります。地域手当の変動が大きいため、不公平感が生じているのです

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7.地域手当の見直し・廃止の希望多数

地域手当には、さまざまな問題があります。地域や自治体による格差が生じている現状に対し、地域手当の見直しや廃止の希望も多数あるのです。

見直し・廃止の希望が多い理由

地域手当の見直し、廃止の希望が多い理由は次のとおりです。

  • 国家公務員が規定する支給割合を採用している民間企業では、指定基準の刻みが粗いため、切り捨ての部分が多い
  • 生活圏や経済圏を考慮した設定になっていない
  • 同じ職務でありながら、最大20%もの支給割合の差を付けるのは適切なのか
  • 地域間の給与差が大きくなると、優秀な人材の確保が困難になる
  • 町村は民間賃金が高い地域でも、地域手当の対象にならない

今まで行われてきた見直し

自治体による格差が生まれるなど、地域手当がさまざまな問題を抱えるなかで、見直された内容があります。2015年から地域間の給与配分の見直しにより、平均で2%の給料の引き下げが行われたのです。

それにともない、東京23区などの物価の高い地域では、民間企業との格差を埋めるために地域手当の引き上げが実施されました。

また地域手当の支給地域・支給割合の見直しは、「人事院規則により10年ごとの見直しを例とする」とされていますが、見直し期間の短縮も検討されているようです。

地域手当は働く自治体によって有無があり、自治体の違いによって格差が生まれています。見直しはされているものの、廃止要望も多くあるのです