キャリア教育とは? 意味・定義、目的、企業の支援活動について

近年、労働者の中でもとりわけ若年層に関わる問題が深刻化しています。たとえば、

  • 新卒で入った企業を早期退職
  • 定職につかずフリーターとして職場を転々とする
  • 正社員になれず非正規雇用を続けざるを得ない

など。これらを未然に防ぐための解決策として注目されているのが、キャリア教育です。キャリア教育とは何か、意味・定義、目的、企業の支援活動について解説していきましょう。

1.キャリア教育とは?

キャリア教育は、2つの側面を持っています。

  1. 学校における職業人としての能力開発:学校教育の中で、社会に出た際自立するために必要な職業人としての能力を身に付けることが目的
  2. 自分の進路を自分で決めるという主体性の育成:働くことの意義や職業観を学ぶことで、意欲的に仕事に取り組む姿勢を身に付け、自分の進路を主体的に選択・決定できるようにする

文部科学省によるキャリア教育の定義

文部科学省は、「キャリア教育とは、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義付けしています。

文部科学省のいうキャリア教育のステージは学校で、さまざまな教育活動を通して、一人ひとりの基礎的・汎用的能力の発達や育成、職業人としての自立を促すことが、キャリア教育の最大の目的としているのです。

キャリア(career)の意味

キャリア(career)の意味は、人間が生涯を通してさまざまな役割を果たしていく過程で、自分が担っている役割の価値や自分と役割との関係性を探し出していくこと。職業や技能上で積み重ねられた経験だけでなく、自らの役割やその価値等についても言及したもの、と理解するとよいでしょう。

「働くこと」を通して人や社会に関わりますが、その関わり方は人それぞれ異なります。その違いが「自分らしい生き方」となっていくのです。

キャリア教育と職業教育の違い

キャリア教育と職業教育の違いについて、文部科学省の定義を参考にしてみましょう。育成対象の能力で比較すると、

  • キャリア教育:「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度」
  • 職業教育:「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度」

また、教育活動で比較すると、

  • キャリア教育:「普通教育・専門教育を問わず様々な教育活動の中で実施される。職業教育も含まれる。」
  • 職業教育:「具体の職業に関する教育を通して行われる。この教育は、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成する上でも、極めて有効である。」

職業教育は具体的な職業人としての能力開発なのに対しキャリア教育は職業教育を含んだ広意義での意識、知識、能力、技能開発だと分かります。

キャリア教育と職業教育の基本的方向性

キャリア教育と職業教育が目指す基本的方向性は、3つに分かれます。

  1. 幼児教育から高等教育にかけて体系的、かつ実践的に職業人に社会・職業との関連を重視した基礎的・汎用的能力を身に付ける
  2. 学校において基礎的、発展的な能力開発、仕事に向かう意欲や態度の育成などを行い、体系的に職業教育への道筋を整備
  3. 学校が生涯にわたって社会人、職業人としてのキャリア形成の支援の場であるための機能充実を図る

これら3つの基本的方向性を理解した上で、具体的な制度設計や体制の整備、カリキュラム構築などを行う必要があるのです。

キャリア教育が導入・推進される背景

キャリア教育がこれほどまでに推進される背景を覗いてみましょう。キャリア教育では、さまざまな職業の大人と触れ合い、主体的に学ぶ意欲を育てることが重要です。

しかし、現代社会はインターネットやテレビを通じた情報が溢れています。そして産業の分業化、機械化、細分化によって大人と子どもの生活圏が住み分けされ、子どもたちが日常的に仕事をする大人の姿を目にする機会が少なくなっているのです。

実体験をもとにした職業観が身に付くことなく大人になる現代。学校で意識的に職業やキャリアを学ぶ機会を導入する必要があるのです。

キャリアカウンセリングとは?

キャリア教育に欠かせないのが、キャリアカウンセリングでしょう。国立教育政策研究所によるとキャリアカウンセリングとは、「新たな環境や課題への不安を解消させ、勇気を持って 取り組めるようにさせるための対話を通した個別の支援」のこと。

会話や対話を通して職業人としての主体的意欲や専門的能力・技術を習得できるよう、子どもたちをサポートしていく役割というと分かりやすいでしょうか。子ども一人ひとりのキャリアの発達を促すために欠かせない、極めて重要な個別支援ともいえます。

評価運用の効率と「質」を向上させるクラウドツール

  1. MBO・360度・OKR・1on1など、あらゆる人事考課運用をクラウドで実現可能
  2. 多彩な運用実績で作られたテンプレートを使って、考課シートを手早く構築
  3. 進捗状況が一目瞭然。催促メールで締め日までに確実に評価結果を回収できる
  4. フィードバック面談だけは“紙で”やりたいときは、帳票として出力可能

カオナビで評価運用をクラウド化して、圧倒的な効率化を実現!

> カオナビについて詳しく見る

2.キャリア教育の現状と課題

重要性が叫ばれているキャリア教育ですが、課題も多いです。キャリア教育を推進するために欠かせないキャリアカウンセリングですが、まだまだその導入が形式的など問題点が残ります。

しかし、キャリア教育という言葉は知らなくても将来像について何らか話をしている家庭も多いでしょう。保護者からも、学ぶ・働くことの意義を考える学習に対しての期待は大きくなっています。キャリア教育の重要性は、広く認知されつつあるのです。

83.9%の小学校にキャリア教育の担当者がいる

現在、小学校の83.9%にキャリア教育の担当者が配置されているのをご存知でしょうか。

キャリア教育の重要性がクローズアップされる中、その推進の輪は確実に広がっています。しかし、その多くが他の担当と兼任であったり、もしくは担当者が小学校に一人だけだったりといったケースも少なくありません。

また、キャリア教育の計画を作成した実績を見ると、

  • 全体計画の作成は63.4%
  • 年間指導計画の作成は46.7%

にとどまっているのです。

教育課程上の学習の機会ごとにキャリア教育を実施している割合

画像引用: 国立教育政策研究所「キャリア教育が促す『学習意欲』」http://www.nier.go.jp/

教育課程上における学習の機会ごとにキャリア教育を実施している割合について、国立教育政策研究所の統計資料があります。それによると、

  • 道徳や学級活動の中でキャリア教育を実施している小学校は92.3%
  • 総合的な学習時間の中で実施しているのは91.9%
  • 各教科の中でキャリア教育を取り入れているのは87.2%

また、キャリア教育の学習内容などでよく行われているものは、中学校への訪問や見学、体験入学、学校説明会であるとの回答が88.9%に達しています。

中学校におけるキャリア教育の担当者は98%

では、中学校になるとどうでしょうか。中学校におけるキャリア教育の担当者の配置は98%と、非常に高い数値です。

  • キャリア教育の全体計画の作成も81.3%
  • 年間指導計画作成は76.7%

と小学校と比較してもキャリア教育実践の試みが進んでいると分かります。学校で配置されているキャリア教育担当者を中心として、中学校におけるキャリア教育の実践が定着している様子が伝わるでしょう。

保護者のキャリア教育認知度は低いが、将来を見渡した学習を期待

中学生の子どもを持つ保護者の70.0%が、「キャリア教育の名称を聞いたことがない」そうです。しかし、中学生にもなると将来の進路や生き方について話し合うこともあるようで、「進学先や就職先などの進路情報」に関しては73.3%の家庭で話題に上がっています。

キャリア教育の象徴ともいえる職業体験活動についても「有意義だ」との回答が9割以上。中学校におけるキャリア教育、職業教育、進路指導に多くの保護者が期待を寄せていることが窺えます。

高等学校ではほぼすべての学校にキャリア教育の担当者を配置

高等学校では、ほぼすべての学校にキャリア教育の担当者が存在します。卒業後に就職する生徒も多いため、進路指導を行うキャリア教育担当者の役割は非常に重要でしょう。在任期間は2~3年目が43.0%と最も多く、ある程度時間をかけてキャリアに対する意識、知識、技能指導が行われています。

キャリア教育の全体計画の作成は70.4%で実施。その内容を個別に見ても、「全体目標」や「身に付けさせたい能力や態度」が80%前後と高い数字を示しており、体系的にキャリア教育を実施しつつ、個別の能力開発にも対応しているきめ細かさが窺えます。

「進学希望」73.8%、「就職希望」25.2%

高等学校卒業後の進路は、

  • 大学や専門学校などへの「進学希望」は73.8%
  • 就職希望」は25.2%

と、圧倒的に進学を希望する生徒が多いです。その進学を希望する生徒の持つ悩みで多いのは、「希望する学校に合格できる自信がない」(47.0%)でした。また、「進学するとお金がかかる」という悩みも44.1%存在しているのです。学力の問題だけでなく、家庭の経済状況に悩みを持つ生徒が多いことが読み取れます。

就業体験を経験した割合は40.9%

高等学校を卒業して就職を希望する生徒は25.2%でしたが、高校生の時に就業体験を経験した割合は40.9%。しかし、就業体験について「高等学校卒業後の進路や将来の生き方を考える上で役立った学習」との問いに対して、「役立った」と回答した生徒はたったの25.7%でした。就業体験の割合が半数に届かない体験率の低さが原因との見方もあります。

一方で、就業体験自体には82.0%の生徒が「有意義な学習だと思う」と回答。自分の将来を考える時期にきている高校生にとって、就業体験に期待する気持ちは大きいようです。

3.キャリア教育の効果とは?

小学校では、

  • 不得意なことでも進んで取り組もうとする
  • 相手の意見を聞き、理解しようとする
  • 自分の気持ちを整理して伝える
  • 学ぶことや働くことの意義を理解し自分の将来につなげて考える

などのキャリア教育を行っており、国立教育政策研究所の調べでは、担任がこれらの取り組み内容に対して積極的であればあるほど、学習意欲が向上するという結果が出ています。

小学校での実態調査の結果

  • 学びの重要性に気付く機会になり、意欲が向上
  • 全体計画に重点目標・具体的目標を設定する必要性も

学習意欲が向上する

道徳や学級活動、総合的な学習の時間のほか、各教科においてもキャリア教育のエッセンスが加えられています。それにより、今ある自分に満足することなく向上心を持って学習に取り組む姿勢が育まれるようです。

画像参考: 国立教育政策研究所「キャリア教育が促す『学習意欲』」http://www.nier.go.jp/

全体計画に重点目標・具体的目標を設定することが大切

小学校におけるキャリア教育をさらに推進するには、全体計画に重点目標や具体的目標を設定することが重要になります。

キャリア教育を通して、自分の夢や目標を実現するには、「学ぶことが非常に重要」ということを理解してもらう必要があるからです。

  • コミュニケーションが要求されるペア学習やグループ学習
  • 異学年交流

などを活用し、人間形成とともに課題への対応能力や自己管理能力等を計画的・体系的に習得する機会を設けるとよいでしょう。

中学校での実態調査の結果

  • 各教科や日々の活動を通して全校的な推進により、学習意欲の向上
  • 学習や指導に役立てる工夫がポイント

キャリア教育を全校的に推進することによって学習意欲が向上

「学校」と「社会」を現実的に結び付けながら、

  • 自ら学びの参加を進める
  • 学習サイクルをもとに学び方や生き方を学ぶ
  • 教師自身も社会参加力を身につけながら授業改善を進める

などキャリア教育を全校的に行うことで、個々の生徒の学習意欲も向上するという良循環が生まれます。

義務教育が終了する中学校では、「生き方や進路に関する現実的模索」も重要な目標になります。知識や技能、技術の習得だけにとどめず、広く社会で通用する基礎的・汎用的な能力を意識したキャリア教育を実践しましょう。自己実現に向けて生徒の意欲を高めることができます。

画像参考: 国立教育政策研究所「キャリア教育が促す『学習意欲』」http://www.nier.go.jp/

「役立った」「少しは役立った」学習や指導

  • さまざまな教科による日々の授業
  • 部活動等の課外活動
  • 係や委員会等の活動

を通してキャリア教育を全校的に推進すると、学習意欲の向上につながるのです。実際役に立った学習や指導内容では、

  • さまざまな教科による日々の授業:96.6%、
  • 部活動等の課外活動:92.0%
  • 卒業後の進路について相談:89.0%
  • 職場での体験活動:87.7%

という結果があります。日々の生活にキャリア教育をちりばめていく重要性が分かるでしょう。

高等学校での実態調査の結果

インターンシップにより学習意欲が向上

高等学校では、事前指導とインターンシップ、事後指導を組み合わせたキャリア教育を導入した結果学習意欲が向上したという調査結果が出ています。インターンシップを行うだけでなく、

  • 事前指導:ワークシートやスケジュール管理、タスクリストの作成
  • 事後指導:グループワークや発表会による情報共有

を丁寧に行うことで就職や進学といった将来の進路に対する意識が向上し、学習意欲の向上を生み出すことが分かっています。

インターンシップの体験先は、生徒が興味を持つ職業が中心です。地域企業と連携してインターンシップを活発化するとよいでしょう。

インターンシップとは? 導入の目的、種類、選び方、導入準備、企業のリスクについて
就職前の学生を職場で受け入れるインターンシップを行う企業が増えています。インターンシップは学生だけでなく、企業にとってもメリットがある制度だと認知されてきたからです。そんなインターンシップについて、 ...

キャリア教育に関わる「体験活動」の効果とは?

学校教育では、キャリア教育に関わる「体験活動」に力を注いでいます。体験した職業への意識だけでなく、日常生活での主体性・積極性を高める効果があるのです。

また、実際に体験することで自分の将来の進路や生き方について具体的なイメージが湧きますし、それは自己実現に向けて真摯に向き合うきっかけとなるでしょう。

特に、高等学校での体験活動は職業選択に直結する場合も多々。担任やキャリア教育担当者と協力しながら、積極的に体験活動をキャリア教育に取り入れるとよいでしょう。

4.キャリア教育の目的と企業の関わり

キャリア教育の目的は文部科学省の定義にある通り「一人一人の社会的・職業的自立」。長らく終身雇用が浸透していたため、個人の社会的・職業的な自立を目的としたキャリア教育が遅れたことが、現在の雇用問題の一因になっているという見方もあります。

近年、経済情勢の変化は大きく、その中、企業が生き残るには環境適応力が必要でしょう。

個人においては、「終身雇用に守られて働く」という発想ではなく、環境の変化に適応できるよう必要に応じて自らが仕事を選択できるように能力を磨くことが重要です。

企業も、経営環境の変化に応じて必要な人材を採用することは重要でしょう。このような背景から、近年キャリア教育が求められているのです。

教育機関では、取り組みの一つとして、

  • インターンシップの実施
  • 地域の企業に協力を得ながら職業体験や研修を行う

といったケースが増え、それに伴い企業との積極的な連携を求めている学校も増加しています。企業の人事部門は窓口という重要な役割にあるといえるでしょう。

5.企業のキャリア教育に対する支援活動について

企業の人事部門の視点から、企業にはどのようなキャリア教育の支援活動があるのか、それによるメリットは何か、紹介します。

キャリア教育の支援活動は、

  1. 工場等の施設見学・職場見学の受け入れ
  2. 講師を派遣(学校に社員を派遣し仕事内容について紹介)
  3. 職場体験・仕事体験の受け入れ
  4. 各種イベントの実施

などです。

支援活動を行うことで生まれる企業のメリット

まず職場に好循環が生まれるのです。職場見学や仕事体験を受け入れることで、

  • 職場の整理整頓
  • 地域社会とのつながり
  • 子どもたちに「教える」ことを通じて仕事への誇りや意欲が向上
  • それによるモチベーションアップ
  • 地域社会に対する企業の知名度やイメージアップ

などが期待できます。人事部門は把握した若者の意識や実態を採用活動などに反映できるでしょう。キャリア教育への支援活動は、企業にとってもメリットが大きいのです。